・東京地判平成13年5月30日  カラオケ「シルク」事件。  本件は、音楽著作物の著作権の管理を行う原告が、被告らは、その経営する社交飲食店 において、原告に無断で原告の管理する音楽著作物をカラオケ装置を操作して再生し、ま た、再生された伴奏音楽に合わせて歌唱することにより原告の演奏権を侵害したとして、 著作権法112条1項に基づく音楽著作物の使用の差止め、同条2項に基づくカラオケ関 連機器の撤去及び著作権侵害に基づく使用料相当損害金の支払を求めた事案である。  判決は、音楽著作物の使用の差止め、カラオケ関連機器の撤去、および損害賠償の各請 求を認容した。 ■判決文 《中 略》 2 争点(2)(演奏権の侵害の有無)について  前掲各証拠によれば、本件各店舗では、従業員らが、本件各店舗内に設置されたカラオ ケ装置を操作し、管理著作物である伴奏音楽を再生して演奏していること、顧客の歌唱の 曲目の選曲は、本件各店舗に設置されたカラオケの曲目リストの範囲でされており、顧客 には曲目リストが渡され、店舗の側で歌唱を勧めていること、本件各店舗に来店する顧客 は不特定多数の者であることが認められる。また、顧客は被告Yの管理の下で歌唱し、被 告Yは顧客に歌唱させることによって営業上の利益を得ていたことに照らすならば、本件 各店舗における管理著作物の演奏の主体は、被告Yであると解すべきである。  以上認定したところによれば、被告Yは、本件各店舗において、原告の許諾を得ること なく、カラオケ装置を使って、管理著作物である伴奏音楽を公に再生し、また、再生され た伴奏音楽に合わせて管理著作物を顧客に公に歌唱させたのであるから、管理著作物の演 奏権を侵害したものといえる。 《中 略》 4 結語 (1) 前記1(1)で認定したとおり、被告Yが、仮処分の執行を受けた後も、原告の許諾を 得ることなく、新たなカラオケ機器を使用した事実を考慮すると、被告Yは、本件各店舗 において、今後もカラオケ装置を用いて管理著作物の無断使用を続けるおそれがあるとい うべきである。したがって、被告Yに対し、著作権法112条1項に基づき、本件各店舗 におけるカラオケ装置を用いての管理著作物の使用の差止めを求める原告の請求は理由が ある。 (2) 店舗シルクに設置された別紙物件目録記載のカラオケ関連機器は、被告Yの著作権 侵害行為に供せられたものであるから、著作権法112条2項に基づき、被告Yに対し、 その撤去を求める原告の請求は理由がある。 (3) 前記3で認定したところによれば、音楽著作物の無許諾使用を理由に、被告Yに対 し、別紙2記載のとおり損害金合計522万8100円の支払を求める原告の請求は理由 がある。 (4) 店舗45について、被告Zがその経営者であることを理由に、同店舗におけるカラ オケ関連機器の使用差止め及び使用料相当損害金の支払を求める原告の請求はいずれも理 由がない。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 飯村 敏明    裁判官 谷有 恒    裁判官 佐野 信