・知財高判平成20年6月26日  「世界初、大発見地震予知確立」事件:控訴審  本件は、自己の著作物『世界初、大発見地震予知確立』につき被告(株式会社文芸社) と出版契約を締結した原告(小野沢荘次)が、被告に対し、同出版契約に基づき、前訴 (東京地方裁判所平成17年(ワ)第18674号著作権使用料請求事件)の口頭弁論終 結時(平成17年10月12日)以降の増刷に係る平成17年度ないし平成19年度にお ける原告に対する著作権使用料支払に関する支払調書控えの閲覧及び著作権使用料の支払 を求めた事案である。  判決は、平成17年ないし平成19年度分については支払調書が作成されておらず、ま た、被告が初版第1刷1200部を超えて本件書籍を発行したことを示す証拠もないとし て、原告の請求を棄却した。 ■争 点 (1)支払調書控えの閲覧請求権の存否 (2)著作権使用料の支払義務の有無 ■判決文 第3 当裁判所の判断 1 支払調書控えの閲覧請求権の存否について (1)本件で原告がその控えの閲覧を求める支払調書は、著作権使用料等の報酬又は料金 (所得税法204条1項1号)につき支払をする者が税務署長に提出しなければならない ものであるところ(同法225条1項3号)、この支払調書は、「その支払…の確定した 日」の属する年の翌年1月31日までに提出しなければならないとされていることからも 明らかなように、著作権使用料等の支払義務の成立を前提として、支払義務者にその作成 が義務付けられるものである。  したがって、当該年度に著作権使用料等の支払がなかった場合には、そもそも支払調書 は作成されず、その控えが作成されることもない。 (2)後記2(1)のとおり、別件訴訟2の口頭弁論終結時(平成17年10月12日) 以降に、被告が初版第1刷1200部を超えて本件書籍を発行したことを認めるに足りる 証拠はない。 (3)したがって、平成17年度ないし平成19年度分の支払調書及びその控えが作成さ れたことを認めることはできないから、これらの年度分の支払調書控えの閲覧を求める原 告の請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。 2 著作権使用料の支払義務の有無について (1)原告は、別件訴訟2の口頭弁論終結時(平成17年10月12日)以降、被告が初 版第1刷1200部を超えて本件書籍を発行した旨主張するが、これを認めるに足りる証 拠はない。かえって、本件書籍を平成12年4月7日に1200部製作したこと及び上記 部数以上の製作をしていないことを証明する旨の株式会社フクイン作成の平成20年2月 21日付け製作証明書(乙5)によると、被告は、平成17年10月12日以降、初版第 1刷1200部を超えて本件書籍を発行した事実はないことが認められる。 (2)よって、別件訴訟2の口頭弁論終結時(平成17年10月12日)以降に追加発行 された6万6667部について、本件出版契約に基づき著作権使用料200万円の支払を 求める請求は、その余の点につき判断するまでもなく理由がない。 3 結論  以上によれば、原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし、主文のとおり 判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 市川 正巳    裁判官 大竹 優子    裁判官 宮崎 雅子