・東京地判平成11年7月23日  坂井真紀イラスト事件。  原告はイラストレーターであり、被告(株式会社東京優勝)は映画、放送番組、広告の 企画・制作、広告代理業及びイベントのプロデュース等を業とする会社である。  原告は、女優坂井真紀の人物画であるイラストレーション(本件著作物)を含む映画宣 伝用のチラシを著作した。被告は、TVLIFE誌平成一〇年九月二五日号の124頁に 被告イラストレーションを使用したタレント等の新人オーディションの広告を掲載した。  本件は、原告が、「被告イラストレーションは本件著作物の複製権を侵害している」と 主張して、右複製権に基づく被告イラストレーションの使用差止めを求めた事案である。  判決は、下記のように述べて、被告イラストレーションは本件著作物の複製にはあたら ないとして、原告の請求を棄却した。  「右2認定の事実によると、被告イラストレーションは、本件著作物とは、顔の輪郭の 上半部が円形であること、目の形状が銀杏の実のような形状で、瞳が大きく描かれている こと、鼻が口に近い位置に配置されていること、片手を前、もう一方の手を後ろにし、足 はこれと左右逆であること、バッグを肩から後ろへ向かって掛けていることが共通する。 しかし、本件著作物と被告イラストレーションとでは、顔のうち、その同一性を左右する 主要な部分について右2(一)ないし(七)認定のとおり違いがあるから、右のような共 通する点があるとしても、顔について同一性を認めることはできず、また、顔以外の部分 にも、右2(八)、(九)認定のとおり違いがある。したがって、本件著作物と被告イラ ストレーションの同一性を認めることはできない。  よって、その余の点について判断するまでもなく、被告イラストレーションが本件著作 物の複製であるとは認められない。」