・東京地判平成15年7月30日  番組プロデューサ事件:第一審  被告(株式会社博宣インターナショナル)らが、フリーの立場でテレビ放送番組の制作 に関与する原告に対して合計5編のテレビ放送番組「プーシキン美術館・トロイアの黄金」 等の「プロデューサー業務」を依頼したにもかかわらず、原告を業務から排除したり、対 価および経費を支払わなかったりしたことは、原告に対する不法行為に該当するとして、 被告Bは民法709条により、被告会社らに対して損害賠償を請求し、また、原告が著作 権を有する作品を、原告に無断で放送局をして放送させた被告らの行為は、原告に対する 不法行為に該当すると主張したと解される事案。  判決は、「原告の主張に係る内容の「プロデューサー業務」を依頼したと認めることは でき」ない、「報酬の支払を約したとは認められ」ないなどとしたうえ、著作権に基づく 主張についても、著作権の取得原因事実が明らかにされていない等の理由によりこれを否 定し、原告の請求を棄却した。 (控訴審:東京高判平成16年5月18日) ■判決文 3 著作権侵害行為について  原告は、本件作品3の著作権を有することを前提として、本件作品3が原告に無断で放 送されたことが、原告の有する著作権を侵害したと主張する。  しかし、原告の主張は、以下のとおり、失当である。まず、著作権の取得原因事実を明 らかにしないものであり、それ自体失当というべきである。また、仮に著作権法16条を 根拠とするものと解したとしても、原告の主張は理由がない。すなわち、前記のとおり、 原告は、Dとともにエルミタージュ美術館所蔵の美術品を主題とした番組の製作を提案し、 被告会社の依頼を受けて同美術館の撮影許可取得活動を自ら又はEを通じて行ったが、被 告会社がエルミタージュ美術館との間で正式な撮影契約を締結し、NHKから本件作品3 の番組製作を受注することが決定した後においては、本件作品3の制作スタッフとして採 用されたことはなく、原告が本件作品3に関して、番組全体の予算又は制作スタッフ全体 の人員を決定したり、現場で撮影又は演出の指示をしたり、撮影済みテープの内容を確認 して編集したり、音響効果やナレーションを加えるなどの業務に関与したことは一切ない。 そうすると、原告は、本件作品3について、制作、監督、演出、撮影、美術等のいずれも 担当しておらず、原告が、本件作品3の全体的形成に創作的に寄与した者(法16条)に 当たると評価することはできない。  その他、原告が本件作品3の著作権を取得したというべき事実は認められない。 4 結論  以上によれば、原告の請求はいずれも理由がない。よって、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 飯村 敏明    裁判官 大寄 麻代 裁判官榎戸道也は海外出張のため署名押印ができない。 裁判長裁判官 飯村 敏明