・名古屋地判平成12年12月20日  エステ営業秘密事件。  本件は、広告代理業を営む原告(株式会社日本アドシステム)がその従業員であった被 告に対し、所有権に基づき原告在職中に持ち出した書類の返還を求めるとともに、右書面 に含まれる原告及び原告の顧客である訴外マックスファーム有限会社(エステサロンの経 営及び美容健康機器(痩身器具、レーザー脱毛器具)の卸販売等を業としている)の営業 秘密を、右顧客の競業会社有限会社レイナコーポレーション(原告の取引先であり、被告 が原告退職後に就職した会社)のために使用し、同社に開示したことが不正競争防止法2 条1項4号に該当するとして同法四条本文に基づき、さらに、右事実及び原告在職中に原 告に損害を与える目的で原告と前記競業会社との取引量を意図的に減らしたことが雇用契 約上の忠実義務に違反するとして、民法四一五条に基づき、金一○○○万円の損害及び原 告が退職した日の翌日から支払済みまでの民法所定の年五分の割合による遅延損害金の賠 償を求めた事案である。  判決は、「被告が本件各書類を原告に無断で不正に持ち出し、かつ現在占有していると は認められないから、本件各書類に原告若しくはマックスファームの営業秘密が含まれて いるかについて判断するまでもなく、本件各書類の所有権に基づく返還請求は認められず、 原告在職中における本件各書類の不正使用又は開示目的の不正取得による雇用契約違反を 理由とする損害賠償請求(民法四一五条)及び不正取得した本件各書類の使用あるいは開 示(不正競争防止法二条一項四号)を理由とする損害賠償請求(同法四条本文)はいずれ も理由がない」、また「被告が原告在職中に原告に損害を与える目的で原告とレイナとの 取引を減少させたものとは認められないので、被告の背任行為による雇用契約上の忠実義 務違反に基づく損害賠償請求は理由がない」として原告の請求を棄却した。 ■争 点 1 被告が、原告在職中から退職時までに本件各書類を原告から持ち出し、現在これを占 有しているか。 2 仮に、1において被告が本件各書類を持ち出したと認められる場合、本件各書類は、 不正競争防止法二条一項四号、四項の「営業秘密」に当たるか。 3 被告が原告在職中に原告との雇用契約上の義務に違反する背任行為を行ったと認めら れるか。 4 原告の損害の有無及び損害額