・大阪地判平成11年8月26日  現代仏壇シリーズ事件:第一審  原告(株式会社八木研)は、仏壇仏具の製造、販売を業とする株式会社であり、「ハバ ネラ」「ソナチネ」「ワルツ」との商品名を有する仏壇(原告商品)を製造販売している。  被告(株式会社三善堂)は、仏壇仏具等の販売を業とする株式会社である。被告(株式 会社カリタ)は、仏壇仏具、神仏葬祭用具一式の製造及び卸販売を業とする株式会社であ る。  被告カリタは、仏壇(被告商品)を製造して被告三善堂に販売し、被告三善堂は右仏壇 をそれぞれ「りんどう50」、「りんどう40」および「あじさい」の商品名で顧客に販 売している。  そこで、原告は、本件原告商品の各形態は原告の商品であることを示す商品表示として 周知性を有するところ、本件被告商品の形態は、それぞれ本件原告商品の形態と類似する から、被告らが本件被告商品を販売する行為は、不正競争防止法2条1項1号に定める不 正競争行為に該当するとして、被告らに対し、同法3条に基づき被告商品の販売等の差止 め、およびその廃棄を請求するとともに、同法4条に基づき損害賠償を請求した。  判決は、下記のように述べて、本件原告商品の形態には、原告の商品であることを示す 商品表示として周知性があるとは認められないとし、原告の請求を棄却した。 (控訴審:平成12年9月29日)  「(五)以上からすれば、本件原告商品の形態が、平成七年一二月以前はもちろん現在 においても、その直接の購入者である一般消費者の間で原告の商品であることを示す商品 表示として周知性を獲得しているとは認められない。  また、一般に取引業者の場合には一般消費者と比べて商品に接する機会が多いから、そ れだけ商品形態が商品表示として周知性を獲得する余地は大きいとはいえるが、(二)な いし(四)の事情(特に(四))からすれば、我が国における多数の仏壇業者(ちなみに 乙14によれば平成九年度において宗教用具小売業者は全国で五四六〇あると認められ る。)の間においても、一般消費者の場合と異なる認識状況にあるとはいい難く、他に仏 壇業者の間で本件原告商品の形態が原告の商品表示として周知性を獲得したことを認める に足りる証拠はない。  (六)なお、本件原告商品と本件被告商品とを対比すると、外観上は、色合いや材質感 において多少の違いがあるものの、実質的に同一といってよいくらいに極めて類似してい ることが明らか(検証の結果)であり、本件被告商品は、先行して市場に出ていた本件原 告商品を模倣したものである疑いが強いといわなければならない。また、証拠(原告代表 者、被告ら代表者)によれば、原告仏壇のチラシやカタログを持参して仏壇店に来る購入 者もいることが認められる。  しかし、一般に、仏壇は相当高額であるし(ちなみに、甲30によれば、平成一〇年版 の原告のカタログに登載された本件原告商品の販売価格は、本件原告商品1が六七万円、 同2が六五万円、同3が三〇万円と三三万円の二種である。)、同一人がたびたび購入す るような性質のものでもなく、証拠(被告ら代表者)によれば、消費者が仏壇店で仏壇を 購入する場合には、予算や設置場所を重視した上で、十分商品を吟味して購入することが 一般的であることが認められる。また、原告仏壇のチラシやカタログを持参して仏壇店を 訪れる購入者がいる事実はあるにしても、実際に本件原告商品と本件被告商品について具 体的に混同が生じたケースがあったような事実を認めるに足りる証拠はない。  右のような販売形態の実情と、前記(五)までで認定した事実とを併せ考えると、本件 原告商品と本件被告商品の形態が極めて類似していることをもって、本件原告商品の形態 が商品表示として識別性を有し、かつ周知性を獲得したこと推認する根拠とすることも相 当でないというべきである。」