・東京地判平成11年4月16日判時1690号145頁  オリンパス発明報奨金事件:第一審。  被告会社(オリンパス光学工業)の元社員である原告が、被告が特許権を取得した発明 に対する報償金が不十分だとして2億円を請求した。特許法35条3項の「相当の対価」 の解釈。  判決は、相当対価の額として250万円を認定したうえで、すでに支払い済みの21万 1000円を控除した残額の228万9000円の支払いを認容した。  なお、「被告は、職務発明について、勤務規則等により、発明者が使用者たる会社に譲 渡する場合の対価を、あらかじめ定めているところ、これに従って処理されたものについ ては、改めて個別的に請求することはできない旨主張する。  しかし、被告規則については、被告が一方的に定めた(変更も同様である。)ものであ るから、個々の譲渡の対価額について原告がこれに拘束される理由はない。この点、被告 は、原告が、被告の諸規則等を遵守する旨の誓約書を提出していることから、原告が相当 対価の請求権を放棄したものとみるべきであると述べるが、原告が、就職時に、このよう な包括的な内容の記載された書面を提出したからといって、個々の譲渡に関して、譲渡対 価に関する何らかの合意が形成された、あるいは、相当対価の請求権の放棄がされたと解 する余地はない。その他、被告は、被告規則が原告を拘束する根拠を何ら明らかにしてい ないので、原告の前記主張は失当である。結局、法35条が、職務発明に係る特許権等の 譲渡の対価は、発明により使用者等が受けるべき利益の額および使用者が貢献した程度を 考慮して定めるべきことを規定した趣旨に照らすならば、勤務規則等に発明についての報 償の規定があっても、当該報償額が法の定める相当対価の額に満たないものであれば、発 明者は、使用者等に対し、不足額を請求できるものと解するのが相当である。」 (裁判長:飯村敏明) (控訴審:東京高判平成13年5月22日)