・東京地判平成12年3月23日判時1717号132頁  「Juventus」事件。  「Juventus」の商標権を有する原告(ナショナル商事株式会社)が、イタリアのプロサ ッカーチーム「JUVENTUS」からの許諾を得て、そのオフィシャルグッズ(被告商品)を輸 入・販売している被告(株式会社日本スポーツビジョン)に対し、本件商標権の侵害を理 由として、差止めおよび損害賠償を請求した事件である。  判決は、「原告は、我が国においてサッカー人気が高まるなか、原告商標が『JUVE NTUS』チームの名称に由来するにもかかわらず、商標権が自己に帰属していることを 奇貨として、その由来元に当たる同チームから適法に許諾を受けて同チームの標章を使用 する者に対し、本件商標権を行使して、その使用を妨げようとしているものであるといる。 原告によるこのような本件商標権の行使は、正義公平の理念に反し、国際的な商標秩序に 反するものといわざるを得ない。したがって、原告の本訴請求は、公正な競業秩序を乱す ものとして、権利の濫用に当たるというべきである」として、原告の請求は権利の濫用に あたるとして棄却した。 ■争 点 (1)被告標章は商標として使用されているか。 (2)権利濫用の抗弁の成否 (3)被告は被告標章を付したソックス及びショーツを輸入・販売しているか。 (4)原告の損害額 ■判決文  3 右に認定したイタリア国内におけるサッカー事情や「JUVENTUS」チームの 著名性、昭和五五年度から「ヨーロッパ・サウスアメリカ・カップ」が「トヨタカップ」 として東京で開催されるようになったこと、原告代表者が昭和五八年一月当時、サッカー 愛好者であるとともに度々イタリアに渡航して同国の事情に精通していたこと等の事実関 係に、原告商標と被告標章の類似性に争いがないことを併せ考えれば、原告商標は「JU VENTUS」チームの名称に由来するものといわざるを得ず、原告はこれを知った上で その商標登録出願をしたものというべきである。そして、原告が「JUVENTUS」チ ームからその名称を使用することについて許諾を得たことをうかがわせる証拠がない一方、 原告は、我が国において「Jリーグ」が創設された平成三年以降、自らの事業内容とは関 連性のない別の指定商品について、原告商標とほぼ同一の外観を有する商標や、上段に欧 文大文字で「JUVENTUS」と横書きされ、下段に片仮名で「ユベントス」と横書き された商標について商標登録出願をしたり、平成六年二月ころ、伊藤忠から同チームのグ ッズを日本で商品化する当たり原告商標の使用許諾を得たい旨の申入れを受けて、同年四 月、伊藤忠に対しその使用許諾をしたこと、現在「JUVENTUS」チームの名称が日 本国内で広く知られていることなどの諸事情に照らせば、原告は、我が国においてサッカ ー人気が高まるなか、原告商標が「JUVENTUS」チームの名称に由来するにもかか わらず、商標権が自己に帰属していることを奇貨として、その由来元に当たる同チームか ら適法に許諾を受けて同チームの標章を使用する者に対し、本件商標権を行使して、その 使用を妨げようとしているものであるといる。原告によるこのような本件商標権の行使は 、正義公平の理念に反し、国際的な商標秩序に反するものといわざるを得ない。したがっ て、原告の本訴請求は、公正な競業秩序を乱すものとして、権利の濫用に当たるというべ きである。 裁判長裁判官 三村 量一    裁判官 長谷川浩二    裁判官 中吉 徹郎