・東京地判平成18年12月27日  CRフィーバー大ヤマト事件(平成16年(ワ)第13725号)  本件は、「宇宙戦艦ヤマト」の各映画の著作権を有すると主張する原告(株式会社東北 新社)が、@被告三共、被告ビスティ及び被告カード・システム(以下「3被告」という) は、本件映画の中の一部の映像を複製又は翻案した映像を使用してパチンコゲーム機、P S2用ゲームソフト「FEVER 7 SANKYO公式パチンコシミュレーション」等を製造、販売し、 本件映画の複製権又は翻案権を侵害しているとして、A被告アニメーションソフトは、3 被告が製造、販売した上記パチンコゲーム機等に使用された映像の基となった映像「大銀 河シリーズ 大ヤマト零号」を制作して、これを3被告に提供し、3被告の上記著作権侵 害行為について共同不法行為責任を負うとして、3被告に対しては、著作権法112条に 基づく差止等の請求を、3被告及び被告アニメーションソフトに対しては、複製権又は翻 案権侵害による不法行為(民法709条、719条)に基づく損害賠償を請求をした事案。  これに対して、被告ら(株式会社三共、株式会社ビスティ、インターナショナル・カー ド・システム株式会社、株式会社アニメーションソフト、アニメーションソフト)及び補 助参加人ら(有限会社零時社、P1〔松本零士〕)は、@原告は本件映画の著作権を有し ないこと(3被告及び補助参加人ら)、A原告は本件映画の翻案権を有しないこと(被告 ら)、B3被告が製造、販売した上記パチンコゲーム機等に使用した映像は、本件映画の 複製にも翻案にも当たらないこと(被告ら及び補助参加人ら)、C原告は、原告と補助参 加人P1との間で成立した合意により、3被告が製造、販売した上記パチンコゲーム機等 に対しては権利行使できないこと(被告ら及び補助参加人ら)などを主張した。  判決は、原告が著作権を取得したとは認められないとした上で、傍論として類似性を否 定しつつ、原告の請求を棄却した。  すなわち、判決は、「映画製作者とは、自己の責任と危険において映画を製作する者を 指す」とした上で、「P2が本件映画1の映画製作者であると認めることはできない」と して、そのため「結局、原告の本件映画の著作権の取得は認められない」とした。  判決は、「まず、本件証拠上、P2が本件映画の映画製作者であると認めることはでき ないから、P2が著作権法29条1項に基づき、本件映画の著作権を取得したとは認めら れず、したがって、原告が、甲3契約により、本件映画の著作権を取得したものと認める ことはできない。また、本件証拠上、原告がP2から本件映画の翻案権の譲渡を受けたと 認めることはできない。そして、念のため、P2が本件映画の映画製作者であると仮定し て、被告映像侵害主張部分が本件映画被侵害主張部分の著作権を侵害するかについて検討 しても、被告映像侵害主張部分は、いずれも本件映画被侵害主張部分の複製物とはいえな い」と判示したのである。 ■争 点 (1) P2(西崎義展)は、本件映画の映画製作者として、著作権法29条1項に基づき、 本件映画の著作権を取得したか。 (2) 原告は、甲3契約により、本件映画の翻案権を取得したか。 (3) 被告映像は、本件映画を複製又は翻案したものといえるか。 (4) 被告アニメーションソフトに不法行為は成立するか。 (5) 原告は、被告製品について、本件映画の著作権の権利行使をすることができるか。 (6) 損害額 ■判決文 第3 当裁判所の判断 1 P2は、本件映画の映画製作者として、著作権法29条1項に基づき、本件映画の著 作権を取得したか(争点(1))について  原告は、本件映画には、著作権法29条1項の映画製作者と参加約束が存在することを 前提として、本件映画の映画製作者として本件映画の著作権を取得したP2から、甲3契 約に基づき、本件映画の著作権の移転を受けた旨主張するのに対し、3被告及び補助参加 人らは、本件映画の製作者はP2ではなく、オフィス・アカデミー又はウエスト・ケープ であり、原告は、本件映画の著作権を取得していない旨主張するので、以下、P2が本件 映画の映画製作者であったか否かについて検討する。 (1)本件映画の製作の経緯  証拠(甲3、4、44ないし46)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認め られ、これに反する証拠はない。 ア 本件映画1について  本件映画1は、全26話のテレビ放送用アニメーションシリーズであり、昭和49年1 0月から昭和50年3月まで、よみうりテレビ系列の全国ネットでテレビ放送された。  本件映画1の企画の立案、企画書の作成、スタッフの人選、及びテレビ放映の実現につ いてのテレビ局との交渉は、P2が行った。また、本件映画の監督は、映画における表示 では補助参加人P1とされていたが、その制作に当たっての実質的な監督業務は、P2が 行った。 イ 本件映画2について  本件映画1のテレビにおける上記放送の視聴率は低迷したが、熱心な漫画ファンやSF ファンには、高く評価され、シリーズの放送終了後、次第にその魅力が広く伝わるように なり、人気が出てきたため、本件映画1に基づいて、劇場用映画である別紙映画目録記載 2の映画が製作された。同映画は、昭和52年8月に劇場公開され、興行的に大きな成功 を収めたため、劇場用映画である本件映画2が製作され、東映洋画系劇場で、昭和53年 8月に劇場公開され、これもまた興行的に成功を収めた。 ウ 甲3契約書の記載  原告、P2、ウエスト・ケープ及びボイジャーエンターテインメントとの間で、平成8 年12月20日、甲3契約が締結されたが、甲3契約書の内容は後記2のとおりであり、 同契約書には、譲渡の対象権利である「対象作品」を記載した「別紙(一)」が添付され ている。その別紙(一)は、「A項:現存作品」、「B項:将来作品」、「制作年月日」、 「製作者名」、「著作者名」、「原作者名」、「著作権者」及び「利用の制限」の各欄の ある表となっており、「A項:現存作品」欄には、39作品の作品名が記載され(この3 9作品を以下「甲3契約対象作品」という。)、本件映画もそこに含まれている。そして、 本件映画に対応する「製作者名」欄には、「オフィス・アカデミー」、「著作権者」欄に は、「P2」との各記載がある。なお、甲3契約書のウエスト・ケープの記名捺印欄には、 代表取締役としてP2の記載がある。 (2)以上の認定事実を前提に判断する。 ア 著作権法2条1項10号は、映画製作者について、「映画の製作に発意と責任を有す る者」と規定しているところ、同規定は、映画の製作には、通常、相当な製作費が必要と なり、映画製作が企業活動として行われることが一般的であることを前提としているもの と解されることから、映画製作者とは、自己の責任と危険において映画を製作する者を指 すと解するのが相当である。そして、映画の製作は、企画、資金調達、制作、スタッフ等 の雇入れ、スケジュール管理、プロモーションや宣伝活動、配給等の複合的な活動から構 成され、映画を製作しようとする者は、映画製作のために様々な契約を締結する必要が生 じ、その契約により、多様な法律上の権利を取得し、また、法律上の義務を負担する。し たがって、自己の責任と危険において製作する主体を判断するに当たっては、これらの活 動を実施する際に締結された契約により生じた、法律上の権利、義務の主体が誰であるか が重要な要素となる。  そこで、検討するに、前記(1)で認定したとおり、P2は、本件映画1の制作を企画 し、スタッフの人選やテレビ局とのテレビ放映についての交渉を行っているが、本件証拠 中には、上記スタッフやテレビ局と契約を締結した主体がP2であったと認めるに足る証 拠はない。また、本件映画1のための資金の調達についても、本件証拠上、P2が自己の 名義で資金調達をしたものと認めるに足りない。  かえって、甲3契約書に添付された「別紙(一)」の、本件映画1の「製作者」欄には、 前記(1)のとおり、オフィス・アカデミーの社名が記載されているところ、P2がP1 P2訴訟において提出した陳述書(甲45)には、「映画の著作物の“製作”というのは “作品の制作”実務のことだけをいうのではなく、企画制作を行って出来上がった作品の 上映される劇場の確保等配給、又は、テレビの放映される番組の決定等『営業』、“制作 費”“宣伝費”“一般管理費”等を含む『資金の負担』、『損益の責任』を持って『作品 の制作』を行うことをいうのであります。これを“映画会社”、“テレビ局”に所属をし て行うのではなく、私のように“個人の責任”、“個人の会社”に於いて行った場合に、 “製作者”と言われるのであって、」と記載されており(43頁)、同記載によれば、P 2は、映画製作者の法的意味を十分に認識した上で、「制作」と「製作」を明確に区別し て使用していることが認められることから、P2は、上記別紙(一)の「製作者」は「映 画製作者」を意味すること、したがって、甲3契約締結に当たっては、本件映画1の映画 製作者は、オフィス・アカデミーであると認識していたことが認められる。  なお、上記の別紙(一)の、本件映画1の「著作権者」欄には、P2の名前が記載され ているが、例えば、P2が映画製作者であるオフィス・アカデミーから、本件映画1の著 作権の譲渡を受けた場合もあり得るから、上記「著作権者」欄の記載があるからといって、 上記別紙(一)の「製作者」を映画製作者を意味すると解することが必ずしも不合理とい うことはできない。  したがって、P2が本件映画1の映画製作者であると認めることはできない。  本件映画2については、その製作の経緯についての証拠が全く提出されていないところ、 本件映画1と同様、甲3契約書に添付された、上記別紙(一)には、本件映画2の「製作 者」欄にオフィス・アカデミーの社名が記載されていることからすれば、上記のとおり、 P2は、甲3契約締結に当たり、本件映画2の映画製作者はオフィス・アカデミーである と認識していたものと認められ、結局、P2が本件映画2の映画製作者であると認めるこ とはできない。 イ この点、P2がP1P2訴訟において提出した陳述書(甲45、46)には、「すべ ての責任はプロデューサー(製作制作者)である<私>が負うことになり、赤字も背負い、 次のテレビシリーズの企画もなく、本当に悲惨な状態でした。」(甲45の57頁)、 「私は、『宇宙戦艦ヤマト』という作品について、自分が“発想”、“企画”して、自己 の資金で製作を行い、且つ、制作に当たって『適正なる人材』を、その資質を理解して各 部門に起用し、」(甲45の58頁)、「私は『宇宙戦艦ヤマト』を劇場で上映する決意 をし、これで失敗すれば私自身二度と立ち上がれなくなるかもしれないという背水の陣で 『宇宙戦艦ヤマト』の制作を開始したのです。・・・私は、完成した劇場版『宇宙戦艦ヤ マト』をもって映画館を回り、上映させて欲しいと頼みました。最終的には、配給会社の ない自主上映という形でしたが、東急が上映してくれることになりました。」(甲46の 17頁)、「低視聴率で終わり忘れられた作品を、私が辛抱強く、お金をかけて、一文無 しになるのも覚悟で劇場作品として配給をして、『宇宙戦艦ヤマト』を有名にした」(甲 46の40、41頁)との各記載があるが、上記記載のみからは、P2個人が、スタッフ、 テレビ局や映画配給会社との契約を締結するなどの権利、義務の主体となっていたと認め ることはできない。むしろ、前記アで認定したとおり、甲3契約書に添付された別紙(一) には、本件映画の映画製作者はオフィス・アカデミーである旨の記載があること、上記の P2の陳述書(甲46)によれば、オフィス・アカデミーはP2が映画製作のために設立 した個人会社であると推測されるところ、このように映画製作のための株式会社が存在し ているのであれば、映画製作のための各種契約は、その代表者個人で締結するのではなく、 会社が主体となって締結するのが一般的であることからすると、P2の上記陳述書のうち の法的責任及び経済的負担に係る部分の記載は、P2が個人の立場ではなく、オフィス・ アカデミーの代表者としての立場で記載したものと推測される。  また、原告は、オフィス・アカデミーはダミー会社であり、その実態はP2個人である 旨主張するが、本件においては、オフィス・アカデミーの実態等を示す証拠は全く提出さ れておらず、オフィス・アカデミーの法人格を否認してこれをP2個人と同視することは できない。 (3)まとめ  以上のとおり、本件証拠上、本件映画の映画製作者がP2であると認めることはできな い。そして、原告は、映画製作者として本件映画の著作権を取得したP2から、甲3契約 により、本件映画の著作権の譲渡を受けたと主張するのみで、映画製作者がオフィス・ア カデミーなどP2以外の者である場合に、その者から著作権の譲渡を受けた旨の主張、立 証をしていないのであるから、結局、原告の本件映画の著作権の取得は認められない。 2 原告は、甲3契約により、本件映画の翻案権を取得したか(争点(2))について  前記1で判示したように、そもそも、本件証拠上、P2が本件映画の映画製作者である と認めることはできず、したがって、原告が、甲3契約により、本件映画の著作権を取得 したものと認めるに足りないが、念のため、P2が本件映画の映画製作者であったか、又 は、P2が本件映画の映画製作者から本件映画の著作権の譲渡を受けていたものと仮定し た上、争点(2)について、検討する。 (1)甲3契約締結に至る経緯等  証拠(甲1の1ないし9、2、3、31、32の1ないし9、33の1及び2、34) 並びに弁論の全趣旨によれば、次の各事実が認められ、これに反する証拠はない。 ア 原告は、平成8年9月ころから、P2との間で、宇宙戦艦ヤマト作品等の著作物の著 作権を譲り受けるための交渉を始め、同年12月20日、同交渉がまとまり、同日付けで、 甲3契約を締結した。なお、甲3契約書の草案は森伊津子弁護士(以下「森弁護士」とい う。)が作成した。 イ 甲3契約書には、次のとおりの条項がある。 (ア)前文 「株式会社東北新社フィルム(以下「甲」という)、P2(以下「乙」という)、株式会 社ウエスト・ケープ・コーポレーション(以下「丙」という)、株式会社ボイジャーエン ターテインメント(以下「丁」という)とは、以下のとおり合意した。」 (イ)「第1条 定義  本書において用いられるとき下記の用語は下記の意味を有する。 1.現存作品  本書に添付され本書の一部を成す別紙(一)のA項記載の映像著作物をいう。 2.将来作品  本書に添付され本書の一部を成す別紙(一)のB項記載の内容を有する作品であって、 甲乙協議の上決定する制作費で乙が完成させる映像著作物をいう。 3.対象作品  現存作品および将来作品をいう。 4.対象権利  対象作品に対する著作権および対象作品の全部又は一部のあらゆる利用を可能にする一 切の権利。」 (ウ)「第2条 譲渡  乙は甲に対し、対象権利および権利行使素材の所有権の一切を、本書の日付をもって譲 渡し、甲は乙からこれを譲り受けた。但し、対象権利と権利行使素材のうち将来作品に関 するものについては、それらの完成を条件に乙は甲に対し譲り渡し甲は乙からこれを譲り 受けた。」 (エ)「第5条 著作権登録  乙は、現存作品に関する著作権の乙から甲に対する譲渡についての著作権登録を本契約 締結日から三か月以内に行う。」 (オ)「第6条 対価  甲は、乙に対して、本契約上行われる一切の譲渡その他の乙の義務履行に対する対価と して金450、000、000円(消費税別)を分割して以下の期日に乙の指定する銀行 口座への振込みにより支払う。  支払期日 本契約締結時 175、000、000円 (ただしうち100、000、000円については、乙は、甲より既に受領済みであるこ とを確認する。)  本契約締結時から1か月後 75、000、000円  本契約締結時から2か月後 75、000、000円  本契約締結時から6か月後 75、000、000円  本契約締結時から8か月後 50、000、000円 (カ)「第7条 追加対価の額と支払 1.甲は乙に対し、第6条記載の対価の追加対価として下記の金額を支払う。 『下記(1)(2)及び(3)の合計が450、000、000円を越えたとき、その超 過部分の50%の金額。』 (1)対象権利の利用から発生するもの。  甲の総収入(万一、1996年9月11日以降本契約締結時までの間に乙が対象作品に つき得た収入(下記(2)によるものを除く)があるときは、これを甲の収入とするよう、 乙は甲に対し、収受した金員を本契約締結日から7日以内に引き渡す)の75%から、利 用に伴い必要な第三者への配分金及び諸費用を控除した額。 (2)既存契約から発生するもの。  甲の総収入(本契約締結日以降第4条の通知の到達日以前に発生する乙の収入は、これ を甲の収入とするよう、乙は甲に対し、収受した金員を製造原価を差し引いて14日以内 に引き渡す)の85%から、利用に伴い必要な第三者への配分金及び諸費用(販売契約の 場合は製造原価を含む)を控除した額。 (3)将来作品に関するもの。  甲の総収入から甲乙協議の上決定し乙が支出した制作費を控除した額の85%から、利 用に伴い必要な他社への配分金及び諸費用を控除した額(甲乙協議の上決定した制作費分 は乙によるリクープのため甲からすみやかに乙に支払われる)。 2.甲は、四半暦年中に発生した追加対価を、四半暦年終了後1か月以内に乙の指定する 預金口座への振込みにより、支払う。」 (キ)「第9条保証および免責 1.乙は、甲に対し、下記を保証する。 (1)本契約締結時において乙が対象権利を専有(本書に添付され本書の一部を成す別紙 (一)のA項記載の利用制限を除く)していること。但し、将来作品に関する権利につい ては、作品完成時に専有するにいたり、専有権と同時に甲に移転出来るものであること。 (2)本契約締結時において権利行使素材の所有権を有しており、これにつき何ら制限物 権が存在しないこと。 (3)現存作品につき一切の権利行使素材が存在しており、将来作品については存在し得 るにいたること、そして、甲の対象権利の行使に何らの支障がないこと。 (4)甲による対象権利の全部又は一部の行使が第三者の権利を何ら侵害せず、第三者に 対する支払を何ら要しないこと。但し、本書に添付され本書の一部を成す別紙(三)記載 の第三者への支払義務を除く。また、既存契約に基づく義務として、本書添付の本書の一 部を成す別紙(二)記載の内容(相手方、権利の内容、期間、要支払額、支払日)の制約 の存在を甲は承認する。 (5)既存契約以外の契約が対象作品に関して有効に存在していないこと。 2.乙は甲に対し下記の免責をする。  万一、甲の対象権利の行使および権利行使素材の利用に関し、甲又は甲の被許諾者が第 三者より異議を申し立てられ又は請求を受けたときは、これにより生じた損害および費用 の一切を、合理的範囲の弁護士費用を含めて、乙は甲に甲の請求後速やかに支払い、甲に 何らの負担迷惑をかけない。 (ク)「第10条 キャラクター使用作品  対象作品に登場するキャラクター(人物、メカニック等の名称、デザインを含む)を使 用し新たな映像作品(但し、キャラクター使用以外の行為で対象作品の著作権を侵害しな いものに限る)を制作する権利は乙に留保されるものとし、その場合のM/D権その他の 権利の運用については別途協議とする。但し、乙は制作の一か月前までにその内容の詳細 を書面で甲に通知する。」 (ケ)「第12条 連帯保証  丙および丁は、本契約に基づく乙の甲に対する一切の債務の履行につき乙と連帯してそ の履行の責に任ずる。乙、丙および丁は、丙および丁が本契約を締結することにつき、取 締役会の承認を取得済みであることを甲に対し確認する。」 (コ)別紙(一)  前記1のとおり。 (サ)別紙(三)  甲3契約書に添付された別紙(三)には、「対象控除%(素材−出庫、経費)」、「P 2」、「宇宙戦艦ヤマトシリーズのM/D、ゲーム化権のP2とP1の印税配分」、「P 1」、「脚本家連盟」等の欄があり、「対象控除%(素材−出庫、経費)」欄には、別紙 (一)の「A項:現存作品」の欄に記載された著作物名と同一の著作物名が記載され、 「宇宙戦艦ヤマトシリーズのM/D、ゲーム化権のP2とP1の印税配分」欄の宇宙戦艦 ヤマト関連作品に対応する部分には、「作品毎の契約のため、現在明確な取決めがない。 従って、P2が責任をもって両者分を10〜15%の間で1997年2月28日迄に協議 の上決定する。」との記載がある。 ウ 上記イのとおり、甲3契約対象作品の著作権譲渡登録が、甲3契約締結日から3か月 以内に行うことと合意されたことから、原告は、平成9年3月に至り、上記著作物の著作 権の譲渡登録の手続をしようとしたところ、甲3契約対象作品のうち、本件P3経由著作 物の著作権については、平成8年11月25日付けで、P2からP3への譲渡登録がされ ていることが判明した(なお、本件映画は、本件P3経由著作物に含まれている。)(甲 1の1ないし9、31、32の1ないし9)。  そこで、原告は、P2に、上記の譲渡登録がされていることについての説明を求めたと ころ、P2から、宇宙戦艦ヤマト作品の著作権はP3に預けてあるだけであるとの説明を 受けたことから、森弁護士と相談し、その結果、本件P3経由著作物の著作権については、 P3から原告へ譲渡登録をする形をとることとし、その旨P2に連絡して、P2の合意を 得た(甲31)。   その後、原告は、P3に対して、甲3契約対象作品のうち、本件P3経由著作物につい ての、平成9年3月26日付け著作権譲渡証書(本件P3譲渡証書)2通を作成させ、同 人からその交付を受け、P2に対しては、甲3契約対象作品のうち、本件P3経由著作物 以外の著作物についての、平成9年3月26日付け著作権譲渡証書(以下「本件P2譲渡 証書」という。)を作成させ、同人からその交付を受けた。そこで、原告は、平成9年3 月26日、文化庁長官に対し、上記各著作権譲渡証書を添付資料として、甲3対象作品に ついての著作権譲渡登録の申請をし、その結果、平成9年11月19日付けで、本件P3 経由著作物については、P3から原告への著作権譲渡登録が、それ以外の甲3対象作品に ついては、P2から原告への著作権譲渡登録がそれぞれされた(甲1の1ないし9、31、 33の1及び2、34)。 エ 本件P3譲渡証書には、2通とも、譲渡人(登録義務者)の欄にP3の記名捺印が、 譲受人(登録権利者)の欄に原告の記名捺印があり、「下記の各著作物の著作権(著作権 法第27条及び第28条に規定する権利を含む)を平成8年12月20日に譲渡したこと に相違ありません。」との記載がある(甲33の1及び2)。  本件P2譲渡証書には、譲渡人(登録義務者)の欄にP2の記名捺印が、譲受人(登録 権利者)の欄に原告の記名捺印があり、「下記の各著作物の著作権(著作権法第27条及 び第28条に規定する権利を含む)を平成8年12月20日に譲渡したことに相違ありま せん。」との記載がある(甲34)。 カ 本件P3経由著作物の一部である宇宙戦艦ヤマト作品の著作権登録原簿には、P2か らP3への著作権譲渡の欄には、「この著作物について平成八年十一月二十五日、左記の 者の間に著作権(著作権法第二十七条及び第二十八条に規定する権利を含む)の譲渡があ った。」との記載、P3から原告への著作権譲渡の欄には、「この著作物について平成八 年十二月二十日、左記の者の間に著作権(著作権法第二十七条及び第二十八条に規定する 権利を含む)の譲渡があった。」との記載がある(甲1の1ないし9)。 (2)前記(1)で認定した事実を前提にして、以下、甲3契約において、本件映画の翻 案権も譲渡の対象となっていたか否かについて検討する。 ア 著作権法61条2項は、「著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八 条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡し た者に留保されたものと推定する。」と規定するところ、これは、著作権の譲渡契約がな された場合に直ちに著作権全部の譲渡を意味すると解すると著作者の保護に欠けるおそれ があることから、二次的な利用権等を譲渡する場合には、これを特に掲げて明確な契約を 締結することを要求したものであり、このような同項の趣旨からすれば、上記「特掲され」 たというためには、譲渡の対象にこれらの権利が含まれる旨が契約書等に明記されること が必要であり、契約書に、単に「すべての著作権を譲渡する」というような包括的な記載 をするだけでは足りず、譲渡対象権利として、著作権法27条や28条の権利を具体的に 挙げることにより、当該権利が譲渡の対象となっていることを明記する必要があるという べきである。  原告は、著作権法61条2項の「特掲」があったというためには、翻案権が当該譲渡の 目的に含まれていることを終局的一義的文言で記載する必要はなく、翻案権も譲渡の目的 に含まれていることを十分認識できる程度の記載で足りる旨主張するが、上記の説示に照 らして、同主張が採用できないことは明らかである。  そこで、甲3契約書に翻案権譲渡の特掲があったといえるかについて検討するに、前記 (1)のとおり、甲3契約書には、「対象権利および権利行使素材の所有権の一切を・・ ・譲渡し」(2条)との記載、及び「対象権利」の定義として、「対象作品に対する著作 権および対象作品の全部又は一部のあらゆる利用を可能にする一切の権利」(1条の4) との記載があるのみであり、「著作権法27条の権利」又は「翻案権」等の文言を具体的 に挙げて明記して、同権利を譲渡する旨の記載はない。  したがって、甲3契約書には、翻案権を譲渡の目的とする特掲があったということはで きず、また、契約書に明記はしないが譲渡の対象に含まれる旨が合意されたなどの特段の 事情も認められないから、著作権法61条2項により、甲3契約において、本件映画の翻 案権は、著作権を譲渡した者、すなわちP2に留保されたものと推定される。 イ 原告は、前記(1)で認定した甲3契約締結における事情を基に、甲3契約において、 甲3契約対象作品の翻案権も譲渡された旨を主張する。  しかしながら、以下の理由により、甲3契約によって原告が翻案権を取得したと認める ことはできない。 (ア)まず、甲3契約締結当時、原告のように映画、テレビ、ビデオソフトなどの企画、 制作、販売等を行い、映像に関わる著作権を日常的に処理する業界においては、高額な対 価支払を伴う著作権の譲渡契約を行う場合、当該譲渡の対象である著作権に翻案権を含め て契約を締結するときには、著作権法61条2項の規定が存在する以上、作成される契約 書に翻案権が譲渡対象となる旨の特掲がなされていることが一般的であると推測される。  また、本件においては、甲3契約書の草案の作成に原告側の弁護士が関与しており、こ のように弁護士などの法律専門家が譲受人側として著作権譲渡契約書の作成に関与する場 合、譲渡の対象に翻案権も含める旨の合意が成立しているにも関わらず、その特掲のない 契約書を作成し、又は、そのような契約書に署名をすることは、通常、想定し難いという べきである。  しかも、前記(1)エのとおり、原告が、P3から本件P3経由著作物の著作権譲渡登 録をするために、弁護士が関与してP3に作成させた本件P3譲渡証書には、著作権法2 7条及び同法28条の権利が譲渡対象に含まれていることの特掲があり、本件P2譲渡証 書にも、同様の特掲があったのであるから、原告及びその代理人弁護士は、著作権法61 条2項の内容を十分理解し、翻案権の譲渡を受ける場合には、その旨の特掲の必要性を十 分認識していたものと認められ、それにもかかわらず、甲3契約書に、翻案権譲渡の特掲 がなかった以上、当該契約において翻案権の譲渡がなかったものと推測せざるを得ない。 (イ)原告は、甲3契約書9条2項について、P2は、対象権利の行使に関して原告が第 三者から異議を申し立てられ、請求をされることがないことを保証する旨規定しているこ とから、P2は、甲3契約により、対象作品のあらゆる利用を第三者から異議を述べられ ずに行うことが可能な権利を譲渡したことになるところ、そのような権利保証をすること は、翻案権の譲渡をせずしては不可能である旨主張する。  しかしながら、甲3契約書9条2項の上記文言は、前記(1)イ(キ)のとおりであり、 P2から原告に譲渡された「対象権利の行使」に関して、原告が第三者から異議等を受け た場合に、P2がそれに関する一切の費用負担等を行うことを約するものであり、本件映 画に即していえば、映画に関する著作権を行使して複製や上映などをした場合に、第三者 から異議を受けたときを念頭においたものと解することも可能であって、上記文言が、原 告に翻案権があることを常に前提とするとは限らないから、原告の上記主張は、その前提 において誤りがあり、採用することができない。 (ウ)原告は、本件P3譲渡証書は、P3から一旦P2に交付された後、P2から原告に 交付されたものであるところ、本件P3譲渡証書には、譲渡の対象に著作権法27条及び 同法28条に規定する権利が含まれる旨の特掲があるのであるから、P2は、本件P3譲 渡証書の上記記載内容を認識しており、甲3契約において、上記権利も譲渡の対象とする 意思を有していた旨主張する。  しかしながら、本件P3譲渡証書は、前記(1)ウ認定のとおり、原告がP3に作成さ せて同人から交付を受けたものと認められ、P2が本件P3譲渡証書の具体的な記載内容 を認識していたということができない以上、原告の上記主張は、その前提において誤りで ある。また、確かに、本件P3譲渡証書には、前記(1)エのとおり、著作権法27条及 び同法28条の権利が譲渡対象に含まれていることの特掲があるが、同証書は、甲3契約 に利害関係がなく、P2に依頼されて著作権登録原簿上の権利者となっていたにすぎない P3が、原告の依頼により作成したものであり、前記(1)ウで判示した本件P3譲渡証 書作成に関する状況からすると、同証書は、原告の利益のために作成されたものと認めら れ、したがって、その内容も、原告の希望を反映したものとなると考えられることから、 本件P3譲渡証書に、上記特掲があるからといって、それが甲3契約締結当時における、 当事者間の意思を反映したものであるということはできない。  いずれにしても、原告の上記主張を採用する余地はない。  この点、P4陳述書には、本件P3譲渡証書は、P3が一旦P2に交付したものを、P 2が原告に交付したものであり、P2は、本件P3譲渡証書の記載内容を認識し、同内容 の譲渡証書を交付することを承諾していた旨の記載がある。  しかしながら、仮に、上記権利も譲渡対象に含まれることについてP2の承諾を得てい たのであれば、P3から原告への譲渡証書ではなく、本件P3経由著作物の著作権登録原 簿上の著作権をP2に戻すとともに、P2から原告への上記特掲のある譲渡証書を作成す るのが、上記特掲の必要性を認識していた原告にとって確実であり、通常とるべき手段で あると考えられるが、実際には、P3から原告への譲渡証書である本件P3譲渡証書が作 成されるにとどまり、不自然であるところ、上記の通常とるべき手段が行われなかったこ とについての合理的な説明はないから、P4陳述書の上記記載部分は採用できない。 (エ)なお、甲3契約により、原告が権利取得の対価として支払義務を負った金額は、4 億5000万円であるが、証拠(甲4)及び弁論の全趣旨によれば、甲3契約対象作品の 中に含まれている宇宙戦艦ヤマト作品は、その最初の作品である本件映画1が昭和49年 に製作され、昭和58年に劇場公開された「宇宙戦艦ヤマト完結編」までの、合計8作の シリーズ作品であり、劇場公開された4本の作品は、21億円ないし43億円と巨額の興 行収入をもたらし、また、宇宙戦艦ヤマト作品は、日本中に空前のブームを引き起こした ものであることが認められ、このように、甲3契約対象作品の中に、極めて著名な映画で ある宇宙戦艦ヤマト作品が含まれていることからすると、同作品が、甲3契約締結時にお いては、テレビ放映ないし劇場公開がされてから13年ないし22年が経っていることを 考慮しても、甲3契約対象作品の複製権の対価が4億5000万円であることが、不自然 であるということはできない。 ウ 以上のとおり、甲3契約においては、本件映画の翻案権は譲渡の対象となっていたと 認めることはできず、甲3契約によって原告が本件映画の翻案権を取得したと認めること はできない。 3 被告映像は、本件映画を複製又は翻案したといえるか(争点(3))について  前記1で判示したとおり、P2は本件映画の映画製作者と認めることはできず、したが って、原告は、甲3契約により、本件映画の著作権を取得したものとは認められないが、 念のため、P2が本件映画の映画製作者であったか、又は、P2が本件映画の映画製作者 から本件映画の著作権の譲渡を受けていたものと仮定して、争点(3)についても検討す る。ただし、前記2で判示したように、原告が、甲3契約によって、P2から本件映画の 著作権の譲渡を受けたと仮定したとしても、甲3契約の譲渡の対象となった著作権は複製 権のみであり、翻案権は対象となっていなかったのであるから、以下では、被告映像が本 件映画の複製権を侵害するか否かについて検討する。 (1)本件映画の内容について  証拠(甲1の1及び6、4、30、45、46)並びに弁論の全趣旨によれば、本件映 画1の内容は、次のとおりであると認められる。  本件映画1は、地球が、異星人からの攻撃により放射能に汚染され、地表の大部分は溶 岩に覆われて地表に棲息する生物は絶滅したが、人類は、地下都市を築いて生き続けてい たところ、地表の放射能が次第に地下を浸食してきたため、地下都市も、あと1年で放射 能に汚染される状態となったという設定のもと、放射能汚染消去装置の部品と設計図を求 めて、宇宙の遥か彼方のイスカンダル星まで往復するために、かつて海底に沈没していた 戦艦大和を改造して建造された宇宙戦艦ヤマトが、イスカンダル星への往復の途中で、数 々の戦闘を繰り返しながら、侵略者に立ち向かっていくという物語である。 宇宙戦艦ヤマトは、戦闘の際、その最大の兵器である、艦首から発射される波動砲のほか、 主砲、パルスレーザー砲等を使用する。  本件映画2も、設定は異なるものの、宇宙戦艦ヤマト及びその乗組員が、地球ないし人 類を滅亡から救出するために、困難に立ち向かう物語となっている。 (2)本件映画の被侵害主張部分における映像について  証拠(甲10の1、15の1、19の1)、上記.で認定した本件映画の内容及び弁論 の全趣旨によれば、本件映画被侵害主張部分に描かれている艦船は、宇宙戦艦ヤマトであ ること、その艦首にある穴は波動砲の発射口であること、その波動砲発射口から発射され る光線様のものは波動砲であることが認められる。 (3)本件映画被侵害主張部分の創作性  なお、後記(4)で認定する本件映画被侵害主張部分の各部分の表現内容及び形式から すれば、それぞれにつき全体としてみれば、いずれも創作性が認められることは明らかで ある。 (4)本件映画と被告パチンコ映像との対比  甲第10号証の1及び弁論の全趣旨によれば、以下のとおり認められる。 ア 被告映像対比表1リーチ映像部分は本件映画対比表1部分の複製物といえるか。 (ア)両映像の内容及び形式 a 本件映画対比表1部分  本件映画対比表1部分は、約2秒間の動画映像であり、宇宙空間を背景に、宇宙戦艦ヤ マトの艦首部に設置された波動砲発射口内部で、無数のオレンジ色の光の粒子が奥の方へ 吸い込まれていき、それに伴い発射口内部の色が変化する様子が、波動砲発射口から見て 左斜め前方の離れた位置から、波動砲発射口を拡大して描かれている。  同部分の画面の8割強は、艦首部の一部が占めており、その中心部に波動砲発射口が描 かれ、同発射口は画面の4割程度を占めている。 画面の2割弱を占める背景には、暗青色の宇宙空間が描かれている。 艦首部は、一部分しか描かれていないが、その存在が明確に認識できる。  波動砲発射口の内部には、内壁に等間隔のリブが存在しており、最奥部にプロペラ様の ものがあるという構造が明確に描かれている。  波動砲発射口内部では、発射口の出口部分から無数のオレンジ色の光の粒子が発射口奥 部に、直線状に、引き寄せられていき(この光の粒子の発生源は、発射口内部に限定され ており、発射口外部から発射口内に入ってくるものはない。)、発射口内部の色は、当初、 暗いオレンジ色であるのが、徐々にオレンジ色の明るさが増していき、最奥部は、最終的 に、黄色に変色するが、最奥部以外の部分は、途中で明るさが減じ、暗いオレンジ色に戻 る。 b 被告映像対比表1リーチ映像部分  被告映像対比表1リーチ映像部分は、約2秒間の動画映像であり、画面中心部に大きく 描かれている黄白色に発光した部分に向かって、画面全体から無数の黄白色の光の粒子が 吸い込まれていく様子を、正面から描いたものである。  画面中心部に映されている黄白色の発光した部分は、卵型をしており、徐々に拡大して いくが、常に発光しており、光の強弱や色の変化は、あまり見られず、その輪郭は曖昧で ある。この黄白色の発光部分が何であるか、また、その周囲の映像がどのような映像であ るかは、被告映像対比表1リーチ映像部分からは、判別し難いが、前後の映像から、戦艦 様の飛行物体の艦首部にある光線の発射口から光線が発射されていることが分かる。被告 映像対比表1リーチ映像部分の範囲では、発射口の内部の構造の様子は全く認識できない。  黄白色の光の周りには、ぼやけたオレンジ色の部分があり、黄白色部分とオレンジ色部 分を併せた大きさは、当初、画面全体の2割程度であるのが、最終的には、画面の9割程 度となる。背景は、暗青色をしているところ、この部分の映像がどのような映像であるか は、被告映像対比表1リーチ映像部分からは、判別し難いが、前後の映像から、宇宙空間 であることが分かる。  また、黄白色の光の粒子は、中心部の黄白色の光に向かって、画面全体から、渦を巻く ように引き寄せられている。 (イ)対比  本件映画対比表1部分と被告映像対比表1リーチ映像部分とは、前記(ア)のとおり、 画面の中心部に、暗青色の宇宙空間を背景にして、戦艦の艦首に存在する発射口の内部が 発光している様子が描かれていること、その発光部分は、画面上、大きな割合を占めてい ること、発光部分の中心部に向かって光の粒子が移動していく様子が描かれていることが 共通している。  しかしながら、証拠(乙36の1、4及び5、57の1、58)によれば、本件映画が 制作された時点で、先端に穴が空いた飛行物体が宇宙を航行している様子を描いた画像、 先端に穴の空いた戦艦が海上を航行している様子を描いた画像、先端部から光線を発して いる飛行物体を描いた画像、及び宇宙空間が暗青色に描かれている画像が存在しているこ とが認められ、このことから、先端部に存在する発射口から光線を発する飛行物体が暗青 色の宇宙空間を航行するという映像は、特に目新しい表現ということはできず、したがっ て、また、そのような飛行物体が艦首の発射口から光線を発射する前段階として、発射口 部分が発光することを描いた映像も、特に目新しい表現ということはできない。さらに、 艦首の発射口を拡大して描くことも、ありふれた表現方法である。そして、戦艦が宇宙空 間を飛行すること自体は、アイデアに属し、また、海中又は宇宙空間を艦船又は飛行物体 が進んで行くという表現は、上記同様、特徴あるものとはいえない。  したがって、上記両映像の上記共通点のうち、暗青色の宇宙空間を背景にして、戦艦の 艦首に存在する発射口の内部が発光している様子が拡大して描かれている部分は、両映像 にとって特徴的な表現ということはできず、この点が共通することが、両映像の同一性の 判断において、大きな意味を有するということはできない。そして、宇宙空間を背景にし て、戦艦の艦首に存在する発射口の内部が発光しているという部分の具体的な表現形式に ついては、前記(ア)の認定から明らかなように、大きな違いがある。  また、発光部分の中心部に向かって光の粒子が移動していくという部分は、ありふれた 表現ということはできないが、その具体的な表現形式は、前記(ア)の認定から明らかな ように、大きく異なっている。  以上の事実を総合考慮すると、被告映像対比表1待機映像部分と本件映画対比表1部分 との間に、同一性は認められないというべきである。 (ウ)小括  したがって、被告映像対比表1リーチ映像部分は、本件映画対比表1部分の複製物とい うことはできない。 イ 被告映像対比表1待機映像部分は本件映画対比表1部分の複製物といえるか。 (ア)両映像の内容及び形式 a 本件映画対比表1部分  本件映画対比表1部分の表現内容及び表現形式は、上記ア(ア)aで判示したとおりで ある。 b 被告映像対比表1待機映像部分  被告映像対比表1待機映像部分は、0.1秒に満たない動画映像であり、明るい青色の 宇宙空間を背景にして、画面の中央部にある戦艦様の飛行物体の艦首部の光線の発射口が 白色に発光しており、その発光部分に向かって、画面全体から無数の白色の光の粒子が吸 い込まれていく様子が、正面から、発射口を拡大して描かれていている。  発射口は、画面の3割程度を占め、艦首部は、一部のみ描かれているが、画面の4割程 度を占める。発射口内部の白色に発光した部分は、映像の進行に従い若干大きくなるが、 その色は変化しない。被告映像対比表1待機映像部分の範囲では、発射口の内部の構造の 様子は全く分からない。  飛行物体には、底部の両側面に翼様のものが設置されており、この翼様のものの前面に は、小さな長方形の緑色の光が多数付いており、翼様のものの存在感は大きい。  また、発射口内部の発光部分に向かって画面全体から吸い寄せられる白色の光の粒子は、 渦を巻くようにして吸い寄せられている。 (イ)対比  本件映画対比表1部分と被告映像対比表1待機映像部分とは、画面の中心部に、前記 (ア)のとおり、宇宙空間を背景にして、戦艦の艦首に存在する発射口の内部が発光して いる様子が描かれていること、その発光部分は、画面上、大きな割合を占めていること、 発光部分の中心部に向かって光の粒子が移動していく様子が描かれていることが共通して いる。  しかしながら、前記アで判示したように、飛行物体の艦首部の発射口部分が発光するこ とを描いた映像は、特に目新しい表現ということはできない。また、艦首の発射口を拡大 して描くことも、ありふれた表現方法である。そして、戦艦が宇宙空間を飛行すること自 体は、アイデアに属し、また、海中又は宇宙空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという 表現は、上記同様、特徴あるものとはいえない。  したがって、上記両映像の上記共通点のうち、宇宙空間を背景にして、戦艦の艦首に存 在する発射口の内部が発光している様子が拡大して描かれている部分は、両映像にとって 特徴的な表現ということはできず、この点が共通することが、両映像の同一性の判断にお いて、大きな意味を有するということはできない。そして、宇宙空間を背景にして、戦艦 の艦首に存在する発射口の内部が発光しているという部分の具体的な表現形式については、 前記(ア)のとおり、大きな違いがある。  また、発光部分の中心部に向かって光の粒子が移動していくという部分は、ありふれた 表現ということはできないが、その具体的な表現形式は、前記(ア)の認定から明らかな ように、大きく異なっている。  以上の事実を総合考慮すると、被告映像対比表1待機映像部分と本件映画対比表1部分 との間に、同一性は認められないというべきである。 (ウ)小括  したがって、被告映像対比表1リーチ映像部分は、本件映画対比表1部分の複製物とい うことはできない。 ウ 被告映像対比表2リーチ映像部分は本件映画対比表2部分の複製物といえるか。 (ア)両映像の内容及び形式 a 本件映画対比表2部分  本件映画対比表2部分は、約1秒間の動画映像であり、画面左奥側にシリンダー様部材 が、画面右側手前側にピストン様部材が、それぞれ対向して配置されており、上記シリン ダー様部材の中心部には、上記ピストン様部材の直径と同程度の直径の円筒状の中空部分 があり、同中空部分に上記ピストン様部材が、回転することなく、ゆっくりと押し込まれ ていく様子が描かれている。  上記シリンダー様部材の断面は、台座に半円が乗ったような形状をしており、所々に光 った計器様の円形の部材が配置されている。   上記シリンダー様部材の中空部分及びピストン様部材は、光に照らされているように、 濃いオレンジ色に着色され、また、上記シリンダー部材のその余の部分は、同様に薄いオ レンジ色に着色されている。  上記ピストン状部材が上記シリンダー様部材の中空部分に押し込まれても、画面の明る さに変化はない。 b 被告映像対比表2リーチ映像部分  被告映像対比表2リーチ映像部分は、約1秒間の動画映像であり、画面右奥側の部材が、 回転しながら、画面左手前側の部材に向かっていき、衝突する様子が描かれている。  画面右奥側には、先端に合計6個の円筒状突起物が設置された円筒状部材が、画面左手 前側には、釣り鐘状の突起物が複数設置された円筒状部材が、それぞれ対向して配置され ており、右奥側の円筒状部材と左手前側の円筒状部材の各中心部は、細長い円柱状の部材 で連結されている。  そして、右奥側に配置された円筒状部材が高速で回転しながら、左手前側の円筒状部材 の方に高速で移動し、右奥側の円筒状部材に設置された6個の円筒状突起物が、左手前側 の円筒状部材に設置された複数の釣り鐘状の突起物に激しく衝突し、その際に、強く発光 する。  画面は、当初、全体がオレンジ色の光に照らされているように着色されているが、右奥 側に配置された円筒状部材に設置された円筒状突起物が左手前側に配置された円筒状部材 に設置された釣り鐘状の突起物に衝突すると、その衝突部分である画面中央部から黄白色 の明るい光が発生し、その光が画面全体に広がっていく。 (イ)対比  本件映画対比表2部分と被告映像対比表2リーチ映像部分とは、前記(ア)のとおり、 画面の右側と左側に、部材が対向して配置され、両部材が近づく様子が描かれている点、 オレンジ色の光に照らされているように描かれている点で共通するが、この共通点は、極 めて抽象的なものであるから、両映像の同一性の有無の判断においては、大きな意味を有 しない。  そして、上記両映像間の複製権侵害の有無の判断においては、両映像の具体的な表現形 式の比較が重要であるところ、その部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大き く相違する。  したがって、被告映像対比表2リーチ映像部分と本件映画対比表2部分との間に、同一 性は認められないというべきである。 (ウ)小括  したがって、被告映像対比表2リーチ映像部分は、本件映画対比表2部分の複製物とい うことはできない。 エ 被告映像対比表2待機映像部分は本件映画対比表2部分の複製物といえるか。 (ア)両映像の内容及び形式 a 本件映画対比表2部分  本件映画対比表2部分の表現内容及び表現形式は、上記ウ(ア)aで判示したとおりで ある。 b 被告映像対比表2待機映像部分  被告映像対比表2待機映像部分の表現内容及び表現形式は、上記ウ(ア)bで判示した 被告映像対比表2リーチ映像部分とほぼ同様であるが、被告映像対比表2リーチ映像部分 が全体的にオレンジ色の光に照らされているように描かれているのに対し、被告映像対比 表2待機映像部分で描かれている光の色は黄白色ないし白色となっている。 (イ)対比  被告映像対比表2待機映像部分は、上記のとおり、被告映像対比表2リーチ映像部分と ほぼ同じであり、上記ウ(イ)の本件映画対比表2部分との対比において検討した結果が 当てはまる。 (ウ)小括  したがって、被告映像対比表2待機映像部分は、前記ウの場合と同様に、本件映画対比 表2部分の複製物と認めることはできない。 オ 被告映像対比表3リーチ映像部分は本件映画対比表3部分の複製物といえるか。 (ア)両映像の内容及び形式 a 本件映画対比表3部分  本件映画対比表3部分は、約3秒間の動画映像であり、宇宙空間を背景にして、宇宙戦 艦ヤマトの艦首部の波動砲発射口から、波動砲が発射される様子が描かれている。  本件映画対比表3部分の前半部分は、宇宙戦艦ヤマトの艦首部が、同戦艦から見て左斜 め前方の位置から、艦首部を拡大して、同部が画面の中心部付近に位置するよう描かれて いる。艦首の発射口は、当初、画面全体の約10分の1程度の大きさで、内部は、最奥部 が黄白色に、その余の部分はオレンジ色に発光しており、内壁に等間隔のリブや多数の光 の粒子が存在していたが、途中で、最奥部の黄白色の光の強度が増すとともに、オレンジ 色部分が黄白色に変化していき、画面が切り替わる。  画面が切り替わると、宇宙戦艦ヤマト全体が、同戦艦から見て左斜め前方の、離れた位 置から、艦首の発射口が画面の中心部付近に位置するように描かれている。発射口は、当 初、空洞の状態であるが、途中で黄白色に発光し、続いて、その光が徐々に強まっていく とともに、大きくなり、最終的には、画面の約8割程度を占め、宇宙戦艦ヤマトを覆い隠 すようになる。 b 被告映像対比表3リーチ映像部分  被告映像対比表3リーチ映像部分は、1秒弱の動画映像であり、宇宙空間を背景に、戦 艦様の飛行物体の艦首部から光線が発射される様子が描かれている。  同映像部分は、上記飛行物体の全体が、左斜め前方の、少し離れた位置から、艦首の発 射口が画面の中心部付近に位置するように描かれている。発射口は、終始、黄白色の光に 覆い隠されて見えない。  黄白色の光は、最初は、画面の4分の1程度の大きさで、上記飛行物体の約3分の1を 覆い隠していたが、その後、見る者に向かって、等間隔に5方向に分かれて、渦を巻くよ うに放射状に拡散し、最終的には画面全体が黄白色の光で満たされ、宇宙空間は見えなく なる。 (イ)対比  本件映画対比表3部分と被告映像対比表3リーチ映像部分とは、前記(ア)のとおり、 宇宙空間を背景に、戦艦全体が左斜め前方の位置から描かれている点、戦艦の艦首の発射 口から黄白色の光線が発射され、その黄白色部分が拡大していく様子が描かれている点で 共通している。  しかしながら、前記ア(イ)で判示したとおり、宇宙空間を背景に、先端部に存在する 発射口から光線を発する飛行物体を描いた映像は、特に目新しい表現ということはできず、 また、艦船の全体を左斜め前方の位置から描くこと、光線を黄白色に描くこと、発射され た光線が拡散していくように描くこともありふれた表現方法である。また、宇宙空間を戦 艦が飛行すること自体は、アイデアに属し、著作権法により保護すべき表現ということは できない。  したがって、上記両映像の上記共通点は、両映像にとって特徴的な表現ということはで きず、この点が共通することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有すると いうことはできない。  そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、 前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。  以上の事実を総合考慮すると、本件映画対比表3部分と被告映像対比表3リーチ映像部 分との間に、同一性は認められないというべきである。 (ウ)小括  したがって、被告映像対比表3リーチ映像部分は、本件映画対比表3部分の複製物とい うことはできない。 カ 被告映像対比表3待機映像部分は本件映画対比表3部分の複製物といえるか。 (ア)両映像の内容及び形式 a 本件映画対比表3部分  本件映画対批評3部分の表現内容及び表現形式は前記オ(ア)aのとおりである。 b 被告映像対比表3待機映像部分  被告映像対比表3待機映像部分は、約1秒間の動画映像であり、宇宙空間を背景に、戦 艦様の飛行物体の艦首部の発射口から光線が発射される様子が描かれている。  上記飛行物体の艦首部にある発射口は、正面から、画面の3分の1程度を占めている。  上記映像部分の最初の場面では、飛行物体の底部の両側面に翼様のものが設置されてい る様子が見え、この翼様のものの前面には、小さな長方形の緑色の光が多数付いており、 翼様のものの存在感は大きい。  発射口の内部は、白色に発光しており、この発光部分は、最初は発射口の内部に収まっ ていたが、その後、画面を見る者に向かって、拡大し、最終的には画面全体を覆うように なり、宇宙空間は見えなくなる。 (イ)対比  本件映画対比表3部分と被告映像対比表3待機映像部分とは、前記(ア)のとおり、宇 宙空間を背景に、戦艦の艦首の発射口から光線が発射され、その光線が拡大していく様子 が描かれている点で共通している。  しかしながら、前記アで判示したとおり、宇宙空間を背景に、先端部に存在する発射口 から光線を発する飛行物体を描いた映像は、特に目新しい表現ということはできない。ま た、戦艦が宇宙空間を飛行すること自体は、アイデアに属し、また、海中又は宇宙空間を 艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、上記同様、特徴あるものとはいえない。  したがって、上記両映像の上記共通点は、両映像にとって特徴的な表現ということはで きず、この点が共通することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有すると いうことはできない。  そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、 前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。  以上の事実を総合考慮すると、本件映画対比表3部分と被告映像対比表3リーチ映像部 分との間に、同一性は認められないというべきである。 (ウ)小括  したがって、被告映像対比表3待機映像部分は、本件映画対比表3部分の複製物という ことはできない。 キ 被告映像対比表4リーチ映像部分は本件映画対比表4部分の複製物といえるか。 (ア)両映像の内容及び形式 a 本件映画対比表4部分  本件映画対比表4部分は、約2秒間の動画映像であり、宇宙空間を背景に、宇宙戦艦ヤ マトの艦首部の波動砲発射口から発射された波動砲の様子が描かれている。  上記映像部分では、宇宙戦艦ヤマト全体が、同戦艦から見て左斜め前方の、やや離れた 位置から、艦首の発射口が画面の中心部付近に位置するように描かれている。  発射口からは、黄白色の光が発せられており、この光は、最初は、画面の3分の1程度 を占め、宇宙戦艦ヤマトの3分の1程度を覆い隠しているが、拡大していき、画面の6割 程度を占めるまで拡大すると、今度は収縮し、発射口を覆い隠す程度の大きさのところで、 その中央部から青白い光線が、勢いよく先端部を拡大しながら飛出してくる。 光線の先端が画面の左端に達すると、同光線の先端部は、画面の左端と発射口との中間地 点付近まで戻り、その後、さらに、画面の左端まで拡大し、画面左端に達すると、また、 上記中間地点付近まで戻り、その後、また、画面の左端まで拡大し、画面左端に達すると、 宇宙戦艦ヤマトが画面の右方向へ移動する(すなわち、描写対象が光線の先端方向へ移動 する。)。それとともに、上記光線の画面に占める割合が高くなり、最終的には、上記光 線は、画面の7割程度を占めるようになり、光線が大量に発せられている様子が描かれ、 色彩も若干黄色を帯びてくる。 b 被告映像対比表4リーチ映像部分  被告映像対比表4リーチ映像部分は、約1秒間の動画映像であり、巨大な光線の様子が 描かれている。  上記映像部分は、最初は、画面の左側4分の3の部分のうちの概ね中央部に黄白色の光 が描かれており、当該部分だけでは、どのような場面の映像であるかは判別し難いが、前 後の映像から、上記黄白色の光は、戦艦様の飛行物体の艦首部の発射口から発射された光 線であること、背景が宇宙空間であることが分かる。  そして、黄白色の光の右端部(光線が発せられている元の部分)は画面の右奥の方向へ 徐々に移動していき(すなわち、描写対象が光線の先端部に移っていき)、それに伴い、 上記の光は波を打ち、光線が勢いよく大量に発せられている状況が描かれ、最終的には、 画面のほぼすべての部分が黄白色の光で覆われる。 (イ)対比  本件映画対比表4部分と被告映像対比表4リーチ映像部分とは、前記(ア)のとおり、 宇宙空間を背景に、戦艦の艦首の発射口から光線が発射されている点、その光線が勢いよ く大量に発射されている点、描写対象が光線の発せられている元の部分から光線の先端部 へと移っていく点で共通している。  しかしながら、前記アで判示したとおり、宇宙空間を背景に、先端部に存在する発射口 から光線を発する飛行物体を描いた映像は、特に目新しい表現ということはできない。ま た、その光線が大量に発射されているように描くことも、ありふれた表現形式である。さ らに、戦艦が宇宙空間を飛行すること自体はアイデアに属し、また、海中又は宇宙空間を 艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、上記同様、特徴あるものとはいえない。  したがって、上記両映像の上記共通点のうち、宇宙空間を背景に、先端部に存在する発 射口から大量の光線を発する戦艦を描いている点は、両映像にとって特徴的な表現という ことはできず、この点が共通することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を 有するということはできない。  そして、両映像の表現形式には、前記(ア)の認定から明らかなように、大きな相違が あるから、描写対象が光線の発せられている元の部分から光線の先端部へと移っていくと いう点で表現形式が共通していることを考慮しても、両映像が同一であるということはで きない。 (ウ)小括  したがって、被告映像対比表4リーチ映像部分は、本件映画対比表4部分の複製物とい うことはできない。 ク 被告映像対比表4待機映像部分は本件映画対比表4部分の複製物といえるか。 (ア)両映像の内容及び形式 a 本件映画対比表4部分  本件映画対比表4部分の表現内容及び表現形式は、前記キ(ア)aのとおりである。 b 被告映像対比表4待機映像部分  被告映像対比表4待機映像部分は、約1秒間の動画映像であり、画面のほとんどが白色 に発光しており、わずかに、画面の隅に、青色部分が見えるという状態から、上記発光部 分が回転しながら拡大し、画面全体が完全に白色に発光するようになり、その状態が続く 映像である。  被告映像対比表4待機映像部分だけからは、どのような場面が描かれているかは分から ないが、前後の映像から、宇宙空間を背景にして、画面の中央に位置する戦艦様の飛行物 体の艦首部の発射口から、画面を見る者に向かって、白色に発光する光線が大量に勢いよ く発射されている状況を、真正面の視点から描いた画像であることが分かる。 (イ)対比  本件映画対比表4部分と被告映像対比表4待機映像部分とは、前記(ア)のとおり、宇 宙空間を背景にして、艦船の艦首の発射口から光線が勢いよく大量に発射されている状況 を描いている点で共通する。  しかしながら、前記ア(イ)で判示したとおり、宇宙空間を背景に、先端部に存在する 発射口から光線を発する飛行物体を描いた映像は、特に目新しい表現ということはできな い。また、その光線が大量に発射されているように描くことも、ありふれた表現形式であ る。さらに、戦艦が宇宙空間を飛行すること自体は、アイデアに属し、また、海中又は宇 宙空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、上記同様、特徴あるものではない。  したがって、上記両映像の上記共通点のうち、宇宙空間を背景に、先端部に存在する発 射口から大量の光線を発する戦艦を描いている点は、両映像にとって特徴的な表現という ことはできず、この点が共通することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を 有するということはできない。  そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、 前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。  以上の点を総合考慮すると、本件映画対比表4部分と被告映像対比表4待機映像部分と の間に、同一性は認められないというべきである。 (ウ)小括  したがって、被告映像対比表4待機映像部分は、本件映画対比表4部分の複製物という ことはできない。 ケ 被告映像対比表13部分は本件映画対比表13部分の複製物といえるか。 (ア)両映像の内容及び形式 a 本件映画対比表13部分  本件映画対比表13部分は、約1秒間の動画映像であり、宇宙空間を背景に、宇宙戦艦 ヤマトの主砲が立ち上がる様子が描かれている。  上記映像部分では、正面から、宇宙戦艦ヤマトの2基の主砲とその背後の艦橋部分が、 主砲を拡大して、発射口を中心に、かなり接近した位置から描かれているため、砲台部分 は画面に入っておらず、映像の前半は、砲身のうち、下の一部は画面に現れていない。ま た、画面全体に明暗はなく、同系色の薄暗い色で描かれている。  主砲は、1基の砲台に3門の砲身が取り付けられており、画面の手前側と奥側にそれぞ れ1基配置され(奥側の主砲は手前側の主砲より若干高い位置にある。)、手前側の3門 の砲身は若干、画面の左上方向を向き、奥側の3門の砲身は若干、画面の右上方を向いて おり、その背後の画面中央部分に艦橋が配置された構図となっている。手前側と奥側の主 砲の大きさは、ほぼ同じである。  そして、艦橋を中心にして、左右対称に近い形で、まず、右奥側の3門の砲身が右上方 に向かって立ち上がり、同砲身がある程度立ち上がると、今度は、左手前側の3門の砲身 が左上方に立ち上がる。 b 被告映像対比表13部分  被告映像対比表13部分は、宇宙空間を背景に、戦艦様の飛行物体の主砲が、立ち上が る様子が描かれた動画映像である。  上記映像部分は、正面から、戦艦様の飛行物体の3門の砲身を有する1基の主砲のすべ ての部分が画面中央に大きく描かれ、そのすぐ後ろに、1基の主砲が、手前の主砲に比べ て、かなり小さく描かれ、さらに、後方の右に寄った位置に艦橋が描かれている。後ろの 主砲は、手前の主砲の陰に隠れており、最初の場面では、砲身は2門しか見えない。艦橋 は、光に照らされたように、明るく描かれているが、その他の部分は、薄暗い色で描かれ ている。  そして、手前の主砲の3門の砲身は、上方に立ち上がり、それとともに、後方の1基の 主砲の砲身が上方にわずかに移動する。 (イ)対比  本件映画対比表13部分と被告映像対比表13部分とは、前記(ア)のとおり、宇宙空 間を背景に、正面から、戦艦の主砲が上方に立ち上がる様子が、主砲をアップにして描か れている点、その主砲は、1基の砲台に3門の砲身が設置されている点、主砲の後ろに艦 橋が描かれている点で共通する。  しかしながら、前記のとおり、宇宙空間に戦艦を飛行させること自体は、アイデアに属 し、また、海中又は宇宙空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、特徴あるも のとはいえない。そして、戦艦に、3門の砲身を有する主砲を描くこと、及びその主砲が 立ち上がることは極めてありふれた表現形式である。また、主砲を正面から大きく描くこ と、その主砲の後ろに艦橋を描くこともありふれた表現形式である。  したがって、上記共通点は、上記両映像にとって、特徴的な表現ということはできず、 この点が共通することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するというこ とはできない。  そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、 前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。  以上の点を総合考慮すると、本件映画対比表13部分と被告映像対比表13部分との間 に、同一性は認められないというべきである。 (ウ)小括  したがって、被告映像対比表13部分は、本件映画対比表13部分の複製物ということ はできない。 コ 被告映像対比表14部分は本件映画対比表14部分の複製物といえるか。 (ア)両映像の内容及び形式 a 本件映画対比表14部分  本件映画対比表14部分は、約2秒の動画映像であり、宇宙空間を背景に、宇宙戦艦ヤ マトの主砲が発射される様子が描かれている。  上記映像部分では、正面下方の接近した位置から、宇宙戦艦ヤマトが描かれており、艦 首部の先端上部部分、2基の主砲及び艦橋が描かれている。艦橋は、画面中央部に薄暗く 描かれ、左側手前と右奥側にそれぞれ1基の砲台とその砲台上に3門の砲身が設置されて いる。左手前側の3門の砲身は、画面左上方を向いており、右奥側の3門の砲身は、画面 右上方を向いており、艦橋を中心に概ね左右対称の形となっている。左側の砲身に比べ、 右側の砲身は小さく、両方の砲身とも、その根元部分が艦首部分に隠れている。  上記両主砲からは、白色に発光した光線が、次のような態様で発射される。すなわち、 まず、右奥側の3門の砲身から、1つの巨大な白色に発光した光線(発射時の爆焔を表す ように、光線の根元の部分が大きな円形になっており、この円形部分により砲身の上方の 3分の1部分が隠れている。)が発射され、その後、その巨大な円形の発光部分が割れて、 3門の砲身の先端部が現れ、各砲身からは、それぞれ、砲身の直径と同じ径の光線が発せ られており、その後、その光線の発射が止み、次に、左手前側の砲身から、右奥側の砲身 からの光線の発射と同じ態様で、光線が発射される。 b 被告映像対比表14部分  被告映像対比表14部分は、宇宙空間を背景にして、戦艦様の飛行物体の主砲が発射さ れる様子が描かれた動画映像である。  上記映像部分では、戦艦様の飛行物体が、その主砲を中心にして、左斜め前方から描か れている。主砲は、手前に1基の砲台及び上方を向いた3門の砲身が大きく、その後方に 1基の砲台が小さく、それぞれ描かれており、さらに、その右後方に、艦橋が、光に照ら されたように、明るく描かれている。  手前の主砲の3門の砲身からは、白色に発光した光線が発射されるが、この光線の発射 の態様は、まず、3門の砲身から、発射時の爆焔を表すものと思われる、同砲身の先端部 を隠すほどの大きさの楕円形の白色の発光部分と、その楕円形部分を根元とする3本の白 色に発光した光線が生じ、その際、それらの白色の発光部分の周辺部分及び艦体は青白く 発光し、その後、上記の楕円形の発光は止まり、各砲身から、それぞれ、白色の光線が発 射されるというものである。 (イ)対比  本件映画対比表14部分と被告映像対比表14部分とは、前記(ア)のとおり、宇宙空 間を背景にして、戦艦の主砲から白色の光線が発射される様子が描かれた点、主砲は、1 基の砲台に3門の砲身が設置されている点、主砲から光線が発射される態様として、まず、 砲身の先端部周辺に、砲身の先端部が全く見えなくなるような大きさの円形状ないし楕円 形状の発光部分と同発光部分を根元として光線が発射される様子が描かれ、次に、上記円 形状ないし楕円形状の発光部分が消滅し、3門の砲身から、それぞれ光線が発射される様 子が描かれている点で共通する。  しかしながら、宇宙空間に戦艦を飛行させることはアイデアに属し、また、海中又は宇 宙空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、特徴あるものとはいえない。そし て、戦艦に、3門の砲身を有する主砲を描くこと、及びその主砲から光線が発射される様 子を描くことは極めてありふれた表現形式である。また、乙第27号証によれば、戦艦の 主砲の発射時、砲身の先端部分に、大きな円形の青白色の爆焔が描かれている画像が、本 件映画の制作の前に既に存在していたことが認められることから、上記共通点のうちの光 線が発射される上記態様もありふれた表現形式というべきである。  したがって、上記両映像の上記共通点は、いずれも、両映像にとって特徴的な表現とい うことはできず、この点が共通することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味 を有するということはできない。  そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、 前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。  以上の点を総合考慮すると、本件映画対比表14部分と被告映像対比表14部分との間 に、同一性は認められないというべきである。  (ウ)小括  したがって、被告映像対比表14部分は、本件映画対比表14部分の複製物ということ はできない。 サ 被告映像対比表15部分は本件映画対比表15部分の複製物といえるか。 (ア)両映像の内容及び形式 a 本件映画対比表15部分  本件映画対比表15部分は、約2秒間の動画映像であり、宇宙空間を背景にして、宇宙 戦艦ヤマトに設置された多数の小砲から光線が発射される様子が描かれている。  上記映像部分では、多数の小砲から、間欠的な破線状の光線が一斉に発射されている様 子が、小砲の正面からの視点で描かれている。  小砲の設置された砲塔は、いずれもドーム型をしており、画面上は9基の砲塔が描かれ ている。各砲塔は、上下3段に、上段には2基、中段には3基、下段には4基の砲塔が配 置され、上段と下段の各砲塔には2門の砲身が、中段の各砲塔には4門の砲身が設置され ている。 いずれの砲身も、画面の左斜め上方を向いている状態から真上を向いている状態へゆっく りと旋回し、同じ速度で、同じ動きをする。砲身から発射される光線はオレンジ色をして おり、発射時に発射口の爆焔は発生せず、砲塔の一部分が、爆焔のために発光するという こともない。 b 被告映像対比表15部分  被告映像対比表15部分は、宇宙空間を背景にして、複数の小砲から光線が発射される 様子が描かれた動画映像である。  上記映像部分では、2基の小砲から、間欠的な破線状の光線が発射されている様子が、 小砲の手前上方の非常に接近した位置から描かれているため、画面上には、小砲の設置さ れた砲塔の一部しか見えないが、ドーム型をしていることが推測され、各砲塔には各2門 の砲身が設置されている。  中心的に描かれた手前の砲塔は、左右へと高速で旋回し、各砲身は、それぞれ、別の動 きをしている。砲身から発射される光線は白色であり、発射時には、発射口から白色に発 光する爆焔が生じ、また、光線の速度は、本件映画対比表15部分における光線の速度に 比べて、高速である。さらに、奥側の小砲の砲塔の一部は、光線の発射時の爆焔のため、 白く発光している。 (イ)対比  本件映画対比表15部分と被告映像対比表15部分とは、前記(ア)のとおり、宇宙空 間を背景に、間欠的な破線状の光線を発射している小砲を描いている点、同小砲の砲塔は ドーム型をしている点、1基の砲塔に2門の砲身が設置されているものがある点で共通す る。  しかしながら、乙第36号証の2によれば、宇宙空間において、間欠的な破線状の光線 を発射している小砲が描かれている画像が、本件映画の制作の前に既に存在していたこと が認められ、また、証拠(乙31ないし33)によれば、戦艦の小砲の砲塔がドーム型で あること、1基の砲塔に砲身が2門設置されていることも一般的であると認められる。  したがって、上記両映像の上記共通点は、いずれも、両映像にとって特徴的な表現とい うことはできず、この点が共通することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味 を有するということはできない。  そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、 前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。  以上の点を総合考慮すると、本件映画対比表15部分と被告映像対比表15部分との間 に、同一性は認められないというべきである。 (ウ)小括  したがって、被告映像対比表15部分は、本件映画対比表15部分の複製物ということ はできない。 シ 被告映像対比表16部分は本件映画対比表16部分の複製物といえるか。 (ア)両映像の内容及び形式 a 本件映画対比表16部分  本件映画対比表16部分は、宇宙戦艦ヤマトが宇宙空間を飛行している様子が描かれた 約6秒間の動画映像である。  上記映像部分では、何もない宇宙空間を飛行している宇宙戦艦ヤマトが、画面を見る者 に接近して通過して行く様子が、同戦艦から見て左斜め前方の視点から描かれている。  宇宙戦艦ヤマトは、画面右奥から、左手前に向かって、画面を見る者の方に近付いて来 るように飛行して、徐々に大きくなり、本件映画対比表16部分の最終場面では、画面の ほとんどを占めるように描かれ、画面を見る者に、宇宙戦艦ヤマトが目の前を通過して行 く印象を与える。通過の際、艦体の側面部分が画面の中心に大きく描かれるため、同部分 が特に注目される。  宇宙戦艦ヤマトは、艦首部に発射口があることを除けば、一般的な戦艦の形状をしてお り、艦橋が甲板の後部に、主砲が艦橋の前に、それぞれ設置されており、喫水線付近で上 下に色分けされ、上部は灰色に、下部は赤色となっており、翼様のものは付いていない。 さらに、飛行している宇宙戦艦ヤマトは、宇宙空間と同様に薄暗く描かれている。 b 被告映像対比表16部分  被告映像対比表16部分は、戦艦様の飛行物体が宇宙空間を飛行し、画面を見る者の近 くを通過して行く様子が描かれた動画映像である。  戦艦様の飛行物体は、画面中央奥から、左手前に向かって、画面を見る者に近付いて来 るように飛行して、徐々に大きくなり、最終場面では、画面の下半分を占めるように描か れ、その時点では、同飛行物体を見下ろすような角度から描かれているため、画面を見る 者に、目の前の下方の直近を通過して行く印象を与える。通過の際、主砲及び艦橋部分が 画面の中心に大きく描かれるため、同部分が注目される。  上記飛行物体の後方には、画面中央部分に、大きな惑星の右下4分の1程度が描かれ、 また、同惑星の右側に、その陰に左半分が隠れている状態で、小さな惑星が描かれ、両惑 星の右端の一部にのみ光が当たっている。大きな惑星の光が当たらない部分は、背景の宇 宙空間と同じ暗青色であり、輪郭が不明確である。両惑星は映像の進行に伴い、右方向へ 移動し、小さな惑星は、途中で画面から外れる。  上記飛行物体は、艦首部に発射口があり、艦橋が甲板の後部に、主砲が艦橋の前に、そ れぞれ設置されており、喫水線付近で上下に色分けされ、上部は灰色に、下部は赤色とな っており、また、側面に大きな翼様のものが設置されている。さらに、飛行物体は、光に 照らされているように明るく描かれている。 (イ)対比  本件映画対比表16部分と被告映像対比表16部分とは、前記(ア)のとおり、宇宙空 間をゆっくりと飛行している戦艦が、画面を見る者の近くを通過して行く様子について、 当該戦艦の左前方の位置から描かれている点、戦艦が徐々に大きくなり、画面を見る者に、 戦艦が自分の直近を通過して行く印象を与えるように描かれている点、戦艦の形状及び色 彩が、艦首部に発射口があり、艦橋が甲板の後部に、主砲が艦橋の前に、それぞれ設置さ れており、喫水線付近で上下に色分けされ、上部は灰色に、下部は赤色となっている点で 共通する。  しかしながら、宇宙空間に戦艦を飛行させること自体は、アイデアに属し、また、海中 又は宇宙空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、特徴あるものとはいえない。 また、乙第65号証によれば、昭和35年5月に発売された戦艦大和のプラスチック模型 は、宇宙戦艦ヤマトの艦首に発射口があることを除けば、宇宙戦艦ヤマトと類似した形態 及び色彩をしていることが認められ(宇宙戦艦ヤマトの形状及び色彩は、戦艦大和ないし 一般的な戦艦の形状及び色彩に基づいて制作され、これに艦首の発射口を設けたものと認 められる。)、したがって、宇宙戦艦ヤマトの形状及び色彩は、艦首に発射口がある点を 除いて、ありふれたものであり、上記共通点の、艦橋が甲板の後部に、主砲が艦橋の前に、 それぞれ設置されており、喫水線付近で上下に色分けされ、上部は灰色に、下部は赤色と なっている点もありふれた表現形式というべきである。また、前記アで判示したように、 本件映画が制作された時点で、先端に穴が空いた飛行物体が宇宙を航行している様子を描 いた画像、先端に穴の空いた戦艦が海上を航行している様子を描いた画像が存在しており、 艦首部に穴の空いた戦艦が特に目新しい表現ということはできない。さらに、戦艦が宇宙 空間を飛行している様子を、戦艦から見て左前方の視点から描き、その際、戦艦が近付い て来るに従って大きくなり、画面を見る者としては、戦艦が自分の直近を通過して行く印 象を持つように描くことも、ありふれた表現形式である。  このように、上記の共通点ないし類似点は、著作権法上保護される表現に当たらないも のであるか、又は、ありふれた表現形式にすぎないものである。  そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、 前記(ア)の認定から明らかなように、相当異なる。  以上の点を総合考慮すると、本件映画対比表16部分と被告映像対比表16部分との間 に、同一性は認められないというべきである。 (ウ)小括  したがって、被告映像対比表16部分は、本件映画対比表16部分の複製物ということ はできない。 ス 被告映像対比表17部分は本件映画対比表17部分の複製物といえるか。 (ア)両映像の内容及び形式 a 本件映画対比表17部分  本件映画対比表部分17部分は、宇宙戦艦ヤマトが宇宙空間を飛行している様子が描か れた約5秒間の動画映像である。  上記映像部分では、宇宙戦艦ヤマトが、何もない宇宙空間を、画面の奥の方向へ遠ざか って行く様子が描かれたものであり、最初の場面では、画面全体に、拡大された宇宙戦艦 ヤマトの左側面の一部が横側の位置から描かれ、画面を見る者に、目の前を通過して行く 印象を与えている。その後、視点が宇宙戦艦ヤマトの左後方部分にゆっくり移るとともに、 宇宙戦艦ヤマトの進行方向が画面左奥に向けられ、宇宙戦艦ヤマトの左斜め後方の位置か ら、宇宙戦艦ヤマトが、画面の中央やや左よりの奥の方に遠ざかって行くように、徐々に 小さくなっていく様子が描かれている。  宇宙戦艦ヤマトの艦尾は、円形をしており、全体がメインエンジンの噴出口となって、 同噴出口がオレンジ色に発光している。また、艦尾の底部には、補助エンジンの噴出口が 2つ設置されており、同噴出口もオレンジ色に発光している。さらに、艦尾には、相互に 120度の角度に開いた3本の尾翼が設置されているが、翼様のものは付いていない。 b 被告映像対比表17部分  被告映像対比表17部分は、宇宙空間を戦艦様の飛行物体が、画面の奥の方向へ遠ざか って行く様子が描かれた動画映像である。  上記映像部分では、最初、飛行物体の艦橋の左側面が拡大されて、同飛行物体の左側後 方の位置から描かれ、その後、上記飛行物体が描かれる位置が、飛行物体の後部を俯瞰す る地点、真後ろの地点へと順次移っていき、最後の場面では、真後ろの位置から、飛行物 体が画面の正面奥へ、遠ざかって行くように徐々に小さくなっていく様子が描かれている。 この最後の場面では、飛行物体の先に、飛行物体に一部が隠れた状態で地球と思われる惑 星が描かれており、飛行物体がこの惑星に向かっているという印象を受ける。  上記飛行物体の艦尾は、円形をしており、全体がメインエンジンの噴出口となって、同 噴出口が白色に発光している。また、上記飛行物体の両側面に大きな主翼が設置されてお り、同飛行物体を真後ろから見ると戦闘機ないし飛行機のように見える。さらに、艦尾の 上部と底部に、補助エンジンの噴出口が、それぞれ2つずつ設置されており、上記主翼に も、各1つずつ補助エンジンの噴出口が設置され、いずれの噴出口も白色に発光している。 艦尾には、相互に90度の角度に開いた4本の尾翼が設置されている。 (イ)対比  本件映画対比表17部分と被告映像対比表17部分とは、前記(ア)のとおり、宇宙空 間を戦艦が画面奥へ遠ざかって行く様子が描かれている点、視点が変化していき、最終的 には戦艦の後ろの位置から描写している点、戦艦の艦尾は全体がエンジンの噴出口となっ ており、同部分は発光している点で共通している。  しかしながら、上記共通点のうち、宇宙空間に戦艦を飛行させること自体は、アイデア に属し、また、海中又は宇宙空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は特徴ある ものとはいえない。また、上記共通点のうち、その他の部分は、いずれもありふれた表現 形式である(後部の全面がエンジンの噴出口となっている飛行物体の画像は、乙第36号 証の3に存在する。)。  したがって、上記両映像に上記共通点が存在することが、両映像の同一性の判断におい て、大きな意味を有するということはできない。  そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、 前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。  以上の点を総合考慮すると、本件映画対比表17部分と被告映像対比表17部分との間 に、同一性は認められないというべきである。 (ウ)小括  したがって、被告映像対比表17部分は、本件映画対比表17部分の複製物ということ はできない。 セ 被告映像対比表18部分は本件映画対比表18部分の複製物といえるか。 (ア)両映像の内容及び形式 a 本件映画対比表18部分  本件映画対比表18部分は、艦橋内部の様子が描かれた約3秒間の動画映像である。  上記映像部分では、画面全体が薄暗く、艦橋内部の様子が、艦橋内部奥側から外を見る 方向で、内部全体を見渡せるように、俯瞰する位置から描かれている。  前方正面上方に巨大なパネルが描かれ、前方中央部に、4本の太い格子で区分された5 つの窓があり、手前の床上には、手前側に操縦席が、正面の窓と両側壁の手前側に、複数 の机と椅子が、中央部に、半球状のものが、それぞれ設置されており、その半球状のもの の両側の左右対称となる位置に、1つずつの机と椅子が設置されている。  上記パネルは、上辺が下辺よりも長い台形で、黒色をしており、碁盤目を有し、中央部 に、中心部が赤色で、周辺部がオレンジ色の円形の物体が映し出されており、上記物体の 周りは青くなっている。  前方の5つに区分された窓は、中央部分の窓を中心にして、左右対称にそれぞれ2つの 窓が配置されており、黒色である。窓を仕切る格子は、右側の2本が、くの字の形をして おり、左側の2本は、逆くの字の形をしている。パネルと窓及び側壁との境界には仕切り がある。  床及び床に設置された半球形の物体は、暗い茶色をしており、発光していない。両側面 の壁部分には、それぞれの壁に、円形の大小の窓が1つずつ設置されている。 b 被告映像対比表18部分  被告映像対比表18部分は、艦橋内部の様子が描かれた動画映像である。  上記映像部分では、画面全体が青白く、明るく、艦橋内部の様子が、艦橋内部奥側から 外を見る方向で、内部全体を見渡せるように、俯瞰する位置から描かれている。  前方正面上方に、本件映画対比表18部分のパネルの幅の半分程度の幅の巨大なパネル が設けられ、前方中央部に、窓様のものがあり、手前の床上には、手前側に操縦席が、正 面の窓様のものの手前と両側壁に複数の机と椅子が、中央部に、円錐状の物体が、それぞ れ設置されており、その円錐状の物体の両側の左右対称となる位置に、1つずつ机様のも のが設置されている。  上記パネルは、上辺が下辺よりも長い台形で、青白く発光し、碁盤目を有し、中央部に、 龍がとぐろを巻いているような物体が映し出されている。  前方の窓は、横に細長い長方形をしており、仕切りがなく、中央部分は青白く発光し、 右側の一部は白く発光し、左側の3分の1部分は黒色である。窓とパネルとの境界には仕 切りがない。  床は、青白く発光している。両側壁には、その中ほどの高さのところに、多数の小さな 円形の発光体が一列に並んで配置してあり、窓はない。 (イ)対比  本件映画対比表18部分と被告映像対比表18部分とは、前記(ア)のとおり、艦橋内 部の様子が、艦橋内部奥側から外を見る方向で、内部全体を見渡せるように、俯瞰する位 置から描かれている点、前方正面上方に巨大なパネルが設けられ、前方中央部に、窓ない し窓様のものがあり、手前の床上には、手前側に操縦席が、正面の窓ないし窓様のものの 手前に机と椅子が、中央部に物体が、それぞれ設置されており、その物体の両側の左右対 称となる位置に、1つずつ机様のものが設置されている点で共通する。  しかしながら、宇宙戦艦ヤマトの艦橋内部の様子を、艦橋内部奥側から外を見る方向で、 内部全体を見渡せるように、俯瞰する位置から描いているものは、本件原図柄のうち、 「第一艦橋」と表示された図(丁5の152頁)にあるところ、本件映画対比表18部分 と同本件原図柄部分とは、構図、各設置物の配置及び相互の寸法関係がほとんど同一であ るから、本件映画対比表18部分から同本件原図柄部分の表現上の本質的な特徴を直接感 得することができる。しかも、本件原図柄は、前記のとおり、本件映画の制作過程におい て作成されたものであるから、本件映画対比表18部分は、本件原図柄の上記部分に依拠 して制作されたものと認められ、したがって、本件映画対比表18部分は、本件原図柄の 上記部分の二次的著作物であると解するのが相当である。そうすると、本件映画の本件映 画対比表18部分の著作権は、補助参加人P1が作成した原著作物である本件原図柄の上 記部分と共通し、その実質を同じくする部分には生じないというべきであるところ、上記 共通点のうち、艦橋内部の様子を、艦橋内部奥側から外を見る方向で、内部全体を見渡せ るように、若干俯瞰した視点から描いている点、前方中央部に窓があり、手前の床上には、 手前側に操縦席が、床の中央部から左右対称の両側の位置に机と椅子が、それぞれ設置さ れている点は、本件原図柄(丁5の152頁)に表現されているから、同部分については、 著作権が生じない。  また、証拠(乙57の4)によれば、本件映画が制作される以前に制作されたアニメー ション映画において、見上げるような高さの位置に巨大なパネルが設置されている様子が 描かれた場面があることが認められることから、上記共通点のうち、巨大なパネルを設置 した点は特に目新しい表現ということはできない。また、床の中央部に何らかの物体を設 置することも特徴のある表現ということはできない。  したがって、上記両映像に上記共通点が存在することが、両映像の同一性の判断におい て、大きな意味を有するということはできない。  そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、 前記(ア)の認定から明らかなように、相当異なる。  以上の点を総合考慮すると、本件映画対比表18部分と被告映像対比表18部分との間 に、同一性は認められないというべきである。  なお、原告は、本件原図柄と本件映画の関係について、著作権法16条本文において 「その映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作者」 を除いているのは、既存の著作物の著作者をクラシカルオーサーとして映画の著作物とは 別個の著作物の著作者として保護しようとするものであり、映画のために制作された著作 物については、例外的に脚本及び映画音楽についてのみ、その著作者をクラシカルオーサ ーとして保護するとの趣旨であると理解し、それを前提に、原作漫画の存在しないアニメ ーション映画に使用されている図柄は、当該アニメーション映画の原著作物とはならない 旨主張する。  しかしながら、著作権法16条前段の規定は、映画の著作物の著作権者を明らかにする とともに、当該映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他 の著作物について、それが別個の著作物として観念できる場合には、映画の著作物とは異 なる者が著作権者となり得る旨を示したものと解され、原作漫画の存在しないアニメーシ ョン映画に使用されている図柄であっても、アニメーション映画で翻案された既存の他の 著作物と同様に、完成したアニメーション映画とは別個の著作物と観念できる場合には、 当該アニメーション映画の原著作物となり得るというべきである。原告の上記主張は独自 の見解であり、採用できない。 (ウ)小括  したがって、被告映像対比表18部分は、本件映画対比表18部分の複製物ということ はできない。 ソ 被告映像対比表19部分は本件映画対比表19部分の複製物といえるか。 (ア)両映像の内容及び形式 a 本件映画対比表19部分  本件映画対比表19部分は、約4秒間の動画映像であり、青色と薄青色の比較的コント ラストの強い縦縞の壁を背景に、黒色のコート様のユニフォームを着て、軍帽を目深に被 り、手を後ろに回して直立し、口を動かして話をしている体格のよい熟年男性が、正面か ら描かれており、画面には、最初は、男性の膝上の辺りから頭の部分までが映っているが、 徐々に顔を中心とした映像となり、最後の場面では、胸から頭までが描かれている。  男性の顔は、帽子に隠れていない部分では、頬骨、鼻、耳以外は、白い髭で覆われてお り、唇は全く見えない。男性の髭は、口髭と顎髭が分離しておらず、顔の輪郭に沿った形 をしており、短い。この顔の大部分を覆っている髭部分は、印象が強い。  帽子は、上部が白色で、下部が黒色であり、中央に金色の徽章と金色の顎紐が付いてい る。  コート様のユニフォームは、黒色で、左前に合わせるようになって、合わせ部分が大き く、ベルトで止められており、左の胸部分に金色の碇様の図形が描かれている。襟は大き く、折り返されて肩に被さっており、折り返された裏地部分は、白く縁取られた赤色であ る。男性の襟元からは、白いものが見える。ベルトには、拳銃様のものが装着されている。 b 被告映像対比表19部分  被告映像対比表19部分は、暗い背景の屋内で、青色のコート様のユニフォームを着て、 軍帽を目深に被り、手を下に垂らした状態で直立し、口を終始閉じている体格のよい熟年 男性が、男性の右斜め前方から描かれている動画映像であり、画面には、最初は、上半身 すべてが映され、徐々に顔を中心とした映像となり、最後の場面では、頭、顔から肩の下 辺りまでが描かれている。  男性の顔は、灰色の口髭と顎髭が生えているが、下唇は髭に覆われておらず、耳は、コ ート様のユニフォームの襟部分に隠れて見えない。  男性の顎髭は、下方に若干伸びている様子が描かれている。また、髭で覆われている部 分が本件映画対比表19部分で描かれている男性よりも少ないことから、鼻や口部分の印 象が強くなっている。  帽子は、上部が白色、下部が黒色であり、中央に金色の徽章と金色の顎紐が付いている。 帽子の上部の白色の部分は、丸くふくらんだような形をしている。  コート様のユニフォームは、身体の中央からやや右側にずれた位置で留めるようになっ ており、ベルトはなく、左の胸部に金色の碇様の図形が描かれている。襟は大きく、立ち 上がり部分も男性の顔の半分程度を覆うほどの高さがあり、折り返された裏地部分は、白 い縁取りがされた赤色である。男性の襟元から、白いスカーフ様のものが見える。 (イ)対比  前記(ア)のとおり、本件映画対比表19部分と被告映像対比表19部分とは、屋内で、 コート様のユニフォームを着て、軍帽を目深に被り、直立している体格のよい熟年男性が 描かれている点、最初は上半身すべてが映されている映像が、徐々に顔がクローズアップ され、最後の場面では、頭、顔及び肩ないし胸の辺りまでが描かれている点、男性の顔に は口髭と顎髭が生えている点、帽子は、上部が白色、下部が黒色であり、中央に金色の徽 章と金色の顎紐が付いている点、コート様のユニフォームの襟は大きく、折り返された裏 地部分は、白い縁取りがされた赤色である点、襟元から白いものが見える点で共通する。  しかしながら、上記両映像中に描かれている男性には、前記(ア)のとおりの相違点が あるが、アニメーション映画の登場人物は、顔や服装といった細部の違いから、相当に異 なった印象を受けることが多いものと解されるところ、上記のような顔(とりわけ髭の分 量から受ける印象)や、服装に大きな違いがあれば、別人として認識されると解される。 また、その他の表現形式や、上記の共通する表現形式における具体的な表現形式において、 前記(ア)の認定で明らかなように、両映像は大きく異なる。  以上の点を総合考慮すると、本件映画対比表19部分と被告映像対比表19部分との間 に、同一性は認められないというべきである。  (ウ)小括  したがって、被告映像対比表19部分は、本件映画対比表19部分の複製物ということ はできない。 タ 被告映像対比表20部分は本件映画対比表20部分の複製物といえるか。 (ア)両映像の内容及び形式 a 本件映画対比表20部分  本件映画対比表20部分は、約3秒の動画映像であり、軍帽を被り、髭を生やし、大き な襟の服を着た熟年男性が、顔を拡大して、正面から描かれている。男性は、口を大きく 動かして、大声を出している。  男性の顔は、左目は帽子のひさしに隠れており、帽子に隠れていない部分では、頬骨、 鼻、耳以外は、白い髭で覆われており、唇は全く見えない。男性の髭は、口髭と顎髭が分 離しておらず、顔の輪郭に沿った形をしており、短い。この顔の大部分を覆っている髭部 分は、印象が強い。  帽子は、上部が白色、下部が黒色であり、中央に金色の徽章と金色の顎紐が付いている。  襟は、折り返されて肩に被さっており、折り返された裏地部分は、白く縁取られた赤色 である。襟元からは、白いスカーフ様のものが見える。 b 被告映像対比表20部分  被告映像対比表20部分は、画面中央に、軍帽を被り、髭を生やし、大きな襟の服を着 た熟年男性が、胸より上の部分を、また、向かって右側後方にコートを着た白髪の男性が、 正面から描かれている動画映像である。  手前の軍帽を被った男性の顔は、左目は帽子のひさしに隠れており、灰色の口髭と顎髭 が生えている。この男性の口髭と顎髭は分離しており、顎髭は下方に若干伸びている様子 が描かれている。また、髭で覆われている部分が、本件映画対比表20部分で描かれてい る男性よりも少ないことから、鼻や口部分の印象が強い。  帽子は、上部が白色、下部が黒色であり、中央に金色の徽章と金色の顎紐が付いている。 帽子の上部の白色の部分は丸くふくらんだような形をしている。  襟は立った状態で折り返されており、折り返された裏地部分は、白く縁取られた赤色で ある。襟元からは、白いスカーフ様のものが見える。 (イ)対比  前記(ア)のとおり、本件映画対比表20部分と被告映像対比表20部分とは、大きな 襟の服を着て、軍帽を目深に被っている熟年男性の顔が拡大されて描かれている点、男性 の顔には口髭と顎髭が生えている点、男性の左目は帽子のひさしに隠れている点、帽子は、 上部が白色、下部が黒色であり、中央に金色の徽章と金色の顎紐が付いている点、襟の折 り返された裏地部分は白く縁取られた赤色である点、襟元から白いスカーフ様のものが見 えている点で共通する。  しかしながら、上記両映像中に描かれている男性には、上記(ア)のとおりの相違点が あるところ、上記ソ(イ)に判示したとおり、アニメーション映画の登場人物としては、 このような相違点があれば、別人として認識されると解される。また、両映像のその他の 表現形式や、上記の共通する表現形式における具体的な部分は、前記(ア)の認定から明 らかなように、大きく異なる。  以上の点を総合考慮すると、本件映画対比表20部分と被告映像対比表20部分との間 に、同一性は認められないというべきである。 (ウ)小括  したがって、被告映像対比表20部分は、本件映画対比表20部分の複製物ということ はできない。 チ 被告映像対比表21部分は本件映画対比表21部分の複製物といえるか。 (ア)両映像の内容及び形式 a 本件映画対比表21部分  本件映画対比表21部分は、約10秒間の動画映像であり、室内で、眼鏡をかけ、頭髪 のほとんどない男性が、椅子に腰掛けて、画面には映っていない者に対して話しかけなが ら、湯飲み茶碗で日本酒を飲んでいる様子が、男性の右斜め前方から描かれている。  男性の人相は、〔1〕頭頂部が比較的尖った下ぶくれの輪郭で、髪の毛は、耳の上の辺 りだけにわずかに生えており、〔2〕口が大きく誇張され、〔3〕目は黒い点であり、 〔4〕小さな丸いフレームの眼鏡をかけており、〔5〕眼鏡は、ずれ落ちて、目が眼鏡の 上に露出しており、〔6〕鼻は、山型をし、〔7〕眉毛は、細く、長い八の字の形をして いる。  男性の右横には、小さな金属製の机があり、男性は、椅子に腰掛けて、右の肘を机の上 に置いている。机の上には、日本酒の一升瓶が置いてある。  男性は、左手で日本酒を飲もうとし、一口飲む前に、舌なめずりをするように長い舌を ほおの辺りまで出し、飲み終わると、右手で口を拭うような仕草をする。  男性は、半袖の白色の服を着ており、左胸部に赤い十字の図形が描かれており、襟元は 赤く着色されている。  男性の背後には、本棚があり、百科事典のような体裁の本が並んでいる。 b 被告映像対比表21部分  被告映像対比表21部分は、飛行物体内と思われる広い場所で、右手を肩の位置まで挙 げて立っている頭髪のほとんどない男性が、男性の左斜め前方から描かれている動画映像 であり、男性の顔が徐々に拡大される様子が描かれている。  男性の人相は、〔1〕頭頂部は尖っておらず、下ぶくれの輪郭で、髪の毛は、耳の上の 辺りだけにわずかに生えており、〔2〕口は大きいが、誇張されておらず、〔3〕目は、 黒い点であるが、眼鏡の奥で、はっきりとは見えず、〔4〕普通の大きさの、角が丸味を 帯びた四角いフレームの眼鏡をかけており、〔5〕眼鏡はずれ落ちておらず、〔6〕鼻は、 団子鼻であり、〔7〕眉毛は、短く、太い八の字の形をしている。  男性は、挨拶をするように、右手を肩の位置まで挙げ、左手は後ろに回しており、男性 の上半身が徐々に拡大されていくが、その間、男性は、体を全く動かさない。  男性は、袖をまくった緑色のジャンパーを、前を開けて羽織り、内側に着ている白いT シャツが見えている。 (イ)対比  前記(ア)のとおり、本件映画対比表21部分と被告映像対比表21部分では、頭髪が ほとんどなく、眼鏡を掛けた男性が描かれている点、その男性の口が大きい点で共通する が、上記(ア)の認定から明らかなように、その他の表現形式や、上記の共通する表現形 式のうちでも具体的な表現形式は、大きく異なる。特に、眼鏡の形や大きさ、鼻の形、口 部分の形状において、両映像の男性の人相が大きく異なり、両人物は、アニメーション映 画の登場人物としては完全に別人と認識されるものといえる。  したがって、本件映画対比表21部分と被告映像対比表21部分との間に、同一性は認 められないというべきである。 (ウ)小括  したがって、被告映像対比表21部分は、本件映画対比表21部分の複製物ということ はできない。 ツ 被告映像対比表22部分は本件映画対比表22部分の複製物といえるか。 (ア)両映像の内容及び形式 a 本件映画対比表22部分  本件映画対比表22部分は、1秒弱の動画映像であり、室内において、赤色をしたロボ ットの上部が、ロボットの若干右斜め前方の位置から、拡大されて描かれている。  本件映画対比表22部分に描かれているロボットは、後記テの本件映画対比表23部分 に描かれているロボットと同一のロボットであり、その上半身部分が描かれている。  本件映画対比表22部分に描かれたロボットの特徴は、後記テ(ア)のとおりであり、 本件映画対比表22部分では、左側背後に室内の出入り口があり、ロボットの頭部に設置 されている計器の針が動き、頭部の最下部に上下二列に帯状に配置された、多数の小さな 長方形のパネル様のものの上段の部分が、黄色く点滅している様子が描かれている。 b 被告映像対比表22部分  被告映像対比表22部分は、宇宙空間を背景に、人型のロボット(ただし、足はない。) 3体が、ロボットの若干左斜め前方の位置から描かれた動画映像であり、最初は、中央の 1体だけが画面中央に描かれており、他の左右の2体は画面上には一部しか映っていない が、徐々に中央のロボットが画面奥に遠ざかって小さくなっていき、それに伴い、左右の 2体も画面上に現れてくる様子が描かれている。  上記各ロボットは、いずれも同一のものであり、頭部、胴部、下半身の3つのパーツに 分かれており、各パーツ間には若干の隙間があり、いずれのパーツも、その大部分がオレ ンジ色をしている。  ロボットの頭部は、半球状をしており、頭頂部に小さな突起物があり、両側面に円形の 緑色の目が付いており、鼻の位置が、白色に色分けされている。頭部には、計器様のもの は一切付いていない。頭部の最下部には、多数の小さな長方形の黄色いパネル様のものが 一列の帯状に付いている。  胴部には、腕が付いており、上腕の部分と手首の部分の間は蛇腹様の部材となっている。 手には、指様のものが付いているが、具体的な形状は分からない(別の映像部分から、手 には5本の指が付いていることが分かる。)。胴部の中央部分には、緑色の円形のものが あり、その左右に小さな白い突起物が付いている。胴部には、計器様のものは一切付いて いない。胴部の最下部には、多数の小さな長方形の黄色いパネル様のものが一列の帯状に 付いている。  下半身は、人間の足の代わりに円錐状のものが付いている。下半身の最上部には、多数 の小さな長方形の黄色いパネル様のものが一列の帯状に付いている。 (イ)対比  本件映画対比表22部分と被告映像対比表22部分とは、前記(ア)のとおり、ロボッ トが描かれている点で共通する。  しかしながら、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式であるロボットが 描かれているという点における具体的な表現形式は、前記(ア)の認定から明らかなよう に、大きく異なる。  したがって、本件映画対比表22部分と被告映像対比表22部分との間に、同一性は認 められないというべきである。 (ウ)小括  したがって、被告映像対比表22部分は、本件映画対比表22部分の複製物ということ はできない。 テ 被告映像対比表23部分は本件映画対比表23部分の複製物といえるか。 (ア)両映像の内容及び形式 a 本件映画対比表23部分  本件映画対比表23部分は、約2秒間の動画映像であり、室内において、赤色をした人 型のロボットの、頭部、胴部、下半身の3つのパーツに分離する様子が、正面から描かれ ている。ロボットは、青色の壁と茶色の床を背景として、画面上にすべての部分が入るよ うに描かれており、途中で、頭部が分離して、浮遊し始め、続いて、胴部が右側に回転し た後、左側に回転して元の位置に戻り、その後、胴部が下半身と分離して、浮遊し始める。  ロボットの頭部は、半球状をしており、頭頂部に3つの大きな鶏冠状の突起物があり、 両側面はガラスで覆われており、そのガラスの中に円形の目が付いている。頭部の正面中 央部には、円形の計器が3つ付いており、その両側にも小さな円形の計器がそれぞれ1つ ずつ付いているが、これらの計器は、ときどき、白色や黄色に発光する。鼻に相当するも のはない。頭部の最下部には、多数の小さな長方形の黄色いパネル様のものが一列の帯状 に付いており、同パネル様の部分は、ときどき発光する。また、頭部の両側面の下部から、 1本ずつ短いアンテナが出ている。  胴部には腕が付いており、手には5本の指がある。胴部の中央部には、1つの円形の計 器と、その下に黄色の部品が2つ、更にその下に小さな白色の部品が5つ付いている。  下半身には、人と同様の太い足が付いている。 b 被告映像対比表23部分  被告映像対比表23部分は、被告映像対比表22部分のロボットと同一のロボットが、 室内において、両腕を挙げて、頭部、胴部、下半身の3つのパーツに分離している様子が 正面から描かれている動画映像である。背景には、パネル様のものが複数設置されている 壁が描かれている。 (イ)対比  本件映画対比表23部分と被告映像対比表23部分とは、前記(ア)のとおり、室内に おいて、ロボットが、頭部、胴部、下半身の3つのパーツに分離している様子を正面から 描いた点、ロボットの頭部が半球状をしており、両側面に円形の目が付いており、その最 下部には、多数の小さな長方形のパネル様のものが一列の帯状に付いている点、胴部には 腕が付いている点において共通する。  しかしながら、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な 部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。特に、両映像のロボット の形状が大きく異なり、両ロボットは、アニメーション映画に登場するロボットとしては 完全に別のロボットと認識されるものといえる。  以上の点を総合考慮すると、本件映画対比表23部分と被告映像対比表23部分との間 に、同一性は認められないというべきである。 (ウ)小括  したがって、被告映像対比表23部分は、本件映画対比表23部分の複製物ということ はできない。 (5)本件映画と被告パチスロ映像との対比  甲第15号証の1及び弁論の全趣旨によれば、以下のとおり認められる。 ア 被告映像対比表28部分は本件映画対比表28部分の複製物といえるか。 (ア)両映像の内容及び形式 a 本件映画対比表28部分  本件映画対比表28部分は、約14秒間の動画映像であり、陸地上に停泊している宇宙 戦艦ヤマトが、宇宙戦艦ヤマトから見て右斜め前方の位置から描かれており、映像を見る 者の位置が徐々に宇宙戦艦ヤマトから遠ざかっていき、最初は、画面上に宇宙戦艦ヤマト の艦橋部とその周辺部分しか見えないが、次第に、宇宙戦艦ヤマトの全体が見えてきて、 さらに、宇宙戦艦ヤマトが陸上に停泊している状態であることが分かるように描かれてい る。  宇宙戦艦ヤマトの形状ないし色彩は、艦首部に発射口があり、艦橋が甲板の後部に、主 砲が艦橋の前に、それぞれ設置されており、喫水線付近で上下に色分けされ、上部は灰色 に、下部は赤色となっている。  陸地の部分は茶色であるが、空の部分はやや暗い青色で、本件映画対比表28部分の映 像だけからは、画面上に陸地の部分が現れない段階では、宇宙戦艦ヤマトが宇宙を飛行中 であるようにも見える。 b 被告映像対比表28部分  被告映像対比表28部分は、青白い宇宙空間を戦艦様の飛行物体の飛行していく様子が、 同飛行物体から見て右斜め前方の位置から描かれている動画映像である。  上記飛行物体は、終始同じ大きさで描かれているが、左右に揺れ、背景にある白い光の 粒子や青色の惑星が画面左奥の方向へ移動していくことから、飛行物体が、画面右手前の 方向に向かって飛行していることが分かる。  戦艦様の飛行物体は、艦首部に発射口があり、艦橋が甲板の後部に設置されており、喫 水線付近で上下に色分けされ、上部は灰色に、下部は赤色となっており、側面に大きな翼 様のものが設置されている。 また、艦首部及び喫水下のバルジが強調されて大きく描かれている。 (イ)対比  本件映画対比表28部分と被告映像対比表28部分とは、前記(ア)のとおり、戦艦が、 同戦艦の右斜め前方の位置から描かれている点、戦艦には、艦首部に発射口があり、艦橋 が甲板の後部に設置されており、喫水線付近で上下に色分けされ、上部は灰色に、下部は 赤色となっている点が共通する。  しかしながら、前記(4)シで判示したように、上記共通点のうち、戦艦の形状及び色 彩として、艦橋が甲板の後部に設置され、喫水線付近で上下に色分けされ、上部は灰色に、 下部は赤色として描かれることは、ありふれた表現形式というべきである。また、前記ア で判示したように、艦首部に穴の空いた戦艦が特に目新しい表現ということはできない。 さらに、戦艦をその前方左側から描くことも、ありふれた表現形式である。  したがって、上記両映像に上記共通点が存在することが、両映像の同一性の判断におい て、大きな意味を有するということはできない。  そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、 前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。  以上の点を総合考慮すると、本件映画対比表28部分と被告映像対比表28部分との間 に、同一性は認められないというべきである。 (ウ)小括  したがって、被告映像対比表28部分は、本件映画対比表28部分の複製物ということ はできない。 イ 被告映像対比表31部分は本件映画対比表31部分の複製物といえるか。 (ア)両映像の内容及び形式 a 本件映画対比表31部分  本件映画対比表31部分は、約3秒間の動画映像であり、宇宙空間において、3基の主 砲(1基の砲台に3門の砲身がある。)が画面左側奥の天体に狙いを定めている場面が、 同主砲の手前左側の、同主砲に接近した位置から描かれている。  3基の主砲のうち、最も手前の砲台の3門の砲身が中心的に描かれ、左端の砲身が、最 初は上方を向いていたのが、下降して、他の2門の砲身と並んで、まっすぐ前方を向くま での様子が描かれている。なお、砲身からの発砲はない。  攻撃対象となっている天体は、画面左側奥に描かれており、全体的に灰色で、半球状の 天体の上に略円錐状の山が乗っているような形状であり、その円錐状の山には、多数の高 層構造物が築造されており、天体上に都市が造られているような印象を与える。 b 被告映像対比表31部分  被告映像対比表31部分は、宇宙空間において、3門の砲身が、画面中央奥にある赤色 の天体を実際に攻撃している様子が、同砲身の手前上方の、同砲身に接近した位置から描 かれている動画映像である。  3門の砲身は、最初は、左下方を向いているが、立ち上がって、正面の天体の方向を向 き、まず、左端の砲身から、光線を天体に向けて発射し、次に、右端の砲身から、光線を 天体に向けて発射する。  攻撃対象となっている天体は、画面中央奥に描かれ、全体的に赤色をしており、逆円錐 形状をした天体の上に略円錐状の山が乗っているような形状である。天体には、光線が着 弾したような発光部分が散見される。 (イ)対比  本件映画対比表31部分と被告映像対比表31部分とでは、前記(ア)のとおり、宇宙 空間において、主砲が天体に向いている場面が、主砲に接近した位置から描かれている点、 攻撃対象である天体が画面上に描かれている点で共通する。  しかしながら、主砲が攻撃対象を向き、その攻撃対象を画面上に映すという表現形式は、 極めてありふれており、また、その様子を主砲側の、主砲に接近した位置から描くことも ありふれている。したがって、上記共通点は、いずれも、ありふれた表現形式であり、こ のような共通点が存在することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有する ということはできない。  そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、 前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。  以上の点を総合考慮すると、本件映画対比表31部分と被告映像対比表31部分との間 に、同一性は認められないというべきである。 (ウ)小括  したがって、被告映像対比表31部分は、本件映画対比表31部分の複製物ということ はできない。 ウ 別紙対比表5の「侵害映像2」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表 5リーチ映像部分」という。)は、別紙対比表5の「被侵害映像」欄の映像に対応する動 画部分(以下「本件映画対比表5部分」という。)の複製物といえるか。  いずれも、前記(4)アにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、 被告映像対比表5リーチ映像部分は、本件映画対比表5部分の複製物ということはできな い。 エ 別紙対比表5の「侵害映像1」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表 5待機映像部分」という。)は、本件映画対比表5部分の複製物といえるか。  いずれも、前記(4)イにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、 被告映像対比表5待機映像部分は、本件映画対比表5部分の複製物ということはできない。 オ 別紙対比表6の「侵害映像2」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表 2リーチ映像部分」という。)は、別紙対比表6の「被侵害映像」欄の映像に対応する動 画部分(以下「本件映画対比表6部分」という。)の複製物といえるか。  いずれも、前記(4)ウにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、 被告映像対比表6リーチ映像部分は、本件映画対比表6部分の複製物ということはできな い。 カ 別紙対比表6の「侵害映像1」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表 6待機映像部分」という。)は、本件映画対比表6部分の複製物といえるか。  いずれも、前記(4)エにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、 被告映像対比表6待機映像部分は、本件映画対比表6部分の複製物ということはできない。 キ 別紙対比表7の「侵害映像2」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表 7リーチ映像部分」という。)は、別紙対比表7の「被侵害映像」欄の映像に対応する動 画部分(以下「本件映画対比表7部分」という。)の複製物といえるか。  いずれも、前記(4)オにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、 被告映像対比表7リーチ映像部分は、本件映画対比表7部分の複製物ということはできな い。 ク 別紙対比表7の「侵害映像1」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表 7待機映像部分」という。)は、本件映画対比表7部分の複製物といえるか。  いずれも、前記(4)カにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、 被告映像対比表7待機映像部分は、本件映画対比表7部分の複製物ということはできない。 ケ 別紙対比表8の「侵害映像2」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表 8リーチ映像部分」という。)は、別紙対比表8の「被侵害映像」欄の映像に対応する動 画部分(以下「本件映画対比表8部分」という。)の複製物といえるか。  いずれも、前記(4)キにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、 被告映像対比表8リーチ映像部分は、本件映画対比表8部分の複製物ということはできな い。 コ 別紙対比表8の「侵害映像1」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表 8待機映像部分」という。)は、本件映画対比表8部分の複製物といえるか。   いずれも、前記(4)クにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、 被告映像対比表8待機映像部分は、本件映画対比表8部分の複製物ということはできない。 サ 別紙対比表24の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表 24部分」という。)は、別紙対比表24の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分 (以下「本件映画対比表24部分」という。)の複製物といえるか。  いずれも、前記(4)ケにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、 被告映像対比表24部分は、本件映画対比表24部分の複製物ということはできない。 シ 別紙対比表25の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表 25部分」という。)は、別紙対比表25の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分 (以下「本件映画対比表25部分」という。)の複製物といえるか。  いずれも、前記(4)コにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、 被告映像対比表25部分は、本件映画対比表25部分の複製物ということはできない。 ス 別紙対比表26の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表 26部分」という。)は、別紙対比表26の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分 (以下「本件映画対比表26部分」という。)の複製物といえるか。  いずれも、前記(4)サにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、 被告映像対比表26部分は、本件映画対比表26部分の複製物ということはできない。 セ 別紙対比表27の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表 27部分」という。)は、別紙対比表27の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分 (以下「本件映画対比表27部分」という。)の複製物といえるか。  いずれも、前記(4)シにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、 被告映像対比表27部分は、本件映画対比表27部分の複製物ということはできない。 ソ 別紙対比表29の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表 29部分」という。)は、別紙対比表29の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分 (以下「本件映画対比表29部分」という。)の複製物といえるか。  いずれも、前記(4)スにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、 被告映像対比表29部分は、本件映画対比表29部分の複製物ということはできない。 タ 別紙対比表30の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表 30部分」という。)は、別紙対比表30の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分 (以下「本件映画対比表30部分」という。)の複製物といえるか。  いずれも、前記(4)セにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、 被告映像対比表30部分は、本件映画対比表30部分の複製物ということはできない。 チ 別紙対比表32の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表 32部分」という。)は、別紙対比表32の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分 (以下「本件映画対比表32部分」という。)の複製物といえるか。  いずれも、前記(4)タにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、 被告映像対比表32部分は、本件映画対比表32部分の複製物ということはできない。 ツ 別紙対比表33の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表 33部分」という。)は、別紙対比表33の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分 (以下「本件映画対比表33部分」という。)の複製物といえるか。  いずれも、前記(4)チにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、 被告映像対比表33部分は、本件映画対比表33部分の複製物ということはできない。 (6)本件映画と被告プレステゲーム映像との対比  甲第19号証の1及び弁論の全趣旨によれば、以下のとおり認められる。 ア 別紙対比表34の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表 34部分」という。)は、別紙対比表34の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分 (以下「本件映画対比表34部分」という。)の複製物といえるか。  いずれも、前記(4)ケにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、 被告映像対比表34部分は、本件映画対比表34部分の複製物ということはできない。 イ 別紙対比表35の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表 35部分」という。)は、別紙対比表35の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分 (以下「本件映画対比表35部分」という。)の複製物といえるか。  いずれも、前記(4)コにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、 被告映像対比表35部分は、本件映画対比表35部分の複製物ということはできない。 ウ 別紙対比表36の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表 36部分」という。)は、別紙対比表36の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分 (以下「本件映画対比表36部分」という。)の複製物といえるか。  いずれも、前記(4)サにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、 被告映像対比表36部分は、本件映画対比表36部分の複製物ということはできない。 エ 別紙対比表37の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表 37部分」という。)は、別紙対比表37の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分 (以下「本件映画対比表37部分」という。)の複製物といえるか。  いずれも、前記(4)シにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、 被告映像対比表37部分は、本件映画対比表37部分の複製物ということはできない。 オ 別紙対比表38の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表 38部分」という。)は、別紙対比表38の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分 (以下「本件映画対比表38部分」という。)の複製物といえるか。  いずれも、前記(4)スにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、 被告映像対比表38部分は、本件映画対比表38部分の複製物ということはできない。 カ 別紙対比表39の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表 39部分」という。)は、別紙対比表39の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分 (以下「本件映画対比表39部分」という。)の複製物といえるか。  いずれも、前記(4)セにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、 被告映像対比表39部分は、本件映画対比表39部分の複製物ということはできない。 キ 別紙対比表40の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表 40部分」という。)は、別紙対比表40の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分 (以下「本件映画対比表40部分」という。)の複製物といえるか。  いずれも、前記(4)ソにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、 被告映像対比表40部分は、本件映画対比表40部分の複製物ということはできない。 ク 別紙対比表41の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表 41部分」という。)は、別紙対比表41の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分 (以下「本件映画対比表41部分」という。)の複製物といえるか。  いずれも、前記(4)タにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、 被告映像対比表41部分は、本件映画対比表41部分の複製物ということはできない。 ケ 別紙対比表42の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表 42部分」という。)は、別紙対比表42の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分 (以下「本件映画対比表42部分」という。)の複製物といえるか。  いずれも、前記(4)チにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、 被告映像対比表42部分は、本件映画対比表42部分の複製物ということはできない。 コ 別紙対比表43の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表 43部分」という。)は、別紙対比表43の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分 (以下「本件映画対比表43部分」という。)の複製物といえるか。  いずれも、前記(4)ツにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、 被告映像対比表43部分は、本件映画対比表43部分の複製物ということはできない。 サ 別紙対比表44の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表 44部分」という。)は、別紙対比表44の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分 (以下「本件映画対比表44部分」という。)の複製物といえるか。  いずれも、前記(4)テにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、被 告映像対比表44部分は、本件映画対比表44部分の複製物ということはできない。 4 小括  以上のとおり、まず、本件証拠上、P2が本件映画の映画製作者であると認めることは できないから、P2が著作権法29条1項に基づき、本件映画の著作権を取得したとは認 められず、したがって、原告が、甲3契約により、本件映画の著作権を取得したものと認 めることはできない。また、本件証拠上、原告がP2から本件映画の翻案権の譲渡を受け たと認めることはできない。  そして、念のため、P2が本件映画の映画製作者であると仮定して、被告映像侵害主張 部分が本件映画被侵害主張部分の著作権を侵害するかについて検討しても、被告映像侵害 主張部分は、いずれも本件映画被侵害主張部分の複製物とはいえない。 第4 結論  よって、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由がないか ら、これらを棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 清水 節    裁判官 山田 真紀    裁判官 佐野 信 (別紙) 侵害品目録 1 被告三共製造に係る下記名称のパチンコゲーム機  CRフィーバー大ヤマトMX  CRフィーバー大ヤマトJX  CRフィーバー大ヤマトFX 2 被告ビスティ製造に係る下記名称のパチスロゲーム機  大ヤマトS 3 被告カード・システム製造に係る下記ビデオゲームソフト  プレイステーション2用ビデオゲームソフト「FEVER 7 SANKYO 公式パ チンコシミュレーション」 (別紙) 映画著作物目録 1 「宇宙戦艦ヤマト」TVシリーズ(昭和49年10月6日製作) 2 「宇宙戦艦ヤマト」劇場用(昭和52年8月6日製作) 3 「さらば宇宙戦艦ヤマト」(昭和53年8月5日製作) 4 「宇宙戦艦ヤマト2」TVシリーズ(昭和53年10月14日製作) 5 「宇宙戦艦ヤマト・新たなる旅立ち」(昭和54年7月31日製作) 6 「ヤマトよ永遠に」(昭和55年8月2日製作) 7 「宇宙戦艦ヤマトIII」(昭和55年10月11日製作) 8 「宇宙戦艦ヤマト・完結編35mm」(昭和58年3月19日) 9 「宇宙戦艦ヤマト・完結編70mm」(昭和58年11月5日)