・最判平成14年3月25日  パチンコ装置事件:上告審。  「特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者と共同でなけれ ば特許出願をすることができず(特許法38条)、共有に係る特許を受ける権利につ いて審判を請求するときは、共有者の全員が共同してしなければならないとされてい るが(同法132条3項)、これは、共有者の有する1個の権利について特許を受け ようとするには共有者全員の意思の合致を要求したものにほかならない。これに対し、 いったん特許権の設定登録がされた後は、特許権の共有者は、持分の譲渡や専用実施 権の設定等の処分については他の共有者の同意を必要とするものの、他の共有者の同 意を得ないで特許発明の実施をすることができる(同法73条)。  ところで、いったん登録された特許権について特許の取消決定がされた場合に、こ れに対する取消訴訟を提起することなく出訴期間を経過したときは、特許権が初めか ら存在しなかったこととなり、特許発明の実施をする権利が遡及的に消滅するものと されている(同法114条3項)。したがって、特許権の共有者の1人は、共有に係 る特許の取消決定がされたときは、特許権の消滅を防ぐ保存行為として、単独で取消 決定の取消訴訟を提起することができると解するのが相当である(最高裁平成13年 (行ヒ)第142号同14年2月22日第二小法廷判決・裁判所時報1310号5頁 参照)。なお、特許法132条3項の「特許権の共有者がその共有に係る権利につい て審判を請求するとき」とは、特許権の存続期間の延長登録の拒絶査定に対する不服 の審判(同法67条の3第1項、121条)や訂正の審判(同法126条)等の場合 を想定しているのであって、一般的に、特許権の共有の場合に常に共有者の全員が共 同して行動しなければならないことまで予定しているものとは解されない。  特許権の共有者の1人が単独で取消決定の取消訴訟を提起することができると解し ても、合一確定の要請に反するものとはいえない。また、各共有者が共同して又は各 別に取消訴訟を提起した場合には、これらの訴訟は類似必要的共同訴訟に当たるから、 併合して審理判断されることになり、合一確定の要請は充たされる。」