・東京地判平成11年8月30日  木村拓哉写真無断掲載事件。  原告(株式会社麻布台出版社)は、月刊誌「ポポロ」を発行する会社である。原告Tは 「ZIGEN」という名で活動する写真家である。原告Tは、タレント木村拓哉を被写体 として撮影し、本件写真を著作した。原告麻布台出版社は、原告Tから、右著作権の譲渡 を受けた。なお、本件写真は、月刊誌「ポポロ」平成七年六月号に掲載するために撮影し た。  被告(株式会社講談社)は、週刊誌「週刊現代」などを発行する会社である。被告は、 原告らに無断で、原告Tの氏名を示すことなく、週刊現代平成一〇年四月一一日号に、本 件写真を掲載した。  本件は、タレント木村拓哉を撮影した写真四枚(以下「本件写真」という。)について 著作権または著作者人格権を有する原告らが、被告に対し、本件写真を被告発行の週刊誌 「週刊現代」に無断で掲載した被告の行為が、原告Tの著作者人格権(氏名表示権)およ び原告麻布台出版社の著作権(複製権)を侵害すると主張して、損害賠償の支払と謝罪広 告の掲載を請求した事案である。  被告は、右著作権侵害の事実を認め、平成一〇年六月一日発売号(六月一三日号)の週 刊現代の誌上に、原告Tの著作権を侵害した事実を認めて謝罪する趣旨の謝罪広告を掲載 した。また、被告は、平成一一年二月一八日、原告寺下及び同麻布台出版社のため、和解 金として、金三〇万円を東京法務局に供託した(平成一〇年度金第九一一一九号)。  判決は、「被告の賠償すべき原告麻布台出版社の損害額は、八八万円となる。」とし、 さらに、「著作者人格権を侵害されたことによって原告Tに生じた精神的損害の額は、掲 載の態様、本件紛争の経緯、既に謝罪広告が誌上掲載されたことなど一切の事情を考慮す ると三〇万円が相当である。」と述べたうえで、下記のように、「被告が供託した額は、 いずれも、右金額を超えるので、被告の本件損害賠償義務は右供託により消滅した。」と 述べ、本件請求を棄却した。