・東京高判平成14年7月11日  エイビーロード写真事件  控訴人は、いわゆるフリーのカメラマンであり、被控訴人(株式会社リクルート) (具体的には、被控訴人が発行する雑誌「エイビーロード」の編集部)の委託を受けて 撮影し、引き渡した4000枚余りの写真について、これを被控訴人に預託したとして、 その引渡後10年前後経過した後、それらの返還を求めたが、被控訴人は、その大部分 を既に廃棄しており、返還しなかった(ただし、残存する35枚の写真については、引 き渡すことを申し入れた。)。控訴人は、廃棄された本件写真の所有権・著作権侵害、 現存する写真データを控訴人に無断で使用したことに基づく著作権侵害、本件写真を廃 棄したことにより控訴人が受けた精神的苦痛を根拠として、損害賠償を請求した。  原審判決は、請求を棄却した。  なお、控訴人は、原審では、本件写真の廃棄に基づく財産的損害として8282万円、 現存写真データの無断使用に基づく損害として70万円、精神的損害として100万円 の合計8452万円とこれに対する遅延損害金の支払を請求していたが、控訴提起とと もに、請求を減縮し、そのうち300万円とこれに対する遅延損害金の支払のみを求め ている。  本件控訴審判決は、「上に述べたところに、被控訴人が、10年前後にわたり、本件 写真について所有権についてにせよ著作権についてにせよ権利者としての行動を示して いないこと(原告本人尋問の結果によって明らかである)をも加えて、総合的に考察す ると、被控訴人は、本件写真の撮影を控訴人に依頼したころ、引渡しを受けた写真は、 被控訴人のものとなり、したがって、被控訴人は、これを自由に使用でき、返還する義 務も負わない、との合意の下に、カメラマンに依頼する扱いを採用しており、控訴人の 場合もその例外ではなかった、と認めることができる。そして、それにもかかわらず、 被控訴人が、控訴人に対して本件写真の保管義務を負っていると認めさせる資料は、本 件全証拠によっても認めることができない。そうである以上、本件写真の廃棄の事実に 基づく請求は、契約を理由にするにせよ、所有権・著作権を理由にするにせよ、認めら れないという以外にない」と述べて、控訴を棄却した。 (第一審:横浜地判)