・東京高判平成13年9月27日判時1774号123頁  「解剖実習の手引き」事件  本件は、北里大学医学部の解剖学担当の元教授である控訴人が、後任の教授である 被控訴人は、控訴人の執筆した解剖実習の基本書である「解剖実習の手引き」の内容 を模倣した別紙文書目録記載の各文書を発行して学生に頒布して、本件書籍に関して 控訴人が有する著作権及び著作者人格権を侵害しているとして、被控訴人に対し、被 告文書の発行・頒布の中止、及び、被告文書に係るフロッピーディスク等の記憶媒体 からの模倣部分の消去、並びに、損害の賠償を求めている事案である。  判決は、「本件書籍についても、その全体を典型とする、あるまとまりのある部分 をみれば、上記のような特徴を持った解剖実習のための手引き書として、思想又は感 情を創作的に表現した著作物として保護されるに値するものということができる。し かし、その中の単一の特定のアイデアを一つないし二つの文にまとめたにすぎない部 分だけを取り上げると、その表現上の創作性ないし個性を認めることができず、これ を独立の著作物として認めることができない場合が多いであろうことは、容易に予測 されるところである」とし、また、「被告テキストの、控訴人が指摘する51項目の いずれについても、本件書籍の対応部分を複製ないし翻案したものと認めることはで きない」などとして、原告の請求を棄却した。