・大阪地判平成11年8月31日  「ノップ」信用毀損事件。  原告(ジャパン・ノップ株式会社)は、建設用型枠資材の製造、販売等を目的とする株 式会社であり、被告(日本仮設株式会社)は、建設用資材の製造、販売等を目的とする株 式会社である。  原告は、原告代表者が有する特許権(コンクリート用連結型枠及びその連結支持金具) の専用実施権を有し、昭和五八年より右型枠(本件製品)に「ノップ(N・O・P)」な る名称を付して製造、販売をしている。  原告は、被告との間で、平成元年八月一五日、「業務提携に関する覚書」により、本件 製品の継続的売買基本契約を締結した。また、原告と被告は、平成三年七月一八日に、 「売買契約書」と題する書面により、本件製品の継続的売買基本契約を締結した  被告は、平成八年七月ころから平成九年六月ころまで、北海道建設新聞社発行の北海道 建設新聞に「ノップ(N・O・P)製造発売元」なる名称を表示した本件製品の広告をし た。  そこで、原告は、被告が本件広告を掲載したことは、不正競争防止法2条1項11号の 虚偽事実流布行為に該当し、同行為により原告の信用が毀損されたとして、被告に対し、 同法4条に基づき損害賠償(無形損害)を求めた。  判決は、原告の請求を認めて70万円の損害賠償を命じた。 ◆争点1(原告と被告は「競争関係」にあったか)について  「しかし、不正競争防止法1条1項11号は、「競争関係にある他人の営業上の信用を 害する虚偽の事実を告知し、又は流布する」営業誹謗という行為態様を不正競争行為と位 置づけたものであるところ、同法は公正な競争秩序を維持することを目的とすること(同 法1条参照)から、同号においても「競争関係にある」ことが要件とされたものと解され る。そして、必ずしも現実の市場における競合が存在しなくとも、市場における競合が生 じるおそれがあれば、公正な競争秩序を維持する必要性は認められるから、同号にいう競 争関係も、市場における競合が生じるおそれがあれば足りるものと解すべきである。  証拠(甲20資料2)と弁論の全趣旨によれば、本件広告が掲載された当時、本件契約 に基づき、原告は北海道において本件製品を販売しておらず、被告は北海道においてのみ 本件製品を販売していたと認められるから、本件製品に関する限り、原告と被告は現実の 市場において競合していなかったものと認められる。  しかし、それはあくまでも本件製品に限定されたものである。また、本件製品に関して 競合していなかったのは、原告と被告の双方が、本件契約に基づく不作為義務を履行して いたからにすぎず、原告は、被告と本件業務提携を結ぶまでは、自ら北海道において本件 製品の営業活動を行っていたと認められること(甲20、被告代表者)、被告は、本件契 約締結以前は、東京営業所において本件製品の営業活動を行っていたと認められること (甲20、乙1、15)からすると、原告は北海道において、被告は北海道以外において、 本件製品に関する営業活動を行う客観的能力を十分有していたものと認められる。  したがって、原告と被告は、本件広告が掲載された当時、市場において競合するおそれ があったものと認められるので、不正競争防止法2条1項11号の「競争関係」があった ものというべきである。」 ◆争点2(本件広告により原告の信用は毀損されたか)について  「右事実からすると、原告の会社規模と比較して本件製品は相当程度の信用を有し知名 度があったものと認められ、原告が本件製品の製造元であるということは、原告の建設業 界における信用・名声・評価の基盤となる重要な要素であると認められる。」 ◆争点3(損害の額)について  「以上のとおり、被告の行為は不正競争防止法2条1項11号の不正競争に該当すると ころ、前記事情からすれば、被告が右行為を行うに当たって少なくとも過失があったこと は明らかである。」  「以上の事実その他本件に現れた一切の事情を総合考慮すれば、被告が本件広告を掲載 し原告の信用を毀損したことにより賠償すべき損害の額は、金七〇万円と認めるのが相当 である」