・大阪地判平成12年12月21日判タ1063号248頁  フレッドペリー商標並行輸入事件:第一審  乙事件は、本件商標フレッドペリーの商標権者である被告会社(ヒットユニオン株式 会社)が、原告(株式会社スリーエム)に対し、原告による原告標章の付された中華人 民共和国製ポロシャツ(品番M1200及びM3000)の輸入、販売が本件商標権を 侵害するとして、その差止め、損害賠償及び謝罪広告の掲載等を求め、甲事件は、原告 が、被告ら(ヒットユニオン株式会社・株式会社繊研新聞社)に対し、被告らが業界紙 上で行った上記ポロシャツが偽造品である旨の広告が不法行為に当たるとして、損害賠 償及び謝罪広告の掲載を求めた事案である。  判決は、「形式的には商標権侵害を構成するように見えても、登録商標が有する出所 表示機能・品質保証機能を何ら害さない場合には、商標権権侵害としての実質的違法性 を欠くというべきである」としたうえで、原告の請求を棄却した。 (控訴審:大阪高判平成14年3月29日、上告審:最判平成15年5月27日) ■判決文 4 本件商品の輸入、販売は、本件商標権を侵害するか。 (一)商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有し (商標法二五条本文)、指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標 の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標 若しくはこれに類似する商標の使用を禁止することができる(商標法三七条一号)。  したがって、商標権者以外の第三者が、商標権者の許諾を得ることなく、指定商品若 しくは指定役務について登録商標若しくはこれに類似する商標を使用することは、商標 権侵害を構成するのが原則である。  しかしながら、商標法が、商標権者に、右専用権及び禁止権を付与しているのは、そ れによって、出所を表示する商標を保護し、商標権者が、当該商標の使用を通じて形成 するであろう自己の業務に対する信用の維持を図ることができるようにするためである。 そして、そのような商標の出所表示機能が保護されることにより、同一の商標が付され た商品等は同一の出所であるという商標に対する需要者の期待が保護され、さらには、 商標使用者が商標の使用を通じて自己の業務に対する信用を形成・維持する反面として、 同一の商標が付された商品等における品質は一定であるという商標に対する需要者の期 待が保護されることになる(商標法一条参照)。すなわち、商標法は、このような商標 の出所表示機能及び品質保証機能を保護するために、右専用権及び禁止権を商標権者に 付与しているのである。  そうすると、形式的には商標権侵害を構成するように見えても、登録商標が有する出 所表示機能・品質保証機能を何ら害さない場合には、商標権権侵害としての実質的違法 性を欠くというべきである。しかるところ、商標権者の許諾を得ることなく、登録商標 と同一の商標を付した商品が外国から輸入され、日本国内で販売等の商標使用行為が行 われた場合に、いわゆる真正商品の並行輸入として、商標権侵害としての実質的違法性 を欠くといえるためには、〔1〕輸入商品に付された商標が表示する出所と、商標権者 の使用する商標が表示する出所が、実質的に同一であり、〔2〕輸入商品に付されてい る商標が、右出所表示主体との関係で適法に付されたものであって、〔3〕輸入に係る 商品の品質が、商標権者が商標を使用することによって形成している商品の品質に対す る信用を損なわないことが必要であると解するのが相当である。