・東京地決平成11年9月20日判時1696号76頁  「e―One」事件。  債権者(アメリカアップルコンピュータ、同日本法人)が、その製造販売する「iMa c」(アイマック)のデザインに類似するとして、「e―One」(イーワン)を製造販 売する債務者(ソーテック)に対しておこなった不正競争防止法2条1項1号にもとづく 差止めの仮処分申請が認容された。  決定は、周知商品表示性については、「債権者商品は、パーソナルコンピュータとして は、従前、類似の形態を有する商品がなく、形態上、極めて独創性の高い商品ということ ができる。そして、債権者商品について、その形態に重点を置いた強力な宣伝がされたこ と、債権者商品は、その形態の独自性に高い評価が集まり、マスコミにも注目され、販売 実績も上がり、いわゆるヒット商品になっていることが一応認められる。以上によれば、 債権者商品の形態は、債権者らの商品表示として需要者の間に広く認識されている(周知 商品表示性を獲得している)ものというべきである。」とし、また類似性については、 「以上のとおり、債務者商品と債権者商品は、いずれも、青色と白色のツートンカラーの 半透明の外装部材で覆われた全体的に丸みを帯びた一体型のパーソナルコンピュータであ り、曲線を多用したデザイン構成、色彩の選択、素材の選択において共通するのみならず、 細部の形状においても多くの共通点を有することに照らすならば、少なくとも類似の外観 を備えたものと解すべきであって、両者は類似しているというべきである。」としたうえ で、混同のおそれについて、「前記2のとおり、債務者商品の形態が債権者商品の形態と 類似していることに照らせば、需要者が、両者を誤認混同したり、少なくとも債務者商品 を製造販売する債務者が債権者らと何らかの資本関係、提携関係等を有するのではないか と誤認混同するおそれがあると認められる。」とした。  なお、付言して、「一般に、企業が、他人の権利を侵害する可能性のある商品を製造、 販売するに当たっては、自己の行為の正当性について、あらかじめ、法的な観点からの検 討を行い、仮に法的紛争に至ったときには、正当性を示す根拠ないし資料を、速やかに提 示することができるよう準備をすべきであるといえる。しかるに、本件においては、前記 のとおり、審尋期日において、債務者から、そのような事実上および法律上の説明は一切 されなかった。そこで、当裁判所は、迅速な救済を図る民事保全の趣旨に照らして、前記 のような審理をした。」 (裁判長:飯村敏明) (平成12年1月14日和解) ■評釈等 松尾和子・判例評論498号21頁(2000年) 桐原和典・CIPICジャーナル98号24頁(2000年)