・大阪地判平成15年3月20日  ヘルストロン事件  本件は、本件商標権(第683757号)を有し、「ヘルストロン」という名称の電 位治療器の製造販売を行っている原告(株式会社白寿生科学研究所)が、「ヘルストロ ン」という表示を付した広告を行って中古の原告商品を販売している被告(有限会社メ ディカルプラザ)に対して、商標法2条3項8号、36条1項、37条1号又は不正競 争防止法2条1項1号、3条1項に基づき、「ヘルストロン」という名称の使用差止め を請求した事案である。  判決は、被告の広告は「中古」または「中古品」の文字が記載されていることから、 「広告主である被告が原告商品の出所であると認識することはないものと認められる」 として、「登録商標の出所表示機能を害することがないから、実質的違法性を欠く」と した。不正競争防止法については、周知性を肯定しつつ、「被告と原告の間に密接なつ ながりがあるのではないかと誤信させることはなく、混同を生じることはないというべ きである」とした。原告の請求棄却。 【判決文】 第4 当裁判所の判断 1 争点(1)(商標権侵害)について (1) 甲第84、第85号証、第87ないし第89号証、第91ないし第93号証に よれば、被告が、中古の原告商品の販売のために新聞、インターネットなどに掲載した 広告は、「中古」又は「中古品」の文字が記載されており、その態様からして、それを 見た者は、販売されている原告商品が中古品である旨を認識し、したがって、広告主で ある被告が、原告を出所とする中古の原告商品を販売していることを認識するものであ って、広告主である被告が原告商品の出所であると認識することはないものと認められ る。 (2) そうすると、被告がこのような広告を行うことは、形式的には、本件登録商標 の指定商品に関する広告に本件登録商標と同一又は類似の標章を付して展示し、若しく は頒布し、又はそのような広告を内容とする情報に本件登録商標と同一又は類似の標章 を付して電磁的方法により提供する行為(商標法2条3項8号、37条1号)に該当す るが、商品の出所混同を招くおそれがなく、登録商標の出所表示機能を害することがな いから、実質的違法性を欠くものというべきである。 したがって、被告が、中古の原告商品の販売のために、新聞、インターネットな どに「ヘルストロン」の表示を付した広告を掲載していることは、商標法との関係では 違法ではないというべきである。 2 争点(2)(不正競争防止法2条1項1号)ア(周知性)について 甲第2ないし第82号証及び弁論の全趣旨によれば、別紙2(周知性の基礎事実) 記載の事実が認められ、「ヘルストロン」の表示は、原告の商品等表示として周知であ ることが認められる。 3 争点(2)イ(混同)について 被告が、中古の原告商品の販売のために新聞、インターネットなどに掲載した広告 は、前記1(1)のとおりであり、中古品の販売業者と新品の製造販売業者の間に資金又は 組織などの密接なつながりがあるのが通常であるとする根拠はないから、上記広告は、 被告と原告の間にそのような密接なつながりがあると誤信させるものとは認められない。 したがって、被告が中古の原告商品の販売のために、新聞、インターネットなどに 「ヘルストロン」の表示を付した広告を掲載していることは、被告と原告の間に密接な つながりがあるのではないかと誤信させることはなく、混同を生じることはないという べきである。 4 よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却する。 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官 小松 一雄    裁判官 中平 健    裁判官 前田 郁勝