・東京地決平成14年4月9日判時1780号25頁  ファイルローグ事件:仮処分(平成14年(ヨ)22011号)。  債務者(有限会社日本エム・エム・オー)が運営するインターネット上の電子ファ イル交換サービス「ファイルローグ」において、債権者ら(日本コロムビア株式会社 ほか8社)が製作したレコードをMP3形式で複製した電子ファイルが、債権者らの 許諾を得ることなく交換されていることに関して、レコード製作者である債権者らが、 MP3形式によって複製され、かつ、送受信可能の状態にされた電子ファイルの存在 及び内容等を示すファイル情報を受信者に送信することによって上記電子ファイル交 換サービスを提供している債務者の行為は、債権者らの有している著作隣接権(レコ ード製作者の複製権及び送信可能化権)を侵害すると主張して、上記電子ファイルの 送受信の差止めを求めた事案である。  判決は、「以上のとおり、本件サービスは、送信者が、市販のレコードを複製した ファイルが大多数を占めているMP3ファイルを、送信可能化状態にするためのサー ビスという性質を有すること、本件サービスにおいて、送信者が本件各MP3ファイ ルを含めたMP3ファイルの送信可能化を行うことは債務者の管理の下に行われるこ と、債務者も自己の営業上の利益を図って、送信者に上記行為をさせていたことから、 債務者は、本件各レコードの送信可能化を行っているものと評価でき、債権者らの有 する送信可能化権を侵害していると解するのが相当である」としたうえで、「本決定 において、MP3形式によって複製され、かつ、送受信可能の状態にされた電子ファ イルの存在及び内容等を示す、利用者のためのファイル情報のうち、ファイル名及び フォルダ名のいずれかに別紙各レコード目録の「タイトル名」欄記載の文字(漢字、 ひらがな、片仮名並びにアルファベットの大文字及び小文字等の表記方法を問わない。) 及び「実演家名」欄記載の文字(漢字、ひらがな、片仮名並びにアルファベットの大 文字及び小文字等の表記方法を問わない。姓又は名のあるものについては、いずれか 一方のみの表記を含む。)の双方が表記されたファイル情報を、利用者に送信するこ との差止めを認めることとする」とした。 ■評釈等 横山経通・NBL736号6頁(2002年) 作花文雄・コピライト498号34頁(2002年) 早稲田祐美子・法律のひろば2002年6月号40頁 ■争 点 (1) 被保全権利の有無 ア 本件各レコードについて債権者らの有する著作隣接権に対する侵害行為の主体が 債務者であるとして、債務者に対して、本件各MP3ファイルの送受信の差止めを求 めることはできるか。 イ 本件各レコードについて債権者らの有する著作隣接権に対する侵害行為を債務者 が教唆又は幇助しているとして、債務者に対して、本件各MP3ファイルの送受信の 差止めを求めることはできるか。 (2) 保全の必要性の有無 ■判決文 第3 当裁判所の判断  1 争点(1)ア(著作隣接権の直接侵害の成否)について (1) 利用者の著作隣接権侵害の有無(前提問題)  債務者は、本件サービスを運営して、MP3形式によって複製され、かつ、送 受信可能の状態にされた電子ファイルの存在及び内容等を示すファイル情報を受信者 に送信するなどしているが、債務者の同行為は、送信可能化権を直接的に侵害する行 為といえるか否かについて判断する。  まず、その前提として、送信者が行う複製行為及び送信可能化行為が、それぞ れ、複製権侵害又は送信可能化権侵害を構成するかについて検討する。 ア 送信者の行う複製行為と複製権侵害の有無 (ア) 利用者が、パソコンの共有フォルダに蔵置するMP3ファイルは、@利 用者が、自らパソコンで音楽CDをMP3ファイルに変換する場合、A他の者が音楽 CDから変換したMP3ファイルを何らかの方法で取得する場合、B利用者が、他の 者が音楽CDから変換したMP3ファイルを、本件サービスを利用して受信する場合 が想定されるところ、音楽CDのMP3形式へ変換する行為は、聴覚上の音質の劣化 を抑えつつ、デジタル信号のデータ量を圧縮するものであり、変換された音楽CDと 変換したMP3形式との間には、内容において実質的な同一性が認められるから、レ コードの複製行為ということができ、したがって、前記@ないしBの場合のいずれに の場合であっても、利用者がMP3ファイルを自己のパソコンの共有フォルダに蔵置 することは、レコードの複製行為に当たる(法2条1項15号)。 (イ) 法102条1項が準用する法30条1項は、著作物は、個人的に又は家 庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(私的使用)を目的と するときは、使用する者が複製することができる旨を規定している。また、法102 条4項1号は、法30条1項に定める目的以外の目的のために、当該レコードに係る 音を公衆に提示した者は複製を行った者とみなす旨を規定している。  そうすると、@利用者が、当初から公衆に送信する目的で、音楽CDをM P3形式のファイルへ変換した場合には、法102条1項、同30条1項の規定の解 釈から当然に、また、A当初は、私的使用目的で複製した場合であっても、公衆が当 該MP3ファイルを受信して音楽を再生できるような状態にした場合には、当該レコ ードに係る音を公衆に提示したものとして、法102条4項1号の規定により、複製 権侵害を構成する。  以上のとおり、本件サービスの利用者が、レコード製作者である債権者ら の許諾を得ることなく、本件各MP3ファイルをパソコンの共有フォルダに置いて債 務者サーバに接続すれば、複製をした時点での目的の如何に関わりなく、本件各レコ ードについて著作隣接権侵害(複製権侵害又はそのみなし侵害のいずれか)を構成す る。 イ 送信者の行う送信可能化行為と送信可能化権侵害の有無 (ア) 前記前提事実のとおり、本件サービスは、ユーザー名及びパスワードを 登録すれば誰でも利用できるものであり、既に4万人以上の者が登録し、平均して同 時に約340人もの利用者が債務者サーバに接続して電子ファイルの交換を行ってい る。そして、送信者が、電子ファイルをパソコンの共有フォルダに蔵置して、本件ク ライアントソフトを起動して債務者サーバに接続すると、送信者のパソコンは、債務 者サーバにパソコンを接続させている受信者からの求めに応じ、自動的に上記電子フ ァイルを送信し得る状態となる。  したがって、電子ファイルを共有フォルダに蔵置したまま債務者サーバに 接続して上記状態に至った送信者のパソコンは、債務者サーバと一体となって情報の 記録された自動公衆送信装置(法2条1項9号の5イ)に当たるということができ、 また、その接続した時点で、公衆の用に供されている電気通信回線への接続がされ、 当該電子ファイルの送信可能化(同号ロ)がされたものと解することができる。 なお、本件各MP3ファイルは、その内容において、本件各レコードと実 質的に同一であるから、本件各MP3ファイルを送信可能化することは本件各レコー ドを送信可能化することに当たる。 (イ) 以上によれば、本件サービスの利用者が、レコード製作者である債権者 らの許諾を得ることなく、本件各MP3ファイルをパソコンの共有フォルダに置いて 債務者サーバに接続すれば、本件各レコードについて、著作隣接権侵害(送信可能化 権侵害)を構成する(法96条の2)。 ウ まとめ  利用者が、本件各レコードを複製し、又は送信可能化をするに当たり、製作 者である債権者らがこれを許諾した事実のないことは前述のとおりである。したがっ て、本件サービスの利用者の前記各行為は、著作隣接権侵害(複製権侵害及び送信可 能化権侵害)を構成する。 (2) 債務者の著作隣接権侵害(送信可能化権侵害)の有無 ア 以上認定したとおり、送信者は、本件各MP3ファイルをパソコンの共有フ ォルダに蔵置し、かつ、その状態で債務者サーバにパソコンを接続させているのであ り、送信者の上記行為は、債権者らの有する送信可能化権を侵害する。  しかし、債務者自らは、パソコンに蔵置した本件各MP3ファイルを債務者 サーバに接続させるという物理的行為をしているわけではない。  そこで、債務者の行為が、債権者らの有する送信可能化権を侵害すると解す べきかを考察することとする。債務者の行為が、送信可能化権を侵害するか否かにつ いては、債務者の行為の内容・性質、利用者のする送信可能化状態に対する管理・支 配の程度、本件行為によって生ずる債務者の利益の状況等を総合斟酌して判断すべき である。  イ 本件サービスの内容・性質 (ア) 前記前提事実及び審尋の全趣旨によれば、以下のとおりの事実が認めら れる。  債務者サーバは、@債務者サーバに接続している利用者のパソコンの共有 フォルダ内の電子ファイルに関するファイル情報を取得し、Aそれらを一つのデータ ベースとして統合して管理し、B受信者の検索リクエストに応じた形式に加工した上、 Cこれを、同時に債務者サーバに接続されている他の利用者に対して提供し、D他の 利用者が本件クライアントソフトにより、好みのファイルを検索・選択し、画面に表 示されたダウンロードボタンをクリックするだけで(送信者のIPアドレスを知る必 要もないまま)当該電子ファイルの送信を受ける機会を提供している。このように、 ファイル情報の取得等に関するサービスの提供並びに電子ファイルをダウンロードす る機会の提供その他一切のサービスを、債務者自らが、直接的かつ主体的に行ってい る。利用者は、債務者のこれらの行為によってはじめてパソコンの共有フォルダ内に 蔵置された電子ファイルが他の利用者へ送信し得る状態を実現できる。  ところで、審尋の全趣旨からすると、本件サービスを利用すれば、市販の レコードとほぼ同一の内容のMP3ファイルを無料で、しかも容易に取得できるので あるから、市販のレコードを安価に取得したいと希望する者にとって、本件サービス は極めて魅力的である。一方で、現時点においては、自己が著作した音楽等の電子フ ァイルを不特定多数の者に無料で提供したり、他の不特定の者が著作した音楽等の電 子ファイルを取得したいと希望する者は比較的少ないものと推測される。仮に、その ような音楽等の電子ファイルの取得を希望する者がいたとしても、本件サービスにお ける検索機能は、希望する作品の所在を正確に確認するには不十分であり、結局、本 件サービスはそのような作品の電子ファイルを交換するためには有効に機能しないも のと解される。実際にも、前記前提となる事実のとおり、債務者サーバが送受信の対 象としているMP3ファイルの約96.7パーセントが、市販のレコードを複製した ファイルに関するものである。したがって、本件サービスにおいて送受信されるMP 3ファイルのほとんどが違法コピーに係るものとなることは避けられないものと予想 され、債務者としても本件サービスの開始当時から上記事態に至ることを十分予想し ていたものと認められる。  したがって、本件サービスは、MP3ファイルの交換に関する部分につい ては、利用者に市販のレコードを複製したMP3ファイルを交換させるためのサービ スであるということができる(したがって、利用者が、本件サービスを利用して、市 販のレコードが複製されたMP3ファイルを送受信の対象とすることは、正に、本件 サービスを提供する債務者の意図、目的に合致した行為ということができる。)。 (イ) 以上のとおり、本件サービスは、送信者が、市販のレコードを複製した ファイルが大多数を占めているMP3ファイルを、送信可能化状態にするためのサー ビスという性質を有する。 ウ 管理性等 (ア) 前記前提事実及び審尋の全趣旨によれば、以下のとおりの事実が認めら れる。すなわち、 a 利用者が本件サービスを利用して、電子ファイルを自動公衆送信するに は、債務者サイトから本件クライアントソフトをダウンロードして、これを自己のパ ソコンにインストールすることが必要不可欠である。 b 利用者は、パソコンを債務者サーバに接続させることが必要不可欠であ るが、同接続は、通常、本件クライアントソフトを起動することによりしている。 c 自動公衆送信の相手方も、パソコンに本件クライアントソフトをインス トールし、そのパソコンを債務者サーバに接続することが必要不可欠である。 d 送信者が自動公衆送信をするのは、受信者が希望する電子ファイルを検 索して、その電子ファイルの蔵置されているパソコンの所在及び内容を確認できるこ とを前提としているが、これに必要な一切の機会は債務者が提供しており、送信者の 自動公衆送信を可能とすることについて、債務者サーバが必要不可欠である。 e 本件サービスにおいては、受信者は、希望する電子ファイルの所在を確 認した場合、本件クライアントソフトの画面上の簡単な操作によって、希望する電子 ファイルを受信することができるようになっており(その際、受信者は、送信者のI Pアドレス及びポート番号を認識する必要はない。)、受信者のための利便性、環境 整備が図られている。 f 受信者が受信可能な電子ファイルは、債務者サーバに接続しているパソ コンの共有フォルダ内に蔵置されているものに限られている。 g 債務者は、本件サービスの利用方法について、自己の開設したウェブサ イト上で説明をし、ほとんどの利用者が同説明を参考にして、本件サービスを利用し ている。 (イ) 上記認定した事実を基礎にすると、利用者の電子ファイルの送信可能化 行為(パソコンの共有フォルダに電子ファイルを置いた状態で、同パソコンを債務者 サーバに接続すること)は、債務者の管理の下に行われているというべきである。  ウ 債務者の利益  (ア) 前記前提事実及び審尋の全趣旨によれば、以下のとおりの事実が認められ る。 a インターネット上にウェブサイトを開設した場合、同ウェブサイトに接 続する者の人数が多数に上れば、同ウェブサイトの開設者は同ウェブサイト上に広告 を載せること等により収入を得ることができ、ウェブサイト上の広告掲載への需要は、 当該ウェブサイトへの接続数と相関関係があり、接続数が多くなれば、広告掲載の需 要が高まり、広告収入等も多くなる。 b 本件サービスの登録者数は4万2000人であり、債務者サーバに同時 接続している利用者数は平均約340人、そのMP3ファイル数は平均約8万である ところ、上記人数は、将来さらに増加することも予想され、債務者サイトは広告媒体 としての価値を十分有する。 c 債務者は、本件サービスにおいて、送信者に債務者サイトに接続させて MP3ファイルの送信可能化行為をさせているが、同行為はそれ自体、債務者サイト への接続数を増加させる行為であるとともに、受信側パソコンの接続数の増加に寄与 する行為でもあるといえるから、債務者サイトの広告媒体としての価値を高め、営業 上の利益を増大させる行為ということができる。 d 現時点では、債務者サイト上に掲載した広告による収入は僅かであるが、 債務者は、将来、債務者サイトに広告を掲載することによる広告収入の獲得を債務者 の営業に取り入れていく意図を有している。 e 本件サービスにおいては、本件サービスを利用してMP3ファイルを受 信しようとする者から受信の対価を徴収するシステムとしていないが、債務者は、将 来、同サービスを利用してMP3ファイルを受信した者から受信の対価を徴収するシ ステムに変更することを予定している。 (イ) 上記認定した事実を基礎にすると、利用者に債務者サイトに接続させて MP3ファイルの公衆送信化行為をさせることは、債務者の営業上の利益を増大させ る行為と評価することができる。  エ 小括      以上のとおり、本件サービスは、送信者が、市販のレコードを複製したフ ァイルが大多数を占めているMP3ファイルを、送信可能化状態にするためのサービ スという性質を有すること、本件サービスにおいて、送信者が本件各MP3ファイル を含めたMP3ファイルの送信可能化を行うことは債務者の管理の下に行われること、 債務者も自己の営業上の利益を図って、送信者に上記行為をさせていたことから、債 務者は、本件各レコードの送信可能化を行っているものと評価でき、債権者らの有す る送信可能化権を侵害していると解するのが相当である。 2 争点(2)(保全の必要性の有無)について  上記認定したとおり、@本件サービスには、平成13年12月の時点で、既に4 万人以上が登録し、平均でも約300人以上が債務者サーバに接続して、希望する電 子ファイルを自由に受信しており、しかも、その利用者は個人として特定されていな いこと、A債務者は、交換情報を遮断するなどの措置を何ら採っていなかったこと、 B今後も同情報が公開されるおそれがあること等の事実に照らすならば、債権者らの 許諾のないまま本件各レコードの送信可能化行為がされ、利用者が自由に本件各MP 3ファイルを取得することが続けられた場合、債権者らに著しい損害が生じることは 明らかである。  そうすると、本件において、保全の必要性は存在する。 3 仮処分において命ずる不作為の範囲について (1) 債権者らは、本件申立てにおいて、債務者が本件サービスで本件各MP3フ ァイルを送受信の対象とすることの差止めを求めている。  しかし、前記のとおり、@本件各MP3ファイルをパソコンの共有フォルダに 蔵置し、その状態で債務者サーバにパソコンを接続させる物理的行為は、専ら送信者 が実施し、又、Aファイル情報を確認することにより、取得を希望するMP3ファイ ルを選択し、送信を指示し、そのMP3ファイルを蔵置しているパソコンからMP3 ファイルを受信し、保存先として設定した受信者のパソコンのフォルダ内に複製する 物理的行為は、専ら受信者が行っている。  このように、債務者サーバは、利用者の共有フォルダに蔵置された本件各MP 3ファイル自体については、送受信の対象としていないのであるから、債務者サーバ においては、いかなる内容のMP3ファイルが利用者間で送受信されているかを判別 することはできず、本件各MP3ファイル自体の送信又は受信の差止めを認めるので は、本件申立ての目的を達成できないことになる。  他方、仮に、利用者(送信者)が本件各MP3ファイルを自己のパソコンの共 有フォルダ内に蔵置したとしても、債務者サーバがそのファイル名等についてのファ イル情報を、他の利用者(受信者)に送信することを差し止めれば、受信者は受信を 希望するMP3ファイルを選択することができなくなる結果、送信者の行う送信可能 化を阻止することができるといえる。そこで、債務者サーバにおいて、利用者に対す るファイル情報の送信行為を差し止めることによって、債権者らの本件申立ての目的 は達成されると解される。  したがって、本決定では、本件サービスにおいて、ファイル情報を利用者に送 信する行為の差止めを認めるのが相当である。 (2) 次に、債務者サーバが送信者から受け取った送信者情報のうち、差し止める べき(受信者への送信を遮断すべき)ファイル情報の範囲について検討する。 債務者サーバが送信者から受け取った送信者情報のうち、受信者への送信を遮 断すべきファイル情報の範囲としては、受信者のファイル選択を不可能ならしめ、か つ、他のレコードのファイルと誤認混同を回避するのに必要かつ十分なファイル情報 にとどめるべきであるとするのが相当である。  前記のとおり、MP3ファイルのファイル名は利用者が自由に設定できるので あるから、利用者が設定したファイル名等は、本件各MP3ファイルの複製元である 本件各レコードの「タイトル名」及び「実演家名」とは、常に一致するとは限らない。 しかし、本件疎明資料によれば、本件サービスの利用者(送信者)がレコードを複製 したMP3ファイルにファイル名を設定しようとする場合、他の利用者(受信者)が 識別可能なファイル名を付するのが自然であるということができ、この場合、通常は、 当該レコードの「タイトル名」及び「実演家名」を表示する文字を使用することが考 えられ、また、「タイトル名」及び「実演家名」の表記方法は、当該レコードの表記 方法とは必ずしも一致するとは限らず、適宜、漢字、ひらがな、片仮名及びアルファ ベット等で代替することが推測される。なお、「タイトル名」や「実演家名」の一部 を省略して表記する場合も予想されるが、省略部分が多い場合は、他のレコードのフ ァイルと誤認混同する可能性も大きくなるといえる。  このような観点から検討した結果、ファイル情報のうち、ファイル名及びフォ ルダ名のいずれかに本件各レコードの「タイトル名」及び「実演家名」を表示する文 字(漢字、ひらがな、片仮名並びにアルファベットの大文字及び小文字等の表記方法 を問わない。姓又は名のあるものについては、いずれか一方のみの表記を含む。)の 双方が表記されたファイル情報の範囲で、その受信者への送信の差止めを認めるのが 妥当であると判断した。 4 結語  以上のとおりであるから、その余の点を判断するまでもなく、本決定において、 MP3形式によって複製され、かつ、送受信可能の状態にされた電子ファイルの存在 及び内容等を示す、利用者のためのファイル情報のうち、ファイル名及びフォルダ名 のいずれかに別紙各レコード目録の「タイトル名」欄記載の文字(漢字、ひらがな、 片仮名並びにアルファベットの大文字及び小文字等の表記方法を問わない。)及び 「実演家名」欄記載の文字(漢字、ひらがな、片仮名並びにアルファベットの大文字 及び小文字等の表記方法を問わない。姓又は名のあるものについては、いずれか一方 のみの表記を含む。)の双方が表記されたファイル情報を、利用者に送信することの 差止めを認めることとする。 平成14年4月9日 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 飯村 敏明    裁判官 榎戸 道也    裁判官 佐野 信