・東京地判平成14年12月18日判時1825号107頁  「グリーン・グリーン」事件:第一審  被告製品である恋愛シミュレーションゲーム「グリーン・グリーン」を製作、販売す る被告(有限会社ガンホー)らの行為は、原告(株式会社フロントウイング)が著作権 を有する「基本シナリオ」を翻案する行為であり、原告の著作権を侵害すると主張して、 被告製品の製作、頒布の差止めと損害賠償の支払を求めるなどした事案である。  判決は、本件基本シナリオの著作物性を認めたものの、「本件基本シナリオの著作者 は、原告ではなく、被告ガンホーであると解するのが相当である」などとして請求を棄 却した。 (控訴審:東京高判平成15年7月10日) ■判決文 (ア)以上認定した事実を総合すれば、本件基本シナリオの著作者は、原告ではなく、被 告ガンホーであると解するのが相当である。理由は以下のとおりである。  すなわち、本件基本シナリオは、被告ガンホーが企画、開発し、商品として市場に供給 するためのゲームソフト「グリーン・グリーン」の製作の一段階で作成されたものである。 そして、その費用の一切は、被告ガンホーが支出している。被告ガンホーと原告との間の 契約は成立せず、原告からは、開発費用等の支払は一切されていなかった。  また、本件基本シナリオを作成したのは、専ら、被告ガンホーの役員、従業員及び被告 ガンホーが業務委託契約を締結したフリーのシナリオライター等である。すなわち、プロ デューサー業務や広報活動等を担当した被告T、開発資金調達の交渉等を担当したN、開 発計画の立案を担当したR、登場キャラクターの絵柄の作成を担当したMはいずれも被告 ガンホーの役員ないし従業員であり、脚本の作成を担当したPらは、被告ガンホーから委 託を受けた者であり、その費用も同被告が支出した。他方、Aその他原告の従業員らが、 本件基本シナリオの創作に関与したことはない。  そうすると、本件基本シナリオは、被告ガンホーの発意に基づき、同被告の従業員らが 共同して職務上作成したものであり、また、同被告名で公表することが予定された著作物 であるから、法15条1項により、同被告が著作したものであると解すべきである。