・東京地判平成11年3月26日判時1694号142頁  「ドルフィン・ブルー」事件。  原告(H.M.)は、撮影した写真を「Dolphin Blue ドルフィン・ブル ー」と題するCD−ROMソフトに収録・販売していたところ、被告(毎日コミュニケー ションズ)がその発行する月刊情報誌「CD−ROM Fan」の平成七年一〇月号に、 原告の「Dolphin Blue」から写真合計34点を複製・掲載して発売したこと が、本件写真についての著作権(複製権)および著作者人格権(氏名表示権および同一性 保持権)を侵害するものとして、計178万円の損害賠償が認容された事例。 ■判 決  主  文 一 被告らは、原告に対し、各自金一七八万円及びこれに対する平成八年六月二七日から 支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。 二 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 三 訴訟費用は、これを五分し、その一を被告らの、その余を原告の負担とする。 四 この判決の一項は、仮に執行することができる。  事実及び理由 第一 請求 一 被告らは、原告に対し、連帯して金一三六四万円及びこれに対する平成八年六月二七 日から支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。 二 被告株式会社毎日コミュニケーションズは、原告に対し、別紙謝罪広告目録記載の謝 罪広告を、朝日新聞、読売新聞、毎日新間には別紙謝罪広告掲載方法目録一記載の方法で、 同被告の発行する雑誌「CD−ROM Fan」には別紙謝罪広告掲載方法目録二記載の 方法で、それぞれ一回ずつ掲載せよ。 第二 事案の概要 一 争いのない事実等 1 原告は、鯨・イルカ等の野生の海洋生物を対象とする写真撮影、ルポルタージュの執 筆等を業とする写真家・科学ジャーナリストである。(乙九の三、弁論の全趣旨)  被告株式会社毎日コミュニケーションズ(以下「被告会社」という。)は、書籍の出版・ 販売等を目的とする株式会社であり、CD−ROMソフトに関する月刊の情報雑誌「CD −ROM Fan」を発行している。  被告佐々山泰弘(以下「被告佐々山」という。)は、被告会社の代表取締役であり、か つ、「CD−ROM Fan」の発行人である。 2 原告は、別紙写真目録記載1ないし34の各写真を撮影し、これを「Dolphin  Blue ドルフィン・ブルー」と題するCD−ROMソフト(以下「DolphinB lue」という。)に収録した(以下、「Dolphin Blue」に収録された別紙写 真目録記載の各写真を「本件写真」という。)。  「Dolphin Blue」は、平成七年、株式会社シンフォレスト(以下「シンフ ォレスト社」という。)から発売された。 3 被告らは、「Dolphin Blue」から本件写真合計三四点を複製し、「CDー ROM Fan」平成七年一〇月号(以下「本件雑誌」という。)に掲載して、同年九月 八日、本件雑誌を定価五八〇円で発売した。(甲一、弁論の全趣旨)  「Dolphin Blue」から複製された本件写真三四点は、本件雑誌の「イルカ と泳ごう」と題する特集記事(一六〇頁ないし一七三真に掲載、以下「本件記事」という。) の中に掲載されており、本件雑誌の一六一頁、一六二頁の見開きに掲載された一点の写真、 一六八頁に掲載された八点の写真、一六九頁に掲載された二点の写真、一七〇頁に掲載さ れた八点の写真、一七一頁に掲載された八点の写真及び一七三頁に掲載された七点の写真 である。(甲一) 二 本件は、原告が、被告らは原告が撮影した本件写真を原告に無断で複製し本件雑誌に 掲載して発売し、本件写真についての著作権(複製権)及び著作者人格権(氏名表示権及 び同一性保持権)を侵害したと主張して、被告らに対し、著作権及び著作者人格権の侵害 による各不法行為に基づく損害賠償を求めるとともに、被告会社に対し、著作権法一一五 条に基づき、謝罪広告の掲載を求めた事案である。 第三 争点及び争点に関する当事者の主張  《省 略》 第四 当歳判所の判断 一 本件写真の著作物性について判断する。  証拠(甲一一、検甲一、原告本人)と弁論の全趣旨によると、本件写真は原告が自然の 中に生息している野性のイルカを被写体として撮影した写真であること、原告は、本件写 真を撮影するに当たり、自らの撮影意図に応じて構図を決め、シャッターチャンスを捉え て撮影を行ったこと、以上の事実が認められ、これらの事実に証拠(検甲一)によって認 められる本件写真の映像とを併せて考えると、本件写真は、原告の思想又は感情を創作的 に表現したものとして著作物性を有するものと認められ、本件写真は著作物とはいえない 旨の被告らの主張(前記第三の一、2H)は、採用することができない。  したがって、原告は、本件写真について著作権及び著作者人格権を有する。 二 被告らが本件写真を複製し本件雑誌に掲載したことは、原告の本件写真についての複 製権を侵害するかどうかについて判断する。 1 被告らが本件写真を複製し、これを本件雑誌に掲載したことは、前記第二の一3のと おりである。  また、前記第二の一の事実に証拠(甲一、七、乙一、二、証人品田、証人浅香)と弁論 の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。 (一)平成七年八月上旬ころ、被告会社の「CD−ROM Fan」編集部で本件記事が 企画され、編集部員の水上茂治(以下「水上」という。)がシンフォレスト壮で「Dol phin Blue」を担当していた品田仲(以下「品田』という。)に電話をかけ、「C D−ROM Fan」の一〇月号でイルカのCD−ROMを紹介したいので『Dolph in BIue」を送付してほしい旨依頼をした。ただし、その時点では、右企画の準備 の早い段階であったので、右編集部においても、具体的にどのような紙面構成にするのか、 「Dolphin Blue」から何点の写真を使用するのか、どの位の大きさで使用す るのかといった具体的な使用態様は決まっておらず、水上は、品田に対する右依頼に際し、 このような具体的なことは何も説明しなかった。  品田は、右依頼に応じて「Dolphin Blue」を右編集部に送付した。  以上のほかには、右編集部と品田との間に「Dolphin Blue」に収録された 写真の使用についての話合い等は一切なかった。 (二)本件記事は、本件雑誌の一六〇頁から一七四頁に掲載された『イルカと泳ごう」と 題する、ジャック・マイコールのインタビューを中心とした特集記事であり、一六〇頁、 一六一頁は、「イルカと泳ごう」という題名等が重ねて記載された大きな見開きのイルカ の写真(別紙写真目録記載1の写真)、一六二頁はジャック・マイコールの顔写真、一六 三頁、一六四頁は、ジャック・マイコールのインタビュー記事、一六五頁ないし一七五頁 は、イルカの写真(ただし、一七五頁は「イルカに会える水族館」の一覧表も掲載してい る。)という構成になっている。 (三)右イルカの写真のうち、一六七頁、一六八頁は「デルフォイの記憶」と題するCD −ROMの写真が、一六八頁ないし一七二頁は「Dolphin Blue」の写真(別 紙写真目録記載2ないし34、一頁の二分の一の 大きさのもの二枚、一頁の八分の一の 大きさのもの三一枚)が、一七三頁は「1994 the Bonin islands」 と題するCD−ROMの写真が、一七四頁は「クジラに魅せられて 望月昭伸作品集」と 題するCD−ROMの写真が、一七五頁は「ガラパゴスの海へ」と題するCD−ROMの 写真が掲載されている。 (四)本件雑誌の一七三頁の左下の一頁の八分の一の大きさの部分に、「Dolphin  Blue」のジャケットの写真とともに、「『Dolphin Blue』「価格:3.9 80円(税込)」「問い合わせ先:シンフォレスト」「TEL:03−3440−6108」 「(P160−P161,P168−172の写真は「Dolphin Blue」を使 用)」と小さな文字で記載されており、右(三)記載の『Dolphin Blue」以 外のCD−ROMについても、本件雑誌の一六七頁、一七三頁、一七四頁の一頁の八分の 一の大きさの部分に、それぞれジャケットの写真とともに、右「Dolphin Blu e」と同様の事項が小さな文字で記載されているが、その他には、右(三)記載の各写真 を紹介する記事は存しない。 2 証拠(甲一〇)と弁論の全趣旨によると、原告とシンフォレスト社との間において、 「Dolphin Blue」の出版に関し、原告がシンフォレスト社に対し、同社が「D olphinBlue」の販売促進・広告のために作成し、無償で配布、又は貼付するポ スター・チラシその他の物品に、「Dolphin Blue」の画像データを使用する ことを無償で認める旨の約定があったことが認められるから、シンフォレスト社は右約定 の範囲で「Dolphin Blue」の画像データを使用する権限を有していたものと 認められるが、同社が右約定の範囲を超えて右画像データを使用し又は使用を許諾する権 限を有していたことを認めるに足りる証拠はない。しかるところ、「CD−ROM Fa n」が、「シンフォレスト社が『Dolphin Blue』の販売促進・広告のために 作成し、無償で配布、又は貼付するポスター・チラシその他の物品」でないことは明らか であるから、シンフォレスト社が被告らに対して「CD−ROM Fan」において「D olphin Blue」に収録された画像データの使用を許諾する権限を有していたと は認められない。 3 また、右1認定の事実によると、本件記事はジャック・マイコールのインタビューを 中心とした特集記事であり、本件写真は、別紙写真目録記載1の写真が記事の最初の見開 きの真に題字とともに大きく掲載されているほか、別紙写真目録記載2ないし翌の三三枚 もの写真が掲載されており、「Dolphin Blue」のジャケットの写真等が掲載 されているものの、その扱いは、本件写真に比べて著しく小さいというべきである。そう すると、本件記事において、本件写真は、単なるCD−ROMの紹介の域を超えて、読者 に鑑賞させるために掲載されたものであると認められる。  他方、右1認定の事実によると、「CD−ROM Fan」の編集部員である水上はシ ンフォレスト社の品田に対し、具体的な使用態様等を告げないまま「CD−ROM Fa n」一〇月号でイルカのCD−ROMを紹介するので「Dolphin Blue」を送 付してほしい旨依頼し、品田はこれに応じて「Dolphin Blue」を送付したに 過ぎないことが認められるから、シンフォレスト社の品田が被告らに対して読者に鑑賞さ せるような態様で本件写真を掲載することを承諾したとは到底認められず、他にシンフォ レスト社が被告らに対してこのような許諾を与えたことを認めるに足りる証拠はない。  したがって、本件記事における本件写真の掲載について、シンフォレスト社が許諾して いたとも認められない。 4 その他、被告らが、本件写真を複製し、本件雑誌に掲載することについて原告が許諾 していたことの主張立証はないから、被告らが、本件写真を複製し、本件雑誌に掲載した ことは、原告の本件写真についての複製権を侵害する行為であると認められる。 三 被告らが本件写真を掲載した本件雑誌を発売したことが原告の有する氏名表示権を侵 害するかどうかについて判断する。 1 右二1(四)認定のとおり、本件雑誌の一七三頁の左下欄に、「Dolphin B lue」のジャケットの写真等が掲載されていることが認められるが、証拠(甲一)によ ると、右ジャケットの写真には「水口博也」という同ジャケットに印刷された文字が見え るものと認められる。また、右二1(四)認定のとおり、本件記事には他のCD−ROM のジャケットの写真も掲載されていることが認められるが、証拠(甲一)によると、その 中には、ジャケットには撮影者の氏名が印刷されていないため、写真の著作者が誰である か分からないものがあることが認められる。  右認定の事実によると、本件雑誌の一七三頁のジャケット上の「水口博也」の氏名は、 ジャケットの写真の一部として出ているものであり、著作者の氏名を表示するものとして 記載されているものではないと認められるから、右ジャケット上の「水口博也」の氏名が 見えるからといって、被告らが本件写真を本件雑誌に掲載して公衆に提供するに際して、 原告の氏名を表示したとは認められない。  そして、以上述べたところに弁論の全趣旨を総合すると、被告らは、本件写真を本件雑 誌に掲載して公衆に提供するに際して、原告の氏名を表示しなかったものと認められるか ら、被告らが本件写真を掲載した本件雑誌を販売したことは、原告が本件写真について有 する氏名表示権を侵害する。 2 なお、証拠(乙一〇の一ないし三)によると、「CD−ROM Fan」平成七年一 一月号(平成七年一〇月八日発売)に、「CD−ROM Fan10月号の161〜16 2ページにおきましてイルカの写真のクレジットが抜けていました。正しくは、「本写真 は「Dolphin Blue」(撮影:水口博也)より使用しています。(Mac、Wi n両用)、価格:3,980円(税込)、発売元:シンフォレスト」です。迷惑をおかけい たしました関係各位に謹んでお詫び申し上げます。」という内容の「お詫びとご訂正」の 記事を掲載したことが認められるが、氏名表示権は、著作物の公衆への提供に際して、氏 名を表示し又は表示しないこととする権利であるから、事後的に右「お詫びとご訂正」の 記事を掲載したからといって、氏名表示権を侵害しないこととなるものではない。 四 被告らが本件写真を本件雑誌に掲載したことが原告の有する同一性保持権を侵害する かどうかについて判断する。 1 被告らが別紙写真切除目録記載のとおり、本件写真の上下又は左右を一部切除して本 件雑誌に掲載したことは、当事者間に争いがない。  著作権法二〇条一項にいう著作物についてのその意に反する「変更、切除その他の改変」 とは、著作者の意に反して著作物の表現を変更することを意味するものと解されるから、 被告らが本件写真の上下又は左右を一部切除して本件雑誌に掲載したことは、その切除箇 所が極めてわずかであるなど若作者の人格的利益を害することがないと認められる場合を 除き、原則として同一性保持権の侵害に当たるものと解される。  そして、右争いのない事実と証拠(甲一一、原告本人)によると、別紙写真切除目録記 載の各写真は、上下又は左右の一部が切除されたことにより各写真の本来の構図が明らか に変更されており、これによって著作者の制作意図に沿わないものとなっていることが認 められるから、右切除は著作者の人格的利益を害することがないとは認められない。  したがって、被告らが別紙写真切除目録記載のとおり、本件写真の上下又は左右を一部 切除して本件雑誌に掲載したことは、原告が本件写真(別紙写真目録記載22及び34の 各写真を除く。)について有する同一性保持権を侵害する。 2 証拠(甲一)によると、別紙写真目録記載1の写真は、概ね別紙写真切除目録記載1 のとおり文字が重ねられていることが認められ、これは右写真の表現を改変するものと認 められヨから、被告らが右写真に文字を重ねて掲載したことは、原告が右写真について有 する同一性保持権を侵害する。 3 原告は、CD−ROMから紙媒体に転用したことが同一性保持権の侵害になる旨主張 する(前記第三の四1回)。  しかし、証拠(甲一、検甲一)により、本件写真をディスプレイ上に映した映像と本件 雑誌に掲載された写真を対比すると、媒体が異なることから両者は全く同一であるとはい えないものの、本件雑誌の写真は本件写真をかなり忠実に再現しており、本件雑誌の写真 がディスプレイ上の映像よりも特に質的に劣るとも認められないから、本件写真をCD− ROMから紙媒体に転用したことが、同一性保持権の侵害になるということはできない。 五1 以上認定判断したところによると、被告らが本件写真を複製して本件雑誌に掲載し、 これを発売したことは、原告の有する複製権並びに氏名表示権及び同一性保持権を侵害す ると認められるところ、被告会社は、出版社として、自らの発行する雑誌「CD−ROM F an」の記事に写真を掲載するに当たっては、一般的に、その著作者の著作権及び著作者 人格権を侵害することがないよう注意すべき義務があり、被告佐々山も右雑誌の発行人と して右と同様の注意義務を負っていたものと認められる。しかるに、前記認定のとおり、 被告らが本件写真を本件雑誌に掲載するに当たっては、「CD−ROM Fan」の編集 部員である水上が「Dolphin Blue」の販売元であるシンフォレスト社の品田 に「Dolphin Blue」の送付を依頼したのみで、それ以上に著作者の著作権及 び著作者人格権を侵害するかどうかについて考慮することなく、本件写真を複製して、本 件雑誌に掲載し、これを発売したのであるから、被告らには右注意義務を怠った過失があ るというべきである。  なお、被告らは、本件写真を掲載するについてシンフォレスト社の許諾を得ていたから 過失はない旨主張する(前記第三の五2)が、前記認定のとおり、シンフォレスト社の許 諾があったとは認められないから、右主張は採用できない。  したがって、被告らは、原告の著作権及び著作者人格権を侵害したことにより原告に生 じた各損害を賠償する責任があるものと認められるから、各損害額について判断する。 2 まず、複製権侵害による損害額について判断する。 (一)証拠(甲八の二、三)によると、国内において写真の貸出し業務を行っている写真 ライブラリー業者が写真を一般雑誌に掲載するために貸し出した場合の使用料は、見開き で使用する場合については、五万円、一頁の二分の一以上であるが一頁に満たない場合に ついては、三万円ないし三万五〇〇〇円、一頁の二分の一に満たない場合については、二 万五〇〇〇円ないし三万円といった例のあることが認められる。  また、証拠(原告本人、甲一一)によると、本件写真は、原告において、本来雑誌への 掲載を許可する予定のなかったものであることが認められる。そして、右認定の事実に前 記二認定に係る本件記事における本件写真の使用態様を総合すると、本件記事における本 件写真の使用料は、見開きで使用されたもの(一枚)については一〇万円、一頁の二分の 一のもの(ニ枚)については各五万円、一真の八分の一のもの(三一枚)については各三 万円が相当であると認められる。 (二)原告は、一般に写真が無断使用されたときの事後的な許諾料は事前に許諾する場合 の一〇億の金額となる旨主張する(前記第三の六1(一)(2))。  証拠(甲八の二、三)によると、写真ライブラリー業者の写真使用料規定には、無断使 用の場合には使用料の一〇倍を請求するとされているものがあることが認められるが、そ れのみで、写真が無断使用されたときの事後的な許諾料は事前に許諾する場合の一〇倍の 金額が相当であると認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。  また、原告は、自らの写真の使用料を示すものとして請求書(甲九の一ないし七)を証 拠として提出するが、右請求書に係る写真がどのようなもので、どのようにして使用され たのか、また、右金額がどのようにして決定されたのか、本件全証拠によるも必ずしも明 らかではないから、右請求書の金額をもって本件写真の使用料相当額を算定することはで きない。 (三)右(一)の認定に基づいて、被告らが本件写真を複製して本件雑誌に掲載したこと について原告が受けるぺき金額を算定すると、右金額は、   見開き使用分       一〇万円(100,000*1=100,000)   一頁の二分の一使用分   一〇万円(50,000*2=100,000)   一頁の八分の一使用分   九三万円(30,000*31=930,000)  の合計一一三万円となる。  したがって、複製権侵害による損害額は、一一三万円である。 (四)原告が本訴の提起及び遂行のために弁護士である原告代理人を選任したことは当裁 判所に顕著であるところ、本件事案の内容、審理の経緯その他諸般の事情を考慮すると、 原告に生じた弁護士費用のうち、一〇万円は被告らの複製権侵害の不法行為と相当因果関 係のある損害として被告らに負担させるべきものと認めるのが相当である。 3 氏名表示権及び同一性保持権の侵害による損害額(慰謝料)は、前記認定の被告らの 侵害行為の態様及び諸般の事情を勘案すると、五〇万円と認めるのが相当である。  また、右2(四)に述べたところからすると、原告に生じた弁護士費用のうち、五万円 は被告らの著作者人格権侵害の不法行為と相当因果関係のある損害として被告らに負担さ せるべきものと認めるのが相当である。 4 謝罪広告の必要性について判断する。  原告は、謝罪広告の必要性について前記第三の五1ロのとおり主張する。  被告らが原告の氏名表示権を侵害したことは前示のとおりであるが、前記二1認定の事 実によると、本件記事において本件写真がジャック・マイヨールを著作者とするような構 成になつているとまでは認められず、本件雑誌の一七二頁において、本件写真が「Dol phin Blue」から使用された旨が記載されており、さらに、「CD−ROM F an」一一月号に前記認定のとおり「お詫びと訂正」の記事が掲載されたことからすると、 著作者であることを確保するために謝罪広告を掲載することが必要であるとまでは認めら れない。  また、被告らが本件写真を本件雑誌に掲載したことにより原告の名誉又は声望が侵害さ れたことを認めるに足りる証拠はないから、これを回復するために謝罪広告を掲載する必 要があるとも認められない。 六 結論  以上のとおりであって、原告の本訴請求は、被告ら各自に対し、一七八万円及びこれに 対する不法行為の後である平成八年六月二七日から支払済みまで民法所定年五分の割合に よる遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。  東京地方裁判所民事第二九部     裁判長裁判官 森  義之        裁判官 榎戸 道也        裁判官 中平  健