・東京地判平成11年4月28日判タ1006号252頁  「ウイルスバスター」商標事件。  原告(ネットワークアソシエイツ株式会社)は「電子計算機のプログラムの設計・作成 又は保守」を指定役務とする「ウイルスバスター」なる商標の商標権者であり、被告(ト レンドマイクロ株式会社)は「ウイルスバスター」等の標章を使用してコンピュータウイ ルス対策用のソフトウェアを記憶させた磁気ディスク等を販売しているところ、原告は、 被告に対して、被告標章の使用は原告商標権の侵害に該当するとして差止等を請求した。  判決は、被告標章の一般需要者の間における著名性、本件商標の一般的な出所識別力の 乏しさ、原告の本件商標の不使用の事実等を認定した上で、原告による原告商標権の行使 は権利濫用に当たるとしてその請求を棄却した。  「本件商標は一般的に出所識別力が乏しく、原告の信用を化体するものでもなく、その ため被告が本件商標に類似する被告標章をウイルス対策用ディスクに使用しても本件商標 の出所識別機能を害することはほとんどないといえるのに対し、被告は、前記(一)のと おり別紙第三目録記載の標章を原告が本件商標の登録出願をする前から継続的に使用して おり、現在では被告標章は一般需要者が直ちに被告商品であることを認識できるほど著名 な商標であるから、本件商標権に基づき被告標章の使用の差止めを認めることは、被告標 章が現実の取引において果たしている商品の出所識別機能を著しく害し、これに対する一 般需要者の信頼を著しく損なうこととなり、商標の出所識別機能の保護を目的とする商標 法の趣旨に反する結果を招来するものと認められる。」