・東京地判平成11年1月28日判時1681号147頁  円谷プロ事件:第一審。  原告(円谷プロダクション)は、タイに居住するタイ国籍の被告(サンゲンチャイ・ソ ンポテ)に対して、被告に対する著作権の譲渡または利用許諾はされていないと主張して、 @日本国外における本件著作物の独占的利用権の許諾を内容とする本件契約書が真正に成 立したものでないこと、原告が本件著作物につき著作権を有することおよび被告がこれに つき利用権を有しないことの確認、A被告による虚偽の事実の陳述または流布の差止め、 B損害賠償、を請求しているのに対し、被告が、翻案前の答弁として、わが国の裁判権 (国際裁判管轄)および確認の利益を争い、訴えの却下を求めた事案である。  判決は、原告が国際裁判管轄を肯定する根拠となるとして主張した不法行為地および財 産所在地のいずれについても、これがわが国にあるということはできないとして、国際裁 判管轄を否定し、原告の訴えを却下した。 (控訴審:東京高判平成12年3月16日、上告審:最判平成13年6月8日) ■評釈等 松本直樹・判例評論494号37頁(2000年) ■判決文  「被告が我が国に住所を有しない外国人の場合であても、我が国と法的関連を有する事 件について我が国の国際裁判管轄を肯定すべき場合のあることは、否定し得ないところで あるが、どのような場合に我が国の国際裁判管轄を肯定すべきかについては、国際的に承 認された一般的な準則が存在せず、国際的慣習法の成熟も十分ではないため当事者間の公 平や裁判の適性・迅速の理念により条理に従って決定するのが相当である。そして、我が 国の民訴法の規定する裁判籍のいずれかが我が国内にあるときは、原則として、我が国の 裁判所に提起された訴訟事件につき、被告を我が国の裁判権に服させるのが相当であるが、 我が国で裁判を行うことが当事者間の公平、裁判の適性・迅速を期するという理念に反す る特段の事情があると認められる場合には、我が国の国際裁判管轄を否定すべきである。」  「原告被告間で争いとなっているのは、本件訴訟及びタイ訴訟のいずれにおいても、日 本以外の地域において被告が本件著作物を独占的に利用する権利を有するかどうかである こと、…」  「本件著作物が我が国において著作されたものであるとはいっても、日本以外の国にお ける本件著作物の利用に関しては、それぞれ当該国における著作物に関する法規を根拠と する権利(当該国の著作権法に基づく著作権)が問題となるものであり、これらの権利に ついてはその所在地が我が国にあるということはできないこと、…」  「これらの事情を総合すると、本件訴訟については、原告主張の不法行為地、財産所在 地の裁判籍のいずれに関しても、これを肯定することができないというべきである。」