・東京地判平成13年2月26日  「柏皮膚科・内科」事件。  原告は、原告の診療所の名称「柏皮膚科」が周知な営業表示であり、被告の診療所の名 称「柏東口皮膚科・内科」が原告の診療所の名称と類似し、そのため混同が生じている旨 主張して、被告に対し、不正競争防止法に基づき、診療所の名称の変更および損害賠償を 求めた事案である。判決は、「『柏』という表記部分には、格別の識別力がない」とした うえで、「原告表示と被告表示は、全体として、外観、称呼、観念のいずれにおいても類 似しないというべきである」として請求を棄却した。 ■判決文  ……このように、柏駅周辺に「柏」という表記を含む名称の診療所が多数存在している 状況もあわせて考慮すれば、特段の事情のない限り、「柏」という表記部分には、格別の 識別力がないと解すべきである。また、「皮膚科」や「内科」という表記部分は、診療科 目を示すものであると一般に理解されることが明らかであり、右各部分にも、格別の識別 力はないと解すべきである。 (2) そこで、原告表示と被告表示とを対比する。@原告表示及び被告表示の両者とも、 地名と診療科目のみの組み合わせからなり、格別に識別力のある表示部分はないので、対 比に当たっては、表示全体を一体のものとして較べるのが相当であること、A両者の共通 する表示部分である「柏」「皮膚科」は、いずれも、需要者の注意を惹く部分とはいえな いこと、B被告表示は「東口」「・」及び「内科」が付加されている点において相違する ことを考慮すると、原告表示と被告表示は、全体として、外観、称呼、観念のいずれにお いても類似しないというべきである。