・東京高判平成14年10月17日  「ゴールデンヒット歌謡シリーズ」事件:控訴審  本件は、被控訴人(コロムビアミュージックエンタテインメント株式会社ほか)らが、 控訴人エー・アール・シー株式会社および控訴人株式会社エフアイシーに対して、同控 訴人らが、平成8年及び平成9年に、それぞれチェコ共和国において製造させた上で、 日本国内において頒布する目的で輸入したコンパクトディスクおよびカセットテープに ついて、被控訴人らは、そこに収録されている各実演楽曲につき著作権法89条1項に 基づく実演家の著作隣接権(法91条1項の実演家の録音権に含まれるレコードの増製 (複製)権(法2条1項13号、同15号参照))を有していると主張し、同控訴人ら は輸入の時において国内において作成したとしたならば著作隣接権の侵害となるべき行 為によって作成された物であると知りながら、日本国内において頒布したとして、法1 13条1項1号、2号及び112条に基づく本件輸入レコードの輸入又は頒布の差止め 及び廃棄を請求し、また、被控訴人らが著作隣接権を有する実演を収録したレコードの 輸入を許諾する場合の通常の許諾料は、実演楽曲1曲、レコード1枚につき20円であ るとして、法114条2項の適用により著作隣接権の行使につき受けるべき金銭の額に 相当する額を損害額とする不法行為に基づく損害賠償の各請求その他の請求をおこなっ た事案である。  原判決は、著作隣接権の侵害行為を認定して、本件輸入レコードの輸入または頒布の 差止めおよび廃棄、あるいは損害賠償その他の請求を認容した。  控訴棄却。 (第一審:東京地判平成11年4月14日) ■争 点 @ 本件レコード会社は本件実演を本件レコードに写調することによって旧法22条の 7のレコードの著作権を取得し、これによって本件実演家は、旧法上の歌唱の著作権を 喪失したと解釈される旨の控訴人エー・アール・シーらの主張を排斥したことの当否、 A 本件実演については、本件レコード会社の法人著作が成立し、本件実演家が旧法上 の歌唱の著作権を取得することはない旨の控訴人らの主張を排斥し、また、本件レコー ドは、本件実演家が本件実演の著作者であることを明示して発行されたと判示したこと の当否、 B 控訴人エー・アール・シーらの法114条2項の適用による損害額として、 本件輸入レコードの輸入数量全部についての使用料相当額を認定してこの損害賠償請求 を認容し、かつ、本件輸入レコードの廃棄請求を認容した点について、本件輸入レコー ドの輸入数量から廃棄すべき在庫数量を差し引いた数量(販売数量)についての使用料 相当額が損害額として認定されるべきである旨の控訴人エー・アール・シーらの当審に おける新たな主張についての当否、及び、原判決認定の許諾料の金額の当否、 C 争点Bに関連して、当審では、控訴人エー・アール・シーらが輸入した本件輸入レ コードの輸入数量について、被控訴人ら及び控訴人エー・アール・シーらの原審におけ る主張が変更され、また、控訴人エー・アール・シーらによる本件輸入レコードの販売 数量(在庫数量)について、被控訴人及び控訴人エー・アール・シーらによる具体的主 張がされており、本件輸入レコードの輸入数量及び販売数量(在庫数量)に関する当事 者の主張についての当否、が当審における争点である。