・東京地判平成15年4月16日  マルチウィンドウ特許事件  原告(カシオ計算機株式会社)は「マルチウィンドウ表示制御装置」と称する特許 (特許第2134277号)を有しているところ、本件特許権を侵害する基本ソフトを 搭載したパソコンを製造販売する被告(株式会社ソーテック)に対して損害賠償の請求 をした事案。  判決は、FULLPAINTというアップルコンピュータ社製パーソナルコンピュータのマッキ ントッシュ向けのグラフィックアプリケーションについて、「FULLPAINT(version 0.9) が、遅くとも1986年1月18日に米国で販売されたこと、FULLPAINTマニュアルが、 FULLPAINT(version 0.9)の操作マニュアルとして、パッケージに同梱されて頒布され た」としたうえで、「FULLPAINTマニュアルに記載されたマルチウインドウ表示制御装置 において、『ウインドウ表示制御』に際して『表示優先順位が決められた』複数のウイ ンドウを『その表示優先順位に従って』重ね合わせること及び『整理表示制御』に際し て各ウインドウを『その表示優先順位が下位のウインドウから順に上方向に重なり合わ せる』ことは、いずれも当業者が容易に想到することができる。本件発明は、FULLPAIN Tマニュアル及びMacintosh Revealedに基づいて当業者が容易に発明することができたも のといえるので、特許法29条2項の規定に該当することは明らかである。そうすると、 本件特許は無効理由が存在することが明らかであるから、本件特許権に基づく原告の本 訴請求は、権利の濫用に当たり許されない」として、原告の請求を棄却した。 ■争 点 (1) イ号物件は、構成要件AないしDを充足するか(争点1) (2) 本件特許は、新規性欠如の明らかな無効理由が存在するか(争点2) (3) 本件特許は、進歩性欠如の明らかな無効理由が存在するか(争点3) (4) 損害額はいくらか(争点4)