・大阪地判平成12年12月26日  「マイコンテストボックス」プログラム事件。  原告(有限会社大和電機製作所)はIC(集積回路)を測定・検査する機械の製作、A 右機械を動かすソフトウエアの開発等をおこなう会社で、被告は、昭和55年の原告設立 当初から、原告従業員として勤務していたコンピュータ技術者であるが、平成7年2月2 0日付けで原告を退社した。原告は、昭和55年から、三菱電機株式会社の依頼により、 三菱電機製のICの性能を測定、検査するためのソフトウエアを組み込んだハードウエア 「マイコンテストボックス」を作成して同社に納入し、その調整をしていた。他方、被告 は、平成7年2月以降、三菱電機にマイコンテストボックスを納入しており、平成10年 9月ころ、2個のICの性能を同時に測定する、被告プログラムを作成し、被告プログラ ムを搭載したマイコンテストボックスを三菱電機に納品した。そこで、原告は、被告が本 件プログラムを不正取得し、改変を加えて三菱電機に納入することにより、原告の著作権 (複製権、翻案権)を侵害したとして、被告に対し、損害賠償を求めた。  判決は、「本件プログラムは、プログラム中の命令の組み合わせ、モジュールの選択、 通信方式、解決手段の選択等に創作性が認められる著作物であるということができる」、 「三菱電機は、原告に対し、本件プログラムを乗せたマイコンテストボックスの製作を依 頼し、原告が独自に制作したソフトウエアを乗せたハードウエアの買主若しくはプログラ ムの発注者にすぎないものと推認され、本件プログラムは、当時、原告の従業員であった 被告が、原告の発意に基づき、原告の職務として作成したものと認められる。そして、上 記(一)のとおり、本件プログラムについては、原告と三菱電機の間において、著作権の帰 属に関する協議が存在したことを認めるに足りる証拠はないから、本件プログラムの著作 権は、被告の使用者である原告に原始的に帰属するというべきである(著作権法15条2 項)」としたうえで、「被告プログラム(1)〜(4)は、原告プログラム(1)〜(4)に2個のI Cを同時に測定できるように、ハードウエアをつなぐ部分に改変を加えたものであり、原 告プログラム(1)〜(4)と同一の範囲にあるプログラムとはいえないが、IC測定の順序、 処理内容は同一であり、原告プログラム(1)〜(4)の中の命令文と同一又は微細な変更を加 えた命令文が多用されているものであるから、ソフトウエアとして、原告プログラム(1)〜 (4)と全く異なった程度には改変がなされていないものである。したがって、被告プログラ ム(1)〜(4)は、原告プログラムの一部を複製した上、全体としてこれを翻案したものに当 たるというべきであり、……以上によれば、被告は、原告プログラム(1)〜(4)、すなわち 本件プログラム(4)、(6)及び(7)を翻案したものと認められる」として損害賠償請求を認 容した。被告側の47条の2第1項にもとづく抗弁については、「著作権法47条の2第 1項は、プログラムの複製物の所有者にある程度の自由を与えないとコンピュータが作動 しなくなるおそれがあることから、自らプログラムを使用するに必要と認められる限度で の複製や翻案を認めたものであって、同項にいう『自ら当該著作物を電子計算機において 利用するために必要な限度』とは、バックアップ用複製、コンピュータを利用する過程に おいて必然的に生ずる複製、記憶媒体の変換のための複製、自己の使用目的に合わせるた めの複製等に限られており、当該プログラムを素材として利用して、別個のプログラムを 作成することまでは含まれないものと解される」として退けた。 ■争 点 (一) 本件プログラムは著作物か。 (二) 原告は、本件プログラムの著作者といえるか。 (三) 被告プログラムは、本件プログラムを複製又は翻案したものか。 (四) 三菱電機は、本件プログラムについて、複製権又は翻案権を有するか。  被告は、三菱電機の上記複製権、翻案権に基づいて、被告プログラムを作成したか。 (五) 損害額