・東京地判平成11年2月25日判時1677号130頁  「松本清張作品映画化リスト」事件。  原告は、被告会社(中央公論社)の従業員であったころに、松本清張の小説の映像化に 関する事項についてのリスト「松本清張作品映画化リスト」および「松本清張作品テレビ 化リスト」を作成していたところ、被告会社は、この原告リストに改変、削除を加えた上 で、これと酷似するリスト(被告リスト)を作成し、これを被告(阿刀田高)の著作に係 るものとして被告会社発行の書籍に掲載した。  原告は、原告リストが著作物であり、被告がその著作権及び著作者人格権(同一性保持 権)を侵害したと主張して、右書籍の出版・販売の差止め、謝罪広告、及び損害賠償を請 求したが、判決は、以下のように述べて、原告リストが言語著作物、編集著作物に当たら ないとしてその請求を棄却した。 ・言語著作物  「原告リストは、前記のとおり、松本清張の小説の映画化及びテレビドラマ化に関する 事項を一覧表にまとめたものであり、該当事項以外には何らの言語的記載がないから、そ の記載内容をもって、思想又は感情を創作的に表現したものということはできない。した がって、原告リストが言語の著作物に当たるということはできない。」 ・編集著作物  「(二)前記認定の事実に照らせば、小説の映画化に関する事項に関し、題名、封切年、 製作会社名、監督名、脚本作成者名、主な出演者名を、また、小説のテレビドラマ化に関 する事項に関し、題名、放送年月日、番組名、放送局名、制作会社名、監督名、脚本作成 者名、主な出演者名、視聴率を、それぞれ項目として選択し、その順序に従って配列して、 右の該当事実を整理・編集することは、従来の事実情報資料においても採られていたもの であって、原告リストがこの点において何らかの独自性、新規性を有するとは認めること ができず、また、題名、監督名、脚本作成者名、主な出演者名等の各事項における個々の 事実情報の選択・配列の点においても原告リストが著作物として保護すべき創作性を有す るものとは認められない。  (三)なお、原告は、原告リストについて、その作成の困難性や資料としての価値の高 さを強調するが、著作権法により編集物著作物として保護されるのは、編集物に具現され た素材の選択・配列における創作性であり、素材それ自体の価値や素材の収集の労力は、 著作権法によって保護されるものではないから、仮に原告が事実情報の収集に相当の労を 費やし、その保有する情報に高い価値を認め得るとしても、そのことをもって原告リスト の著作物性を認めることはできない。  (四)以上検討したところによれば、原告リストが編集著作物に当たるということもで きない。」