・東京地判平成11年1月28日判タ994号292頁  ジクロフェナクナトリウム事件。  「徐放性ジクロフェナクナトリウム製剤」について特許権を有する原告(エスエス製薬) が、被告らが販売しようとしている医薬品が右特許権を侵害するとする差止請求が棄却さ れた。  判決は、均等論が成立するための5要件のうち、@要件(特許請求の範囲に記載された 構成中に相手方が製造等をする製品と異なる部分が、特許発明の本質的部分でないこと) が欠けるとして均等の成立を否定した。 ・本質的部分について  「前記のとおり、均等が成立するためには、特許請求の範囲に記載された構成中の対象 製品と異なる部分が特許発明の本質的部分ではないことを要するが、右にいう特許発明の 本質的部分とは、特許請求の範囲に記載された特許発明の構成のうちで、当該特許発明特 有の課題解決手段を基礎づける特徴的な部分、言い換えれば、右部分が他の構成に置き換 えられるならば全体として当該特許発明の技術的思想とは別個のものと評価されるような 部分をいうものと解するのが相当である。すなわち、特許法が保護しようとする発明の実 質的価値は、従来技術では達成し得なかった技術的課題の解決を実現するための、従来技 術に見られない特有の技術的思想に基づく解決手段を、具体的な構成をもって社会に開示 した点にあるから、明細書の特許請求の範囲に記載された構成のうち、当該特許発明特有 の解決手段を基礎づける技術的思想の中核をなす特徴的部分が特許発明における本質的部 分であると理解すべきであり、対象製品がそのような本質的部分において特許発明の構成 と異なれば、もはや特許発明の実質的価値は及ばず、特許発明の構成と均等ということは できないと解するのが相当である。」