・知財高裁平成17年8月30日  ケーブルテレビ(JASRAC)事件:控訴審  本件は、控訴人(一審原告)(社団法人日本音楽著作権協会)が、被控訴人(一審被告) 成田ケーブルテレビ株式会社および被控訴人(一審被告)銚子テレビ株式会社に対しては、 控訴人との間で著作物利用許諾契約を締結しないまま、CS放送の同時再送信等に控訴人 の管理著作物を使用していると主張して、別添楽曲リスト記載の音楽著作物を有線放送に 使用することの差止めを請求するとともに、使用料相当の損害金又は不当利得金の支払を 求め、被控訴人(一審被告)行田ケーブルテレビ株式会社に対しては、同被控訴人が控訴 人との間に締結された著作物使用許諾契約に基づき、CS放送の同時再送信等に関し、管 理著作物の使用料の支払を求めている事案である。  原判決は、被控訴人らによる管理著作物の使用は、控訴人外4団体と被控訴人らとの間 に締結された5団体契約による許諾の対象とされていたとして、控訴人の請求をいずれも 棄却したので、控訴人はこれを不服として本件控訴を提起したものである。  本件訴訟の争点は多岐にわたるが、最も大きな争点は、被控訴人らがCS放送の同時再 送信を行うことが5団体契約により解決済みであるかどうかである。なお、控訴人は、当 審に至り、平成13年度分の請求を追加した。  判決は、「5団体契約について関係団体間で合意が形成された経緯、当該合意形成から 現在に至るまでの関係団体間の交渉の経過にかんがみれば、5団体契約第1条1項が定め る使用許諾の範囲にCS放送の同時再送信が含まれているとは認めることはできず、CS 放送の同時再送信は、5団体契約の対象外とされていたものと認められる」などとして、 原判決を変更して、一審原告の請求を認容した。 (第一審:東京地判平成16年5月21日、上告審:最決平成18年10月10日) ■判決文 第4 当裁判所の判断 1 請求原因(1)(当事者)、(2)(控訴人の使用料規程)及び(3)(控訴人と被控訴人行 田ケーブルテレビとの本件使用許諾契約)の各事実は、当事者間に争いがない。 2 被控訴人らによる管理著作物の使用状況(請求原因(4))について  (1) 証拠(甲7〜甲11、甲31、甲35、甲36、甲45〜甲56、甲83、甲10 2の1〜4、乙34〜乙36、乙60)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認める ことができる。  ア 一般に、有線放送事業者が加入視聴者に送信している番組には、@地上波テレビ放 送の同時再送信、ABS(放送衛星)テレビ放送の同時再送信、B地上波ラジオ放送・B Sラジオ放送の同時再送信、CCS(通信衛星)放送のチャンネル(委託放送事業者)の 同時再送信、D自主制作番組の送信、E番組供給事業者等からテープなどに固定された個 別番組を購入しての送信、及びF音楽を使用しない文字放送その他の番組の送信、以上の ものがある。  イ 被控訴人成田ケーブルテレビ及び同銚子テレビが有線放送している番組は、別表1 −@「被告成田・銚子の有線放送の内容とJASRACから放送事業者への放送許諾の有無」記 載のとおりであり、被控訴人行田ケーブルテレビが有線放送している番組は、別表1−A 「被告行田の有線放送の内容とJASRACから放送事業者への放送許諾の有無」記載のとおり である。  ウ 上記アCのCS放送のチャンネルの同時再送信においては、CNN(被控訴人成田 ケーブルテレビの29チャンネル、被控訴人銚子テレビの20チャンネル、被控訴人行田 ケーブルテレビの32チャンネル)、スペースシャワーTV(被控訴人成田ケーブルテレ ビの34チャンネル、被控訴人銚子テレビの31チャンネル、被控訴人行田ケーブルテレ ビの37チャンネル)、衛星劇場(被控訴人成田ケーブルテレビの25チャンネル、被控 訴人銚子テレビの40チャンネル、被控訴人行田ケーブルテレビの24チャンネル)等、 多数のチャンネルが送信されている。上記スペースシャワーTVは、委託放送事業者であ る株式会社スペースシャワーネットワークが供給している音楽専門チャンネルで、日本の ロック・ポップスを中心に、様々なジャンルの音楽を24時間放送しており、例えば、平 成12年4月から平成13年3月までの間に、控訴人の管理著作物である「桜の時」(楽 曲リスト45頁2737番)が37回使用されている。また、上記衛星劇場は、委託放送 事業者である株式会社衛星劇場が供給している映画専門チャンネルで、日本映画を中心に、 あらゆるジャンルの映画を、1か月100タイトルのプログラムで放送しており、例えば、 平成12年5月19日に放送された映画「釣りバカ日誌スペシャル」には、控訴人の管理 著作物である背景音楽「釣りバカ日誌スペシャルBGM」が収録されている。  エ 被控訴人らは、いずれもFM東京、NHKFMなどのラジオ放送の同時再送信を行 っているが、これらのFMラジオ放送において、控訴人の管理著作物が多数使用されてい る。  (2) 以上の認定事実によれば、被控訴人らが行う有線テレビジョン放送のCS放送のチ ャンネルの同時再送信及びラジオ放送の同時再送信において、いずれも控訴人の管理著作 物が使用されていることは明らかである。 3 被控訴人らの抗弁(1)(5団体契約による使用許諾)について  (1) 控訴人を含む5団体と被控訴人らが5団体契約を締結していることは当事者間に争 いがない。  被控訴人らは、5団体契約及び本件使用許諾契約は、有線放送を「同時再送信」と「自 主放送」に分けて、前者を5団体契約の対象とし、後者を本件使用許諾契約の対象とした ものであり、CS放送の同時再送信は、5団体契約の対象となっているから、控訴人が、 被控訴人成田ケーブルテレビ及び同銚子テレビに対して管理著作物についての著作権侵害 を理由として管理著作物の使用の差止め及び損害賠償・不当利得返還を請求し、被控訴人 行田ケーブルテレビに対して本件使用許諾契約に基づく使用料の支払を請求することは許 されないと主張するので、以下検討する。  (2) 証拠(甲1〜甲6、甲12〜甲29、甲31〜甲83、乙25〜乙30、乙34〜 乙36、乙58〜乙63、社団法人衛星放送協会及び社団法人日本ケーブルテレビ連盟に 対する調査嘱託の結果)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。  ア 現行著作権法が施行された昭和46年ころ、放送は地上波放送に限られていた。他 方、有線テレビジョン設備は、昭和30年代に設置され始め、当初は辺地の難視聴対策用 の共同受信施設として設置されていたが、昭和40年ころからは、高層ビルの建設により 発生した難視聴に対応して、都市部にも有線テレビジョン放送の設備が設置されるように なった。そのころの有線放送の多くは、主に電波障害地域において、難視聴対策としてテ レビ放送の同時再送信を行うことを主たる目的としていた。  有線放送事業者は、昭和40年代後半以降、空いているチャンネルを利用して、地元以 外のテレビ局の放送を流したり、地域ニュースや地域密着情報を提供するコミュニティ番 組などを自主制作して流すことが多くなり、また、番組制作会社から番組を購入し、これ を有線放送することも多くなっていった。  イ 昭和47年6月、有テレ法が成立した(昭和48年7月1日施行)。同年2月、権 利者団体(5団体に社団法人レコード協会(以下「レコ協」という。)を加えた6団体 (日脚連についてはその前身である放送作家協会)と有線放送事業者の団体である全国有 線テレビ組合連合会(以下「連合会」という。)とは、有線放送における著作権等の処理 について協議を開始し、同年7月以降、両者の間で著作権等使用料の定め方について協議 が重ねられた。なお、連合会は、同年中に公益法人日本有線テレビジョン放送協会設立準 備委員会(以下「準備委」という。)を発足させた。  上記権利者団体のうち、レコ協を除く5団体は、約2年半の協議を経て、昭和48年8 月、準備委との間で、テレビ放送の同時再送信についての権利処理方法及び使用料の定め 方について合意(その内容は甲63の23頁右欄〜24頁左欄のとおり)に達し、5団体 と各有線放送事業者との間で締結する統一的な契約書式(以下「5団体契約書式」とい う。)を定めた。5団体契約書式は、現在もほぼ同じものが使用されており、その第2条 に定める使用料の料率も変更されていない。昭和48年当時においても、テレビジョン放 送には地上波放送しか存在せず、衛星を使用した放送は計画自体はあったものの、近い将 来に実現する予定ではなく、第2条の使用料率については、地上波局の免許取得に際して 決められる放送サービスエリアを判断基準として、区域内再送信と区域外再送信に分けて 定められた。  控訴人は、昭和50年4月1日、本件使用料規程の「第10節有線放送」の「2有線テ レビジョン放送(CATV)」の規定について文化庁長官の認可(甲66の3)を受け、 現在まで当該部分の内容は変更されていない。  昭和50年代半ばころから有線放送の内容としてテレビジョン放送の同時再送信以外の 番組が急激に増加し、5団体契約の許諾の対象外である有線放送について、権利処理のシ ステムを作ることが要請されることとなった。控訴人は、昭和55年9月に認可された有 線放送事業者の団体である社団法人日本有線テレビジョン放送連盟(その後、「社団法人 日本シーエーティーヴィ連盟」、更に「社団法人日本ケーブルテレビ連盟」に名称が変更 された。これらを総称して「連盟」という。)との間で、昭和58年に交渉を開始し、昭 和59年7月19日、連盟に所属する各有線放送事業者が控訴人との間で締結する管理著 作物の使用許諾契約書の統一書式について合意するとともに、その内容に関する覚書(甲 24)が交わされた。同覚書及び統一書式は、昭和63年3月31日に改訂され、現在の 統一書式(甲4)及び覚書(甲5、以下「甲5覚書」という。)となった。覚書締結時で ある昭和59年及び改定時であるの昭和63年当時においても、テレビジョン放送には地 上波放送しか存在しなかった。なお、有線放送事業者は、連盟に加入すると同時に委任状 を提出することとされ、連盟は、この受任に基づき各種権利者団体との交渉権限を有し、 連盟と各権利者団体との合意事項が、連盟加入の有線放送事業者にも適用されることとな っている。  ウ 平成元年3月、我が国においてCS(通信衛星)が初めて打ち上げられ、4月から サービスが開始されたが、BS(放送衛星)とは異なり、一般家庭での直接受信はできず、 特定の企業や有線放送事業者に対する送信のみが許されていた。有線放送事業者は、それ までは第三者の制作する番組を番組制作会社からビデオテープ等のパッケージで購入して いたが、CS経由で配信を受けることができるようになり、多チャンネルの都市型CAT Vと呼ばれる型の有線放送が発達するようになった。また、平成元年の放送法の改正によ り、放送設備を所有しなくても放送事業者の免許を取得できる委託放送事業者の制度が整 備され、これに伴って、従来、番組の制作や販売を行っていた番組供給事業者が、次第に 委託放送事業者の免許を取得するようになった。  平成4年、一般家庭向けのCSアナログ放送が開始され、平成8年にはCSデジタル放 送が開始された。平成4年以降、5団体と連盟とは、有線放送に関する権利処理の在り方 を新たに協議することとなった。5団体のうち、控訴人を除く4団体は、5団体契約と同 様に、5団体が一括して有線放送事業者と契約を締結する方式により処理する方向での協 議を希望していたが、控訴人は、従来と同様、個別の契約により処理する方向での協議を 進めることとした。  控訴人は、連盟と協議を重ねた結果、平成7年9月13日、平成5年度及び平成6年度 の使用料について、確認書(甲25)を締結し、CS放送の同時再送信について、上記昭 和63年の覚書を前提とし、同覚書の「全放送時間」の算出に当たって「5団体が許諾し ているチャンネルの再送信の時間を1チャンネルあたり1日24時間として使用料を算出 する」(甲25の1項)こととし、本件使用料規程の有線テレビジョン放送に関する規定 改定の協議を行うこととした(同4項)。連盟は、同確認書について、加盟の有線放送事 業者に対し、通知文(甲29、以下「甲29通知文」という。)を送付したが、同通知文 においては、「今回の使用料については、従来の処理ルールでお支払い下さい。(・・・ CS委託放送は自主放送として計算してください。尚、詳しくはJCTA(判決注;連盟) 著作権委員会発行の「ケーブルTV著作権ハンドブック」平成3年版をご参照ください。) 」(甲29の(注)@)との説明が記載され、連盟作成の「ケーブルTV著作権ハンドブ ック」平成3年度版(甲80、以下「甲80ハンドブック」という。)には、「ケーブル TV事業者が放送する各種番組などの調達方法を考えてみますと、おおよそ次の通りです。 !空中波や衛星放送を再送信する "通信衛星からチャンネル単位で供給を受ける #テー プなどの個別番組を購入する $自主制作する」(7頁第2段落)、「4.テレビ自主放 送の著作権処理 (1) はじめに ケーブルTV事業の発展過程に於いて、当初は同時再送 信サービスだけであったものに加えて、地域情報番組などの自主制作番組の放送を開始す るようになりました。・・・(2) ケーブルTV自主放送に際しての音楽著作物の使用料率 式 前述の様に、自主制作番組で使用する音楽著作物や購入番組(スペース・ケーブルネ ットで放送するチャンネルの番組・・・を含む)に使用されている音楽著作物を含めて、 その使用料計算式については長年の協議の結果、昭和59年に取り決めがなされ、多チャ ンネル時代を踏まえて昭和62年に改正がありました」(21頁第1段落〜下第2段落)、 「8.実務にあたって (1) TV同時再送信とラジオ(音楽著作物以外)同時再送信 @ 契約の締結 権利者5団体の窓口である日脚連より、・・・二種類の契約書が送付されま す。(資料−1(判決注;5団体統一書式)と資料−3)・・・(2) 音楽著作物(JASRAC)  @契約の締結 JASRACより、・・・一種類の契約書が送付されます。この契約書には、 TV自主放送、ラジオ同時再送信の音楽著作権部分、ラジオ(音声)自主放送の三種が一 本化されて全て含まれています。(資料−6(判決注;本件使用許諾契約)参照) ただ し、TV同時再送信の音楽著作権部分(JASRAC部分)の契約は、この契約書に含まれるの でなく、上記(1)の契約書によって契約されることになります」(33頁第1段落〜34 頁第4段落)と記載されている。控訴人と連盟は、その後も本件使用料規程改定の協議を 継続し、確認書(甲6、甲106)を取り交わしている。  (3) 上記認定事実によれば、5団体と準備委がテレビ放送の同時再送信についての権利 処理方法及び使用料についての統一的な契約書式である5団体契約書式を定めた昭和48 年8月当時、テレビジョン放送には地上波放送しか存在せず、衛星を使用した放送は近い 将来に実現する予定はなく、使用料率は地上波局の免許取得に際して決められる放送サー ビスエリアを判断基準として区域内再送信と区域外再送信に分けて定められていたもので あるから、5団体契約書式が合意された当時において、5団体と準備委がCS放送の同時 再送信を5団体契約の対象としていたものと認めることはできない。そして、その後昭和 59年に、5団体契約の許諾の対象外である有線放送については、控訴人と連盟との間で 管理著作物の使用許諾契約書の統一書式について合意が成立し、覚書(甲24)が締結さ れ、さらに、平成元年3月、我が国においてCS(通信衛星)のサービスが開始されて有 線放送事業者は、それまでビデオテープ等のパッケージで購入していた番組をCS経由で 配信を受けることができるようになったが、連盟が会員に送付した甲29通知文及び連盟 が会員に配布した解説書である甲80ハンドブックには、CS委託放送は自主放送として 計算することとされた。平成4年、一般家庭向けのCSアナログ放送が開始され、以降、 5団体と連盟とは、有線放送に関する権利処理の在り方を新たに協議することとなったが、 控訴人は、上記合意を前提に従来と同様に個別契約により処理する方向での協議を進め、 その後も本件使用料規程改定の協議を継続して確認書(甲6、甲106)を取り交わして いるのである。昭和48年当時5団体契約の対象とされていなかった控訴人の管理著作物 については、昭和59年に控訴人と連盟との間で管理著作物の使用許諾契約書の統一書式 (本件使用許諾契約)について合意が成立し、覚書(甲24)が締結されたものである (昭和63年3月31日に改訂され、現在の統一書式(甲4)及び覚書(甲5)となっ た。)。そして、当時、有線放送事業者は、第三者の制作する番組を番組制作会社からビ デオテープ等のパッケージで購入していた(同統一書式の「有線テレビジョン放送の自主 放送」(契約書前文)に該当する。)が、これが平成元年からCS経由で配信を受けるこ とができるようになり、さらに、平成4年からは、CS放送されるようになったものであ る。  (4) 以上のとおり、5団体契約について関係団体間で合意が形成された経緯、当該合意 形成から現在に至るまでの関係団体間の交渉の経過にかんがみれば、5団体契約第1条1 項が定める使用許諾の範囲にCS放送の同時再送信が含まれているとは認めることはでき ず、CS放送の同時再送信は、5団体契約の対象外とされていたものと認められる。  (5) また、被控訴人らは、いずれもFM東京、NHKFMなどのラジオ放送の同時再送 信を行い、これらのFMラジオ放送において、控訴人の管理著作物が多数使用されている ことは上記認定のとおりであるところ、これが5団体契約による使用許諾の対象となって いたものと認めることもできない。  (6) 以上検討したこところによれば、5団体契約の存在を理由として、控訴人の差止請 求及び損害賠償・不当利得返還請求ないし使用料請求が許されないということはできない。  原判決は、CS放送の同時再送信は5団体契約の対象になっていたと認定するが、要は 被控訴人らとの間で個別に締結された5団体契約の契約内容に関する事実認定の問題であ り、当裁判所は、上記のとおり、CS放送の同時再送信等は5団体契約の対象外と認定す るものである。  そこで、進んで、他の争点について検討を加える。 4 被控訴人らの抗弁(2)(映画の著作物であることによる著作権行使の制限)について  (1) 被控訴人らは、テレビ番組はすべて「映画の著作物」に該当するとして、テレビ番 組の構成要素である音楽の著作物の著作権者が公衆送信禁止権や使用料等請求権を行使す ることはできない旨主張する。  しかし、著作権法16条本文は、「映画の著作物の著作者は、その映画の著作物におい て翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者を除き、制作、監 督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者 とする」と規定しているところ、同規定の趣旨は、映画の著作物において翻案され、又は 複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者(いわゆるクラシカル・オーサー) については、映画の著作物の著作者とは別個に映画の著作物について権利行使することが できることをいうものと解すべきである。したがって、被控訴人らが同時再送信するテレ ビ番組の中に映画の著作物に該当するものがあったとしても、当該映画の著作物において 翻案され、又は複製された著作物の著作者は、クラシカル・オーサーとして、テレビ番組 の著作者とは別に、著作権者としての権利行使を行うことができるというべきであるから、 被控訴人らの上記主張は失当というほかない。  (2) 被控訴人らは、最高裁キャンディ事件判決の趣旨に照らすならば、映画の著作物た るテレビ番組について、控訴人は、他の権利者との合意によらなければ著作権を行使する ことができず、そもそも被控訴人らに対して著作権の主張をなし得る立場にないから、被 控訴人らは、放送番組を有線放送するに対して、控訴人から許諾を得る必要はないと主張 する。  しかし、上記判決は、二次的著作物の著作者による当該二次的著作物の複製行為に関し、 原著作物の著作者は、当該二次的著作物を合意によることなく利用することの差止めを求 めることができる旨を明らかにしたものであり、二次的著作物の原著作物の著作者が単独 で第三者に許諾権限を行使することができない旨をいうものではない。したがって、被控 訴人らの上記主張も、失当というほかない。 5 被控訴人らの抗弁(3)(履行補助行為であることによる制限)について  被控訴人らは、同人らは有線放送事業者による放送事業者の「放送」の履行補助行為に すぎないから、著作物の新たな利用とはいえず、控訴人は、「放送」に当たり、放送事業 者から音楽著作物の使用料を既に受領しているのである(使用料規程〔甲3〕50頁〜5 5頁)から、「放送」と「同時再送信」の2回にわたる権利行使を認めることは、実質的 に音楽著作物の使用料の「二重取り」になって許されないと主張する。  しかし、放送及び有線放送は、著作権法2条1項8号、9号の2により別個の公衆送信 として位置付けられ、また、送信の主体も異なることに加えて、現実の送信の態様も異な るものであるから、有線放送事業者による放送の同時再送信は、放送事業者による放送と は別の公衆送信であり、これを有線放送事業者による放送の履行補助行為であるというこ とはできない。そして、有線放送事業者による放送の同時再送信は、放送事業者による放 送とは別の公衆送信である以上、控訴人が「放送」と「同時再送信」の2回にわたる権利 行使をすることが、音楽著作物の使用料の「二重取り」になるという非難は当を得ないも のというほかない。 6 被控訴人らの抗弁(4)(仲介業法違反)について  (1) 被控訴人らは、文化庁長官の認可を受けていない使用料規程に基づいて請求を行う ことは、仲介業務法に違反することになるというべきところ、本件使用料規程においては、 「有線テレビ事業者が、無線テレビジョン放送を受けて行なうテレビジョン放送の再送信 において著作物を使用する場合の使用料」は、備考@に基づき締結された5団体契約の使 用料率に従って計算され、「再送信を除いた自主放送」の場合にのみ備考Aの使用料率に よることとして文化庁長官の認可を受けているのであり、地上波、衛星波とも電波を受信 すると同時に有線放送する場合を「同時再送信」と定めているのであるから、控訴人の本 訴請求は、仲介業務法に反し文化庁長官の認可を受けた使用料規程に反する請求を行うも のである旨主張する。  (2) 証拠(甲3、甲66の1〜3)によれば、本件使用料規程(甲3の69頁〜70頁) は、昭和49年4月30日付け認可申請(甲66の1)及び昭和50年1月31日付け修 正申請(甲66の2)に基づき、同年4月1日付けをもって仲介業務法3条1項の規定に より文化庁長官により認可(甲66の3)されたものであると認められところ、上記認可 申請には、使用料規程の備考@について、「テレビ放送の再送信を行なう場合、テレビ放 送番組中に、多種の権利(著作権、著作隣接権)が含まれており、・・・、社団法人日本 文芸著作権保護同盟、協同組合日本放送作家組合、日本シナリオ作家協同組合、著作隣接 権団体として社団法人日本芸能実演家団体協議会が共同して権利処理を行なう方向にあり、 放送の再送信については、本規程にかかわりなく、前記団体が共同して、CATV事業者 と協議して定める料率によることになります」、備考Aについて、「CATV事業者がテ レビ放送の再送信の他に自主放送を行う場合の当協会の使用料算出の方式を定めたもので、 再送信の放送時間数に対して、自主放送の放送時間数の比率を決める場合、月間総放送時 間中の割合をもって行なうこととし、算出基準月その他は、CATV事業者と当協会との 契約でカバーすることといたします」と記載されている。  これらの記載によれば、備考@は、控訴人を含む権利者団体が共同してCATV事業者 と別途協議して料率を定めた場合には、その例外的に一元的権利処理をすることを合意し た範囲においてのみ合意した料率が適用されることを、備考Aは、「再送信のほかに」と して原則的使用料が適用される自主放送の使用料算出方式を、それぞれ定めたものである 解することができる。  したがって、文化庁長官の認可は、本件使用料規程が上記の趣旨のものであるとしてさ れたものと認められところ、5団体契約第1条1項が定める使用許諾の範囲にCS放送の 同時再送信が含まれていると認めることができないことは上記のとおりであるから、本件 使用許諾契約の対象であるCS放送の同時再送信については、備考Aが適用されることと なり、これと同様の立場に立つ控訴人の本訴請求が、仲介業務法に反し文化庁長官の認可 を受けた使用料規程に反するということはできない。 7 被控訴人らの抗弁(5)(独占禁止法違反)について  被控訴人らは、本件使用料規程は、CS放送の同時再送信の使用料算定方式については 文化庁長官の認可を受けておらず、極めて不合理な内容になっており、独占禁止法19条 の規定を受けて定められた一般指定14条3号、4号に違反するものであり、無効と解す べきであると主張する。  しかしながら、本件使用料規程が文化庁長官の認可を受けたものであることは上記6の とおりであり、また、これが独占禁止法19条に違反する不公正な取引であるとは認める ことはできない。 8 被控訴人らの抗弁(6)(消滅時効)について  (1) 被控訴人成田ケーブルテレビ及び銚子テレビに対する請求部分  ア 不法行為による損害賠償請求  控訴人は、平成3年から平成12年度分まで(平成13年3月31日まで)の損害賠償 請求については平成13年10月1日に本訴を提起し、平成13年度分(平成13年4月 1日から平成14年3月31日まで)の損害賠償請求については平成17年3月22日訴 えの変更の申立てをしたことは記録上明らかである。そして、証拠(甲84の1、甲85 の1)によれば、控訴人は、被控訴人らの各サービス開始の当初から、被控訴人らが管理 著作物を使用していたことを知っていたものと認めることができる。  そうすると、平成3年から平成12年度分については平成10年9月30日以前につき、 平成13年度分については平成13年4月1日から平成14年3月21日までの分の損害 賠償請求権は、いずれも時効により消滅したものというべきである。  イ 不当利得返還請求  被控訴人らは、控訴人の不当利得返還請求について、不法行為債権が時効消滅した後も 不当利得返還請求権の行使ができるとする控訴人の主張が認められるならば、不法行為訴 訟における損害賠償請求権について法的関係の早期安定を図った民法724条の趣旨が没 却されるから、控訴人の請求は理由がないと主張する。  しかしながら、不法行為に基づく損害賠償請求権と不当利得返還請求権とは実体法上別 個の請求権であるから、不法行為に基づく損害賠償請求権が時効消滅したとしても、その ことは不当利得返還請求権の行使を阻害する事由になるということはできない。したがっ て、被控訴人らの上記主張は採用することができない(なお、被控訴人らは、不当利得返 還請求権の時効消滅の主張はしていない。)。  (2) 被控訴人行田ケーブルテレビに対する請求部分  控訴人は、平成8年から平成12年度まで(平成13年3月31日まで)の使用料につ いて平成13年10月1日に本訴を提起し、平成13年度分(平成13年4月1日から平 成14年3月31日まで)の使用料について平成17年3月22日訴えの変更の申立てを したことは記録上明らかである。ところで、本件使用許諾契約に基づく使用料は、同契約 第2条により年度ごとに算出され、支払われるべきものと認められるから、当該年度分の 使用料の履行期は、当該年度の末日となる。そうすると、平成8年度分の履行期は当該年 度末である平成9年3月31日であり、訴え変更に係る平成13年分の履行期は当該年度 末である平成14年3月31日であり、いずれも商事債権の5年の時効期間(商法522 条)は経過していないから、同被控訴人の請求についての消滅時効の主張は理由がない。 9 損害額の算定について  (1) 被控訴人らは、請求原因に対する認否イにおいて、有線放送では、契約世帯数が毎 月変動するため、利用料収入については、期間中の利用者の増減が反映されるように、 (当年度受信契約者数−前年度受信契約者数/2+前年度受信契約者数)×単価3000 円×12か月という算式によるべきであると主張する。しかし、本件使用許諾契約の第2 条及び第3条において、丙(有線テレビジョン事業者)が提出すべき証憑書類及び計算方 法が定められているのであるから、これに反する被控訴人らの上記主張は採用することが できない。  (2) また、被控訴人らは、本件使用許諾契約において使用料算定の基礎となる「営業収 入」については、自営電柱代及び番組費が控除されるべきであると主張する。しかし、本 件使用許諾契約においては、利益ではなく収入を基礎として使用料等を算定すべきものと 規定されているのであるから、自営柱電気代及び番組購入費を控除すべきものとは認めら れない。  (3) 被控訴人成田ケーブルテレビの使用料相当額等  ア 証拠(乙35の11、乙37の1〜10)によれば、平成3年度ないし平成13年 度の使用料算定の基礎となる営業収入のうち平成2年度ないし平成12年度の利用料は別 表2−@の「受信料収入」欄記載のとおりであると認められる。また、広告料収入につい ては、証拠(乙44の1〜10、乙46の1〜9)によれば、同表の「広告料収入」欄記 載のであると認められる。そうすると、平成3年度ないし平成13年度の使用料の基礎と なる営業収入の額は、同表の「営業収入」欄記載のとおりである。そして、営業収入から の控除の対象となるコンバータリース料及びペイチャンネル購入費は、証拠(乙50の5 〜11、乙52の5〜11)によれば、それぞれ同表の「HTリース料」欄、「ペイ購入 費」欄記載のとおりである。  また、証拠(甲45、甲46の2、甲47、甲56の1、2、乙35)及び確認書(甲 6、甲106)の合意によれば、平成8年度ないし平成13年度の使用料算定の基礎とな る「自主放送時間」、「全放送時間」は、それぞれ同表の「自主放送時間・CSA」欄、 「全放送時間B」欄記載のとおりであると認められる。そうすると、テレビ使用料額(消 費税を含む。)の額は、同表の「テレビ使用料相当額」欄記載のとおりである。  音声放送については、甲5覚書の第2条により、上記10(1)のとおり定められていると ころ、被控訴人成田ケーブルテレビについては、音声放送の営業収入が区分できないから、 上記定額使用料を適用し、これに消費税を加算すると、その額は、同表の「音声使用料相 当額」欄記載のとおりである。  イ 被控訴人成田ケーブルテレビは、営業収入から電波障害回線利用料及び番組表通信 費を控除すべきであると主張する。しかし、本件使用許諾契約の第2条において定められ ている計算方法によれば、電波障害の原因者から委託を受けて有線テレビ事業者が障害地 域に受信施設等を設置した場合であっても、その地域の世帯から受信料を徴収していれば 算定の基礎に加算されるから、電波障害回線利用料を控除すべきであるということはでき ない。また、上記確認書によれば、番組表購読料は控除しないこととされているから、番 組表通信費を控除することはできない。  したがって、被控訴人成田ケーブルテレビの上記主張は採用することができない。  ウ また、被控訴人成田ケーブルテレビは、WOWOWのキックバックを控除すべきで あると主張して、乙76及び乙77の1〜7を提出し、上記確認書の合意Eによれば、W OWOWからのキックバックは営業収入に含めないことされている。しかしながら、控訴 人は、平成13年10月1日に本訴が提起すると同時に、甲6の確認書を提出し、同確認 書には、WOWOWからのキックバックは営業収入に含めないことが記載されている上、 「WOWOWからのキックバックについては、書証の提出がないため控除しない」(平成 16年2月17日付け準備書面(7)の14頁)と指摘していたものである。それにもかか わらず、被控訴人成田ケーブルテレビは控訴審である当審の弁論が終結された第6回口頭 弁論期日において突然上記各書証を提出したものである。しかも、乙76の体裁は同被控 訴人代表者作成の陳述書であって、客観的な裏付けを有するものということはできない。 また、乙77の1から7は同被控訴人の総勘定元帳(写し)として提出されたものである が、ほとんどの部分が塗りつぶされている。上記各書証の提出に至る上記訴訟の経緯及び これらの書証の体裁に照らすと、上記各書証の信用性には疑問があるものというほかなく、 これらの証拠によってWOWOWからのキックバックを認めることはできず、ほかにこれ を認めるに足りる証拠はない。したがって、WOWOWからのキックバックを控除するこ とはできない。  エ 以上によれば、平成3年度ないし平成13年度の使用料相当額は、同表の「使用料 相当額計」欄記載のとおりである。  オ 不当利得返還請求との関係  本件訴訟において、控訴人は、被控訴人成田ケーブルテレビ及び同銚子テレビに対し、 不法行為による損害賠償と不当利得返還を択一的に請求しているところ、平成10年9月 30日以前、及び平成13年4月1日から平成14年3月21日までの間の不法行為に基 づく損害賠償請求権が時効により消滅したことは、前記のとおりである。したがって、消 滅時効が成立している平成3年分から平成9年分並びに消滅時効が成立した部分が一部存 在する平成10年分の平成10年4月1日から同年9月30日までの部分及び平成13年 分の平成13年4月1日から平成14年3月21日までの部分については、不当利得返還 請求として認容することとし、その額は前記使用料相当額と認める。また、本件訴訟に至 る経緯にかんがみれば、同被控訴人らが悪意の受益者であることが認められるから、民法 704条の利息分も理由がある。  以上によれば、被控訴人成田ケーブルテレビに対する請求のうち、不法行為による損害 賠償請求を認容する部分は平成10年分の一部、平成11年分、平成12年分及び平成1 3年分の一部であり、不当利得返還請求を認容する部分は平成3年分から平成9年分、平 成10年分の一部及び平成13年分の一部ということになる(後記10で改めて整理す る。)。  (4) 被控訴人銚子テレビの使用料相当額等  ア 証拠(乙36の1〜11)によれば、平成3年度ないし平成13年度の使用料算定 の基礎となる営業収入のうち平成2年度ないし平成12年度の利用料は別表2−Aの「受 信料収入」欄記載のとおりであると認められる。そうすると、平成3年度ないし平成13 年度の使用料の基礎となる営業収入の額は、同表の「営業収入@」欄記載のとおりである。  イ 被控訴人銚子テレビは、営業収入からコンバータリース料及びチャンネルガイド費 を控除すべきであると主張する。しかしながら、コンバータリース料に関する乙75は上 記口頭弁論期日において突然提出されたものであり、その体裁も同被控訴人の代表者作成 の陳述書であって、客観的な裏付けを有するものということはできず、ほかにこれを認め るに足りる証拠はない。また、上記確認書の合意によれば、番組表購読料は控除しないこ ととされているのであるから、チャンネルガイド費を控除することはできない。  ウ 以上によれば、平成3年度ないし平成13年度の使用料相当額は、同表の「使用料 相当額計」欄記載のとおりである。  エ なお、不当利得返還請求との関係は、前記(3)オで説示したとおりである。  (5) 被控訴人行田ケーブルテレビに対する使用料額について  ア 証拠(甲6、甲25〜甲29)によれば、控訴人と連盟との間において、「放送時 間」に関しては、@地上波放送・BS放送の再送信の放送時間を1週間当たり168時間 とみなすこと、A文字放送等音楽を全く使用しないチャンネルは算出対象から除くこと、 CS放送チャンネルの1週間当たりの放送時間を各チャンネルごとに確認書(甲6、甲1 06)記載の表のとおりとみなすこと、「営業収入」に関しては、@ペイチャンネルの番 組供給者との間で、ペイチャンネル分の収入を按分する契約があり、番組供給者への支払 を区別して報告するときは、事業者が徴収するペイチャンネル分の収入から番組供給者へ の支払分を控除すること、A事業者が、受信料の中にコンバータリース料を含めている場 合で、そのリース料を報告するときは、その額を控除すること、B番組表購読料は控除し ないこと、C主として同時再放送のチャンネルで編成される基本受信料と多チャンネルサ ービスの受信料を区別して設定・報告する場合の算出方法、D使用料は、前年度の営業収 入に基づき算出するが、開局年度の使用料は開局年度の営業収入に基づき算出すること、 EWOWOWからのキックバックは営業収入に含めないこと、等が合意(以下「確認書の 合意」という。)されていることが認められる。  そして、証拠(乙34の1〜6)によれば、平成8年度ないし平成13年度の使用料算 定の基礎となる営業収入のうち平成7年度ないし平成12年度の利用料は別表2−Bの 「受信料収入」欄記載のとおりであると認められる。また、広告料収入については、証拠 (乙45、乙34の5)によれば、平成12年度において640万6905円であり、平 成12年度における上記「受信料収入」1億0599万4000円の6.04%であるか ら、各年度においても同割合であると推認することができ、その額は同表の「広告料収入」 欄記載のであると認められる。そうすると、平成8年度ないし平成13年度の使用料の基 礎となる営業収入の額は、同表の「営業収入@」欄記載のとおりである。  また、証拠(甲55の1、2、乙34の1〜6)及び確認書の合意によれば、平成8年 度ないし平成13年度の使用料算定の基礎となる「自主放送時間」、「全放送時間」は、 それぞれ同表の「自主放送時間A」欄、「全放送時間B」欄記載のとおりであると認めら れる。そうすると、テレビ使用料額(消費税を含む。)の額は、同表の「テレビ使用料額」 欄記載のとおりである。  音声放送については、甲5覚書の第2条により、音声放送の営業収入がテレビジョン放 送の営業収入から区分できない場合等には、同覚書添付の別表に定める定額使用料(受信 契約者数3000世帯まで6000円、同5000世帯まで7000円)が適用されるこ とが定められている。被控訴人行田ケーブルテレビについては、音声放送の営業収入が区 分できないから、上記定額使用料を適用し、これに消費税を加算すると、その額は、同表 の「音声使用料額」欄記載のとおりである。  イ 被控訴人行田ケーブルテレビは、営業収入からガイド誌代及びコンバータリース料 を控除すべきであると主張する。しかしながら、上記確認書のによれば、番組表購読料は 控除しないこととされているのであるから、ガイド誌代を控除することはできない。また、 コンバータリース料に係る乙73は、弁論が終結された当審第6回口頭弁論期日において 突然提出されたものであり、その体裁も同被控訴人代表者作成の陳述書であって、客観的 な裏付けを有するものということはできない。  したがって、被控訴人行田ケーブルテレビの上記主張は採用することができない。  ウ 以上によれば、平成8年度ないし平成13年度の使用料は、同表の「使用料額計」 欄記載のとおりである。  (6) 弁護士費用  本件事案の内容、審理経過、認容額等にかんがみ、被控訴人成田ケーブルテレビ及び同 銚子テレビの不法行為により同被控訴人らに負担させるべき弁護士費用の額は、被控訴人 成田ケーブルテレビについては40万円(不法行為としての使用料相当認容額と差止請求 訴額の合計額を考慮)、同銚子については5万円(前同)とするのが相当である。 10 まとめ  以上によると、控訴人の被控訴人らに対する本訴請求は、  (1) 被控訴人成田ケーブルテレビに対しては、  ア 著作権に基づく差止請求と、  イ 別表2−@記載の各年度の使用料相当額合計624万1857円(平成3年分から 平成12年分については、平成10年9月30日までは不当利得金として、平成10年1 0月1日から平成13年3月31日までは損害賠償金として。平成13年分については、 平成13年4月1日から平成14年3月21日までは不当利得金として、平成14年3月 22日から平成14年3月31日までは損害賠償金として。)と、  ウ 別表2−@記載の既経過遅延損害金85万5136円(ただし、平成3年分から平 成12年分の平成10年9月30日までの分と、平成13年分の平成14年3月22日ま での分は法定利息として。その余は遅延損害金として。)と、  エ 弁護士費用40万円と、  オ 前記イの使用料相当額合計624万1857円と弁護士費用40万円の総合計66 4万1857円に対する平成13年10月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延 損害金(ただし、使用料相当額のうち損害賠償債権の時効消滅部分については法定利息と して)と  を、各求める部分(なお、前記イ・ウ・エの合計額は749万6993円である。)は 理由があるが、その余は理由がなく、  (2) 被控訴人銚子テレビに対しては、  ア 著作権に基づく差止請求と、  イ 別表2−A記載の使用料相当額合計72万0504円(内訳は前記(1)イのとおり)と、  ウ 別表2−A記載の既経過遅延損害金9万1383円(ただし、法定利息との関係は 前記(1)ウのとおり)と、  エ 弁護士費用5万円と、  オ 前記イの使用料相当額合計72万0504円と弁護士費用5万円の総合計77万0 504円に対する平成13年10月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金 (ただし、法定利息との関係は前記(1)オのとおり)と  を、各求める部分(なお、前記イ・ウ・エの合計額は86万1887円である。)は理 由があるが、その余は理由がなく、  (3) 被控訴人行田ケーブルテレビに対しては、平成8年度ないし平成13年度の使用料 合計292万9601円及びうち平成8年度ないし平成12年度の使用料合計226万9 601円に対する訴状送達の日の翌日である平成13年10月12日から、平成13年度 分の使用料65万8208円に対する弁済期の翌日である平成14年4月1日から、各支 払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める全部について理由 がある。 11 結論  よって、これと異なる原判決を変更し、控訴人の本訴請求を、前記10の理由がある限度 で認容し、その余は棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官 中野 哲弘    裁判官 岡本 岳    裁判官 上田 卓哉