・東京地判平成17年9月27日判時1917号101頁  ストリートファッション肖像写真事件  本件は、原告が、被告(財団法人日本ファッション協会)らに対し、銀座界隈を歩いて いる原告の写真(DOLCE AND GABBANA がパリコレに出展した衣装(胸部に大きく「SEX」 の文字がデザインされたもの)を着ている)を無断で撮影し、これを被告らの管理するウ ェブサイト「Tokyo Street Style〔銀座〕」に掲載したところ、2ちゃんねるの掲示板サ イトで同写真へのリンクが張られるとともに「オバハン無理すんな」等の発言が書き込ま れたことについて、被告の行為が原告の肖像権を侵害するものであるとして、不法行為に 基づく損害賠償請求をした事案である。  判決は、肖像権侵害を認めて30万円の慰謝料等の損害賠償請求を認容した。 ■争 点 (1)本件写真の撮影および本件サイトへの掲載行為は原告の肖像権を侵害するか否か。 (2)本件写真の撮影および本件サイトへの掲載行為は表現の自由の行使として違法性を 阻却するか。 (3)被告らの行為と訴外第三者らの誹謗中傷行為による損害との間に相当因果関係があ るか。 (4)損害額 ■判決文 ・争点1  「そこで、本件写真の撮影及び本件サイトへの掲載が原告の肖像権を侵害するか否かに ついて検討するに、本件写真は原告の全身像に焦点を絞り、その容貌もはっきり分かる形 で大写しに撮影されたものであり、しかも、原告の着用していた服の胸部には上記のよう な『SEX』の文字がデザインされていたのであるから、一般人であれば、自己がかかる 写真を撮影されることを知れば心理的な負担を覚え、このような写真を撮影されたり、こ れをウェブサイトに掲載されることを望まないものと認められる。」  「したがって、原告の承諾を得ずに、本件写真を撮影し、これを本件サイトに掲載した 被告らの行為は、原告の肖像権を侵害するものと認められる。」 ・争点2  「以上のとおり、本件写真の撮影及び本件サイトへの掲載行為は、表現行為としての公 共性と目的の公益性を備えているものの、表現方法としての相当性を欠くものといわざる を得ないから、その違法性は阻却されない。」 ・争点3  「しかしながら、上記の目的や、被告らはこれまで本件以外には、本件サイトに掲載し た写真が悪用され、第三者にインターネット上で誹謗中傷された等の指摘や苦情を受けた ことがなかったことに照らすと、被告らにおいて、不特定の第三者が上記のようなファッ ションについての個人的な意見・評価・感想等を超えて、悪意をもって特定の個人を誹謗 中傷することまでをも予見し又は予見することができたと認めることはできない。そして、 このことは、本件写真が原告の全身像に焦点を絞り、その要望を含めて大写しにされたも のであり、原告の着用する服に『SEX』とのデザインが施されていたとしても、異なる ところはないというべきである。  ウ また、訴外第三者らによる誹謗中傷は、訴外第三者らの自由意思による独自の行 為であり、しかも、被告らが本件サイトを設けた意図とは全くかけ離れた性質のものであ る。  エ 以上のことからすると、訴外第三者らによる誹謗中傷により原告が精神的苦痛を被 ったとしても、これと被告らによる本件写真の撮影及び本件サイトへの掲載との間に相当 因果関係を認めることはできないというべきである。」