・東京地判平成13年12月18日  デス・ゲーム2025事件:第一審。  原告は、「スーパードリームボール」というスポーツについてのアイディアを創作 し、日本テレビ株式会社に宛てた内容証明郵便で送付し、「黙示スポーツ女」と題す る小説を創作した。本件は、原告が、被告(ソニー・ピクチャーズエンタテインメン ト)が録画し、販売する「デス・ゲーム2025」と題する映画が、原告アイディア、 原告手紙及び原告小説を複製又は翻案したものであって、ビデオテープを販売するこ とによって、原告の有する複製権、翻案権、上映権を侵害していると主張して、損害 賠償を求めている事案である。  判決は、「原告アイディアは、「スーパードリームボール」というスポーツについ てのアイディアであって表現ではないから、原告アイディアを著作物ということはで きない」、「ゲームの内容又はアイデアが共通しているにすぎない」などとして原告 の請求を棄却した。 (控訴審:東京高判平成14年4月16日) ■争 点 (1) 原告アイディアは著作物か。 (2) 本件映画を録画したビデオテープを販売することが原告手紙及び原告小説の著作 権の侵害となるか。 (3) 損害の発生及び額 ■判決文  「著作権法は、著作物について、「思想又は感情を創作的に表現したもの」(同法 2条1項1号)であることを定めているから、表現を離れた単なるアイディアは著作 物とはいえず、著作権法上の保護の対象とはならない。  しかるところ、原告アイディアは、「スーパードリームボール」というスポーツに ついてのアイディアであって表現ではないから、原告アイディアを著作物ということ はできない。  原告は斬新なアイディアは著作物というべきであると主張するが、アイディアがい かに独創的であったとしても、アイディアにすぎない以上、著作物たり得ないことに 変わりはないから、原告の主張は採用できない。」  「ウ 上記認定の事実によると、原告手紙及び原告小説と本件映画には、共にボー ルを用いたスポーツが表現されている部分があり、そのスポーツについては、バンク を有するコートで行うこと、選手がローラースケートをはいてプロテクターを着けて いること、一定時間内にパスしなければならないこと、バンクを利用したジャンプを するなどしてシュートすることといった共通点があることが認められるが、その限度 では、ゲームの内容又はアイデアが共通しているにすぎない。原告手紙及び原告小説 と本件映画は、上記以外の主題、ストーリー展開、登場人物の性格付け、作品の性格 のすべてにおいて相違し、ボールを用いたスポーツの表現についても、ボール保有の 具体的ルール、ボール自体の性状、パスの細かなルール、ゴールの形状・大きさ・移 動の有無、キーパーゾーンの有無、ワープゾーンの有無等において相違していること が認められる。  以上によると、原告手紙及び原告小説と本件映画は表現として異なっているから、 本件映画の表現から、原告手紙及び原告小説の表現上の本質的な特徴を直接感得する ことはできない。  したがって、その余の点について判断するまでもなく、本件映画が原告手紙又は原 告小説を翻案したものということはできない。」