・東京地判平成12年10月17日  「こんにちは『キャンディ・キャンディ』いがらしゆみこ展」事件。  被告(静アート株式会社)は、原告(名木田恵子)がストーリー原稿を作成した漫画 「キャンディ・キャンディ」の展示・販売会を開催した。すなわち被告は、平成一二年一 月一四日から同月一七日、アクトシティ浜松において、「こんにちは『キャンディ・キャ ンディ』いがらしゆみこ展」を開催し、また、同年二月には、広島県立広島産業会館にお いて、「こんにちは『キャンディ・キャンディ』いがらしゆみこ展」を開催し、各展示・ 販売会において、本件絵画を展示・販売した。これに対して、原告は、被告に対し、本件 漫画作品について、これを二次的著作物としその原作を原著作物とする原著作者としての 著作権(複製権または翻案権)にもとづき、本件絵画を販売することの禁止を求めた事案 である。  判決は、「本件漫画作品は、原告の創作に係る原作原稿という著作物を翻案することに よって創作された二次的著作物に当たるというべきである」としたうえで、「本件絵画は、 本件漫画作品における主人公キャンディを初めとする登場人物の絵を複製又は翻案したも のというべきである」とし、「被告が本件絵画を販売することは、原告が本件漫画作品に ついて原著作者として有する複製権又は翻案権を侵害することになる」と述べて、原告に よる差止請求を認容した。 ■判決文 第三 当裁判所の判断 一 請求原因1(一)、(二)及び4は、当事者間に争いがない(ただし、請求原因4のうち、 被告が、平成一二年二月に、広島県立広島産業会館において、「こんにちは『キャンディ ・キャンディ』いがらしゆみこ展」を開催し、同展示・販売会において、本件絵画を展示 ・販売したとの点は、被告において争うことを明らかにしないから、自白したものとみな す。)。 二 請求原因2について  請求原因1(一)(原告が、株式会社講談社発行の月刊少女漫画雑誌「なかよし」の昭和 五〇年四月号から同五四年三月号までに連載された本件漫画作品のストーリー原稿を作成 した者である事実)は当事者間に争いがないところ、証拠(甲第一号証、第二号証)及び 弁論の全趣旨によれば、本件漫画作品は、当初から、原告が作成した原作原稿を五十嵐が 漫画化するものとして株式会社講談社発行の月刊少女漫画雑誌「なかよし」編集部によっ て企画され、実際にも連載の各回ごとに原告が小説の形式で原作原稿を作成し、これに基 づいて五十嵐がコマ割り、作画等の作業を行うという手順で制作が行われたものであるこ とが認められる。右事実によれば、本件漫画作品は、原告の創作に係る原作原稿という著 作物を翻案することによって創作された二次的著作物に当たるというべきである。 三 請求原因3について  証拠(甲第五ないし第九号証)及び弁論の全趣旨によれば、キャンディを初めとする別 紙登場人物目録記載の各人物は、いずれも本件漫画作品において描かれている登場人物で あって、本件絵画はこれらの登場人物を描いた絵画であることが認められる。これによれ ば、本件絵画は、本件漫画作品における主人公キャンディを初めとする登場人物の絵を複 製又は翻案したものというべきである。 四 請求原因5について  前記二及び三に認定したところによれば、被告が本件絵画を販売することは、原告が本 件漫画作品について原著作者として有する複製権又は翻案権を侵害することになるという べきところ、証拠(甲第三号証)及び弁論の全趣旨に、請求原因4(被告が、本件絵画を 展示・販売した事実)を併せ考慮すると、被告が今後も本件絵画を販売するおそれがある と認められる。 五 以上によれば、請求原因1ないし5がいずれも認められるから、本件漫画作品につい て、これを二次的著作物としその原作を原著作物とする原著作者として原告の有する著作 権(複製権又は翻案権)に基づき、本件絵画を販売することの禁止を求める原告の請求は、 理由がある。 六 よって、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第四六部 裁判長裁判官 三村量一    裁判官 和久田道雄    裁判官 田中孝一