・東京地判平成11年7月23日判決速報292号8918  「ライバル日本史」セット事件:第一審。  原告(Y.T.)は、平成六年、プラスマイナスギャラリーにおいて、水槽に満たした 水に光を透過させた美術作品(原告作品)を創作した。被告(日本放送協会)は、平成七 年四月ころから平成八年三月ころまで、毎週木曜日午後一〇時から午後一〇時三〇分にか けて放映されたNHK総合テレビの番組「ライバル日本史」のスタジオにおいて、水槽の 水に光を透過させたセット(被告セット)を制作した。  本件は、被告が放送番組においてセットを制作した行為が、原告の著作権を侵害すると 主張して、原告が被告に対し、損害賠償を請求した事案である。  判決は、下記のように述べて、原告と被告の著作物の類似性を否定し、原告の請求を棄 却した。  「原告作品は、平面で囲まれた部屋が空間として用いられていること、小山状に盛り上 げられた白い布素材が用いられていること、先端部が尖った黒色の波形をした柱が用いら れていること、天井から吊り下げられた白い紗幕が用いられていること、水槽が鑑賞者か ら見える場所に配置されていること、配色として白及び青が選択されていること等の特徴 があるのに対し、被告セットは、中央テーブルを中心に円弧状の壁面で囲まれた部分が空 間として用いられていること、一二体の彫像(一二神将)の写真が配置されていること、 柱、梁及び壇が設けられていること、水槽が視聴者から隠れた場所に配置されていること、 赤及び黄色等の色彩が用いられていること等の特徴があり、それぞれの特徴に共通点はな く、両者は、その具体的表現形態において類似性がない。したがって、被告セットは原告 作品を複製ないしは翻案したものと認めることはできない。  原告は、原告作品と被告セットは、光源を水槽の下に配置し、波紋の生じた水面に光を 透過させて、物体に投影させる手法を用いている点において共通すると主張するが、この ような手法の共通性があるからといって、前記類否の判断に影響を与えるものではない (なお、右のような手法そのものは、著作権法において保護の対象となる著作物というこ とはできない。)。」 (控訴審:東京高判平成12年1月18日)