・東京地判平成18年8月1日  プロ野球選手パブリシティ事件:第一審  被告ら(プロ野球球団10社)は、プロ野球ゲームソフトにつき、野球機構を通じて、 ゲームソフトメーカーに対し、選手らの氏名および肖像の使用を許諾しているほか、カル ビー社に対し「プロ野球チップス」に同梱されたプロ野球カードに選手らの氏名および肖 像の使用を許諾し、さらに、ベースボール・マガジン社に対してプロ野球カードにおける 選手らの氏名および肖像の使用を許諾している。これに対して、プロ野球選手である原告 ら(橋由伸、上原浩治ら計34名)が、所属球団である各被告らとの間において、プロ 野球ゲームソフトおよびプロ野球カードにつき、各被告らが第三者に対して各原告らの氏 名および肖像の使用許諾をする権限を有しないことの確認を請求した事案。被告らは、野 球選手契約に用いられる統一契約書16条により、原告らの氏名および肖像の商業的利用 権(パブリシティ権)が被告らに譲渡され又は被告らに独占的に使用許諾されている旨主 張した。  判決は、「本件契約条項は、商業的使用ないし商品化型使用の場合を含め、球団ないし プロ野球の知名度の向上に資する目的の下で、選手が球団にその氏名及び肖像を独占的に 使用許諾することを定めたものと解される。野球ゲームソフト及び本件野球カードへの選 手の氏名及び肖像の使用は、球団ないしプロ野球の知名度の向上に資する目的で行われ、 本件契約条項1項の『宣伝目的』に含まれるから、被告らは、野球ゲームソフト及び本件 野球カードにつき、原告らの氏名及び肖像を第三者に使用許諾する権限を有するものであ る」として、「被告ら球団は、野球ゲームソフト及び本件野球カードについて、本件契約 条項1項に基づいて所属選手の氏名及び肖像を第三者に使用許諾する権限を有しており、 かつ同項は無効とはいえない」としながらも、「なお、長年にわたって変更されていない 本件契約条項は、時代に即して再検討する余地のあるものであり、また、分配金について も各球団と選手らが協議することにより明確な定めを設ける必要があることを付言する」 としている。 《本件契約条項》 統一契約書16条 (1)球団が指示する場合、選手は写真、映画、テレビジョンに撮影されることを承諾す る。なお、選手はこのような写真出演等にかんする肖像権、著作権等のすべてが球団に属 し、また球団が宣伝目的のためにいかなる方法でそれらを利用しても、異議を申し立てな いことを承認する。 (2)なおこれによって球団が金銭の利益を受けるとき、選手は適当な分配金を受けるこ とができる。 (3)さらに選手は球団の承諾なく、公衆の面前に出演し、ラジオ、テレビジョンのプロ グラムに参加し、写真の撮影を認め、新聞雑誌の記事を書き、これを後援し、また商品の 広告に関与しないことを承諾する。 (控訴審:知財高判平成20年2月25日) ■争 点 (1) 本件契約条項の解釈(氏名及び肖像の使用権の譲渡又は使用許諾の有無) (2) 本件契約条項の有効性  ア 本件契約条項は不合理な附合契約として無効といえるか  イ 本件契約条項は独占禁止法違反として無効といえるか