・東京地決平成17年5月31日  録画ネット事件:仮処分異議審  仮処分決定認可。 (仮処分:東京地決平成16年10月7日)  「……海外に赴任する者が、従来の自宅にテレビアンテナが接続されたテレビパソコン を残しておき、インターネットで自己のパソコンに接続して放送を録画し、それを海外の 自己のパソコンに転送する行為は、著作権法102条1項、30条1項により適法である と解することが可能であり、日本の自宅で使用するためのテレビパソコンに各種ソフトウ ェアをインストールして販売する行為自体も、違法となることはないと解することができ る。」  「しかしながら、このような録画についての業者の関与の程度が高まるに連れて、私的 複製の要件である公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製器を用い ないこと(著作権法30条1項1号)との要件や使用する者が複製すること(同法30条 1項柱書)との要件を満たさず、海外在留邦人の複製行為自体が違法となり、業者の行為 も、海外在留邦人の行為との共同行為や教唆又は幇助と評価される場合が生じてくる。」  「更に業者の関与の程度が高まれば、業者の行為は業者が録画代行サービスを行ってい る場合と等価になり、複製の主体は業者であると評価され、海外在留邦人の行為は、単な る発注であると評価される場合も生じてくる。」  「したがって、本件における複製の主体の認定は、上記のような様々な段階があること を前提として、本件サービスにおける債務者の管理・支配の程度と利用者の管理・支配の 程度等を比較衡量した上、行われるべきである。」  「前記前提事実によれば、本件放送の複製を行っているものは、各利用者であるが、そ の複製行為は、著作権法102条1項、30条1項により適法とはならず、債務者の行為 は、各利用者と共同行為の関係にあると認めるべきである。」  「まず、各利用者は、テレビパソコンを所有して録画予約を行っているものであるから、 自然的観察により、各利用者の行為を本件放送の複製行為と認めることに何ら困難はない。」  「本件録画システムを利用しての各利用者の複製行為は、『その使用する者が複製する』 (著作権法102条1項、30条1項柱書)との要件を満たしていないから、適法となら ない。  すなわち、前記のとおり、著作権法30条1項は、家庭内などの私的領域における零 細な規模の複製は著作権者の複製権を侵害する程度が小さいことを考慮し、複製権侵害の 例外として、私的使用のための複製を適法としているところ、前記前提事実によれば、債 務者は、テレビパソコン、テレビアンテナ等の機器類及びソフトウェアが有機的に結合し た本件録画システムのうち、テレビパソコン及びその内部のソフトウェアの一部以外を所 有し、かつ、本件録画システムを設置・管理し、しかも、本件サービスが海外に居住する 利用者を対象に、日本の放送番組をその複製物によって視聴させることを目的としたサー ビスであることを宣伝し、利用者は、それに応じて本件サービスを利用し、債務者は、毎 月の保守費用の名目で利益を得ているものであるから、本件放送の複製行為は、利用者と 債務者が共同して行っているものと認めるべきであり、本件サービスにおける利用者の行 為をもって、『その使用する者が複製する』(著作権法102条1項、30条1項柱書) との要件を満たすものと認めることはできない。」