・東京地判平成14年4月23日  健康食品通販顧客データ事件  原告(株式会社ジェイディ)は健康食品の通信販売等を業とする会社である。被告A、 同B、同Cは、いずれも原告の従業員であった者であり、被告会社(株式会社プロスティ) は、被告Aが原告からの退社後に設立した会社である。本件において、原告は、被告ら のうち被告会社を除く3名が原告の営業秘密である顧客データを持ち出し、その際に原 告の顧客データの重要部分を消去して効用を喪失させ、被告会社が持ち出したデータを 利用して、原告の事業の乗っ取りをしたと主張して、被告らに対し、民法709、71 9条に基づいて損害賠償の支払を求めるとともに、被告会社に対し、不正競争防止法3 条1項、2条1項4号に基づいて原告の顧客データの使用の禁止を求めている。  判決は、「顧客データを他のデータと一応識別できる形で保管してあったものと認め られるが、これにアクセスできる者は特に制限されておらず、コピーも禁じられておら ず、パスワード等による保護もされていなかったため、事務所にいる者であれば誰でも 見ることができ、また、これらの者との間に秘密保持契約も締結されていなかったので あるから、秘密としての管理がされていたと認めることはできない。したがって、原告 の顧客データは、不正競争防止法にいう営業秘密の要件を備えているということはでき ない」として、原告の請求を棄却した。 ■争 点 (1) 被告Aらが、原告の営業秘密である顧客データを不正に持ち出し、被告会社におい てこれを使用したか(争点1)。 (2) 被告Aらが原告の顧客データを破壊したことなどの行為による、被告らの原告に対 する共同不法行為が認められるか(争点2)。 (3) 原告の損害(争点3)