・福岡地判平成18年3月29日  さきがけ事件  新聞販売店向け顧客管理ソフトウェア「さきがけ」について、Xは、自らが著作権者で あり、被告Y3が、被告Y2および被告Y1に対し、「さきがけ」を複製、頒布、販売等 することを指示し、被告Y2が複製した「さきがけ」のプログラムを「NEWS2000」 という名称で、その試供版として約1万枚を無料で一般に頒布し、販売したと主張して、 著作権法及び不正競争防止法に基づき、差止および損害賠償等を請求した。  判決は、「さきがけ」には創作性が認められないとして著作権に基づく請求、そして不 正競争防止法に基づく請求をも棄却したが、契約解除に基づく原状回復請求についてのみ 認容した。 ■判決文 平成18年3月29日判決言渡 平成14年(ワ)第3783号 損害賠償等請求事件 口頭弁論終結日 平成18年2月8日  判 決 原 告 有限会社X 被 告 有限会社Y1 被 告 株式会社Y2 被 告 株式会社Y3 被 告 Y4 被 告 Y5 被 告 Y6 上記被告ら訴訟代理人弁護士 近藤真  同 安部敬二郎  同 南谷敦子  同 小倉秀夫  同 椙山敬士  主 文 1 被告Y2は、原告に対し、136万5000円及びこれに対する平成12年5月10 日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 2 原告の被告Y2に対するその余の請求及び原告のその余の被告に対する請求をいずれ も棄却する。 3 訴訟費用は、原告の負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 請求の趣旨 (1)被告らは、原告に対し、連帯して、1億1162万3500円及びこれに対する被 告有限会社Y1(以下「被告Y1」という。)、被告株式会社Y2(以下「被告Y2」と いう。)及び被告株式会社Y3(以下「被告Y3」という。)につき平成12年5月10 日から、被告Y6(以下「被告Y6」という。)につき同月14日から、被告Y4(以下 「被告Y4」という。)につき同月21日から、被告Y5(以下「被告Y5」という。) につき同年6月4日から各支払済みまで、年5分の割合による金員を支払え。 (2)被告Y1、被告Y2及び被告Y3は、新聞販売店向け顧客管理ソフトウェア「さき がけ」(以下「さきがけ」という。)のプログラムを複製あるいは翻案してはならない。 (3)被告Y1、被告Y2及び被告Y3は、さきがけのプログラムを収納した装置を製造 し、同プログラムを収納した装置を頒布若しくは販売し、又は頒布若しくは販売のための 広告若しくは展示をしてはならない。 (4)被告Y1、被告Y2及び被告Y3は、同被告らが保有するさきがけのプログラム並 びに新聞販売店専用ソフトウェア「NEWS2000」のプログラム、同ソフトウェアを 収納したCDロム、同ソフトウェアに関する仕様書及び取扱説明書等を廃棄せよ。 (5)被告Y2は、原告に対し、さきがけのソースプログラム、オブジェクトプログラム 及び同ソースプログラムを記載した仕様書を引き渡せ。 (6)被告Y2は、原告に対し、136万5000円及びこれに対する平成12年5月1 0日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (7)訴訟費用は、被告らの負担とする。 (8)仮執行宣言 2 請求の趣旨に対する被告らの答弁 (1)原告の請求をいずれも棄却する。 (2)訴訟費用は、原告の負担とする。 第2 当事者の主張 1 請求原因 (1)著作権侵害 ア さきがけのプログラムの創作性 (ア)さきがけは、@顧客台帳を表示する画面が、一画面で特定の顧客が購読する複数銘 柄の購読紙すべてについての売上情報を管理する機能(以下「売上情報管理機能」とい う。)、A領収書を作成する際に、自動的にバーコードが印刷され、入金管理をバーコー ドによって行う機能(以下「領収書作成機能」という。)、Bマンションの階数と部屋番 号を入力するだけで、マンション管理図に自動的に反映する機能(以下「集合住宅管理機 能」という。)の画期的機能を有しており、さきがけのプログラムは、その機能を実現す るため、必要な情報、その処理を分析し、解法を発見して複数の命令及び情報を組み合わ せて作成されたのであるから、そのプログラム(ファイルレイアウトも含む。)に作成者 の思想が表現されている。 (イ)さきがけには、原告が従前販売していたMS−DOS用新聞販売店用顧客管理ソフ トウェア「開拓君」(以下「開拓君」という。)に入力したデータをさきがけで利用する ためのコンバートプログラム(以下「開拓君コンバートプログラム」という。)があり、 このプログラムは、さきがけ固有の創作性のあるプログラムである。 イ 著作権の帰属 (ア)原始取得@  さきがけは、原告の発意に基づいて原告が創作したプログラムであり、原告がさきがけ の著作者である。 (イ)原始取得A(職務著作)  原告は、被告Y2に対し、さきがけの開発を委託し、その開発過程において、表示画面、 機能、操作方法等の具体的内容につき、逐一指示をし、訂正、改良を具体的に指示する等 してさきがけを開発させたから、さきがけは、原告の発意に基づいて作成されたものであ る。 また、さきがけの開発においては、原告と被告Y2の間に指揮監督関係が存在する から、さきがけの開発に関し、原告は、被告Y2との関係で、著作権法15条2項に規定 する「法人等」に当たり、被告Y2は、同項に規定する原告の「業務に従事する者」に当 たる。  そして、原告と被告Y2との間で、さきがけの著作権を被告Y2が有することとする旨 の特約もされていないから、同項に基づき、原告がさきがけのプログラムの著作者となる。 (ウ)承継取得  原告は、平成9年9月26日、被告Y2との間で、完成したさきがけの著作権(二次的 著作物の作成権を含む)は、原告が譲り受けるとの合意をした。 ウ 著作権の侵害行為 (ア)被告Y3は、さきがけの著作権を原告が有することを認識していたにもかかわらず、 被告Y2及び被告Y1に対し、さきがけを複製して、頒布、販売等することを指示し、そ の複製費用を拠出する等した。  被告Y2は、平成11年11月ころ、上記被告Y3の指示に基づき、さきがけのプログ ラムを複製してCDロムに収納した。  被告Y1は、上記CDロムに収納されたプログラムがさきがけのプログラムを不法に複 製したものであることを認識していたにもかかわらず、「NEWS2000」という名称 で、その試供版として約1万枚を無料で一般に頒布し、販売した(被告Y2が「NEWS 2000」の名称で頒布、販売したソフトウェアを、以下「NEWS2000」という。)。 (イ)NEWS2000がさきがけの複製であることは、以下の点から明らかである。 a 表示画面や機能、操作方法が同一である。 b NEWS2000で作成したデータをさきがけで処理することができる。さきがけに は、顧客台帳の顧客基本情報項目、集金情報項目、銘柄情報項目、契約情報項目、サービ ス情報項目、マスター項目の情報項目について、合計約400ヵ所のデータを記録する番 地があり、NEWS2000で作成したデータをさきがけで処理できるということは、こ のすべての番地の配置(ファイルレイアウト)が同一であることを意味する。 c NEWS2000で作成したデータをさきがけにコピーして印刷すると、顧客台帳、 売上明細表、売上集計表、入金一覧表、入金合計表及び契約開始読者情報等すべての帳票 について、さきがけで直接入力した場合と全く同じものが印刷される。これは、データを 処理するプログラムが同一であることを意味する。 d NEWS2000のプログラムには、さきがけの名称やNEWS2000が有しない 集合住宅管理機能、手作り台帳機能、帯封印刷機能、中止め読者検索機能及び入金管理機 能に関するプログラム並びに開拓君コンバートプログラムが存在する。 e さきがけとNEWS2000には、顧客台帳登録画面において、複数銘柄の新聞を購 読している顧客について、「銘柄1」の代金をサービスとして免除すると、「銘柄2」の 代金が未入金であっても、未入金一覧表に表示されないという同じ不具合がある。 f 原告は、平成11年11月5日、被告Y2及び被告Y1に対し、NEWS2000の 販売について抗議したが、その際、同被告らは、NEWS2000がさきがけを複製して 作成したものであることを認めた。 エ 損害 (ア)a 被告Y1は、NEWS2000のプログラムを収納したCDロムを合計1万枚 以上頒布しているところ、さきがけを複製する際の使用料相当額は、1個当たり20万円 を下らないから、著作権法114条2項に基づき、頒布された個数1万枚に1枚当たり2 0万円を乗じた20億円が原告に生じた損害と推定される。 b 被告が頒布したCDロムが試供版で、45日間の使用期間が経過すればその後は使用 できないものであっても、パソコンのハードディスクのフォーマット日付を変更すること によって、プログラムを使用し続けることができるから、被告が頒布したCDロムが使用 期間の制限がある試供版であるとしても、上記損害額の推定を左右するものではない。 (イ)原告は、さきがけと酷似したNEWS2000が、さきがけの約8分の1の価格で 売り出され、多数頒布されたことにより、さきがけの販売会社であるデュプロ株式会社 (以下「デュプロ」という。)から原告との取引を打ち切られ、さきがけを販売すること ができなくなった。  さきがけは、他の新聞販売店向けソフトウェアにはない機能を有し、操作も簡易である 優れたソフトウェアであるから、少なくとも今後10年間は商品価値が持続し、販路も拡 大していくといえる。原告は、さきがけの販売により、平成9年度に1105万円、平成 10年度に1205万円、平成10年1月から平成11年9月までの間の各月平均では、 1か月当たり110万円の販売利益を上げていたことからすれば、被告三社がNEWS2 000を頒布したことにより、原告は、合計1億3200万円の得べかりし利益(1か月 当たり110万円の販売利益の10年分)を喪失した。 (ウ)原告は、被告らによる侵害を防止するため、弁護士に依頼して、NEWS2000 の販売禁止の仮処分を申し立て、本件訴訟を提起しており、その弁護士費用は、1162 万3500円が相当である。 オ 被告Y4、被告Y5及び被告Y6は、平成11年11月当時、それぞれ被告Y1、被 告メデイアクラフト及び被告Y3(以下、これらの被告を併せて「被告三社」ということ がある。)の取締役であった。 カ よって、原告は、被告三社に対し、民法709条、719条に基づき、被告Y5及び 被告Y6に対し、商法266条の3第1項に基づき、並びに被告Y4に対し、有限会社法 30条の3第1項に基づき、上記エの損害の一部である1億1162万3500円及びこ れに対する不法行為後であるそれぞれ訴状送達の日(被告三社につき平成12年5月9日、 被告Y6につき同月13日、被告Y4につき同月20日、被告Y5につき同年6月3日) の翌日から各支払済みまで年5分の割合による金員を、さらに、被告三社に対し、著作権 法112条1項及び2項に基づき、侵害の停止又は予防に必要な措置として、さきがけの プログラムの複製又は翻案の禁止、さきがけのプログラムを収納した装置の製造、頒布、 販売、頒布若しくは販売のための広告又は展示の禁止、さきがけ及びNEWS2000の 各プログラム、これらを収納した装置並びに同プログラムに関する仕様書及び取扱説明書 の廃棄を求める。 (2)不正競争防止法違反(商品形態模倣) ア さきがけは、画面に表示する項目の整理の仕方やある画面から詳細な入力画面への切 替え、その組み合わせ等について、ほかの新聞販売店向け顧客管理ソフトウェアにはない 独創性を有するものであるが、原告は、平成9年12月ころから、さきがけを一般に販売 していた。 イ コンピューターソフトウェアも、パソコンのハードディスクに固定されれば有体物と いえるのであり、パソコンを通じて表示する映像やその組み合わせ、画面の切替え等は、 不正競争防止法2条1項3号にいう「商品の形態」に該当するところ、被告三社は、平成 11年11月ころから、さきがけの画面表示、画面の切替え及びその組み合わせ等を模倣 した同種ソフトウェアであるNEWS2000を頒布した。 ウ(ア)原告が、さきがけの商品形態の使用について1台につき通常受けるべき金銭の額 は20万円であり、NEWS2000が1万枚頒布されたことからすれば、平成15年改 正前不正競争防止法5条2項2号に基づき、原告は、被告らに対し、損害として20億円 を請求することができる。 (イ)原告は、被告三社の上記不正競争行為により、前記(1)エ(イ)及び(ウ)記載 の損害を被った。 エ 被告Y4、被告Y5及び被告Y6は、平成11年11月当時、それぞれ被告Y1、被 告Y2及び被告Y3の取締役であった。 オ よって、原告は、被告三社に対し、平成15年改正前不正競争防止法2条1項3号、 4条本文、5条2項2号、民法719条に基づき、被告Y6及び被告Y5に対し、商法2 66条の3第1項に基づき、並びに被告Y4に対し、有限会社法30条の3第1項に基づ き、上記ウの損害の一部である1億1162万3500円及びこれに対する不法行為後で あるそれぞれ訴状送達の日(前記(1)カに記載のとおり。)の翌日から各支払済みまで 年5分の割合による金員、並びに被告三社に対し、不正競争防止法3条1項及び2項に基 づき、さきがけに対する侵害の停止又は予防に必要な措置を求める。 (3)契約に基づく仕様書等の引渡請求 ア 原告は、平成9年9月26日、被告Y2との間で、さきがけのプログラムの開発を委 託する旨の契約を締結した。 イ 被告Y2は、その際、原告に対し、さきがけのソースプログラム、オブジェクトプロ グラム及びソースプログラムを記載した仕様書を引き渡すことを約した。 ウ よって、原告は、被告Y2に対し、上記イの合意に基づき、さきがけのソースプログ ラム、オブジェクトプログラム及びソースプログラムを記載した仕様書の引渡しを求める。 (4)契約解除に基づく原状回復請求 ア 原告は、有限会社であり、被告Y2は、株式会社であり、いずれもコンピューター機 器の販売、コンピューターソフトウェアの開発、販売等を目的としている。 イ(ア) 原告は、平成11年10月、被告Y2に対し、牛乳販売店顧客管理システムの 開発を委託し、その開発着手金として84万円を支払った。 (イ)原告は、同年11月30日、被告Y2に対し、上記(ア)の委託契約を解除する旨 意思表示をした。 ウ(ア)原告は、平成11年初めころ、被告Y2に対し、新聞販売店向けソフトウェア用 地図システムの開発を委託し、その開発着手金として、52万5000円を支払った。 (イ)原告は、平成12年2月23日、被告Y2に対し、上記(ア)の委託契約を解除す る旨意思表示をした。 エ よって、原告は、被告Y2に対し、民法545条1項に基づき、上記イ(ア)及びウ (ア)において支払った開発着手金合計136万5000円及びこれに対する平成12年 5月10日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。 2 請求原因に対する認否 (1)請求原因(1)(著作権侵害)について ア さきがけのプログラムの創作性 (ア)請求原因(1)ア(ア)の事実のうち、さきがけが売上情報管理機能、領収書作成 機能及び集合住宅管理機能を有していることは認めるが、これらの機能を実現するための プログラムに作成者の思想が表現されていることは、否認する。  これらの機能を有する新聞販売店用プログラムは他にも存在し、さきがけに特有のもの ではない。さきがけのファイルレイアウトは、同種のソフトウェアで当然に要求される項 目を取り上げて並べ、通常必要なスペースを設けただけであり、創作性は認められない。  そもそも、さきがけのプログラムは、デルファイという開発ツールを使用して作成され ているが、同ツールを使用してプログラムを作成した場合、そのほとんどが同一又は類似 のプログラムとなるから、さきがけのプログラムに独自の創作性が認められる部分は存在 しない。 (イ)請求原因(1)ア(イ)の事実のうち、さきがけに開拓君コンバートプログラムが あることは認めるが、同プログラムに創作性が認められることは否認する。 イ 著作権の帰属 (ア)原始取得@  請求原因(1)イ(ア)の事実は、否認する。  さきがけのプログラムは、被告Y2の従業員であるA(以下「A」という。)の発意に よって、同人が創作したものである。 (イ)原始取得A(職務著作)  請求原因(1)イ(イ)の事実のうち、原告が、被告Y2に対し、さきがけの開発を委 託したことは認めるが、その余の事実は否認し、法的評価は争う。  著作権法15条2項は、法人内部で作成される著作物の利用の円滑化を図るための法技 術であるから、同条項が適用されるには、実質的な指揮命令関係のみならず、法人等の組 織事業上、営業上の一体関係の中に組み入れられて、その指揮命令下に法人等との関係で 自らに割り当てられた職務を遂行するという関係が必要であり、プログラムの開発を発注 したにすぎない原告が、同条2項に規定する「法人等」に該当する余地はない。 (ウ)承継取得  請求原因(1)イ(ウ)の事実は、否認する。  本件契約に際して作成された契約書(甲5)第11条には、「本システムについては、 甲(原告を指す。)がその著作権を有するものとし、乙(被告Y2を指す。)は甲の承諾 なくしてこれを第三者に販売若しくは使用させてはならない。」との記載があるが、開発 に500万円以上の費用がかかったプログラムの著作権を100万円で譲渡するはずがな いこと、被告Y2は、さきがけのプログラムをNEWS98の名称で販売することとなっ ており、原告もこれを了承し、その売上について分担金を受領していたことなどに照らせ ば、契約書の内容は、原告及び被告Y2の意思及び取引実体からかけ離れており、当事者 の合意を記載したものとはいえず、それを根拠にさきがけの著作権が原告に譲渡されたと いうことはできない。  また、同条項には、二次的著作物の作成にかかる権利の譲渡については何ら言及されて いないから、著作権法61条2項により、少なくとも二次的著作物の作成権は、被告Y2 に留保されている。 ウ 請求原因(1)ウの事実のうち、被告Y1が、NEWS2000の試供版(使用開始 から45日間で操作することが不可能となるもの。)を無料で一般に頒布したことは認め、 その余は否認する。 (ア)ソフトウェアの開発会社は、他社が著作権を有し、顧客のためにライセンスにより 提供しているモジュールや開発会社が種々のプログラムの開発のために部品としてストッ クしてきた関数、ルーチン、モジュール等を利用してプログラムを作成するのであり、同 じ開発会社が作成したプログラムは、その多くの部品において同一であるのが通常である こと、さきがけとNEWS2000のプログラムがいずれも被告Y2の従業員Aによって 作成されたことからすれば、両プログラムが類似していても、直ちにNEWS2000が さきがけのプログラムを複製したものとは認められない。 (イ)NEWS2000の試供版は、45日間で使用不能となり、プログラム本来の効用 を将来にわたって全うすることができないから、プログラムの複製権を侵害するものとは いえず、著作権法上の「複製」には当たらない。 (ウ)NEWS2000のプログラムには、操作方法をプルダウンメニューとしているこ と、さきがけにある銀行自動振替機能、集合住宅管理機能、バーコードによる入金処理機 能、銀行フロッピーディスクによる入金処理機能(金融機関のシステムに適合するデータ ベースを作成する機能)、多様な領収書の作成機能、帯封印刷機能を備えていないこと、 銀行自動振替項目、新聞の銘柄情報、集金サイクル及び無償提供期間の設定について、入 力項目が異なること、NEWS2000の試供版は45日間で使用不能になる仕組みであ ること、さきがけはユーザーごとのカスタマイズが予定されているのに対し、NEWS2 000は、簡易版パッケージプログラムであることからすれば、NEWS2000は、さ きがけの複製物ではなく、少なくとも二次的著作物に当たる。 エ(ア)請求原因(1)エ(ア)aの事実のうち、被告Y1が、被告Y2作成のNEWS 2000の試供版約1万枚を頒布したことは認め、さきがけを複製する際の使用料相当額 が20万円を下らないことは否認し、法的評価は争う。  請求原因(1)エ(ア)bの事実のうち、パソコンのハードディスクをフォーマット日 付を変更することによって、45日間を超えて試供版のCDロムに収納されたプログラム を使用し続けることができることは認めるが、その余は争う。  試供版のCDロムでは、著作物の効用を全うすることができないから、さきがけの購入 に影響を与えることはないので、原告に損害は発生していない。  仮に、さきがけのプログラムの複製による損害が発生したといえるとすれば、それは、 被告三社が現実に販売した5セット分に限られる。 (イ)請求原因(1)エ(イ)の事実は否認する。  頒布されたNEWS2000の試供版は、45日後には使用できなくなっている上、仮 処分決定以後、被告三社はNEWS2000を販売していないから、市場は原状に復され ている。  また、原告主張のとおり、さきがけが優れた機能を有し、10年間で1億3200万円 の売上が見込まれるソフトウェアであるとすれば、デュプロは原告との取引を継続するの が通常であるから、さきがけの売上が低下したことと被告三社による頒布行為の間に相当 因果関係は認められない。 (ウ)請求原因(1)エ(ウ)の事実は不知。 オ 請求原因(1)オの事実は認める。 (2)請求原因(2)(不正競争防止法違反)について ア 請求原因(2)アの事実の うち、原告が平成9年12月ころからさきがけを一般に販売していた事実は認めるが、そ の余の事実は否認する。 イ 請求原因(2)イの事実のうち、被告三社がNEWS2000を頒布した事実は認め、 その余の事実は否認し、法的評価は争う。  不正競争防止法2条1項3号にいう「商品」とは、有体物であって独立して取引の対象 となるものをいうから、ソフトウエア自体は同号の「商品」に該当しない。また、プログ ラムを実行した結果として画面上に映し出される映像は、ソフトウェアの機能にすぎず、 同号の「商品の形態」には該当しない。 ウ 請求原因(2)ウの事実は否認する。 エ 請求原因(2)エの事実は認める。 (3)請求原因(3)(契約に基づく仕様書等の引渡請求)について ア 請求原因(3)アの事実は認める。 イ 請求原因(3)イの事実は否認する。  プログラムのソースコードは、その会社が開発し、有している各種のモジュール、関数、 アイデアを含んでおり、被告Y2が、原告に対し、ソースプログラム及びオブジェクトプ ログラムを引き渡す合意をすることは考えられない。  また、そもそも、さきがけを開発するに当たって、一般的な意味での仕様書やソースプ ログラムを記載した書面は、作成されていない。 (4)請求原因(4)(契約解除に基づく原状回復請求)について  請求原因(4)アないしウの各事実はいずれも認める。 3 抗弁 (1)請求原因(4)イに対し ア 被告Y2は、請求原因(4)イ(ア)の委託に基づき、牛乳販売店顧客管理システム の開発を進めていた。 イ 被告Y2は、原告が上記委託を解除したことにより、請求原因(4)イ(ア)の委託 に基づく牛乳販売店顧客管理システムの開発費用84万円以上の損害を受けた。 ウ 被告Y2は、本件第4回口頭弁論期日において、上記イの損害賠償請求権と請求原因 (4)イに基づく原状回復請求権とを対当額で相殺する旨の意思表示をした。 (2)請求原因(4)ウに対し  被告Y2は、平成12年2月23日より前に、請求原因(4)ウ(ア)の委託に基づき、 新聞販売店向けソフトウェア用地図システムを開発し、同システムは完成した。 4 抗弁に対する認否 (1)抗弁(1)ア及びイの事実は、不知。 (2)抗弁(2)の事実は、否認する。被告Y2は、新聞販売店向けソフトウェア用地図 システムの開発を行っていたが、そのプログラムには、多くのバグがあり、完成していない。 第3 当裁判所の判断 1 証拠(甲1ないし39、43ないし47、乙1ないし5、17、鑑定嘱託の結果、原 告代表者本人、被告Y2代表者兼被告Y5本人)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実 が認められる。 (1)当事者 ア 原告は、平成4年11月27日に設立されたコンピューター機器の販売、コンピュー ターソフトウェアの開発及び販売等を目的とする有限会社であるが、設立から平成9年1 1月ころまでの間、販売のみを行っており、ソフトウェアの開発は外部に委託していた。  なお、原告の唯一の社員である原告代表者自身には、プログラムを作成した経験はない。 イ(ア)被告Y2は、平成9年1月27日に設立されたコンピューター機器の販売、コン ピューターソフトウェアの開発、販売等を業とする株式会社である。 (イ)被告Y1は、昭和62年9月21日に設立されたコンピューター機器の販売、コン ピューターソフトウェアの開発、販売等を業とする株式会社である。 (ウ)被告Y3は、平成11年2月22日に設立されたコンピューターソフトウェアの開 発と販売等を業とする有限会社である。 ウ(ア)被告Y6は、被告Y3の設立当初からその代表取締役の地位にあり、被告Y2の 設立当初からその取締役の地位にあった。 (イ)被告Y5は、被告Y2の設立当初からその代表取締役の地位にあった。被告Y5と 原告代表者は、平成9年当時、親しい友人関係にあった。 (ウ)被告Y4は、被告Y1の設立当初からその取締役の地位にあり、平成9年から平成 11年にかけて、被告Y2の監査役でもあった。 (2)さきがけの開発委託契約の締結について ア 原告は、平成9年以前から、新聞販売店向けにMS−DOS上で起動する顧客管理ソ フトウェアである開拓君を販売していたが、パソコンのオペレーティングシステム(以下 「OS」という。)の主流がMS−DOSからWindowsに移ってきたことから、W indowsで起動する同種のソフトウェアを制作、販売しようと考え、従前にもソフト ウェアの開発を委託したことがあり、原告代表者が被告Y5とも親交があったことから、 被告Y2に、上記ソフトウェアの開発を委託することとした。  他方、平成9年当時、新聞販売店向けの顧客管理ソフトウェアは他社からも多数販売さ れており、被告Y2も、平成9年以前に「NEWS」の名称で新聞販売店向けの顧客管理 ソフトウェアを販売していたことから、原告の依頼を受けることとした。 イ そこで、原告と被告Y2は、平成9年9月26日、「売買基本契約書」と題する書面 (甲5。以下「本件基本契約書」という。)に記名押印し、原告と被告Y2との間で、被 告Y2が、原告の依頼に基づいて新聞販売店向け顧客管理ソフトウェア(さきがけ)を作 成する旨の合意が成立した(以下「本件契約」という。)。 (3)さきがけの開発経緯 ア 原告代表者は、本件契約の締結前後から、被告Y2取締役B又は同被告の従業員Aに 対し、本件契約によって被告Y2に開発を委託した新聞販売店向け顧客管理ソフトウェア (さきがけ)に搭載すべき機能、画面の表示、処理すべきデータの内容及び行うべき処理 について指示したが、それを実現するためのプログラムの具体的記載内容を指示すること はなかった。  また、原告は、さきがけに搭載する機能、画面表示等の参考としてもらうため、開拓君 を製品の状態で被告Y2に渡したが、開拓君は、MS−DOS上で起動するプログラムで あるから、そのプログラムの内容を解析したとしても、Windows版のソフトウェア を開発するに当たって参考となるものではなかった。 イ Aは、他の従業員とともに自らが中心となって、上記アの原告の指示及び開拓君の機 能、画面、操作方法等を参考として、さきがけのプログラムを作成した。  さきがけのプログラムの開発は、デルファイという市販のプログラム開発ツールが利用 された。デルファイは、ボーランド社が販売する開発ツールであり、これを使用すると、 ウィンドウやボタンを画面配置するだけで、自動的にその配置に対応した画面が作成され、 操作に関するプログラムは、イベント駆動(キーボード入力やマウスボタンのクリック等 がされると、その操作等に対応する予め記述されたプログラムが処理を実行する仕組み) によって作成される。Aらは、このような作業によって作成されるデータベースに、デル ファイで用意されているプログラム、被告Y2が作成し、従前から利用していたプログラ ムを組み合わせ、また、必要に応じて調整を加えて、さきがけを作成した。 ウ 原告は、さきがけの販売を開始した後の平成10年以降も、被告Y2に対し、さきが けを購入した顧客から指摘された不具合又は自ら発見した不具合を指摘したり、顧客から の要望を受けて、プログラムを改良するよう求めたが、その際も、プログラムの具体的表 現を指摘して、改良を求めることはしなかった。 (4)さきがけ及びNEWS98の販売 ア 原告は、デュプロに対し、さきがけがインストールされたパソコン、ディスプレー、 プリンターをセットとし、保守メンテナンス費用、プログラムのカスタマイズ費用、顧客 1000件分のデータ入力費用を併せて98万円前後で販売し、デュプロは、同じ内容の セットを130万円で新聞販売店に販売又はリースした。  また、原告は、デュプロを通さず、直接又は友人を介して、新聞販売店に、さきがけの プログラムを販売したこともあり、その際のプログラムの名称は、「NEWS98」とし ていた。  さきがけのプログラムをパソコンにインストールする作業は、原告の依頼に基づき、被 告Y2が行っており、原告は、デュプロに対し1セット販売するごとに、被告Y2に対し、 20万円を支払った。  他方、被告Y2も、平成11年1月ころから同年8月ころにかけて、さきがけをNEW S98という名称で販売しており、新聞販売店に対して、1セット販売するごとに、原告 に対して5万円、10万円又は20万円を支払っていた。 イ さきがけ及びNEWS98は、データ入力の代行や顧客の必要に応じたカスタマイズ を行っていくことが前提とされており、デュプロを通じて販売又はリースをした分も含め て、原告が新聞販売店に出向いてこれらの作業を行ったり、原告が購入した新聞販売店の 要望を受けて被告Y2に対してプログラムの修正を指示していた。 ウ 被告Y2は、原告に対し、さきがけ及びNEWS98の販売を行うに当たって、被告 Y2が従前、NEWSを販売していた顧客の名簿を交付し、原告が、その名簿に記載され た顧客に対し、営業に行くこともあった。 (5)NEWS2000の開発、販売の経緯 ア 被告三社は、平成11年ころ、販売後のカスタマイズやアフターケアを前提としない 新聞販売店向け顧客管理ソフトウェアを販売することを計画し、NEWS2000を作成 した。 イ 被告三社は、NEWS2000のプログラムを45日間しか使用できないように加工 したプログラムを納めたCDロム1万枚を作成し、そのうち約8000枚を新聞販売店あ てに、ダイレクトメールに同封して郵送した。  被告三社がダイレクトメールを郵送した新聞販売店は、九州及び山口県を除く全国に所 在する販売店である。 ウ 原告は、デュプロから上記イのとおり、本件試供版が配布されていること、NEWS 2000の操作画面がさきがけに酷似していること、NEWS2000の価格が約16万 円であることを指摘され、配布された本件試供版を回収するよう求められた。 エ 原告は、平成11年11月ころから、被告Y2に対し、既に配布された本件試供版を 回収するよう求めたが、同被告は、これに応じなかった。  そこで、原告は、福岡地方裁判所久留米支部に対し、被告Y2を債務者として、NEW S2000の販売等の禁止を求める仮処分を申し立て、同裁判所は、平成12年1月13 日、これを認容する決定をした。 オ 被告Y2は、上記エの仮処分決定が出された後、NEWS2000の販売、頒布等を 中止した。  上記仮処分決定が出される前に、被告Y2が販売したNEWS2000の台数は、5台 である。 (6)さきがけとNEWS2000の比較 ア さきがけ及びNEWS2000の表示画面の構成及び色は、それぞれ酷似している。 イ しかし、さきがけには、集合住宅管理機能、帯封印刷機能、領収書作成変更機能(領 収書の記載内容を自由に設定できる機能)、入金バーコード読み込み機能、自動振替報告 書及び自動振替フロッピーディスク作成機能があるが、NEWS2000には、これらの 機能はない。  また、さきがけには、さきがけを利用する特定の新聞販売店向けに顧客台帳を作成する 機能(原告が、手作り台帳作成機能と称する機能)が付加されており、また、中止め読者 検索機能も、特定の新聞販売店向けの購読価格の算定処理が付加されているが、NEWS 2000には、特定の新聞販売店向けの機能はない。 ウ さきがけ及びNEWS2000のデータ入力項目、方式は、それぞれ同一であり、N EWS2000に入力したデータを、さきがけにコピーして利用することができる。  また、NEWS2000で作成したデータをさきがけにコピーして印刷すると、顧客台 帳、売上明細表、売上集計表、入金一覧表、入金合計表及び契約開始読者情報等すべての 帳票について、さきがけで直接入力した場合と同じものが印刷される。 エ さきがけ及びNEWS2000には、顧客台帳登録画面において、複数銘柄の新聞を 購読している顧客について、「銘柄1」の代金をサービスとして免除すると、「銘柄2」 の代金が未入金であっても、未入金一覧表に表示されないという同じ不具合がある。 オ さきがけとNEWS2000の各プログラムを逆コンパイルして、取得したフォーム データ(ダイアログやテキストボックスなどに関する設定情報を指すものとする。)及び アセンブラコード(逆コンパイルの結果得られたコンピューターが解釈できる言語と1対 1に対応したプログラムコードを指すものとする。)を比較すると、以下の事実が認めら れる。 (ア)さきがけ及びNEWS2000のいずれにも、別紙の表「フォームデータ比較結果」 欄中の、「同一」と記載された行に対応する「内容」欄記載の各機能に関する同一のフォ ームデータが存在するが、同表「フォームデータ比較結果」欄中の「さきがけ固有」と記 載された行に対応する「内容」欄記載の各機能に関するフォームデータは、さきがけにの み存在し、NEWS2000には、存在しない。  また、さきがけ及びNEWS2000のいずれにも、同表「フォームデータ比較結果」 欄中の「少しの違い」と記載された行に対応する「内容」欄記載の各機能に関するフォー ムデータが存在するが、その内容には少しの違いがある。  なお、さきがけ及びNEWS2000のいずれにも存在するフォームデータには、さき がけのタイトル表示画面のフォームデータも含まれる。 (イ)さきがけ及びNEWS2000の各アセンブラコードを単純化し、同一のオブジェ クトプログラム名を持つコード189単位に分割して、比較すると、そのうち152単位 が同一であり、さきがけにのみ存在するもの(断定はできないが、その可能性が認められ るものを含む。)が5単位、NEWS2000にのみ存在するもの(断定はできないが、 その可能性が認められるものを含む。)が10単位であり、その余については、いずれに も存在するが、軽微なものも含めて、差異が認められる。  なお、これらの比較の対象には、一般に公開されているモジュール、サブルーチンが含 まれる。 (ウ)NEWS2000にのみ存在するアセンブラコードには、バージョン情報の表示、 順路帳の一部、詳細地図及び年間売上集計表の機能に関するものが含まれる。  また、さきがけにのみ存在するアセンブラコードには、銘柄の一括選択、領収書作成の 機能に関するものが含まれる。  また、さきがけとNEWS2000のいずれにも存在し、同一であると認められるアセ ンブラコードには、集合住宅管理機能、手作り台帳機能、帯封印刷機能及び中止め読者検 索機能に関するものが含まれる。 2(1)請求原因(1)ア(さきがけのプログラムの創作性)について ア 前記認定事実によれば、さきがけは、市販の開発ツールであるデルファイを利用して 作成されたこと、デルファイは、イベント駆動型の開発ツールであり、あるイベントに対 するプログラムの多くを予め用意するものであること、さきがけは、新聞販売店の有する 情報を蓄積し、それを活用するデータベース管理型のプログラムであること、平成9年当 時、新聞販売店向けのプログラムは相当数販売されていたことが認められる。このような 開発経緯等からすれば、さきがけのプログラムの大部分が、デルファイで用意されている パーツなど、一般的なプログラムの組み合わせからなるものといえ、鑑定嘱託の結果にお いても、さきがけのプログラムに、一般的なプログラマーにおいて作成することが困難な プログラムは存在しないと判断されているところである。  したがって、さきがけのプログラムには、創作性を有する部分は存在しないと推認され る。 イ ところで、原告は、さきがけ固有の機能に関するプログラムであれば、直ちに創作性 が認められる旨主張する。 (ア)しかしながら、著作権法2条1項1号が、著作物を「思想又は感情を創作的に表現 したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と定義する ように、著作権法は、創作性ある「表現」を保護の対象としており、プログラムの著作物 も例外ではないから、プログラムの著作物は、プログラムの創作性ある「表現」を著作物 として保護するものであって、「表現」されたものの背後にある原理、アイデア等につい ては、その保護は及ばない。したがって、さきがけの機能としての画期性、独自性は、直 ちにプログラムの創作性を意味するものではない。 (イ)もっとも、あるソフトウェア固有の機能を実現するためには、ほかのプログラムに はない、独自のプログラムを作成する必要があり、そこに創作性が認められる場合があり 得る。  そこで、さきがけの機能が、独自のプログラムの作成を必要とするものであるかを検討 するに、さきがけは、新聞販売店が有する情報を管理することを目的としており、その基 本構造は、顧客名、顧客住所、購読誌、購読料及びその支払情報等の情報の蓄積と、これ を画面に呼び出し、集計したり、各種の一覧表を作成したり、領収証等の帳票を作成する という情報の加工からなり、原告がさきがけに固有の機能であると主張する各種機能も、 情報の集積とその情報の加工からなることは異ならない。そして、これらの情報の加工は、 ある情報を呼び出すこと、それをある帳票と結びつけること、足し算などの簡単な計算を 行うこと、データベースの中から簡単な条件に合致する情報を選択することからなり、プ ログラムとしては基本的なものといえる。  そして、プログラムは、これを表現する記号が極めて限定され、その体系も厳格であり、 電子計算機を機能させてより効果的に一つの結果を得ることを企図すれば、指令の組み合 わせが必然的に類似せざるを得ないことがあり、基本的なプログラムであれば、その機能 を実現するためのプログラムが一つしかなかったり、当該プログラムを動作させる環境な どから、そのプログラムの表現方法が著しく限定されており、誰が作成しても同一のプロ グラムにならざるを得ない場合も多く、このような場合には、その表現に創作性を認め、 著作物として保護することはできない。また、基本的なプログラムであれば、既に市販の 開発ツール等において準備されたプログラムを組み合わせることによって作成することも 容易と考えられるが、その場合には、他人の著作物を複製して利用したにすぎないから、 新たな著作物として保護されるものではない。  上記のとおり、さきがけのプログラムは基本的なものであり、しかも、平成9年当時、 顧客管理を目的とするソフトウェアは、新聞販売店向けのものに限っても多数存在し、こ れらのソフトウェアに搭載されている機能も、基本的な部分はさきがけと異ならないこと からすれば、さきがけの機能は、これらのソフトウェアと比較しても独自なプログラムを 要求するものとは考えられない。  このような観点に照らせば、さきがけの機能から、さきがけのプログラムの創作性を推 認することはできず、原告の主張は採用できない。 ウ(ア)原告は、また、さきがけのファイルレイアウトが同一である、さきがけ固有のプ ログラムがNEWS2000に存在し、これが、原告の著作権を侵害するものである旨主 張する。そして、前記認定事実によれば、さきがけとNEWS2000のデータベースの ファイルレイアウト、フォームデータはほぼ同一であること、NEWS2000のフォー ムデータには、さきがけのスタート画面に関する部分やNEWS2000が有しない機能 に関する部分が存在すること、アセンブラコードについても、NEWS2000が有しな い機能、すなわち集合住宅管理機能、帯封印刷機能、自動振替報告書及び自動振替フロッ ピーディスク作成機能、開拓君コンバート機能に関する部分が存在し、また、特定の新聞 販売店向けに作成された手作り台帳機能及び中止め読者検索機能に関する部分も存在する こと、そのプログラムの記載もさきがけに存在するこれらの機能を実現するためのものと 同一であることが認められ、さきがけとNEWS2000は、いずれも被告Y2の従業員 であるAが中心となって、デルファイを利用して作成したものであること、いずれも新聞 販売店における顧客管理を目的とするもので、機能も類似するものであること等を考慮し ても、NEWS2000のこれらの部分については、さきがけの複製であるか、少なくと もさきがけに依拠して作成されたものといえる。  これに対し、被告らは、NEWS2000のパスファイル(逆コンパイルによってアセ ンブラコードとして取得されるもの)がさきがけに依拠して作成されたことを否認するが、 NEWS2000のプログラムを逆コンパイルするに当たってバグが生じており、具体的 内容を正確に解析することができないとしても、鑑定嘱託の結果によれば、NEWS20 00には、本来これには存在しないはずの機能に関するアセンブラコードが存在すること が認められる。そして、NEWS2000に、これらのアセンブラコードにかかるプログ ラムを記載する必要がないことからすれば、これらのプログラムが、NEWS2000を 作成するに当たって、あらためて作成されたとは考え難く、NEWS2000は、さきが けを複製した上で、一部に改変を加えることによって作成されたものと推認することが相 当であり、被告らの主張は採用できない。 (イ)そこで、原告が、NEWS2000において、さきがけを複製したものと特に主張 するデータベースのファイルレイアウト、フォームデータ、集合住宅管理機能、帯封印刷 機能、領収書作成変更機能、入金バーコード読み込み機能、自動振替報告書及び自動振替 フロッピーディスク作成機能、開拓君コンバート機能、手作り台帳機能、中止め読者検索 機能及び読者入金元帳機能について、その創作性の有無を検討することとする。 a データベースのファイルレイアウトについて  データベースのファイルレイアウトは、必要とされるデータを並べるためのスペースの 割付にすぎず、著作権法2条1項10号の2で規定される「電子計算機を機能させて一の 結果を得ることができるようにこれに対する指令」とはいえないから、データベースのフ ァイルレイアウトは、そもそも、プログラムの著作物には当たらない。 b フォームデータについて  前記認定事実によれば、さきがけの作成に利用されたデルファイは、作成者が、デルフ ァイの作成画面上に、ウィンドウやボタンを配置すれば、それに相当するフォームデータ が自動的に作成される仕組みとなっていることが認められるから、デルファイを利用して 作成されたフォームデータは、デルファイによって作成されたものに、更に改変を加えた 等の事情がない限り、創作性が認められるものではない。  さきがけのフォームデータは、上記のとおり、デルファイを利用して作成されたもので あること、甲31及び37号証によれば、さきがけの画面構成自体は、その機能上必要な ウィンドウやボタンを配置したものであって、特徴的なものとはいえないことからすれば、 さきがけのフォームデータについて、デルファイを利用して、自動的に作成されたものに、 更に特段の改変が加えられたとは認められないから、さきがけのフォームデータは、さき がけのタイトル画面に関するものも含め、創作性を有するものではない。 c 集合住宅管理機能について  集合住宅管理機能は、登録された集合住宅(アパート、マンション)ごとに、格子状の マス目を画面に表示して、集合住宅における各戸の位置に見立て、顧客住所として当該集 合住宅が登録されている顧客名とその購読情報を該当する住居の場所に表示するという機 能である(甲44)。  この機能を実現するためのプログラムは、集合住宅の名称、当該集合住宅の階数、各階 の戸数を登録し、登録された階数、戸数に応じたマス目の画面を作成するプログラム、登 録された顧客情報を該当するマス目内に表示するプログラムから構成されると考えられる が、画面の表示については、ある箇所に登録された数字(集合住宅の階数及び戸数)を利 用して画面表示を行うにすぎないこと、顧客情報の表示についても、登録された数字(部 屋の位置)を利用して、画面表示の位置を決定し、登録された顧客情報を表示させるにす ぎないことからすれば、独自のプログラムを要求するものとは考えられず、機能自体から プログラムの創作性を推認することはできない。 d 帯封印刷機能について  帯封印刷機能は、帯封の印刷が必要と入力した顧客について、帯封の記載内容として予 め指定された情報を、一定の書式に印刷する機能である(甲44)。  この機能は、帯封の印刷が必要な顧客の選別、帯封の書式設定、帯封に記載する情報の 呼出のためのプログラムからなり、それ自体、単純なプログラムと考えられ、帯封の印刷 が必要か否かの情報を予め入力した上で、その情報に基づいて帯封の印刷が必要な顧客を 選別するにすぎないこと、帯封に印刷する情報が限られていることからしても、独自のプ ログラムを要求する機能とは考えられず、機能自体からプログラムの創作性を推認するこ とはできない。 e 領収書作成変更機能について  領収書作成変更機能は、指定された範囲の顧客について、領収書の記載内容として予め 指定された情報のいくつかを選択して、定められた書式に印刷する機能である(甲44)。  この機能の基本は、印刷すべき顧客及び項目の選択、領収書の書式設定と、領収書に記 載する情報を呼び出すプログラムからなり、それ自体、単純なプログラムと考えられる上、 領収書の作成は、新聞販売店のみならず、小売業者の基本的業務であり、平成9年当時、 新聞販売店向けの顧客管理ソフトウェアだけでも相当数の製品があり、他業種向けの顧客 管理ソフトウェアも含めれば、多数の製品に領収書作成機能が備え付けられていたと推認 できることからすれば、さきがけの領収書作成変更機能が独自のプログラムを要求するも のとはいえず、機能自体からプログラムの創作性を推認することはできない。 f 入金バーコード読み込み機能について  入金バーコード読み込み機能は、集金した際にバーコードを読み込むと、自動的に入金 したことがさきがけの顧客情報等に反映される機能であるが(甲44)、平成9年当時、 バーコードは小売店の会計などに広く利用されており、バーコードと金額を結びつけるこ と、読み込みによって入金処理をすることは、特に珍しい機能とはいえず、プログラムと しても独自のものを要求するものとはいえないから、機能自体からプログラムの創作性を 推認することはできない。 g 自動振替報告書及び自動振替フロッピーディスク作成機能について  自動振替報告書及び自動振替フロッピーディスク作成機能は、金融機関が標準として設 定した金融機関ネットサービスに準拠して、それに適合するデータベースを作成する機能 であるが(甲44)、金融機関ネットサービスが汎用性のあるものと考えられることから すれば、これに適合するためのプログラムは、既に存在するものといえ、金融機関ネット サービスの設定に制約されることからしても、さきがけにおいて、特に独自のプログラム が作成されたとは考えられず、機能自体からプログラムの創作性を推認することはできな い。 h 開拓君コンバートプログラムについて  開拓君コンバートプログラムは、MS−DOS用のプログラムである開拓君において入 力した顧客情報を、Windows用のプログラムであるさきがけにおいてそのまま利用 することを可能とするプログラムであるが(原告本人)、MS−DOSからWindow sにOSの主流が変わっていったことからすれば、平成9年当時、MS−DOS用のプロ グラムで作成したデータをWindowsで利用するためのコンバートプログラムは、多 数の各種ソフトウェアに存在しており、さきがけにおいて、特に独自なプログラムが要求 されたものということはできない。したがって、開拓君と関連づけられたソフトウェアは さきがけのみであり、さきがけ固有のプログラムであるといえるとしても、そのことをも って、創作性があると推認することはできない。 i 手作り台帳作成機能について  手作り台帳は、さきがけが当初から備えていた顧客台帳の作成機能に、新聞販売店の要 望に応じて、異なる設定を付加したものであるが(弁論の全趣旨)、設定項目が増えるの みで、顧客台帳としての基本的な機能、すなわち、ある条件に従って顧客を選別し、当該 顧客の特定の情報を画面に呼び出すという機能は異ならないから、独自のプログラムを要 求するものとは考えられず、機能自体からプログラムの創作性を推認することはできない。 j 中止め読者検索機能について  中止め読者検索機能は、中止め処理をしている顧客を選別して、表示させる機能であり (甲44)、甲29号証の13によれば、原告は、さきがけを利用する新聞販売店の要望 に基づき、中止めがあった場合の計算方法を変えることに伴うプログラムの変更を被告Y 2に依頼したものと認められるが、顧客情報管理画面において、顧客について、中止めと いう区分を選択しているか否かという明確な条件に該当する顧客を選別する機能にすぎず、 原告の要望も、引き算、わり算、かけ算の計算式の内容を変更するものであるから、独自 のプログラムを要求する機能とは考えられず、機能自体からプログラムの創作性を推認す ることはできない。 k 読者入金元帳機能について  読者入金元帳機能とは、各顧客ごとのそれまでの入金状況を一覧する帳票の表示であり (甲29の14)、各顧客ごとの特定の情報を呼び出し、足し算又は引き算といった簡単 な計算をするプログラムにすぎないから、独自のプログラムを要求するものとはいえず、 機能自体からプログラムの創作性を推認することはできない。 (ウ)以上から、原告が、特にさきがけを複製されたと主張する部分についても、いずれ も創作性を推認することはできず、また、鑑定嘱託の結果においても、さきがけのプログ ラムは、一般的なプログラマーにおいて作成することが容易であるとされており、ほかに、 そのプログラムの具体的な表現内容が固有であると認めるに足りる証拠もないから、これ らの部分に創作性を認めることはできない。  これに対し、原告は、上記(イ)cないしkのプログラム及びさきがけのタイトル画面 表示のフォームデータは、さきがけに固有のプログラムであり、創作性が認められると主 張するようであるが、原告が、上記(イ)cないしkのプログラムがさきがけに固有であ ると主張する根拠は、これらのプログラムが実現する機能が、原告の指示に基づいて作成 された、さきがけ独自のものであるということに尽きるところ、前記アのとおり、プログ ラムの著作物は、プログラムの創作性ある「表現」を著作物として保護するものであって、 その背後にあるアイデアを保護するものではないから、原告の主張は失当である。また、 さきがけのタイトル画面表示のフォームデータについても、甲29号証の4及び甲34号 証によれば、タイトル画面の表示自体が特徴のあるものではなく、これを実現するための フォームデータもその画面の設定値を入力したものにすぎないから、これに創作性を認め ることはできない。エ なお、プログラムの表現における半角文字と全角文字の使い分け やモジュールの分割や命令の順序には、一般的なプログラマーが作成するものと比較して、 作成者の特徴が表れているとの鑑定嘱託の結果があるが、半角文字と全角文字の使い分け は、プログラムの記載方法にすぎず、さきがけのプログラムの思想の表現ではないから、 プログラムの著作物としての保護は受けない。また、さきがけの開発には市販の開発ツー ルであるデルファイが利用されていること、さきがけが新聞販売店における顧客管理とい う限定された目的のためのソフトウェアであることからすれば、さきがけの作成に当たっ てのモジュールの分割や命令の順序の選択肢は、一般的なプログラムを作成する場合より も限定されているから、一般的なプログラマーが作成するプログラムとの比較に基づく抽 象的な指摘のみをもって、さきがけのプログラムの創作性を肯定することはできない。 オ 結局、上記イ及びウに述べたとおり、さきがけの開発方法、さきがけの機能等からは、 さきがけのプログラムには、創作性を有する部分は存在しないと推認するのが相当であり、 これを覆すに足りる証拠はない。  したがって、さきがけのプログラムには創作性が認められないといわざるを得ず、請求 原因(1)アの事実は認められないから、さきがけは、プログラムの著作物として保護さ れる対象とはならない。  よって、請求原因(1)イないしエの事実について判断するまでもなく、請求原因(1) (著作権侵害)に基づく原告の請求は、理由がない。 3 請求原因(2)(不正競争防止法違反)について  さきがけのプログラムそれ自体は、形態を有しないから、これが、不正競争防止法2条 1項3号に規定する「商品」に該当しないことはいうまでもない。  原告は、パソコンを通じて表示する映像やその組み合わせ、画面の切替え等が不正競争 防止法2条1項3号に規定する「商品(中略)の形態」に該当する旨主張するが、仮に、 原告の主張を前提としたとしても、甲31及び37号証によれば、さきがけの画面表示は、 新聞販売店が管理すべき顧客の情報を表示するスペースを並べただけのものであり、同じ 機能を有するソフトウェアが一般的に有する形態といえるから、さきがけの画面表示は、 同号における「商品」から除外される「当該他人の商品と同種の商品(同種の商品がない 場合にあっては、当該他人の商品とその機能及び効用が同一又は類似の商品)が通常有す る形態」に当たり(平成15年改正前不正競争防止法2条1項3号)、不正競争防止法に よる保護は及ばないものといえる。  したがって、請求原因(2)の各事実の存否について判断するまでもなく、請求原因 (2)は、理由がない。 4 請求原因(3)(契約に基づく仕様書等の引渡請求)について (1)本件基本契約書(甲5)の第9条には、「本システム(さきがけを指す。)検収終 了後、乙(被告Y2を指す。)は甲(原告を指す。)に対して本システムすべての仕様書 を提出するものとする。」と規定されているが、仕様書とは、一般的にはプログラムの設 計を記載した書面であり、この条項をもって、さきがけのソースプログラム及びオプジェ クトプログラムを引き渡す旨の合意がされたとは認められない。また、前記認定事実のと おり、原告は、さきがけを販売するに当たり、その都度、被告Y2によってプログラムを パソコンにインストールしてもらっており、特段、ソースプログラム及びオブジェクトプ ログラムの引渡しを要求したことはなかったことが認められることに照らせば、原告と被 告Y2との間で、原告に対し、ソースプログラム及びオブジェクトプログラムを引き渡す との合意があったとは認められない。 (2)仕様書についても、さきがけの機能は、原告から逐一指示がされていたこと、被告 Y2が従前から新聞販売店向けの同種ソフトウェア「NEWS」を開発、販売していたこ とからすれば、被告Y2にさきがけにおいて必要とされるデータベースの内容についての 一応の認識があり、データベースの設計に新たに仕様書を作成するまでの必要がなかった としても不自然ではないこと、画面設計、各プログラムの作成は、基本的には各機能ごと にデルファイの用意したプログラムを組み合わせていく作業であることからすれば、さき がけを開発するに当たって必ずしも仕様書の作成が必要であったとは認められず、被告Y 2代表者が、仕様書は作成していないと供述していることからすれば、一般的な意味での 仕様書は存在しないといわざるを得ない。  したがって、原告の被告Y2に対する仕様書の引渡請求は、その前提を欠く。  なお、原告代表者は、さきがけの作成、訂正及び改良についての指示書(甲29の1な いし23)が仕様書の一部である旨供述するが、さきがけの機能に関する指示は原告代表 者が行っていたことに照らせば、原告代表者が供述する意味での仕様書、すなわち、さき がけの作成、訂正及び改良についての指示書は、原告がもともと所有しており、現に、そ の控えを原告が保有し、本件訴訟において提出しているのであるから、本件基本契約書9 条において、このような書面を被告Y2から原告に対して引き渡す合意をしたとは考えら れず、原告代表者の供述する意味での仕様書についてもこれを引き渡すとの合意があった とは認められない。 (3)したがって、請求原因(3)は理由がない。 5 請求原因(4)(契約解除に基づく原状回復請求)について (1)請求原因(4)アないしウの各事実は、当事者間に争いがない。 (2)そこで、抗弁について判断する。  被告Y2代表者兼被告Y5は、被告Y2は、牛乳販売店用顧客管理ソフトウェアの開発 委託契約の締結後、84万円を超える費用を要して同ソフトウェアを作成した、新聞販売 店顧客管理システム用地図システムは既に完成していた、作成途中の牛乳販売店用顧客管 理ソフトウェアや新聞販売店顧客管理システム用地図システムの完成品は、原告がこれら を受領する見込みがなかったので廃棄した旨供述するが(乙18)、その供述を裏付ける 証拠はなく、仮に、一部の作業を行っていたとしても、具体的な成果物が明らかではなく、 被告Y2が、その主張をするとおりの費用を負担したと認めることはできない。  したがって、抗弁(1)ア及びイの事実並びに抗弁(2)の事実を認めることはできず、 被告Y2の抗弁はいずれも理由がない。 (3)したがって、請求原因(4)は理由がある。 6 結論  以上によれば、原告の請求は、被告Y2に対し、請求原因(4)に基づき136万50 00円及びこれに対する解除後であることが明らかな訴状送達の日の翌日である平成12 年5月10日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を請求 する限度で理由があるから、この限度で原告の請求を認容し、訴訟費用については、原告 の請求に対して認容額が僅少であることから、民事訴訟法64条ただし書きを適用して、 これを全部原告の負担とすることとする。  よって、主文のとおり判決する。 福岡地方裁判所第5民事部 裁判長裁判官 木村 元昭    裁判官 板野 俊哉    裁判官 山口幸恵