・知財高決平成17年11月15日  録画ネット事件:保全抗告審  Y(有限会社エフエービジョン)は「録画ネット」(http://www.6ga.net/)との名称 で、海外などにおいて日本国内のテレビ番組を録画して視聴できるサービスを提供してい る。具体的には、Yが利用者ごとに1台ずつ販売したテレビチューナー付きのパソコンを、 Yの事務所内にまとめて設置し、テレビアンテナを接続するなどして放送番組を受信可能 な状態にするとともに、各利用者がインターネットを通じてテレビパソコンを操作して録 画予約し、録画されたファイルを自宅などのパソコンに転送できる環境を提供することに よって運営されている。これに対して、放送について著作隣接権および多くの放送番組に つき著作権を有するX(日本放送協会)が仮処分命令の申立てをおこなった事案。  抗告棄却。 (仮処分決定:東京地決平成16年10月7日判時1893号131頁、異議審決定:東 京地決平成17年5月31日) ■判決文  「前記認定事実によれば、@本件サービスは、Y自身が本件サイトにおいて宣伝してい るとおり、海外に居住する利用者を対象に、日本の放送番組をその複製物によって視聴さ せることのみを目的としたサービスである、A本件サービスにおいては、Y事務所内にY が設置したテレビパソコン、テレビアンテナ、ブースター、分配機、本件サーバー、ルー ター、監視サーバー等多くの機器類並びにソフトウェアが、有機的に結合して1つの本件 録画システムを構成しており、これらの機器類及びソフトウエアはすべてYが調達したY の所有物であって、Yは、上記システムが常時作動するように監視し、これを一体として 管理している、B本件サービスで録画可能な放送は、Yが設定した範囲内の放送(Y事務 所の所在する千葉県松戸市で受信されたアナログ地上波放送)に限定されている、C利用 者は、本件サービスを利用する場合、手元にあるパソコンから、Yが運営する本件サイト にアクセスし、そこで認証を受けなければ、割り当てられたテレビパソコンにアクセスす ることができず、アクセスした後も、本件サイト上で指示説明された手順に従って、番組 の録画や録画データのダウンロードを行うものであり、Yは、利用者からの問い合わせに 対し個別に回答するなどのサポートを行っている、というのである。これらの事情によれ ば、Yが相手方の放送に係る本件放送についての複製行為を管理していることは明らかで ある。  また、Yは、本件サイトにおいて、本件サービスが、海外に居住する利用者を対象に日 本の放送番組をその複製物によって視聴させることを目的としたサービスであることを宣 伝し、利用者をして本件サービスを利用させて、毎月の保守費用の名目で利益を得ている ものである。  上記各事情を総合すれば、YがXの放送に係る本件放送についての複製行為を行ってい るものというべきであり、Yの上記複製行為は、Xが本件放送に係る音又は影像について 有する著作隣接権としての複製権(著作権法98条)を侵害するものである。」