・東京地判平成13年9月20日判タ1097号282頁  「浮世絵春画一千年史」事件:第一審  本件本訴請求は、原告が、自己が著作権を有する「浮世絵春画一千年史」につき、 被告株式会社櫻桃書房及び被告株式会社人類文化社と出版契約を結び、被告Aに収録 写真のデジタルワーク処理を担当させたところ、被告ら3名が無断で本件著作物を改 変し、著者として原告のほかに被告次郎を表示して出版したと主張して、著作者人格 権(同一性保持権及び氏名表示権)に基づき、上記被告らに対し、損害賠償を求めて いる事案であり、本件反訴請求は、被告櫻桃書房及び同人類文化社が、原告に対し、 本件著作物の出版に際し、原告の作業の遅れにより増加した費用、出版が遅れたこと などによる慰謝料等の損害賠償を求めるとともに、本件著作物の出版に際してのフォ トCDの作成費用等の立替金の償還及び企画段階で出版取り止めとなった書籍につい て前払いした印税の返還等を求めている事案である。  判決は、「被告次郎が、ペーパーレイアウトにより示された構成を原告に無断で改 変した行為は、原告による承諾のないことを知りながら行ったものであるから、故意 に、本件著作物について原告の有する同一性保持権を侵害したものというべきである。 また、原告の単独の著作物である本件著作物につき、被告次郎との共同著作物である かのような表示を付して本件出版物として出版した行為は、原告の氏名表示権を侵害 したものというべきである。上記認定によれば、原告は、このような本件著作物の性 格を大きく変える変更につき、承諾を与えていなかったものであり、原告はこれによ って精神的苦痛を被ったものというべきであるから、被告次郎は、原告の被った精神 的苦痛に対し、損害賠償の責任を負う」などとして、本訴原告の損害賠償請求を認容 した。 (控訴審:東京高判平成14年12月10日)