・東京地判平成12年3月17日判時1714号128頁、判タ1027号268頁  「タウンページデータベース」事件。  本件は、原告(日本電信電話株式会社)が、自ら作成したデータベース(タウンページ データベース)および職業別電話帳(タウンページ)には、それぞれデータベースの著作 権および編集著作権が認められるところ、被告(株式会社ダイケイ)によるデータベース (業種別データ)の作成および頒布が、原告の右各著作権を侵害するものであると主張し て、被告に対し、業種別データの作成および頒布の差止めおよび廃棄ならびに損害賠償を 求めている事案である。  判決は、原告の「タウンページデータベースの職業分類体系は、検索の利便性の観点か ら、個々の職業を分類し、これらを階層的に積み重ねることによって、全職業を網羅する ように構成されたものであり、原告独自の工夫が施されたものであって、これに類するも のが存するとは認められないから、そのような職業分類体系によって電話番号情報を職業 別に分類したタウンページデータベースは、全体として、体系的な構成によって創作性を 有するデータベースの著作物であるということができる」として、「タウンページデータ ベースは、職業分類体系によって電話番号情報を職業別に分類した点において、データベ ースの著作物と認められるというべきである」と述べたうえで、被告の「業種別データの うち、タウンページデータベースの職業分類及びそこに掲載されている電話番号情報を、 職業分類名も含めてそのまま職業分類及び電話番号情報とする部分並びにタウンページデ ータベースの職業分類及びそこに掲載されている電話番号情報はそのままであるが、職業 分類名の表現のみを変えた部分は、いずれも、タウンページデータベースの創作性を有す る体系的な構成がそのまま再現されているということができる。タウンページデータベー スの複数の職業分類をまとめて一つの職業分類とし、右の複数の職業分類に掲載されてい る電話番号情報を掲載して、複数の職業分類を包摂する職業分類名を付した部分は、タウ ンページデータベースの創作性を有する体系的な構成をもとにしており、複数の職業分類 をまとめた点を除いては、独自に分類したというようなものではないから、この部分につ いても、タウンページデータベースの創作性を有する体系的な構成が再現されているとい うことができる」し、また、「業種別データは、タウンページデータベースに依拠して作 成されたものであると認められる」ので、「業種別データは、タウンページデータベース に依拠して作成されたものであり、その創作性を有する体系的な構成が再現されていると いうことができる」として、「このような業種別データの作成及び頒布は、タウンページ データベースの著作権を侵害するものであるということができる」とした。その結果、原 告の請求を認容して、被告データベースの作成頒布の禁止ならびに廃棄、および、原告は 「業種別データの販売によって、被告が受けた利益の額…の損害を被ったものと推定され る」として、3252万425円の支払いを命じた。  これに対して、紙媒体の職業別電話帳(タウンページ)については、「職業分類体系に よって電話番号情報を職業別に分類した点において、編集著作物として認められる」とし ながらも、「タウンページは、各都道府県ごと又はさらに細分化された特定の地域ごとの 電話番号情報を職業分類別に掲載した電話帳であって、全国版のものは存在しないから、 タウンページの編集著作権は、右地域ごとのタウンページを単位として認められるという ことができる」としたうえで、被告の「業種別データは、全国の電話番号情報を網羅した データベースであり、その職業分類中には地域的特性を考慮した職業分類及び日本全国の 電話番号情報が全て包含されて」おり、「業種別データの氏名等の具体的な表記には、タ ウンページと合致しないものが多数存在するものと認められるから、業種別データが、タ ウンページに依拠して作成されたとは認められない。…したがって、業種別データの作成 及び頒布が、タウンページの編集著作権を侵害しているということはできない」とした。 ■評釈等 泉克幸・『判例著作権法』村林隆一先生古稀(東京布井出版、2001年)339頁 千野直邦・判例評論518号20頁 ■争 点 1(一) タウンページデータベースがデータベースの著作物といえるかどうか (二) 業種別データがタウンページデータベースのデータベースの著作権を侵害している かどうか 2(一) タウンページが編集著作物といえるかどうか (二) 業種別データがタウンページの編集著作権を侵害しているかどうか 3 原告の損害 ■判決文 第三 争点に対する判断 一1 タウンページデータベース及びタウンページの作成について  前記第二(事案の概要)一(前提となる事実)1、証拠(甲三ないし七の各一ないし五、 甲八、九、甲一七の一の一ないし三、甲一九、証人塩谷卓也)及び弁論の全趣旨によると、 以下の事実が認められる。 (一) 日本電信電話公社では、職業別電話帳を発行してきたが、昭和五八年に職業分類を 大幅に見直し、それまでは職業分類の数が約六〇〇であったのを約一八〇〇に増やすとと もに、個々の職業分類についても検討を加えて、新たな職業分類体系を作成した。  右職業分類体系は、それまで日本電信電話公社が発行していた職業別電話帳、各種の情 報誌、日本標準産業分類、外国の職業別電話帳等を参考にして作成されたものである。  右職業分類体系は、昭和五九年四月以降に発行されたタウンページに用いられ、タウン ページデータベースにも用いられている。  右職業分類体系は、各業界の動向、原告において行う調査結果等に基づいて、各職業分 類の社会的認知度、職業分類としての広狭、既存の職業分類との重複等を考慮して、数年 に一度の割合で見直されている。 (二) タウンページデータベース及びタウンページの平成四年時点(タウンページデータ ベースについては平成四年九月版、タウンページについては平成四年三月一日発行分)の 職業分類は、いずれも別紙日本標準産業分類─ダイケイ─NTT業種分類対比表の「NT T業種分類」欄記載のとおりである。 (三) 原告の担当者は、タウンページデータベース及びタウンページの職業分類に個々の 電話番号情報を当てはめるために、掲載者から取扱商品や事業内容についての情報を聴取 するとともに、利用者の検索の利便性の観点から、@事業所等の電話番号情報のうち、利 用者からの問合せや注文に応じる部署以外のものを掲載しないようにする、A正式名称と は別に著名な通称がある場合には通称での掲載も認める、B契約者名ではなく、屋号で掲 載するようにする、C業種を示す冠称名が付されている掲載名(「電気の・・・」、「すしの・・・」 など)、広告的要素の強い掲載名(「安くてうまい・・・」、「早くて安全・・・」など)、五 〇音順の掲載順序を意識した掲載名(「アアア・・・」など)を掲載しないようにする、D 氏名と屋号又は屋号と屋号を併記した掲載名は、併記した名でないと検索できないため、 このような名では掲載しないようにし、氏名と屋号、屋号と屋号を別々に掲載するように する、E同一社名や店名が連続して羅列されることを避けるために、例えば、百貨店であ れば、初めに百貨店名を表示し、その後に売り場ごとにまとめて電話番号を掲載する、F 資格を要する職業については無資格者の掲載を排除するなどの配慮をしている。  しかし、顧客の意向等によって右の取扱いとは異なる掲載がされている場合がある。 (四) タウンページデータベースには、日本全国の電話番号情報が網羅されている。  タウンページは、各都道府県ごと又はさらに細分化された特定の地域ごとの電話番号情 報を職業分類別に掲載した電話帳であって、当該地域内の電話番号情報が収録されており、 地域によって異なる職業分類が採用されている。 2 業種別データの作成等について  前記第二(事案の概要)一(前提となる事実)2、証拠(甲一〇ないし一二、一四、一 五、一八、二一、甲二二の三、六、六三、甲二四ないし二八、乙八、九、証人大久保真二) 及び弁論の全趣旨によると、以下の事実が認められる。 (一) 業種別データは、タウンページデータベースが改訂される度に、被告において、こ れから、職業分類及び電話番号情報を取り込んで作成される。  業種別データの職業分類は、タウンページデータベースの職業分類及びそこに掲載され ている電話番号情報を、職業分類名も含めてそのまま職業分類及び電話番号情報とするも の、タウンページデータベースの職業分類及びそこに掲載されている電話番号情報はその ままであるが、職業分類名の表現のみを変えたもの、タウンページデータベースの複数の 職業分類をまとめて一つの職業分類とし、右の複数の職業分類に掲載されている電話番号 情報を掲載して、複数の職業分類を包摂する職業分類名を付したものの三種類がある。た だし、タウンページデータベースにおいて複数の職業分類に掲載されている電話番号情報 を、業種別データでは一つの職業分類のみに掲載しているものがある。  被告においては、タウンページデータベースから取り込んだ職業分類及び電話番号情報 に、右のような三種類にそれぞれ応じた作業をした上、各職業分類に対して、日本標準産 業分類に準じたコードを設定し、日本標準産業分類に存在しないものについては、被告に おいて新たにコードを設定するという方法で、業種別データを作成している。 (二) 業種別データの職業分類は、別紙日本標準産業分類─ダイケイ─NTT業種分類対 比表の「通番」欄に番号の記載がある行(ただし、16、17、20、183、251、 255、262、326、335、394、397、600、682、688、710、 756、804及び970は除く。これらの番号が記載されている行の「ダイケイ業種分 類」欄の職業分類が、業種別データの職業分類として設定されている証拠は存在しない。) の「ダイケイ業種分類」欄に記載されたとおりである(ただし、「ダイケイ業種分類」欄に 網掛けが施されているものは、証拠上、職業分類が存在するが、その職業分類名が明らか でないものである。)。 (三) 業種別データに収録されている電話番号情報で、タウンページデータベースに収録 されていないものは存在しない。また、右(一)以外に、被告が業種別データの作成に当た って独自に電話番号情報を職業別に分類するということもない。 (四) 業種別データには、日本全国の電話番号情報が網羅されており、都道府県ごとのデ ータは一つのファイルに分類されているが、被告は、業種別データのうち、特定の地域、 業種など、顧客の要望する単位でデータを抽出し、販売している。  なお、被告は、「業種別データは、タウンページを購入し、タウンページから業種名と電 話番号を入力し、ハローページを使用して作成された被告のテレデータから氏名と住所を 取り込み、日本標準産業分類によって職業を分類するという方法で作成している。」と主張 するところ、乙三四には、これに沿う記載があるほか、証人大久保真二は、これに沿う証 言をする。しかし、証拠(甲二二及び二三の各一ないし一四〇、甲二四ないし二六、証人 大久保真二)及び弁論の全趣旨によると、業種別データの氏名等の具体的な表記には、タ ウンページデータベースと合致し、かつ、ハローページと合致しないものが多数存在する ものと認められること、証拠(甲一六、一八、二〇、二一、乙七)によると、行政管理庁 作成に係る平成五年一〇月改訂前の日本標準産業分類の分類項目は別紙日本標準産業分類 ─ダイケイ─NTT業種分類対比表の該当欄(大分類、中分類、小分類及び細分類)記載 のとおりであるところ、業種別データの職業分類は、日本標準産業分類とは大きく異なっ ているものと認められること、その反面、右(一)認定のとおり、タウンページデータベー スの職業分類と近似していること、被告が主張する業種別データの作成方法は、いかにも 迂遠な方法であることからすると、乙三四の右記載及び証人大久保真二の右証言を採用す ることはできず、他に右(一)ないし(四)認定の事実に反する証拠はない。 二 争点1(一)について 1(一) 前記一1(二)で認定した事実、証拠(甲八、九、一四ないし一六、一八、二〇、 二七、二八、乙七、八、証人塩谷卓也)及び弁論の全趣旨によると、タウンページデータ ベースには、約一八〇〇の職業分類が存するところ、このうち、業種別データにおいても 同一の職業範囲を包摂する職業分類として用いられている一〇〇の職業分類(ただし、タ ウンページデータベース上で「装てい」とされている職業分類は、書籍の装丁を行う業種 を意味するものであるが、業種別データにおいては「装蹄業」とした上で、タウンページ データベースと同じ電話番号情報が分類されている。)が設定された理由は、別紙「タウン ページデータベースにおける各職業分類が設けられた理由」記載のとおりであることが認 められる。 (二) 証拠(甲一八、二一、乙七)によると、タウンページデータベースの職業分類は、 日本標準産業分類の分類項目とは大きく異なっており、タウンページデータベースの特定 の職業分類が、日本標準産業分類の分類項目中の一つの細分類と同一の職業範囲を包括す ることはほとんどないものと認められる。また、その他、タウンページデータベースの職 業分類体系と同様の職業分類体系が存するとは認められない。 (三) 前記一1(二)のとおり、タウンページデータベースの職業分類は、右(一)記載の一 〇〇の職業分類を含む職業分類を小分類として、複数の小分類を包摂する中分類、さらに 複数の中分類を包摂する大分類の三層構造となっている(別紙タウンページデータベース 職業分類一覧表参照。)。 (四) 前記一1の事実と右(一)ないし(三)の事実を総合すると、タウンページデータベー スの職業分類体系は、検索の利便性の観点から、個々の職業を分類し、これらを階層的に 積み重ねることによって、全職業を網羅するように構成されたものであり、原告独自の工 夫が施されたものであって、これに類するものが存するとは認められないから、そのよう な職業分類体系によって電話番号情報を職業別に分類したタウンページデータベースは、 全体として、体系的な構成によって創作性を有するデータベースの著作物であるというこ とができる。 2 前記一1(三)のとおり、原告の担当者は、タウンページデータベースの職業分類に個々 の電話番号情報を当てはめるために、掲載者から取扱商品や事業内容についての情報を聴 取していることが認められ、証拠(甲一九、証人塩谷卓也)によると、右聴取には、一定 の技術や経験が必要であると認められるが、右のあてはめの過程は掲載するかどうかを選 択するものではないこと、タウンページデータベースの職業分類は、前記のとおり一八〇 〇にわたって細かく分かれているから、いずれの職業分類に入れるかの選択の幅は小さい ものと考えられ、右の技術や経験も主として個々の掲載者の事業の内容をいかに正確に把 握するかという事実認定に関するものであると考えられることからすると、右のあてはめ の過程に情報の選択又は体系的な構成について創作性が存するとは認められない。  また、前記一1(三)のとおり、原告は、利用者による検索の利便性の観点から、掲載名 等について、前記一1(三)@ないしFのような配慮をしているものと認められるが、これ らのものは、電話番号情報に関する職業別のデータベースとして利用者に提供する以上、 当然にすべき配慮であると考えられるから、特に創作的なものとは認められない。したが って、右のような配慮をもって、情報の選択又は体系的な構成について創作性が存すると は認められない。 3 さらに、原告は、タウンページデータベースについて、随時見直しを行っていること 及びキーワードの設定やデータの表記に関する工夫を、データベースの著作物としての創 作性の根拠として主張するが、随時見直しを行っていることは、具体的な内容にかかわら ずそのことのみでタウンページデータベースが情報の選択又は体系的な構成により創作性 を有するということができないことは明らかであり、また、右のキーワードの設定やデー タの表記に関する工夫については、これを具体的に示す証拠は存在しないから、このよう な工夫によって、タウンページデータベースが情報の選択又は体系的な構成により創作性 を有するとも認められない。 4 以上のとおり、タウンページデータベースは、職業分類体系によって電話番号情報を 職業別に分類した点において、データベースの著作物と認められるというべきである。 三 争点1(二)について 1(一) 前記一2認定のとおり、業種別データは、タウンページデータベースから職業分 類及び電話番号情報を取り込んで作成されたもので、その職業分類は、タウンページデー タベースの職業分類及びそこに掲載されている電話番号情報を、職業分類名も含めてその まま職業分類及び電話番号情報とするもの、タウンページデータベースの職業分類及びそ こに掲載されている電話番号情報はそのままであるが、職業分類名の表現のみを変えたも の、タウンページデータベースの複数の職業分類をまとめて一つの職業分類とし、右の複 数の職業分類に掲載されている電話番号情報を掲載して、複数の職業分類を包摂する職業 分類名を付したものの三種類であって、それ以外に独自の職業分類が用いられているとい うことはない。 (二) 業種別データのうち、タウンページデータベースの職業分類及びそこに掲載されて いる電話番号情報を、職業分類名も含めてそのまま職業分類及び電話番号情報とする部分 並びにタウンページデータベースの職業分類及びそこに掲載されている電話番号情報はそ のままであるが、職業分類名の表現のみを変えた部分は、いずれも、タウンページデータ ベースの創作性を有する体系的な構成がそのまま再現されているということができる。タ ウンページデータベースの複数の職業分類をまとめて一つの職業分類とし、右の複数の職 業分類に掲載されている電話番号情報を掲載して、複数の職業分類を包摂する職業分類名 を付した部分は、タウンページデータベースの創作性を有する体系的な構成をもとにして おり、複数の職業分類をまとめた点を除いては、独自に分類したというようなものではな いから、この部分についても、タウンページデータベースの創作性を有する体系的な構成 が再現されているということができる。 (三) また、右(一)認定の事実からすると、業種別データは、タウンページデータベース に依拠して作成されたものであると認められる。 (四) したがって、業種別データは、タウンページデータベースに依拠して作成されたも のであり、その創作性を有する体系的な構成が再現されているということができる。 2 前記一2(四)のとおり、被告は、業種別データを作成し、その中から特定の地域、業 種など、顧客の要望する単位でデータを抽出して頒布しているのであるから、このような 業種別データの作成及び頒布は、タウンページデータベースの著作権を侵害するものであ るということができる。 四 争点2(一)について 1 証拠(甲八、九、証人塩谷卓也)及び弁論の全趣旨によると、タウンページとタウン ページデータベースの職業分類及び電話番号情報は、改訂時期のずれによるもの以外は、 それぞれ同じ内容であると認められる。 2 右1の事実に前記二で述べたところを総合すると、タウンページの職業分類は、検索 の利便性の観点から、個々の職業を分類し、これらを階層的に積み重ねることによって、 全職業を網羅するように編集されたものであり、原告独自の工夫が施されたものであって、 これに類するものが存するとは認められないから、そのような職業分類体系によって電話 番号情報を職業別に分類したタウンページは、素材の配列によって創作性を有する編集著 作物であるということができる。 3 前記一1(三)のとおり、原告の担当者は、タウンページの職業分類に個々の電話番号 情報を当てはめるために、掲載者から取扱商品や事業内容についての情報を聴取している ことが認められるが、前記二2で述べたのと同様の理由により、右のあてはめの過程に素 材の選択又は配列について創作性が存するとは認められない。  また、前記一1(三)のとおり、原告は、利用者による検索の利便性の観点から、掲載名 等について、前記一1(三)@ないしFのような配慮をしているものと認められるが、これ らのものは、職業別電話帳として利用者に提供する以上、当然にすべき配慮であると考え られるから、特に創作的なものとは認められない。したがって、右のような配慮をもって、 素材の選択又は配列について創作性が存するとは認められない。 4 さらに、原告は、タウンページについて、随時見直しを行っていること、タウンペー ジ中の広告の配列、検索のための符号及び略号の使用並びに検索に適したタウンページの 地域区分の設定について創作性があると主張するが、随時見直しを行っていることは、具 体的な内容にかかわらずそのことのみでタウンページが素材の選択又は配列により創作性 を有するということができないことは明らかであり、また、右の広告の配列、符号及び略 号の使用並びに地域区分の設定については、これらの創作性に関する具体的な主張はない から、これらによって、タウンページが素材の選択又は配列について創作性を有するとも 認められない。 5 以上のとおり、タウンページは、職業分類体系によって電話番号情報を職業別に分類 した点において、編集著作物として認められるというべきである。 6 前記一1(四)のとおり、タウンページは、各都道府県ごと又はさらに細分化された特 定の地域ごとの電話番号情報を職業分類別に掲載した電話帳であって、全国版のものは存 在しないから、タウンページの編集著作権は、右地域ごとのタウンページを単位として認 められるということができる。  そして、前記一1(四)のとおり、タウンページの職業分類は、地域によって異なる。 五 争点2(二)について 1 前記四6のとおり、タウンページの編集著作権は、各地域ごとのタウンページを単位 として認められるものであるところ、前記一2のとおり、業種別データは、全国の電話番 号情報を網羅したデータベースであり、その職業分類中には地域的特性を考慮した職業分 類及び日本全国の電話番号情報が全て包含されている。 2 しかし、前記一2認定のとおり、業種別データは、タウンページデータベースから職業 分類及び電話番号情報を取り込んで作成されたものであって、証拠(甲二二及び二三の各 一ないし一四〇、甲二四ないし二六、証人大久保真二)及び弁論の全趣旨によると、業種 別データの氏名等の具体的な表記には、タウンページと合致しないものが多数存在するも のと認められるから、業種別データが、タウンページに依拠して作成されたとは認められ ない。 (なお、タウンページデータベースが、タウンページの第二次著作物であれば、業種別デ ータが、タウンページデータベースに依拠して作成されたことからタウンページにも依拠 して作成されたという余地があるが、タウンページデータベースが、タウンページの第二 次著作物である旨の主張立証はない。) 3 したがって、業種別データの作成及び頒布が、タウンページの編集著作権を侵害して いるということはできない。 六 争点3について 1 原告は、主位的に、タウンページデータベースの電話番号情報一件についてのライセ ンス料による損害を主張するが、電話番号情報自体に著作物性が認められるものではない から、右のような損害計算方法を採用することはできない。 2 証拠(乙三四)によると、業種別データの平成四年四月から同九年三月までの売上高 は三億二八〇〇万四七二八円であり、被告の業務全体の利益率は九%を下回ることはない と認められる。  前記一2で認定した業種別データの作成及び販売方法を考慮すると、業種別データの利 益率が、被告の業務全体の利益率を下回るとは認められない。 3 したがって、業種別データの販売によって、被告が受けた利益の額は、(三億二八〇〇 万四七二八円×九%=)二九五二万〇四二五円を下回ることはないものと認められ、原告 は、右同額の損害を被ったものと推定される。  原告の損害としての弁護士費用は、三〇〇万円と認めるのが相当である。 4 以上のとおり、原告が被った損害は、右3の合計(二九五二万〇四二五円+三〇〇万 円=)三二五二万〇四二五円であると認められる。 七 以上の次第で、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第四七部 裁判長裁判官 森  義之    裁判官 榎戸 道也    裁判官 杜下 弘記