・東京地判平成15年2月26日  「聖教グラフ」事件:第一審  原告写真の著作権者である原告(創価学会)が、本件写真ビラおよび本件絵ビラが配 布されたことについて、本件各ビラは被告(日蓮正宗)らが配布したものであり、本件 写真ビラに掲載されている別紙ビラ写真目録記載の写真(以下「本件ビラ写真」という。) は原告写真1を、本件絵ビラに掲載されている本件ビラ絵は原告写真2を複製又は翻案 したものであり、原告写真に対する原告の著作権及び著作者人格権を侵害するとして、 被告らに対して、著作権法112条に基づき、本件ビラ写真又は本件ビラ絵を掲載した ビラの配布等の差止等と、不法行為に基づき損害賠償金の支払を求めた。  判決は、本件ビラ写真について、「原告の許諾を得ずに、本件ビラ写真を掲載した本 件写真ビラを作成、配布することは、原告写真1に対する原告の複製権及び譲渡権を侵 害する」、「本件ビラ写真は、原告写真1について、その背景部分をカットし、白黒写 真とするなど原告写真1の表現を改変していること、本件ビラ写真は、被写体であるD の肖像部分の上に文字、記号を重ねていること、本件ビラ写真が掲載されている本件写 真ビラには、著作権者である原告の表示がないこと(甲1)等が明らかである。したが って、本件ビラ写真を掲載した本件写真ビラを作成し、公衆へ配布した被告Bの行為は、 原告写真1について原告の有する同一性保持権及び氏名表示権を侵害する」とする一方、 「本件ビラ絵は、本件写真2における、Dの顔の表情、輪郭等の具体的な表現上の特徴 はすべて捨象されているのであって、本件写真2の表現形式上の本質的特徴部分を感得 する程度に類似しているとはいえない。……本件ビラ絵を記載した本件絵ビラを作成、 配布することは、原告写真2に対する複製権、翻案権、譲渡権、同一性保持権、氏名表 示権を侵害しない」などとして、一部について、差止および損害賠償の請求を認容した。 (控訴審:東京高判平成16年11月29日) ■争 点 (1) 本件各ビラを作成、配布することは、原告の著作権、著作者人格権を侵害するか。 ア 原告写真1についての著作権、著作者人格権侵害の有無  (ア) 原告写真1の著作物性の有無  (イ) 複製権、翻案権、譲渡権侵害の有無 a 本件ビラ写真は、原告写真1の複製物、翻案物といえるか。  b 本件写真ビラに本件ビラ写真を掲載することは、原告写真1の引用に該当するか等。  (ウ) 同一性保持権、氏名表示権侵害の有無 イ 原告写真2についての著作権、著作者人格権侵害の有無  (ア) 原告写真2の著作物性の有無  (イ) 複製権、翻案権、譲渡権、同一性保持権、氏名表示権侵害の有無 (2) 著作権侵害及び著作者人格権侵害についての被告Bの故意、過失の有無 (3) 被告日蓮正宗、被告Aに対する請求の可否 (4) 原告の本件請求についての権利濫用の有無 (5) 損害額