・東京地判平成14年11月15日  Qシート事件  原告(株式会社インタービジョン)および被告会社(株式会社市場価値測定研究所) は、経営、労務、人事に関するコンサルタント業、人材の職業適性能力開発のための適 性検査及び研修の実施、コンピューターソフトウェアの研究、開発、販売、インターネ ットを利用した各種情報提供サービス並びにインターネットを利用した職業適性能力診 断業務等を業とする会社である。被告Aは、過去に6か月間ほど原告の代表取締役を務 めていたが、その後、被告会社の代表取締役となった。  原告の代表取締役であるBは、組織の生産性を向上させるFFS(Five Factors&Str ess)理論を提唱し、FFS理論に使用するための個性分析用質問である「FFS Qシ ート(FFS80問診票)」(Qシート)を1981年に完成した。原告は、Bから、 FFS理論に関する排他的な権利行使の許諾を受けている。  被告会社は、ウェブサイトに合計210問の質問から構成される「IT業界向け市場 価値測定テスト」を掲載した。その質問のうち50問はQシートの質問と同一である。  本件は、被告AがBのQシートに関する著作権及び著作者人格権(複製権、氏名表示 権、同一性保持権)を侵害したところ、原告は、Qシートについて、Bから独占的利用 許諾を受けているとして、原告が被告らに対し、民法709条及び44条1項に基づき 連帯して損害賠償をすることを求めた事案である。  判決は、Qシートの問題文の著作物を否定する一方、「Qシートの質問文全体は、素 材の選択又は配列によって創作性を有するとして、編集著作物に当たるとする余地があ る」としながらも、「測定シートでは、本件50問は、他の160問と混在しており、 その順序も、Qシートとは全く異なっている。したがって、上記のとおりQシートの質 問文全体が素材の配列によって創作性を有するとしても、被告会社が、測定テストの作 成に当たって本件50問を使用した行為は、Qシートの配列についての創作性を有する 部分を複製した行為ということはできない」として請求を棄却した。 ■争 点 (1) Qシートの著作物性 (2) 損害の発生及び額