・東京地判平成13年12月25日  石油精製論文事件。  原告は、被告株式会社コスモ総合研究所の独立前の会社の社員である。本件書籍に は、原告、C、Dの3名の氏名が記載されている。これに対して、被告書籍(1)には被 告B、C、Dの3名の氏名が表示されており、被告書籍(2)には被告B、C、Eの3名 の氏名が表示されている。本件は、原告が、「(1)原告は、本件書籍の共同著作者であ る、(2)被告Bは、本件書籍に依拠して被告各書籍を作成し、発表した、(3)被告コス モ総研企画部の担当職員及び担当役員は、被告各書籍の作成、発表を被告Bと共謀し て行った、(4)被告各書籍を作成し、発表した行為は、原告の著作者人格権(氏名表示 権、同一性保持権)を侵害する。」と主張して、同被告らに対し、損害賠償及び謝罪 広告の掲載を求めると共に、被告エルゼビアに対し、被告各書籍の販売、頒布の禁止 を求める事案である。  判決は、「原告は、本件書籍の作成に関与しておらず、本件書籍の表現を創作した ということはできないから、推定を覆すに足りる事実が認められ、原告が本件書籍の 著作者であるとは認められない」、「原告が、上記触媒の開発に関与していたとして も、上記認定のとおり、本件書籍の作成に関与していない以上、原告が本件書籍の表 現を創作したということはできないから、著作者であるとは認められない」として原 告の請求を棄却した。 ■判決文  「(2) 上記(1)で認定した事実によると、本件書籍は、米国石油精製業者協会の年 次大会における講演発表のために、昭和62年秋ころから、Dが、被告BやCの意見 を取り入れて、本件報告書等に基づいて作成したものであって、原告は、作成に関与 していないものと認められる(図や表など本件書籍の一部についても、原告が作成に 関与したことをうかがわせる証拠はなく、原告は、作成に関与していないものと認め られる。)。  著作権法14条は、名前が表示されている者を著作者として推定しているが、上記 認定事実からすると、原告は、本件書籍の作成に関与しておらず、本件書籍の表現を 創作したということはできないから、推定を覆すに足りる事実が認められ、原告が本 件書籍の著作者であるとは認められない。  (3) 原告は、甲第8号証ないし第16号証を提出している。しかし、これらは、M ZC−2、MZC−2A、MZC−3、MZC−500、MZC−600といった触 媒の開発に関する証拠であり、本件書籍の作成に関するものではない。原告が、上記 触媒の開発に関与していたとしても、上記認定のとおり、本件書籍の作成に関与して いない以上、原告が本件書籍の表現を創作したということはできないから、著作者で あるとは認められない。」