・大阪地判平成13年2月15日  加熱蒸散装置事件。  原告(アース製薬株式会社)の特許権にもとづく被告(大日本除蟲菊株式会社)に対す る差止等請求について、本件特許は進歩性が欠如するという無効理由があることが明らか であるから、本件における本件特許権の行使は権利の濫用に当たるとして、原告の請求を 棄却した。 ■判決文  特許の無効審決が確定する以前であっても、特許権侵害訴訟を審理する裁判所は、特許 に無効理由が存在することが明らかであるか否かについて判断することができると解すべ きであり、審理の結果、当該特許に無効理由が存在することが明らかであるときは、その 特許権に基づく差止め、損害賠償等の請求は、特段の事情がない限り、権利の濫用に当た り許されないと解するのが相当である(最高裁判所第三小法廷平成12年4月11日判決 ・民集54巻4号1368頁参照)。 《中 略》  以上によれば、本件発明は、乙21記載の発明、上記周知の技術事項、技術常識及び自 明の事項から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規 定により特許を受けることができないものであって、同法123条1項2号の無効理由が あることが明らかである。  したがって、本件特許には無効理由があることが明白であり、無効審判請求がなされた 場合には無効審決の確定により本件特許が無効とされることが確実に予見されるものとい うべきであるところ、本件特許について訂正請求がなされている等の特段の事情も認めら れないから、本件における原告による本件特許権に基づく請求は、権利の濫用として許さ れないものというべきである。