・東京地判平成15年1月20日判時1823号146頁  マクロス映画事件:第一審  本件は、原告(株式会社竜の子プロダクション)が被告(株式会社スタジオぬえ、株 式会社ビックウエスト)に対し、アニメーション映画について、原告が著作権を有する ことの確認、及び原告が本件テレビアニメを公に上映すること等の妨害行為の差止を求 めている事案である。  判決は、原告の従業員が「本件テレビアニメの全体的な創作に寄与したものというこ とができない」として、職務著作にもとづく主張を排斥しながらも、「本件テレビアニ メの映画製作者は原告であると認められる」「原告は、法29条1項の規定により、本 件テレビアニメについての著作権を取得したといえる」として、著作権(著作者人格権 を除く)の確認請求を認容した。 (控訴審:東京高判平成15年9月25日) ■評釈等 横山久芳・判例評論542号25頁 ■争 点 (1) 原告は、著作権法(以下「法」という。)15条1項の規定により、本件テレビア ニメについての著作者人格権及び著作権を取得したか。 (2) 原告は、法29条1項の規定により、本件テレビアニメについての著作権を取得し たか。 ■判決文  すなわち、前記認定のとおり、本件テレビアニメの制作に関与した主なスタッフは、 プロデューサーのP、現場プロデューサーのQ、総監督のR、シリーズ構成者のT、キ ャラクターデザイナー兼キャラ作画監督のV、メカニックデザイナーのS・U、音響監 督のW、メカ作画監督のZらであった。このうち、シナリオの作成からアフレコ、フィ ルム編集に至るまで本件テレビアニメの現場での制作作業全般に関わり、その出来映え について最終的な責任を負い、実際にも、動画の作成、戦闘シーン等のカットに関する 最終的な決定、撮影後のラッシュフィルムのチェック、フィルム編集等に関する最終的 な決定を行っていたのは、総監督のRであるから、同人は、監督として本件テレビアニ メの「全体的形成に創作的に寄与した者」に当たると認められる。これに対して、プロ デューサーであるP及び現場プロデューサーであるQは、主として、スポンサー、テレ ビ局、広告代理店との交渉等を担当しており、創作面での具体的な関与はなく、スタッ フに対して指示を与えたこともなかった。 イ 以上のとおり、P及びQは、本件テレビアニメの全体的な創作に寄与したものとい うことができないから、原告の主張は、その前提を欠く。したがって、原告は、法15 条1項の規定により、本件テレビアニメについての著作者人格権及び著作権を取得した とはいえない。