・大阪地判平成12年4月18日  カラオケボックス「ミスターマイクマン」事件:第一審。  本件は、音楽著作権の仲介団体である原告(社団法人日本音楽著作権協会)が、カラオ ケ歌唱室(カラオケボックス)の経営者等である被告(A事件)(家治久一郎、株式会社 キュウザ)、被告(B事件)(株式会社オアシスジャパン)に対し、原告の許諾を得ずに、 原告が著作権を管理する音楽著作物である別添カラオケ楽曲リスト記載の音楽著作物を使 用してカラオケ歌唱室を経営していたことは、原告の著作権を侵害するとして、著作権法 114条2項、民法704条、704条、719条および商法266条ノ3第1項にもと づいて、損害賠償または不当利得の返還を請求した事案である。判決は、使用料相当額の 損害賠償請求を認容した。 (控訴審:大阪高判平成12年12月22日) ■争 点 1 本件各店舗における管理著作物の利用は、原告の著作権を侵害するか。 2 被告家治は、被告キュウザ及び被告オアシスジャパンと共同して本件各店舗を経営し ていた者として、著作権侵害につき共同不法行為責任を負うか。 3 被告家治は、被告キュウザ及び被告オアシスジャパンの取締役として、同被告らの著 作権侵害によって原告に生じた損害について、商法二六六ノ三第一項により、連帯して損 害賠償責任を負うか。 4 被告らの損害賠償責任及び不当利得返還義務の有無及びその額  (一) 被告らの損害賠償責任の有無及び被告らの行為により原告が被った損害額  (二) 被告らの不当利得返還義務の有無並びに被告らの利得及び原告の損失額 5 原告の被告らに対する損害賠償請求権又は不当利得返還請求権について、消滅時効の 成否 ■判決文 第三 当裁判所の判断 一 争点1について   (一) 前記第二の二2(三)記載の各事実によれば、本件各店舗では、客は、指定され た歌唱室内で、経営者が用意した特別のカラオケ装置を使って、同じく経営者が用意した 楽曲ソフトの範囲内で伴奏音楽を再生させるとともに歌唱を行うものであり、しかも右再 生・歌唱は利用料金を支払う範囲で行うことができるにすぎない。したがって、客による 再生・歌唱は、本件各店舗の経営者の管理の下で行われているというべきであり、しかも カラオケ歌唱室としての営業の性質上、店舗経営者はそれによって直接的に営業上の利益 を収めていることは明らかであるから、著作権法の規律の観点からは本件各店舗における 伴奏音楽の再生及び歌唱の主体は、経営者であるというべきである。   (二) 右のとおり、本件各店舗における伴奏音楽の再生及び歌唱の主体は経営者であ ると解すべきところ、経営者にとって、本件各店舗に来店する客が不特定多数であること は明らかであるから、経営者による伴奏音楽の再生及び歌唱は、著作権法二二条の「公衆 に直接見せ又は聞かせることを目的」とするものであるということができる。     被告らの主張は、伴奏音楽の再生及び歌唱の主体が客であることを前提とするも のであり、失当である。   (三) 第二の二(三)記載の各事実からすれば、本件各店舗の事業が、「営利を目的とし て音楽の著作物を使用する事業」に該当することは明らかである。また、第二の二2(三)(3) 記載の事実からすれば、本件各店舗の営業が「客に飲食をさせる営業」であることも認め られる。さらに、客は、本件店舗内において、再生された伴奏音楽を聴き、それに合わせ て歌唱することを楽しむのであって、それは「音楽を鑑賞」することにほかならず、前記 第二の二(三)(1)記載の事実からすれば、本件各店舗においては「客に音楽を鑑賞させるた めの特別の設備を設けている」ものといえる。     したがって、本件各店舗における営業は、著作権法施行令附則三条一号に該当す るから、著作権法附則一四条の適用はない。   (四) 以上によれば、本件各店舗の経営者は、本件各店舗において、カラオケ関連機 器を使って、管理著作物を公に再生及び歌唱することによって、原告の演奏権を侵害した ものと認められる。     また、LDカラオケ装置により、録画した映画の上映とともに歌詞をモニターテ レビに映し伴奏音楽を再生することは、平成九年法律第八六号による改正前の著作権法二 条一項一九号、平成一一年法律第七七号による改正前の著作権法二条一項一八号(現行著 作権法二条一項一七号)にいう「上映」に当たるから、本件各店舗の経営者は、映画の著 作物において複製されている著作物を公に上映したものであり、原告の上映権を侵害する (平成一一年法律第七七号による改正前の著作権法二六条二項。現行著作権法二二条の二 参照)。 二 争点2について    本件全証拠によっても、本件各店舗について、被告家治が被告キュウザあるいは被 告オアシスジャパンと共同して経営を行っていたと認めるに足りる証拠はない。    かえって、証拠(乙2〜13、16、23ないし27(証拠番号に枝番が付されているもの はすべて含む。以下同じ。))によれば、羽倉崎店は、平成二年一月二六日から平成一一年 五月三一日までは被告キュウザが単独で経営主体であったこと、樫井店は、平成元年一一 月一日から平成八年四月三〇日までは被告オアシスジャパンが、平成八年五月一日から平 成一一年五月三一日までは被告キュウザが、それぞれ単独で経営主体であったことが認め られ、これを覆すに足りる証拠はない。    したがって、原告の主張は採用できない。 三 争点3について   1 証拠(甲7ないし27、被告家治本人)によれば、原告は、平成二年四月九日に本 件各店舗においてカラオケボックスとしての営業が行われていることを発見し、平成二年 五月一四日に本件各店舗に電話をして、部屋数、設置されているカラオケ装置の種類、開 店年月日を確認したのを始めとして、A事件の訴訟提起に至るまでに、被告らとの間で、 概要、別紙六交渉経緯記載のとおりの著作物使用許諾契約についての交渉等を行ったこと が認められる。     そして、証拠(甲25、被告家治本人)によれば、被告家治は、遅くとも平成三年 二月一四日の時点においては、管理著作物をカラオケ歌唱室において利用する場合には、 原告の許諾を得なければならないことについては認識していたものと認められる。     そうすると、被告家治は、遅くとも平成三年二月一四日以降は、被告キュウザの 代表取締役として本件各店舗の、また、被告オアシスジャパンの取締役として樫井店の、 カラオケ歌唱室における音楽著作物の使用について、原告から著作権法の趣旨の説明、過 去の著作物使用料相当額の精算処理及び著作物使用許諾契約の締結の催告等を受け、本件 各店舗のカラオケ歌唱室における管理著作物の使用が著作物の無断使用による著作権の侵 害行為に当たること、及び、無断使用期間の使用料相当損害金及び遅延損害金を支払った 上、利用許諾契約を締結しなければならないことを知りながらこれを放置し、右支払及び 契約締結をせずに管理著作物の使用を継続することによって原告の著作権を侵害し、これ により原告に損害を与えたものと認められるから、取締役としての任務の懈怠について、 少なくとも重過失があると認められる。   2 この点、被告家治は、被告家治が被告キュウザ及び被告オアシスジャパンの業務 執行あるいは意思決定として、著作権使用料相当額の金銭の支払義務を履行しなかったと しても、会社が対外的に当然負担する必要のある債務を負担するだけであり、被告キュウ ザ及び被告オアシスジャパンは、特に損害を被るわけではないから、被告家治の会社に対 する任務懈怠行為は存在しないと主張する。しかし、商法二六六条ノ三第一項の規定は、 第三者保護の立場から、取締役が悪意又は重大な過失により会社に対する義務に違反し、 よって第三者に損害を被らせたときは、取締役の任務懈怠の行為と第三者の損害との間に 相当の因果関係がある限り、会社が右任務懈怠の行為によって損害を被った結果、ひいて 第三者に損害を生じさせた場合であると、直接第三者が損害を被った場合であるとを問う ことなく、当該取締役が直接第三者に対し損害賠償の責に任ずることを定めたものである ところ(最高裁昭和四四年一一月二六日大法廷判決・民集二三巻一一号二一五〇頁参照)、 被告家治は、前記のとおり、取締役としての任務を懈怠して、直接に第三者たる原告に損 害を与えたものであって、右著作権侵害行為により被告キュウザ及び被告オアシスジャパ ンが何らの損害を被っていないとしても、当該事実は被告家治の商法二六六条ノ三第一項 に基づく責任に影響を与えるものではなく、被告らの主張は失当といわざるを得ない。     また、被告家治は、被告キュウザ及び被告オアシスジャパンとすれば、当時負担 していた経費以外にさらに著作物使用料を負担するとすれば、会社の経営存続を危うくす る可能性があり、会社の経営判断として、敢えて、原告との使用料契約を締結しなかった という側面もあると主張して、取締役としての任務懈怠についての重過失の存在を否認す る。しかし、被告家治は、原告の許諾を得ずに本件各店舗のカラオケ歌唱室において管理 著作物を使用することにより、日々、被告キュウザ及び被告オアシスジャパンの業務執行 として、原告の著作権を侵害する行為を継続し、これによって原告に損害を与え続けたも のであるから、通常の商取引等に基づく債権について、会社の経営判断として支払を拒絶 する場合と同列に論じることはできない。被告家治の主張は、著作権侵害行為の継続を正 当化する理由とはなり得ないことが明らかであるから、これを採用することはできない。     さらに、被告家治は、会社が既にカラオケ機器のリース代金や有線カラオケの料 金などを負担していたことから、その中に当然原告への使用料も含まれているものと解釈 し、それ以上に原告に対しても著作物の使用料を支払うことの正当性に強く疑問を抱いて いた、あるいは、カラオケ歌唱室における著作物の利用について,原告に使用料を支払う 義務があるか否かは一義的に明確ではなく,最終判断を裁判所に委ねることも会社経営上 の判断としては認められるべきであるなどとも主張する。しかし、前記のとおり、被告家 治は、遅くとも平成三年二月一四日の時点においては、管理著作物をカラオケ歌唱室にお いて利用する場合には、原告の許諾を得なければならないことについては十分に認識して おり、証拠(甲25)によれば、被告家治が問題としていたのは、もっぱらその使用料の算 定方法、額、あるいは他のカラオケ歌唱室営業者の原告との契約率などであると認められ るから、被告家治の主張を採用することはできない。   3 したがって、被告家治は、平成三年二月一四日以降に被告キュウザ及び被告オア シスジャパンが本件各店舗において別添カラオケ楽曲リスト記載の管理著作物を使用した ことにより、原告に与えた損害について、被告キュウザ及び被告オアシスジャパンと連帯 して、損害を賠償する責任がある。 四 争点4(一)について   1 前記一ないし三において認定判断したところによれば、原告は、被告キュウザが 羽倉崎店を経営した平成二年一月二六日から平成一一年五月三一日まで、並びに、被告オ アシスジャパンが樫井店を経営した平成元年一一月一日から平成八年四月三〇日まで及び 被告キュウザが樫井店を経営した平成八年五月一日から一一年五月三一日までの、本件各 店舗における管理著作物の無断使用により、使用料相当額の損害を被ったものと認められ る。   2 ところで、証拠(甲3ないし5、7)及び弁論の全趣旨によれば、平成九年八月 一一日に一部変更が認可される前の著作物使用料規程(昭和五九年六月一日一部変更認可 以降のもの)においては、カラオケ歌唱室における著作物の使用料率を直接定めた規定は 存在せず、原告は、カラオケ歌唱室における音楽著作物の使用料徴収について、「カラオケ 歌唱室の使用料率表(年間の包括的利用許諾契約を結ぶ場合)」と題する使用料率表を策定 し、これに基づいて徴収を行っていたことが認められる。右使用料率表(甲4)には、「著 作物使用料規程第2章第2節演奏等の3『演奏会以外の催物における演奏』の(7)『その他 の演奏』の規定」に基づいて定めたものである旨記載されているが、その点はひとまずお くとしても、前記著作物使用料規程の全体の趣旨に照らし、右使用料率表は、なお、著作 物使用料規程に依るものということができるから、これを平成九年八月一一日一部変更認 可にかかる著作物使用料規程(即日施行)が施行される前の原告の使用料相当損害額の算 定の基礎となし得るものと解するのが相当である。     また、証拠(甲5)によれば、平成九年八月一一日変更認可にかかる著作物使用 料規程には、その第二章第二節演奏等4「カラオケ施設における演奏等(1)」において、カ ラオケ歌唱室における著作物使用料が定められており、右規程は同日施行されたことが認 められるから、同日以降は、右規程が原告の使用料相当損害額の算定の基礎となるものと いうことができる。     そこで、これらに基づいて、原告が通常徴収するカラオケ使用によるカラオケ歌 唱室における著作物の使用料についてみると、前掲各証拠によれば、平成九年八月一〇日 までは、別紙二記載1のとおりであったこと、平成九年八月一一日以降は、同別紙記載2 のとおりであることがそれぞれ認められる。   3(一) 本件各店舗におけるカラオケ歌唱室の数、広さ、設置されていたカラオケ装 置の種類は、別紙一記載のとおりであるところ、弁論の全趣旨によれば、本件各店舗の基 準単位料金は、一時間当たり五〇〇円までの範囲であると認められる。      したがって、これらに基づいて、本件各店舗におけるカラオケ歌唱室における 管理著作物の使用料相当額を算定すると、被告キュウザが羽倉崎店を経営していた期間に ついては別紙三記載2のとおり合計金一三七二万一四四〇円であり、また、被告オアシス ジャパンが樫井店を経営していた期間(平成元年一一月一日から平成八年四月三〇日まで) については別紙四記載2のとおり合計六三五万〇八四〇円、被告キュウザが樫井店を経営 していた期間(平成八年五月一日から平成一一年五月三一日まで)は同別紙記載3のとお り合計六四三万九八三〇円となる。    (二) また、被告家治は、先に認定判断したとおり、少なくとも平成三年二月一四 日以降に、被告キュウザ及び被告オアシスジャパンが原告の許諾を得ずに本件各店舗にお いて別添カラオケ楽曲リスト記載の管理著作物を利用したことにより原告に与えた損害に ついて、被告キュウザ及び被告オアシスジャパンと連帯して賠償する必要があるところ、 右期間における原告の損害を算定すると、被告キュウザの経営にかかる期間については、 別紙五記載1のとおり、金一九〇四万〇〇四〇円であり、被告オアシスジャパンの経営に かかる期間については同別紙記載2のとおり、金五一〇万八四三〇円となる。   4 本件各店舗における管理著作物の演奏・歌唱・上映による原告の損害は、本来、 本件各店舗における個々の右各行為により生じているものということができるが、右のよ うに月額使用料相当額を損害金として算定する場合においても、これらの損害は遅くとも 当月末日の経過により発生しているものと解されるから、前記3(一)に対する遅延損害金 は、少なくとも、それぞれ別紙七遅延損害金目録1及び別紙八遅延損害金目録2記載のと おり発生するものと認められる。     また、商法二六六条ノ三第一項の定める損害賠償責任は、法が取締役の責任を加 重するために特に認めたものであって、不法行為に基づく損害賠償責任の性質を有するも のではないから(前掲最高裁大法廷判決、昭和四九年一二月一七日第三小法廷判決・民集 二八巻一〇号二〇五九頁参照)、履行の請求を受けたときに遅滞に陥るものと解するのが相 当である(最高裁平成元年九月二一日第一小法廷判決・判例時報一三三四号二二三頁参照)。 しかるところ、本訴において、原告が、被告家治に対し、前記三で述べた取締役としての 損害賠償義務の履行請求をしたのは、本訴における原告の平成一一年一一月五日付準備書 面においてであって、それ以前に履行の請求をしたことの主張・立証はないから、被告家 治の取締役としての前記3(二)の損害賠償債務は、右準備書面が被告家治に送付された日 の翌日である平成一一年一一月六日に遅滞に陥るものと解するのが相当である。   5 本件訴訟の提起、追行のために原告は弁護士に依頼したところ、本件に現れた一 切の事情を考慮するならば、弁護士費用相当額としては、被告キュウザが本件各店舗を経 営した期間にかかる損害賠償請求部分につき二〇〇万円(被告家治は内金一九〇万円につ き連帯負担)、被告オアシスジャパンが樫井店を経営した期間にかかる部分につき六五万円 (被告家治は内金五〇万円につき連帯負担)がそれぞれ相当である。 五 争点5(消滅時効)について    前記四で認定判断したとおり、原告は、被告キュウザ及び被告オアシスジャパンが 本件各店舗において管理著作物を原告の許諾を受けることなく演奏・歌唱・上映したこと により、著作物使用料相当額の損害を被ったものと認められるが、これらの請求権は不法 行為に基づく損害賠償請求権であるから、民法七二四条により、被害者等が損害及び加害 者を知った時から三年の経過によって時効により消滅することになる。    そこで、原告が本件各店舗における管理著作物の使用により被った損害について、 損害及び加害者を知った時期について検討すると、前記のとおり、原告は、平成二年四月 九日に本件各店舗において管理著作物が使用されていることを知ったものであるが、証拠 (甲7、25、26)によれば、原告は、本件各店舗を発見した当初の段階から平成八年ころ までは、交渉を行っていた被告家治の事務所の郵便受けの表示には「阪和住宅梶v、「潟L ュウザ」あるいは「潟Iアシス」と記載されていたことは確認していたものの、被告家治 の説明から、本件各店舗の経営者は被告家治個人であると認識していたこと、その後、平 成八年七月一七日に、樫井店に設置されている電話の電話加入権の名義を調査し、同店舗 の電話加入権は被告キュウザ名義であることを知るに至ったこと、また、同年八月二八日 に羽倉崎店に設置されている電話の電話加入権が泉不動産株式会社名義であることを知り、 同年九月に、羽倉崎店の所在地を本店所在地として「泉不動産株式会社」及び「イズミ不 動産株式会社」との名称の会社の登記簿謄本を請求したところ、該当法人が存在しない旨 の回答を得たこと、同年一〇月に、被告家治の自宅の不動産登記簿謄本を入手したところ、 泉不動産株式会社及び阪和住宅株式会社の本店所在地が判明したため、それぞれ所在地に 出向いたものの、営業活動を行っている形跡は見られなかったこと、原告は、同年一一月 に本件各店舗における管理著作物の使用禁止を求める仮処分申立てをしたが、その相手方 を被告家治、被告キュウザ及び株式会社ムツミ住宅としたこと、本件記録によれば、原告 は平成一一年五月一二日に、被告家治及び被告キュウザを被告としてA事件訴訟を提起し たところ、平成一一年六月一〇日付の被告家治及び被告キュウザの答弁書において、平成 元年一一月から平成七年一二月まで(後に「平成八年六月まで」と訂正。なお、B事件の 答弁書で被告オアシスジャパンは、これを更に「平成八年四月まで」と訂正した。)の樫井 店の経営主体は被告オアシスジャパンであるとの主張が出され、原告は、右主張に沿って 被告キュウザに対する訴えを一部取り下げるとともにB事件訴訟を提起したことがそれぞ れ認められる。    これらの事実を総合すれば、原告が本件各店舗について、被告キュウザがその経営 主体であったと知ったのは平成八年七月一七日以降であり、かつての樫井店の経営主体が 被告オアシスジャパンであったと知ったのはA事件訴訟提起後である平成一一年六月一〇 日以降であると認められるから、いずれもA事件訴訟提起から遡ること三年以内の時点で 初めて加害者を知ったものということができ、消滅時効は成立しない。    したがって、被告らの主張を採用することはできない。 六 よって、原告の請求は、主文記載の限度で理由がある。 大阪地方裁判所第二一民事部 裁判長裁判官 小松 一雄    裁判官 水上  周