・京都地判平成13年5月31日  高校総体ホームページ事件  本件は、京都市で開催された平成9年度全国高校総合体育大会(以下「高校総体」と いう)のインターネットホームページを制作した原告(株式会社ヴイテック)が、当該 ホームページ等をCD−ROM化した被告(株式会社情報工房)に対し、著作権侵害・ 著作者人格権侵害を理由に、著作権法112条に基づき、当該CD−ROMの複製・頒 布の停止、保有するCD−ROMの廃棄を求め、また、民法709条、710条、著作 権法114条に基づき、損害賠償として3520万円及びこれに対する訴状送達の日の 翌日である平成10年12月25日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延 損害金の支払を求め、さらに、著作権法115条に基づき、名誉回復措置として、上記 損害賠償と共に謝罪広告を求める事案である。  判決は、一部について著作物性を認めたものの、「マップナビゲーションシステムを 除き、本件ホームページをCD−ROMに複製し、複製したCD−ROMは京都市が著 作権を有することの合意があったものといえる。したがって、マップナビゲーションシ ステム以外の複製及び改変行為(サンプル的な一部複製行為)は、原告の包括的な許諾 に基づく行為といえるし、少なくとも、イベント検索システムの創作性の程度に照らせ ば、その改変に違法性はないというべきである」としたうえで、マップナビゲーション システムを複製、改変したことについては、「被告がこれを使用して本件CD−ROM を制作することは原告の許諾するところであると考えたとしても過失があるということ はできない」として、原告の請求を棄却した。 ■争 点 (1) 本件CD−ROMの画像等の著作物性 (2) (1)が肯定された場合の著作者 (3) 本件マップナビゲーションシステムの複製行為の有無 (4) 著作物の改変行為等の有無 (5) 著作権の譲渡ないし利用許諾の有無 (6) 被告の故意・過失の有無 (7) 被告に賠償責任が認められた場合、原告に賠償すべき損害額 ■判決文 第4 争点に対する判断  1 争点(1)(本件CD−ROMの画像等の著作物性)について  (1) 本件画面、本件画像等について  本件画面は、画像、文字情報、動画(Java Script対応版トップページ)などが組み合 わされて表現されたものであり、制作者の思想が創作的に表現されている知的・文化的 精神活動の所産と評価することができるから、著作物性を肯定することができる。被告 は、上記表現は誰でも考え得る程度のものであって、創意工夫がない旨を主張するが、 著作権法にいう創作的な表現とは、他に類例がない程度の独創性をいうものではなく、 著作者の個性が何らかの形で表現されていれば足りると解されるところ、少なくとも、 具体的な表現形式として誰がしても本件画面のような配置になるものではないから、著 作者の個性が表現されているといえる。  本件画像等のうち別紙コンテンツ集2の2頁ないし13頁、15頁、19頁、21頁、 43頁、46ないし52頁、55頁の画像は、イラストや、それらの組み合わせであり、 創作性を認めることができる。また、同コンテンツ集17頁及び18頁の画像は本件マ ップナビゲーションシステムの画面のサンプル的な意味を有するものであるが、実質的 には本件画面の縮小版的な意味を有するもので、創作性を認めることが可能である。  他方、別紙コンテンツ集2の24頁については、本件画面中、本件マップナビゲーシ ョンシステムにおいて表示される画面(別紙コンテンツ集1の28頁ないし30頁参照) の下端部に表示される競技会場、競技内容を示す図表の一部であって、独立の思想を表 現する著作物とは認め難い。また、多少図案化(立体的表現)されてはいるが、基本的 には文字の組み合わせである別紙コンテンツ集2の14頁、16頁、19、20頁、2 2、23頁、34、35頁、41、42頁(文字情報は順に「Virtual Inter-High」、 「Inter-High Memory」、「DI(であい) Station DigitalInter-High」、「WANTED」、 「募集中」、「WARNING」、「Internet Map Information System」、「Internet Map I nformation System」、「Yell Mail」、「W」)、簡単な色ないし模様の長方形上に文 字情報が表記されている別紙コンテンツ集2の25頁、30頁、37頁、44頁(文字 情報は順に「Vtech」「全域図」「全域図」「市長賞」)、文字情報を表記したクリック ボタンである同コンテンツ集の26ないし28頁、31ないし33頁、36頁、38頁、 45頁(文字情報は順に「イベントカレンダー」「伝統的建造物保存地区」「Help!!」 「クイズ」「紅葉情報」「さくら情報」「トップページに戻る」「全域図に戻る」「地 図を見る」)については、文字情報と独立した意義を認め難く、かつ、文字情報も単な る事実の伝達の域を超えるものではないから、著作物とはいえない。同コンテンツ集3 9、40頁についてはほとんど図案化すらされていない文字情報そのものであり(順に 「このプログラムは株式会社Vtechが制作しました」「メーリングリスト募集」)、かつ、 事実の伝達の域を超えるものではないから、著作物とはいえない。矢印の組み合わせで あるアイコン(同コンテンツ集29頁)も端的に機能を示すものにすぎないから著作物 とはいえない。  (2) 大会スケジュール検索システムについて  原告の主張する素材、選択、配列の具体的内容が明らかではないが、@画面に着目す ると、大会日程検索の画面・地名ないし競技種目選択の画面・選択後の検索結果の画面 という素材を配列したものということはでき、A検索結果に着目すると、素材として会 場地・競技種目・日程を選択し横一線に配列したり、会場地、競技種目、日程、競技会 場を選択し横一線に配列したりしているということはできる。 しかし、@及びAの素材の選択ないし配列は、いずれも、目的とする機能である大会ス ケジュールの選択の観点からすれば誰がしても同一の結果に達するものといわざるを得 ず、創作性は認め難い。  (3) ハイライト検索システムについて  原告主張の「情報の選択又は体系的な構成」の具体的内容が必ずしも明らかではない が、大会のハイライト情報について、日付、会場、競技というかたちで検索の基礎とな る分類体系を定めたものと考えられる。  しかし、競技大会のハイライト情報の検索という目的上、上記分類体系は極めて基本 的なものであり、制作者の個性が反映されたものと認めることは困難であるから、創作 性は認め難い。  (4) イベント検索システムについて 原告の主張する素材、選択又は配列の具体的内容が必ずしも明らかではないが、イベン トカレンダーの画面、特定の月のカレンダーを示す画面、特定の日のイベントを示す画 面及びそのイベントの行われる地図を示す画面という素材を選択、配列したものといえ る。イベントの検索の観点からは、常識的であるといえるが、素材の選択と配列につい て、誰がしても同じになるといえるほどありふれたものとまではいえず(カレンダー形 式によるか否か、地図を含めるかどうかなど)、制作者の思想が表現されたものとして 編集著作物に該当すると認められる。  (5) 本件地図及び本件マップナビゲーションシステムについて  ア 本件地図について  証拠(甲4、検乙1、原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば、本件地図は都市計画 地図を基礎としているところ、画像サイズについては、当時のインターネット通信回線 速度、パソコンの表示速度、地図の見やすさ等を総合してサイズを決めていること(全 域図は87.4キロバイトから174キロバイトまでの3つのサイズを用意し、詳細図 32枚はそのカバーする範囲に対応して22.4キロバイトから77.4キロバイトま である。)、色については、道路を水色、川を薄い水色、建物を黄緑色といったかたち で色分けしていること、文字情報については、本件ホームページの閲覧者が高校総体を 機会に京都の観光をする人であることから、高校、大学、寺社仏閣、美術館、博物館、 公衆トイレ、警察、駅、通り名などに絞っていること、本件地図はウインドウサイズに よって全部がフルスクリーンで見えない場合があり、そのときはスクロールさせる必要 があるが、スクロールしても通り名がわかるように同一画面に複数通り名の表示をして いることがそれぞれ認められる。  以上によれば、本件地図は、制限の多いインターネット上で最大限効率的に地図情報 を表示できるように工夫されたもので、その表現に創作性を認めることができる。 イ 本件マップナビゲーションシステムについて  編集著作物としての素材の選択又は配列に関する創作性、データベースの著作物とし ての情報の選択又は体系的な構成に関する創作性についての原告の主張は必ずしも明確 ではない。  しかし、本件マップナビゲーションシステムは、全域図を示す画面、詳細地図を示す 画面、観光情報を示す画面を選択し配列したものということができるところ、全域図と 詳細地図の層構造自体は必ずしも個性的な表現形態とは認め難いが(一般の地図でも行 われるところである。)、詳細地図にどのようなサイズを選択するか、観光情報として 何を選択するかについては制作者の個性の発現を認めることができるから、著作物性を 認めることができる。  ウ なお、原告は、本件マップナビゲーションシステムのソフトウエアについて、地 図画像をスムーズにスクロールさせたり、地図にクリックして詳細情報を得たり、詳細 情報の会場名から地図を呼び出し、その地図上のポイントを四角で囲んで即座にわかる ようにしている旨主張する。しかし、これは、平成11年7月2日第2回弁論準備期日 においてソースコードの著作権に関する主張を撤回した趣旨に反する主張であるといわ ざるを得ないし、これを措くとしても、著作権法によって保護されるのは、具体的な表 現であるところ、上記主張は、アイデアないし機能の創作性をいうものであり、表現の 創作性をいうものではないから、主張自体失当というべきである(なお、ポイントを四 角で囲むとの点は、表現を主張するものと解せられないでもないが、これに創作性がな いことは明らかである。)。 2 争点(2)((1)が肯定された場合の著作者)について  上記1において著作物性が認定されたもの(本件画面、本件画像の一部、イベント検 索システム、本件地図、本件マップナビゲーションシステム)について問題となるとこ ろ、上記著作物を表現するための画像やソースコードの作成などの具体的な作業を直接 行ったのが原告であることは当事者間に実質的に争いのないところである。しかるに、 被告は、上記著作物の制作は、京都市ないし被告の指示によって行われたから、著作者 は京都市ないし被告である旨主張するので、この点を検討する。 (1) 推進室作成の平成8年6月付の「全国高校総体インターネット事業について」と題 する書面(乙4の1枚目から7枚目まで)に記載されているところは、比較的詳しいも のでも、「@マップ・ナビゲーション マップをベースに、観光名所・文化施設・伝統 産業体験施設などの京都情報が検索できる。 〈マップ〉カテゴリー→エリア地図(8 q四方)→詳細地図(→2q四方)〈データ〉社寺/約100件 文化・伝統産業/約7 0件 *当初入力分」「Aカレンダー 年間の伝統行事を紹介するほか、観光イベント 等をトピックスで紹介する。〈伝統催事〉9〜12月一括掲載(約20件/月) 年間更 新 〈イベント〉2〜3件/月 毎月更新 〈花だより〉桜、紅葉の開花・色付き速報」 という程度のものであり、これはホームページの内容の大枠の指定というべきもので、 具体的な素材の選定・配置・作成まで指定したものということは到底できない。したが って、上記1で著作物とされたものについて京都市を著作者と認めることはできない。  被告は、本件画面について、いずれも、委員会の指示に基づき、委員会が提供した文 字情報、写真などの素材を画像化したものであり、配列にも京都市のチェックが入って いる旨主張するが、これを客観的に裏付けるに足りる的確な証拠はないから、採用する ことはできない(なお、京都市が素材を提供したとしても、原告は、これについて著作 権を主張しているわけではないから、この点は、上記著作物の著作者の判断に影響する ものではない。)。  被告は、また、本件マップナビゲーションシステムについて、地図を層構造にしたの は、委員会の指示に基づくものである旨主張する。確かに、上記のとおり、乙4の書面 において、地図を層構造にするという構想は記載されているが、具体的な表現の指示ま ではないし、同企画案では、全体、エリア、詳細の三階層の地図システムが考えられて いたのに対し、最終的な本件マップナビゲーションシステムにおいては、原告における 種々のテスト評価の結果、エリア地図(8キロメートル四方)をやめて二階層の地図シ ステムにしたのであるから(原告代表者の供述)、これを京都市の指示による制作とみ ることは到底できない。  (2) 被告は、本件地図について、本件地図に入れる文字情報や同一画面に複数通り名 の表示をするなどは、被告の指示によるものである旨主張し、被告代表者はこれに沿う 供述をする。そして、原告代表者の陳述書(甲13)において、「マップナビゲーショ ンシステムで、文字情報、通り名の配置に関して、被告が著作権を主張されていますが、 このことをふまえて全体著作権の20%を被告には与えています。」との記載があるこ とに照らせば、原告もこれを実質的には認めているとも考えられる。しかし、被告によ る指示がどの程度具体的であったのかを認定するに足りる証拠はなく、被告を創作者で あったと認めるに十分ではない。 3 争点(3)(本件マップナビゲーションシステムの複製行為の有無)について  本件マップナビゲーションシステムを、全域図を示す画面、詳細地図を示す画面、観 光情報を示す画面を選択し配列した編集著作物ととらえる限りにおいて、本件CD−R OMについても、二条城近辺に限定して、これが再現されているものといえるから、こ の限度で複製が肯定される。  しかし、上記を除いては、複製を認めることができない。すなわち、本件地図は本件 CD−ROMに収納された本件ホームページのクリックボタンからは検索できず、また、 本件CD−ROMに上記を除いた本件地図が収納されている旨の記載もなく、かような 無意味な複製をすることは考え難い。  被告は、本件CD−ROMでは、Javaは機能しておらず、単に体験版としてイメージ マップでリンクしているだけであり、CD−ROMの制作に本件マップナビゲーション システムは使用していない旨主張するが、これは上記の編集著作物を機能させるソフト ウエアについての主張であって、表現されたものについての主張ではないから、失当で ある(ソフトウエアが複製されずとも、編集著作物が有形的に再生されることはあり得 る。)。 4 争点(4)(著作物の改変行為・氏名表示権侵害の有無)について (1) 基本的事実関係に記載したとおり、本件CD−ROMでは、大文字五山送り火の検 索のみが可能であり、また、二条城の観光情報のみが検索可能である。したがって、こ の点に関し、イベント検索システム及び本件マップナビゲーションシステムの同一性は 損なわれているといわざるを得ない。もっとも、これは、改変行為というより、むしろ、 一部複製行為というべきものである。 (2) 原告は、被告が、本件CD−ROMの制作者を被告とし、協力者として原告を表示 したことをもって、氏名表示権の侵害に当たる旨主張する。しかし、第3委託契約の下 請である原告の地位を表示するものとして不正確とまではいえないから、上記主張は採 用することができない。 5 争点(5)(著作権の譲渡ないし利用許諾の有無)及び争点(6)(被告の故意・過失の 有無)について (1) 前記基本的事実関係記載の事実及び証拠(甲5ないし9、乙3、10ないし15、 原・被告各代表者)によれば、以下の事実を認めることができる。これに反する原告代 表者の供述部分及び陳述(甲4)部分、被告代表者の供述部分及び陳述(乙15)部分 はいずれも採用しない。 ア 被告は、平成9年11月6日、第3委託契約により、京都市から高校総体インター ネット事業に係る記録CD−ROMの制作を、予算額400万円、作成枚数1000枚 の約定で委託されたが、同委託契約においては、CD−ROMの著作権は京都市に帰属 するものとされた。京都市は、これを参加高校等に無料配布する予定であった。 イ 被告は、上記受注した作業のうち、ホームページソースコードの修正及びCD−R OMのデジタルデータチェックを原告に下請させた。その際、被告は、原告に対し、C D−ROMの著作権は京都市に帰属すること、マップナビゲーションシステムはCD− ROMに不要であり、そのため、二次使用料は発生しないことを告げたが、原告からは 特段の異議は述べられず、平成10年1月5日ころ、代金100万円で下請契約が成立 した。なお、被告としては、ソフトウェアとしてのマップナビゲーションシステムは使 用しないが、本件ホームページをCD−ROM化する以上、画像及び地図は当然にサン プルとして使用するとの認識であったが、原告との間でこの点に関して明確な確認はさ れなかった。 ウ 原告担当者のBは、平成10年2月18日水曜日付の被告宛の電子メール(乙10 の4枚目)で「修正MOですが、金曜日の午前中にお渡しできるようにしたいと思いま すのでよろしくお願いします。」と被告に通知し、同月20日、修正済みとの記載のあ る本件MOを被告に交付した。これには35枚の地図データが入っていた。  (原告は、本件MOがデモンストレーション用として渡した途中修正版である旨主張 するが、少なくとも被告がデモンストレーション用として本件MOを要求したと認める に足りる証拠はない。) エ 被告は、同月22日、原告に対し、「クイズでマップ」の二条城のデータを欲しい 旨のファックスを送信したところ、原告は、本件マップナビゲーションシステムを使用 される恐れがあるとして、翌23日に、マップナビゲーションシステムの使用許諾につ いては別途契約書を作成することなどを内容とする契約書案(甲1)を被告にファック ス送信した。しかし、被告側からはこれについて特段の応答がなかった。  被告は、上記MOを利用して、本件CD−ROMを制作したが、その際、MOに含ま れていた地図データ5枚を利用して、二条城に限定して本件マップナビゲーションシス テムのサンプルを、また、五山の送り火に限定して、イベント検索システムのサンプル を制作した。 (2)ア 上記認定事実によれば、原・被告間で、マップナビゲーションシステムを除き、 本件ホームページをCD−ROMに複製し、複製したCD−ROMは京都市が著作権を 有することの合意があったものといえる。したがって、マップナビゲーションシステム 以外の複製及び改変行為(サンプル的な一部複製行為)は、原告の包括的な許諾に基づ く行為といえるし、少なくとも、イベント検索システムの創作性の程度に照らせば、そ の改変に違法性はないというべきである。  イ そこで、次に、被告が本件マップナビゲーションシステムを複製、改変したこと についての被告の過失の有無を検討する。  本件マップナビゲーションシステムは、全域図を示す画面、詳細地図を示す画面、観 光情報を示す画面から構成される編集著作物であるところ、上記認定事実によれば、被 告は、複製が禁じられる「マップナビゲーションシステム」は、編集著作物である本件 マップナビゲーションシステムではなく、汎用性のあるソフトウエアとしてのマップナ ビゲーションシステムであると考えていたというのである。このことは、原告代表者が 本人尋問において「マップナビゲーションシステム」の事業化を考えていた旨供述する ところからも裏付けられるところである(本件マップナビゲーションシステムすなわち 高校総体時点での京都市全域図を示す画面、詳細地図を示す画面、観光情報を示す画面 という限定された素材を使用したシステムが事業化できるはずはない。)。そして、ホ ームページの記録保存という事業目的の限度で、ソフトウエアとしてのマップナビゲー ションシステムを使用せずに、編集著作物としての本件マップナビゲーションシステム の限られた一部をサンプルとして複製することは許されるとの被告の認識は十分な合理 性を有するものといえるところ、原告から受領した「修正済みMO」には、上記サンプ ルとしての利用に適する地図が入っていたのであるから、被告がこれを使用して本件C D−ROMを制作することは原告の許諾するところであると考えたとしても過失がある ということはできない。もっとも、原告は、被告からの二条城のデータ要求に対し、甲 1の契約書案を送付したのであるが、既に、原・被告間ではCD−ROM化についての 下請契約が締結され、原告が修正済みMOを被告に交付した後のことであり、しかも、 同契約書には、被告の行おうとしているサンプルとしての地図取り入れが本件マップナ ビゲーションシステムの著作権侵害であることを示すような文言は記載されていないの であるから、これをもって、被告の過失を裏付けるものということはできない。 6 結 論 よって、原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとする。  京都地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官 赤 西 芳 文    裁判官 本 吉 弘 行  裁判官鈴木紀子は転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官 赤 西 芳 文